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根深き種の溝を越えて (前編)◆2XEqsKa.CM



……やあみんな、体調は良好かい?
僕はあまりいいとは言えないね。
何故かというと……おっと。
話せば長くなるから、僕の体調のお話は割愛させてもらうよ。
これから少し仕事があるからね。
うん、本題だけ言おう。
君達はプロレスは好きかな?僕は大好きさ。
プロレスはいい……プロレスは心を躍らせてくれる。
プロレスは人間が生み出した文化の極みだよ。
……でも、ここではプロレスは成立しないんだ。
この島はバトルロワイアルの舞台だからね。
ルール無用の殺し合いなんて、美学に欠けるとは思わないか?
僕は悲しいよ。
特に僕の大きな仲間が殺しあうのを見るなんて、本当は嫌さ。
でもしょうがないんだ。仕事だからね。
だから、せめて僕の分担された職場では、クリーンなプロレスをやって欲しいんだ。
それが仕事を遂行することにも繋がるしさ。
……ああ、せっかちな人たちだなぁ、ゴングも鳴っていないというのに。
さて、僕はもう行かなくてはいけない。
君達に本当のプロレスを見せられるよう、努力するとするよ。
あの方たち……僕の雇い主も多分ご覧になっているだろうしね。
では、またいずれの機会に。



……ああ、君は誰かって?
僕は……使者さ。

リン グ
闘盤の上の秩序を守り、惨劇を記録する為に送り込まれた……。












ケモノの使者さ。

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 |,  はじまるよ!  |
 |________|
    .∧ | ∧     
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   i i'       | |   
   i ヽ_,._,/ ,'   
    ゙ー---―'   



「「 阿 修 羅 Ω 火 玉 弾 !」」

一塊の肉弾と化して迫る怪人、アシュラマン。
狂笑を上げ、背中の巨大な手にスリング・ショットを構える怪人、オメガマン。
二人の怪人が名を合せ叫ぶその技は、妖炎のごとくリングの上で相対する者たちを襲う。
オメガマンはアシュラマンが発射されながら放り投げたディバッグを受け取り、一歩下がる。

「散開! 」

頑強な悪魔の肉体と巨大なスリングが織り成す高速&高威力の突撃。
とっさに対戦者……ガルル中尉とスバル・ナカジマは逆方向に弾ける様に回避する。
檄を飛ばしたガルルは右手、スバルは左手。
予備動作が大きい阿修羅Ω火玉弾を避けるのは、鍛え上げられた反応速度を持つ二人だからこそ可能。
回避した勢いをそのままにリングの外……コーナーに飛び出たスバルはリングを取り囲む業熱の煽りを受けながら、
空中で振りかえって着地し、アシュラマンの様子を見る。

「カーカカカ! なかなかいい運動神経をしておるではないか! だがここがどこなのかわかっていないようだな!


                   阿   修   羅   Ω   地   獄   返   し   !                  」

刹那の合間。
弾丸と化した態勢から宙天し、六本の腕を大きく広げてリングに張り巡らされたロープに足を向けるアシュラマン。
精密なボディ・コントロールと加速度の強化を両立する見事な技術で、ロープを軋ませて弾丸と化した自らを"反射"。
プロレスでは常套の単純なロープアクションも超人にかかれば真の殺傷力を持つ危技と変わる。
反射による加速を増した阿修羅砲弾の爪が刹那の間を縫い、未だ回避行動を終了しきっていないガルルに襲い掛かる!

「中尉ーー!! 」

「ぬうっ! 」

予期せぬ方向からの即時追撃。
ガルルは避けようと無理に身体を捻らせ、前方につんのめる。
だが完全には逃れられず、アシュラマンの広げた腕の一本に引っ掛かって宙を舞う。
アシュラマンは跳ね上げられたガルルを横目で見ながらロープを使って縦横無尽にリング内を飛び回り、
流れるような連続体当たりを敢行してガルルを徐々に上空に弾き上げていく。
ガルルも防御に徹し、ダメージを最小限に抑えはしたが、空中からリングに降りることはできない。
そしてガルルが反撃しようと身を捩じらせて起死回生の蹴りを放とうとしたその時――――!

「オメガマンーーッ! よーく見ておけ、お前の相棒のフィニッシュ・ホールドをなーー! 」

(かわせん! )

アシュラマンの腕の二本がガルルの両腕を。
アシュラマンの腕の二本がガルルの両足を。
アシュラマンの腕の二本がガルルの……両足を。

        ホールド
がっしりと、固定。
本来の形とは彼我のサイズ差の関係でいささか変わってはいたが、それは。


「これぞ私の必殺技!  阿 修 羅 バ ス タ ー だーーッ! 」




天地逆転したガルルの顔を首筋に置きながら叫ぶアシュラマン。
同時に雷のようにリングに落ち、鈍い音と共にガルルを放り投げる。
マットの上に転がったガルルは、ピクリとも動かずに横たわっていた。

「ちゅ……中尉……? 」
                                                   ロープアクション
「フォーフォフォフォ……アシュラマンめ、流石にクモの化身というだけあって見事な 糸 捌 き よ……。
 そしていずれは敵対するわたしにフィニッシュ・ホールドを見せるとは、魔界のプリンスらしき大した自信! 」


いつの間にかコーナーに出ていたオメガマンが、笑いを零しながらアシュラマンの手際を称する。
さらにまだ動かないガルルを一瞥し、侮蔑の言葉を飛ばす。

「フン! 少しは楽しめるかと思っていたがな……。まさか阿修羅バスター一撃で沈むとは、情けない奴!
 しょせんカエルはカエル、弱小超人が我々強力超人に勝てるはずがないのだ! このボロ雑巾のできそこないめ! 」

「お前ッ! 」

「怒ったか、ただの人間が! お前などデザートにもならんだろうが……タッグマッチだ、ついでに殺してやろう!
 アシュラマンよ、リングを降りろ! 次は私がこいつと……アシュラマン? 」

スリングと化した背中の巨腕を元に戻し、スバルを挑発していたオメガマンがリング上の異変に気付いた。
阿修羅バスターを見事に決め、試合を制した筈のアシュラマンが仁王立ちで憮然とした表情を浮かべている。
怪訝とするオメガマンを見て、スバルもまたその異変に気付く。
コーナーに出た二人の視線は、アシュラマンの視線の先、倒れたガルルに自然と向かう。

「カエル超人・ガルルよ! 芝居は止めて、立ち上がるがいい! もうじきカウントは20を越すぞ! 」

「……流石に迂闊に近寄りはせんか、アシュラマン」

何事もなかったかのように、ガルルが下半身のバネだけで跳ね上がる。
パンパンと腰を掃い、埃を落とす動作をしてから、鋭い眼差しでアシュラマンを睨みつける。
大したダメージもなさそうな様子に驚き、ロープを潜って駆け寄るスバル。
突如復活したカエル超人を前に、オメガマンは動揺してアシュラマンを問い詰めた。

「な……一体どういうことだ、アシュラマン! 間違いなくお前の阿修羅バスターは成功したはず……。
 なぜこんなにピンピンしているのだ、このカエル超人は!? 」

「オメガマンよ、見ていただけではわからなかったろうが……ガルルは、確かに私の攻撃を全て受けた。
 にも関わらず、大したダメージも見受けられない理由は……これよ! 」

アシュラマンが、三対の腕を上げ、六つの掌をオメガマンとスバルに見せる。
開かれた掌は、粘液のような物でベトベトになっていた。ガルルの頭部を密着させていた首筋も同じように汚れている。
ガルルの脇に付き、アシュラマンに向き直ったスバルが、それを見て首を傾げる。



「なんだろう、あれ……」

「あれは私の体液だ」

「ああ、体液ですか……体液ぃ!? 」




事も無げに答えるガルルをまじまじと見つめ、スバルは気付いた。
ガルルの周囲に不快指数が渦を巻いていることに。
端的に言うとなんだかガルルの身体が湿っていることに。

「い、一体これは……」

「ケロン人は湿気を好む種族でな。当然その肉体も本来は湿っているというわけだ」

「フォフォフォーフォ、種が見えたぞ……その湿気を利用してアシュラマンの阿修羅バスターの威力を殺いだというわけか!
 あの矮躯ならば軽減した阿修羅バスターから抜けてダウンを装うことも容易い……」

「その通りだ、オメガマンよ! 最も普段の私ならばあの程度の湿気で極めや締めを緩めることはないがな。
 このジェネラル・パラストではどうも力が出ん……お前もそうではないのか? 」


無言で思い当たることがあるように小さく頷くオメガマン。
それを横目で見ながら、ガルルはぼそりとスバルにだけ聞こえる声を出した。
ガルルの腕を握って粘液を掬い取っていたスバルも、同じく小声で返す。

(連中は本調子ではないようだな)

(そ、そうみたいですね。でも、恐ろしい連中だってことは確かですよ)

(どんな高い戦力を持つ兵士でも、"違和感"だけは排除しきれないものだ。危機回避の必須スキルでもあるからな。
 特にそれが自分の戦力に直結する違和感であれば、必ず動き自体に淀みが生じる。十分に、討つチャンスはある)

「まあいい……オメガマンよ、リングに上がれ! 」

「フォフォフォ、了解だッ! 」

ロープを跨ぐ様に飛び越え、アシュラマンのサイドに立つオメガマン。
二人の超人が、それぞれ胸の前で腕を組んでスバルとガルルを威嚇する。
緊迫し、固まるリング上の空気。
スバルの手が懐に伸び、ガルルが格闘戦の構えを取り。
アシュラマンが余裕綽々で首と掌を拭い、オメガマンがゆっくりと背中の手を広げ。

一呼吸。

リング上の空気を爆ぜさせ、戦士達は四散してリングに舞う。






リング中央から最も長い距離を移動したのはオメガマンだった。
一気にロープ際まで後退し、Ω・メタモルフォーゼの標的を探す。
それを追い込むように、私は突撃する。
懐を探り、"それ"をいつでも取り出せるように準備しながら。

(遅い……! )

マッハキャリバーもなく、魔力ではなく自分の足で走らなくてはならない。
レイジングハートはなのはさんに合わせた砲撃戦仕様。
近接迫撃戦を旨とする私とは、フィーリングがあまり合わないのだ。
だが、オメガマンにあの技を使わせるわけには行かない。
Ω・メタモルフォーゼはオメガマンの戦力を増強するだけでなく、対象物を吸収して消滅させる効果も持つ。
仮にレイジングハートをキャプチャーされれば、中尉のスリング・ショットと同じ結果になるだろう。
そんなことになればなのはさんに合わす顔がない。
だから――――。


「フォーフォフォフォこいつはいい! あっちから標的が飛び込んで来たぜ! お前のその槍、もらったぁ! 」

「スバル二等陸士! 」

『No problem』

ガルル中尉の私を案じる言葉に答えるようにレイジングハートが発音した。
流石に歴戦のインテリジェント・デバイスだ。
何も言わなくても、私の挙動だけでこちらがやろうとしていることをわかってくれている。
オメガマンがメタモルフォーゼ光線を杖の形状をして私の左手に収まるレイジングハートに照射する。
同時に、私は懐に入れた右手を引き抜き、"それ"を放り投げた。

「もらったぞ! この至近距離からのΩメタモルフォーゼをかわせるはずが……何ィ!? 」

Ωメタモルフォーゼが捕らえたのはレイジングハートではなく。
私がオメガマンとレイジングハートの直射上に放り投げた、トウモロコシだった。
オメガマンは慌てて光線を消失させ、トウモロコシを手に取る。

「こ、こんなものに変身しても何の意味もない! もう一度……」

「レイジングハート、今ッ! 」

『Burst』

「ゲエーー、なんという加速! 」

レイジングハートが、魔力で私の移動速度を補助。
加速しながら私の握った右拳が、オメガマンの顔面に叩き込まれる。
メリケンサックと魔力で強化された一撃を喰らい、オメガマンは右脇のコーナーポストまで吹き飛ばされ、激突して停止。
ダウンこそしなかったが、クラクラと頭を振って動きを止めた。



「ウググ……いきなりメリケン・アタックとは……なんという残虐ファイト! スバルナカジマン、侮りがたし! 」

(スバルナカジマン……)


予想だにせぬ呼称にやや戸惑いながらも、私はオメガマンに向き直った。
恐ろしい頑丈さだ……魔力を込めた拳打を障壁もなしに受けたのに、戦闘に支障があるダメージを受けた様子もない。
なるほど、自分で"超人"などと言っていただけの事はある。
横目で中尉を見遣ると、アシュラマンと牽制し合いながらリング中央に留まっていた。
オメガマンがゆっくりとそちらに近づき、私も追従する。

「カーカカカ……先程のパチンコといい、貴様等は凶器攻撃が得意な超人のようだな」

「我々は超人などではない、軍人だ。武器を扱うのは至極当然。俺も二等陸士も、プロレスごっこに興じるつもりはない」

「言うではないか……だが、今の貴様は身一つ! 頼れる武器もなしに、この私に勝てるかな? 」

「……」

「そっちが凶器使用を辞さないってんなら、こっちにも考えがあるぜ! 」

オメガマンが、どこからともなく一丁の銃を取り出した。
直感で分かる、あれは私の仲間が使っていたものとは違う、恐らくは魔力を介さない兵器。
ガルル中尉も、僅かに身を強張らせた。
この狭いリングで、銃弾をかわし続けることは難しいだろう。
なんとかして、破壊するか奪い取るか……。

そこまで考えたところで、私の思考は――。
いや、恐らくは、その場にいた四人全員の思考が停止した。





ごごごごごごごごごごごごごごご。


リング中央、ガルル中尉とアシュラマンが睨み合う視線の交錯点が揺れている。
やがてその場に穴が開き、私達の口もあんぐり。


ごごごごごごごごごごごごごごごごごごご!


まず、なんといえばいいのだろうか……プラカードのようなモノが見えた。
競りあがってくるそれには、どうやら文字が書かれているようだ。


ごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごご!!




 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 | 僕は実況中トトロ!,|
 |_________|
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   i ヽ_,._,/ ,'   
    ゙ー---―'  


なにこれ。







数分後。
リング上はなんともいえない空気を形成していた。
臨戦態勢に入っていた四人はタッグ別にコーナー外まで離れ、突如出現した生物とコミュニュケーションを取っている。
オメガマンが問い掛ける。

「つまり、お前はこのリングのヌシ……レフェリーと言うわけか? 」


 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 |i  実況兼観客役でもあるよ!|
 |_____________|
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   i ヽ_,._,/ ,'   
    ゙ー---―'   


「リングの上で試合を逸した行為が行われそうになったので、取り仕切りに来たと……そういう事か? 」

中尉の言葉に頷く実況中トトロ。
暑さに対する体調の悪化を訴える愚痴と不満を延々こちらに聞かせてきた10分後の事である。
アシュラマンはその姿に何か思い当たる節があるような顔で、取り出した名簿を眺め回していた。

「お前は草壁らの手勢の者なのか? お前と参加者名簿にあった"トトロ"なる者には何か関係が……」

「え……ちょ、みんななんで普通に適応してるの」

ただ一人、困惑顔の私が中尉の詰問を遮る。
中尉が、アシュラマンが、オメガマンが、ほぼ同時に返す。


「何をいまさら:ガルル中尉さん(ケロン星:軍人:年齢不詳)」

「超人界にはよくあること:アシュラマンくん(魔界:悪魔超人:年齢不詳)」

「ノーコメント:オメガマンさん(オメガ・ケンタウルス星団:はぐれ超人:年齢不詳)」


「……」

しばし絶句していたが、中尉の言葉に一人納得する。
下手に触れるより、話を進めたほうが建設的だと踏んだのだ。



「つまり……レイジングハートとか、つかっちゃダメ。……って言いたいの? 」

 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 |  それはいい  ,|
 |_______|
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   i ヽ_,._,/ ,'   
    ゙ー---―'   


実況中トトロの言い分では、レイジングハートは武器にはカウントされないらしい。
たしかにインテリジェント・デバイスは魔法使いの力を引き出すのがメインで、武器としての殺傷力は低い。
彼はこの事を知っているのだろうか? 首輪がついていない事から、その情報源は草壁達の可能性が高いか?
そうだとすれば、中尉が思惟している、「主催者側の回し者」という説にも頷ける。
締め上げて情報を吐かせようとも思ったが、首輪がある以上、迂闊な行動は避けるべきだろう。
アシュラマンたちもその結論に至ったらしく、再び戦闘態勢を取る。
レフェリーの指示に従い、まずはアシュラマンがコーナーからリングに上がった。
同時に、どこからともなく聞こえるゴング。


「……試合、続行ってことね」

「そのようだな。二等陸士、お前は下がっていろ」

「え、でも……中尉にはもう武器も……」

「現状では俺よりお前の方が戦力的には上だ。温存するのは指揮官としての差配だ、文句は言わさん」

「カーカカカッ! ガルルよ、先程のようにはいかんぞ! もはや貴様の身体のサイズは把握済みよ! 」



 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 |  あーーーーーっと!! アシュラマン、態勢を低くして突撃だーーーーっ!!  ,|
 |_________________________________|
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   i ヽ_,._,/ ,'   
    ゙ー---―'   



問答無用で私を抑えてリングに上がる中尉に、アシュラマンが間髪いれずに襲い掛かる。
中尉の体を捕らえることに専念した、低い姿勢。
それでいてそのスピードに一切の蔭りは見えない、まさに獲物を狙う猛禽類の動き。
右足を前に出し、重心を移動させながらそれを迎え撃つ中尉。
だが贔屓目に見ても、二人の激突の結果にアシュラマンの勝ち以外の結末は想像できなかった。
武器も何も無しに、あんな怪物に押し勝てるはずが――――!

「そして私は貴様の身体の特性も見切っている! 組み技は効かずとも、これならどうかなーーーっ!」

アシュラマンが繰り出したのは、六本の腕からマシンガンのごとく発射される張り手。
拳による"点"のパンチならば、中尉の湿った体で滑らせて無効化できるかもしれない。
だがそれも一発や二発であればの話、今や無数の弾幕と化した"面"の張り手に襲い掛かられては一たまりも……!
次々と圧し掛かってくる焦燥と後悔。やはり、魔法である程度渡り合える自分が行くべきだったのでは?
アシュラマンの張り手の弾幕が、中尉に肉薄する。

「~~~~ッ! (ダメだッ! )」

激情のままリングに飛び込もうとして、なんとか踏みとどまる。
脳裏に浮かび、私の足を止めたのは なのはさんの教えと、中尉の言葉。

『この程度の状況判断もできんから色々と気付かないのだ』

そうだ、落ち着け!
中尉が何故先鋒を買って出たのか、それを考えろ。
きっと中尉は、少しでも私にアシュラマンの動きを見せておきたかったのだ、自分の身を危険に晒してでも。
そうだ、中尉は言っていたじゃないか。
「自分よりお前の方が戦力は上だ」と。
切り札として見てもらえた自分が、指揮官である中尉に逆らってどうする?
そんなことをすれば、かえって私達に敗北をもたらすことになる!
だから今は中尉とアシュラマンの戦いを見て、少しでも対策を……。

と。

今にも張り手の波に飲み込まれそうな中尉の表情を見て、私は凍りついた。
中尉は、笑っていた。
それは部下に後を任せて死んでいく上官の自虐的な笑みでも、恐怖の果ての笑みでもなく。
口の端だけを吊り上げ、目を全く笑わせていない、死地を越える自信自負を湛えた、戦士の笑み。

「カーカカカカカー! 武器持たぬ軍人よ、この私、『マットに咲いた悪の華』の添え花となって散るがよい! 」

「武器ならば、この身に焼きついている。血の滲む訓練と実戦で培った、軍人魂がな」

「……! 」



思わず息を呑むような、完璧な動きだった。
張り手の弾幕に自ら飛び込み、被弾すらも自らの歩法の"流れ"に組み込む。
アシュラマンが脇を潜り抜けられた、と気付いたのか顔を歪めた時には、既に背後に回りきっている。
そして、信じられないことだが――――次の瞬間、中尉は両手を伸縮させてアシュラマンの首に組み付いていた。

「ゲエエーーー! こ、この腕の伸びは一体……」

「ケロン人は宇宙種族の中ではそう体が伸びる部類でもないが……どうやら、貴様にチョークを掛けるには足りたらしいな」



 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 |  おおーーーーっと!! ガルルは腕が伸びる宇宙人だったーーーっ!!!   ,|
 |  アシュラマンこれは苦しい! ガルルは締め落とす気だーーーーっ!!!! |
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アシュラマンの太く逞しい首に絡みつき、腕の血管をいきり立たせて締め付ける。
中尉は私に頼るつもりなど毛頭なかった。
真正面からあのアシュラマンに立ち向かう覚悟と自信があったからこそ、先鋒を引き受けたのだ。

「流石です中尉! まさしくあの技こそトード・チョークスリーパーでござーい! 」

「グエー! 湿った腕が吸着するように首を締め付けてきやがる……たまらん! 」

「ギブアップしても外さんぞ。しばらく気を失っていてもらう」

なんとか技を返そうとするアシュラマンの六本の腕を巧みに避けながら、込める力を強める中尉。
アシュラマンの顔は見る見る赤くなっていき、決着が近づいているのを想起させた。
オメガマンが業を煮やしたように、ロープに半分足を掛けながら叫ぶ。

「ええい、何をしておるかアシュラマン! どうやら俺が助太刀せねばならねえようだなーっ! 」

「させるかっ! 」

「ク……カカカカカカカ……」

リング上に飛び込んだオメガマンを止める為にロープを潜った私の耳に、アシュラマンの笑い声が届く。
見ると、アシュラマンの顔は真っ赤っ赤、鬼のような形相を浮かべている。



「オメガマンよ、あまりわたしを安く見るな! 阿修羅面・怒りーーーっ! 竜巻地獄! 」

「ぬおっと! 」

「きゃあっ! 」

アシュラマンが首を絞められたまま全身を回転させ、竜巻を発生させた。
私と中尉をリング上に引っ張りだしたあの技だ!
オメガマンと私はそれぞれ突風に吹き飛ばされないように、ロープを掴んでキャンパスに踏みとどまる。
アシュラマンの奴、さては竜巻で中尉を吹き飛ばしてトード・チョークを外すつもりか?

「ぐ……離さんぞ、アシュラマン! 体液で貴様の首に浸み付いた俺の腕、この程度では外れん! 」

「ではその体液が全て蒸発してしまってはどうかな? 」

「何!? 」

「言ったはずだ、貴様の体の特性は全て見切っているとーーーーっ!」


アシュラマンを中心として発生している渦巻きは、既にリング外にまで広がっていた。
リングを包囲する炎の壁が揺れ、竜巻地獄に巻き上げられる。
次の瞬間、リング外からキャンパス上に雨の,、あるいは槍の様に炎が飛び込んできた。
あちこちで炎が燻り、リング内の温度を急激に上げていく。
そして、炎は這いずる蛇のようにリング中央へ。


 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 |  ああーーっと!! アシュラマンの竜巻地獄でリングが火の海にーーっ!!!,|
 |  ファイヤー・デスマッチの様相を呈するリング上ーーーーーーー っ!!!!, |
 |_________________________________|
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「ゲホゲホ! ア、アシュラマンの奴……俺まで巻き込むような技を使いやがって……。
 さっきのトウモロコシもすっかり焼き上がってやがる……」

「……そ、そうだ! 炎が巻きこまれた中心点にいた二人は……!? 」



喉を焼くような熱気に耐えながらも、私は片目を開ける。
リングの向こう側で呑気に焼きトウモロコシを頬張るオメガマンから一瞬で意識を外し、リング中央へ。
捉えた。
もはや爆発とも言っていいほどに一際高く渦上がった炎の柱の中から、小さな影が飛び出すのを。
その影はこちらに転がって、しっかりと二本の足で止まる。

「……」

「ガ……ガルル中尉、ですよね? 」

「抜かった……! 」


シリアスな表情で、中尉が吐き捨てる。
その右腕は炭化に近いほどに焼け焦げていて、比較的症状が薄い左腕で支えている。
あの瑞々とした体は見る影もなくこんがりと炎に焼かれて、乾ききっていた。
ただ一点水分を残しているのは両眼。
これほどのダメージを受けてなお、そこだけは軍人の威厳を残し。
頭部はアフロ。


「ちゅ……中尉! 手当てをしなきゃ……!」

「そんな場合ではない。見ろ、奴が出てくるぞ」


炎の柱を掻き分けるように、再び影が熱のカーテンに浮かび上がった。
中尉より遥かに大きな体躯、言うまでもなくアシュラマンだ。
炎を飛び越え、空中で三回半回転。
カーカカカと笑い声を上げながら、オメガマンの側に着地した。

「どうだガルルよ、そのザマではもう私の技から逃れることも、有効ダメージを与えることも出来まい! 」

「そのようだな、カエル超人! スバルナカジマン共々、潔く我々の軍門に下るがよいわーーっ! フォーフォフォフォー! 」



 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 |   おおーーーーっと!!!アシュラマンは健在だーーーーーーっ!!!!!!!!!      ,|
 |  恐るべしは悪魔超人の鍛え抜かれた肉体!!このまま決着してしまうのかーーーーっ!!!,|
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実況の言う通り、アシュラマンの屈強な肉体には軽度の火傷しか見受けられなかった。
あれだけの劫火を受けて――恐らくは中尉を盾にしたのだろうが――ピンピンしているとは。
驚愕に震える足に気合を入れ、レイジングハートを構える。
中尉がこれほどのダメージを受けた以上、私が戦うしかないだろう。
タッチ……するんだったか、交代する時は。
手を伸ばそうとして、実況中トトロにその手をはたかれた。


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 |   タッチはリングの外から!   ,|
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そういえば、自分は今リングの中に入ってしまっていた。
それはオメガマンも同じことだ。私と同じようにレフェリーに注意されている。
一旦リングの外に出ようとするオメガマンをアシュラマンが引きとめ、不気味に笑った。

「カーカカカー! せっかくのタッグマッチよ、ガルル、小娘、いっちょ2VS2と行こうではないかーー! 」

「……この炎に巻かれたリング上では、先ほどの人間砲弾は使えんぞ 」

「心配御無用! オメガマンよ、耳を貸せ」

「む……ふむふむ、フォフォフォフォ! 面白い! その技の名前はだな……」

「また何かやる気……? 」




今度はこちらも準備が出来ている。
レイジングハートの補助で自分と中尉を守るように障壁を展開させ、連中のコンビネーション技に警戒。
最も、あのΩ火玉なんとかのような技の前では、この障壁は脆い物だろう。
狙うのは防御ではなく、相手の攻撃を阻害してのカウンター。
相手の身体に触れられさえすれば……いや、"あれ"はダメだ。
殺傷力が高すぎる。私の目的はあくまで試合に勝ってアシュラマン達を更正させること。
中尉をこんな目に合わせたことに対して憤りを感じていないとまでは言わないが、それを忘れては本末転倒だ。


「フォーフォフォフォー! まったくアシュラマン、お前は頭脳明晰な男よ!
 最初の私の登場シーンだけで私のフィニッシュ・ホールドを推測し、ずばり当ててしまうとはな。
 だがこのタッグ技は強力すぎる……一撃で仕留めてしまっては試合が盛り上がらんな! 」

「やむを得まい……悪魔超人の私とはぐれ者ながらも私と同じく強豪で複手超人のお前の合体技なのだからな。
 その点 奴等を見ろ、体格も種族も、そして性別すら違う! そんな連中に真のタッグ・ファイトが出来るものか!」

「ヒエー……お、おっかない……」

「怯むな、二等陸士。確かに俺とお前は所属も兵種も生まれた星も違う……だが」


中尉が、満身創痍を推して構えを取る。
こちらに向いたその目を見て、私は継がれるであろう言葉を読み取った。
こちらが真意を理解したのを察してか、言葉を切る中尉。

「何をゴチャゴチャ言ってやがるー! 行くぜアシュラマン! 」

「応よ! 地獄のコンビネーション・Ωぁー! トルネード・カタストロフィ! 」

「前倒しだぜぇっ!!! 」



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 |   あーーーーーっと!!!アシュラマンの竜巻地獄ーーーーーっ!!!!!!!!!      ,|
 | しかしこれはどうしたことかーーーーっ!!! 仲間であるオメガマンを上空に飛ばしたーー! ,|
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アシュラマンの六本の腕から繰り出された竜巻が、オメガマンを宙高く舞い上げる。
一体何のつもりだ? 警戒を深め、一歩下がろうとした瞬間に、二本目の竜巻が発生した。
二本目は真っ直ぐに私の元に向かい、オメガマンがいる上空に誘おうと激しくうねる。
空中戦に持ち込もうという腹か。
障壁でなんとか竜巻を防ぎ、足をキャンパス上に踏ん張った。

「わわわっ! 思惑通りになって……たまるか! 」

「ええい、大人しくかかれっ! ガルルはもういつでも仕留められる……。
 貴様の息の根を止めれば決着同然なのだからなー! 」

「わーっ! 」

竜巻は障壁をすり抜けるように四方八方から襲来、私は抵抗も虚しく竜巻に呑まれて宙空に浚われる。
だが、空中での戦闘ならば、こちらにも利はあるはずだ。
半回転して、先に空中に行ったオメガマンに向き合った。
オメガマンは自分より高く飛んでいて、巻き上げられた私を見て急降下してくる。
やはり、近接戦を挑む気か。
ならば勝機も――――。



「   Ω  修  羅  カ  タ  ス  ド  ロ  ッ  プ  !   」


「ゲエー! せ、背中の手が開いて……」





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 |  おおーーっと!! スバルの全身を包み込む巨大指ーーーっ!!!!!! ,|
 | 瞬く間に見えなくなるスバルの姿ーっ!!!, 一体何が起こっているのかー! |
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一瞬で視界が闇に閉ざされた。
態勢はキャンパスに頭を向ける逆さ。
オメガマンの股を通り過ぎ、闇が消えてキャンパスが見えた。
更に、四肢をオメガマンの脇と腕にホールドされる。
両腕をキー・ロックで封じ込まれ、身動き一つ取れない。



「フォーフォフォフォー、このまま貴様の脳天を叩き潰して……む? この感触……キ、貴様はロボット超人!? 」

「ぐ……外れない……! 」

「通りで先程のパンチは効いたと思ったぞ! 亡霊にして私の力としてくれるわー! 」


落下していく感覚、迫るキャンパス。
なすがままにしていては、間違いなく死ぬ。
腕も足も完全に押さえ込まれ、パンチもキックも打てない。
それでも、なんとか脱出しなくては。
キャンパスの上に視線を巡らす。

中尉と目が合った。

「………… 」

「ケッ、何をブツブツ呟いてやがる! 念仏でも唱えながら死ねーーっ! 」


上空からロープを越え、キャンパスに頭を叩きつけられる一瞬の間。
そこで、私は叫んだ。

「ウイング……ローードッ!! 」

「!? おおおおっーーー! バカなー! 俺のフェイバリット・ホールドがー! 」

「あ……あの光の帯はーーーッ!? 」




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 |  おおーっと!! スバル、アシュラマンのお株を奪うクモの巣ネット戦法ー!!,|
 | トルネードカタストロフィ・Ω修羅カタスドロップ敗れたりーーー!!!!!!  ,|
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アシュラマンの驚愕の叫びがリング上に響く。
紡がれた魔法によって形成された幾本もの光の道がロープを伝って走り、私のキャンパスへの激突を防いでいた。
網のように形成されたウイングロードに頭からぶつかるが、そこは私の魔法。大してダメージはない。
一方オメガマンは、技を破られたショックで私の四肢を離してしまう。
すかさず、リングを駆けながら中尉が叫んだ!

「二等陸士! 」

「はいっ! ど……おりゃっ!」

「ウギャーー!!! 」

手を光の道につけ、逆さの態勢のままオメガマンの顎に両足で突き上げるように蹴りを入れる。
浮かんだオメガマンの顔面に向かうようにウイングロードを展開。
その一端は、中尉の駆ける先へ。
中尉はボロボロの身体を信じられないようなスピードで駆り、一気に空中を走りきる。

「タッグ・パートナーを忘れてもらっては困るな、アシュラマン」

「しまった! この私としたことがガルルに注意を払うのを怠るとは! 」

「ま……待てー、カエル超人! 貴様の相棒がロボットだということを知っているのかー! 」

「だからどうした……何者であろうと、二等陸士は俺と同じ……」

動揺を誘おうとしたオメガマンの言葉も一蹴し、中尉は右足を突き出す。
飛び蹴りである。オメガマンの顔面を正確に捉え、キャンパスまで吹き飛ばした。
ワンバウンドして、倒れ伏すオメガマン。

「……一、兵卒だ。そうだろう、スバル二等陸士? 」

「……はい! 」

ウイングロードの上で、がしっ! と敬礼する私にフッ……と笑いかけ、すぐに表情を引き締める中尉。
アシュラマンを見遣ると、オメガマンを蹴り飛ばして立たせようとしていた。

「グムム……このわたしのカタストロフドロップが破られるとは……」

「ええいしゃきっとせんかー! まだ試合は終わっておらんぞー! 」

「降りるぞ、二等陸士」

「分かりました! 」




中尉の言葉に頷き、ウイングロードを解除。
アシュラマンたちの前に降り立ち、揃って構えを取る。


「お、おのれ……一体何故、貴様等は何も言わずにあんな連係プレーがとれたのだーっ」

「軍人のアイ・コンタクトを舐めてもらっては困る。さあ、終わりにするぞ、プロレス家」

「舐めるなーーっ! オメガマン! さっさと立て! 今度は私が阿修羅バスターで奴等を潰す! その手助けをするのだ! 」

「グオオ……わ、わかったぜ、アシュラマン! 」



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 |  ああーーっと!! Ω悪魔チームに漲るエネルギーーーーっ!!!!!! ,|
 |  いよいよ決着の時かーーーっ!! 最後に立っているのはどっちだー!!!|
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燃えてあちこちが崩れ始め、不規則に揺れるリング。
既にロープも激しい試合と炎によってあちこち断たれていた。
アシュラマンたちの纏うオーラが変質し、ピリピリとそのリング上を席巻する。
次で勝負を決めるつもりか……?
恐らく決め手に選ばれるのはあの阿修羅バスターだろう。
さらにオメガマンとの合体技に昇華すると考えれば、生半可な返し技では防げまい。
こちらの決め手に選ぶべきは……。




『Let's shoot it,Divine Buster.(ディバインバスターでしょう)』

「ディバインバスターは……確かに私の最高の攻撃だけど……撃てる? 」

「I can be shot.(もちろんです)」

「私のとなのはさんのは"型"と"式"が違うけど、大丈夫? 」

「depending on you(貴方次第です)」

「My fine-tuning ends,Clear to go.(私の微調整は済んでいます。いけます)」

「さっすが、優秀ね……OK! 中尉、無理はせずに休んでいて……」

「援護程度ならば、問題はない。王手はお前に任せよう」

中尉は一歩前に出て、鬼気迫る様相のアシュラマンたちを牽制する。
アシュラマンが耳聡く私とレイジングハートの会話を聞きつけ、不敵に笑った。

「カーカカカ! ディバインバスターだと? どうやら貴様もバスター使いのようだな! このリングも間もなく焼け落ちる!
 どうかなここは一つ、お互いのバスターで決着をつけるというのは? 名づけて、炎上バスター合戦! 」

「炎上……」

「バスター合戦……だと……? フォーフォフォフォ! 面白い! バスター同士ならば、
 破壊力、技のかけやすさから考えると、相手の上を制した方が圧倒的に有利ということになる! 」

「俺は二等陸士を、オメガマンはアシュラマンをアシストし、より高い位置にパートナーを運んだ方が勝つということか」

アシュラマンが頷き、六本の腕を掲げる。
緊迫。
リングがいっそう激しく揺れ、実況中トトロが転ぶ。
私の頬を一筋の汗が伝う。
ゴクリ、と誰かの喉がなる音。
炎の立てる激しい音に紛れて朝風。
極限まで研ぎ澄まされ、鋭敏化した五感。
燃え盛る炎。焼けた皮の臭い。吸い込んだ煙。軋むリングの音。熱く、重い空気。

それらが一瞬、掻き消えたかのように静まった瞬間!

炎上バスター合戦の、狼煙が上がる――――。




後編へ








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