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根深き種の溝を越えて (後編)◆2XEqsKa.CM





「ケエーー!! Ωメタモルフォーゼ! 」

オメガマンが、目から怪光線を出し、焼けて内装を露出したキャンパスに照射する。
その先にあるのは無数のスプリング。
超人同士の激しい戦闘に耐える為に設置されたバネを取り込み、オメガマンの姿が変質していく。

「スプリング・オメガーー!! アシュラマンよ、私の肩に乗るのだーーーー! 」

「おおっ! この反動力ならば、奴等も到底追いつけまい」

オメガマンの肩に出現したスプリング。
アシュラマンがそれに飛び乗り、一気に踏み込む。
強力な反動で飛び、リングの遥か上方まで到達。
スバルたちを迎え撃つ為、半回転して阿修羅バスターへの"入り"の構えに。

「こちらも行くぞ、二等陸士! 」

「ウイングロードッ! 」

対するスバル/ガルルは光の道を形成させ、跳躍ではなく滑走によって空に駆け上る。
光の道は螺旋階段のようにアシュラマンへ、そしてやがてアシュラマンよりも上空まで形成されていく。
スバルたちからアシュラマンまでの高度が10mを切る。
小脇にガルルを抱きかかえ、疾走するスバルに、アシュラマンが声をかける。

「カーッカッカッカーーー!! その術への対策は既に出来ておるわーー! 」

「二度も同じ手が通じるものかー! Ωメタモルフォーゼ! 」

「くっ! やっぱりそう来るかっ! 」



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 |  ああーーっと!! ウイングロードが消失し、スバル・ガルル両選手、足場をなくしてしまったーーー! |
 |  このまま空中で阿修羅バスターの餌食になってしまうのかーーーーーー!!!!!!!!!!! ! |
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オメガマンが放ったΩメタモルフォーゼが、ウイングロードを消失させる。
スバルたちは、自由落下で真っ逆さまに落ちていく。
魔力の固まりであるウイングロードを吸収し、初めての感覚に戸惑うオメガマン。

「ゲエーッ! なんだこの違和感はーー! 気持ち悪いーーーー!! 」

「オメガマンよ、よくやってくれた! そのまま奴等の空戦手段を奪っていてくれい!
 さーて、いよいよ貴様等も終わりだぜー! 目標はスバル、お前だーー! 」

アシュラマンは自分の10m程下にいるスバルたちに突撃した。
加速し、加速し、加速し――――半分ほどの距離を落ちた時だった。
アシュラマンが気付く。スバルとガルルが、してやったりというような顔でこちらを見ているのを。

「何故笑っているのだ!? もはやお前達に空中で私を迎撃する術はないのだぞーー! 」

「フン……俺達が何度オメガマンの吸収光線を見たと思っているのだ? 」

「ハッ! 」

「ウイングロードを消されることくらい、想定してないと思った!? 」

「ま……まさか貴様等! それを計算づくでーー!? だが一体どうするというのだ!
 この態勢と位置関係からでは私の六本の腕から逃れることはできんぞ! 」

「今見せてやろう……スバル二等陸士! 俺を踏み台にしろ! 」

「了解です! 」

迫るアシュラマンに背を向けるように、スバルが空中で旋回。
                        ジャンプ
アフロ化したガルルの頭に乗り、全力で跳躍。
柔軟で強靭なアフロ毛の反動で、飛び魚のように、跳ね馬のように。
私は見事、アシュラマンの数m上まで浮上した。



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 |  おおーーっと!! スバル選手、ガルル選手を踏み台にして友情のジャンプーーー!!!!!! ,|
 |  アシュラマン、完全に上をとられたーーーー!! 果たして対応できるのかーーー!!!!!!! ,|
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「ゲ……ゲエーーー!! そ、そんな馬鹿なーーー!!! 」

「もらった! いけるよね、レイジングハート! 」

「All right.」

「だ、だが私の六本の腕を掻い潜り、ディバインバスターとやらを決められるかなーー!? 」

「一撃必倒ッ!ディバイン……バスタァァァァァーーーー!!!!! 」

魔方陣が、空中に描かれる。
スバルの拳が握られた先に、魔力球が出現。
それを殴りこむかのように突き出される右腕。
次の瞬間、魔力球が弾け――――。

アシュラマンを、魔力の光が飲み込んだ。

光の奔流と共に下方へ吹き飛ばされたアシュラマンが、キャンパス上で固唾を飲んで見守っていたオメガマンに直撃。
光渦、ディバインバスターはそのままリングを貫き、ボロボロになっていたリングの完全崩壊を終了させた。

後に残るは、勝者のみ。
崩壊したリングのコーナー・ポストに着地したスバル・ナカジマは、高らかに右手を突き上げる。
そして、先にキャンパスに転落していたガルルを抱き起こし、アシュラマンが落ちていったリングの下へ視線を伸ばす。

「……行かなきゃ、ね」









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 |,    20!     |
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目を開けた私の視界に真っ先に飛び込んできたのは、あの忌々しい巨獣超人の眷属だった。
一瞬混乱し、攻撃を仕掛けようとするが、即座に記憶が蘇る。
そうだ……私、悪魔超人アシュラマンは、つい先程までリング上で試合をしていたはず。
この中トトロはその試合のレフェリーだったか。
周囲を見渡すと、瓦礫やスプリングの残骸、燻るように燃え続ける炎。リングは影も形もない。
自分が背をもたれるようにしている瓦礫の山に目をやり、自分の足場に目をやる。
そこは白いキャンパスではなく、黒く焼けた地面だった。

「場外……? 」

リング・アウトしてしまったのか……待てよ、ならばこのレフェリーが私の前でフラフラ掲げているこの"20"の意味は……。

「我々の勝利だ、アシュラマン」

「ガルル! スバル・ナカジマ……! 」

「20カウントは終わりました。……あなたの、負けです! 」


負け。敗北。
つい最近キン肉マンに負け、このジェネラル・パラストでは超人ですらない小僧と巨獣を取り逃がし、
今また、しかも今回はリングの上で負けたというのか、この私が。
ふざけるな。こんな結果は認め……ダメだ、足が動かん。
どんな技だったのかは思い出せないが、ディバイン・バスター……恐ろしい技だったようだ。

「約束は忘れていないだろうな? 」

「……」

「『もう殺し合いはしない』って誓って! ……貴方は、確かにこの言葉に頷いたはずよ」

「フン……悪魔に向かって、何に誓えというのだ……」




予想だにせぬ敗北。
一超人として、誇り高き悪魔として、リング上での誓いを破ることは許されない。
だが……超人にとって殺し合いを禁じられるというのは、試合を禁じられるということに等しい。
受け入れがたい現実の前に、私は打ちひしがれていた。

「どうした? 約束を違えるつもりか? なんでもやる……確かそんな事も言っていたな」

「……殺せ。殺し合いを禁じられれば、どの道私はもう戦えん。その誓いを守るためには、私は死ぬしかない!
 私から戦いを奪うというのなら、まず命を奪ってみせろ! 悪魔は殺し合いと憎しみ、それしかしか知らぬのだからな! 」

「え? ちょ、ちょっと……私達と一緒に、このゲームを止める力になってくれればいいんです!
 それが無理なら、せめてゲームが止まるまで大人しくしてくれていれば……命を取るつもりはないわ! 」

                            デッドオアアライブ
「カーカカカ……寝ぼけるな……戦いとは常に『生か死か』よ! 悪魔の私に善行を積ませるのは、死をも超える恥辱!
 そんな中途半端な甘ちゃんの馴れ合いは、キン肉マンやウォーズマンとでもやるがいいわ、スバル・ナカジマ! 」

「常世戦場……必死の覚悟か。お前もまた、リングに生きる兵士なのだな……どうする、二等陸士? 」

「どうする……って……」

「この男は約束こそ破らなかった。が、自分の信念を曲げるつもりも毛等ないようだ。プライドの高さが予想以上だったな。
 ここに捨ておけば、いずれは誰かに殺されて死ぬだろう。ならば、ここで一思いに殺してやるべきではないのか?」


アフロ・ヘアーを止め、右腕に包帯を巻いたガルルの言葉に、眉を落ち込ませるスバル。
ふん、馬鹿な奴だ。どうやら本気でこの私を自分の思い通りに出来ると考えていたらしい。
確かに何でもする、とは言ったが、それはプライドがあるからこその話だ。
悪魔としての生き方を捨て、連中の犬になる屈辱に耐えられるような安い自尊心は持ち合わせていない。
いずれ来るであろう結殺の一撃を待ち、静かに目を閉じる。


「二等陸士! 答えろ、お前の信念を! 」

「私は……私は、それでも貴方を殺さない! 」

「な……」




なんだ、こいつは?
ここまで否定され、突き放され。
仲間を傷つけた私に、何故こんな表情を向けられる?
優越感――自己陶酔――打算――自分が知る、どの表情にもカテゴリできない。
何故か、腹立たしさがこの身を支配する。
――何故か? 何を感じている、この怒りは悪魔として当然の物ではないか。


「そんなにも、私を貴様の犬に貶めたいか、スバル・ナカジマ……! 」

「違う! 貴方にだって、本当は人を信じて、人と笑って、人を愛せる心がある! 」

「ない! 私は悪魔だ! 他人は憎むもの! 他人は恨むもの! 他人は……」

「……本当に人を信じられる心がないなら、あんな凄いタッグマッチが出来るわけないよ。
 あの試合を通じて、私はそう感じた! この気持ちは、絶対に間違いなんかじゃない! 」

「……だ、黙れ……」

「だから、私達と一緒に行こう? そうすれば、貴方もきっと……」

「黙れーーーーーーっ!!! 惑わすな! 友情など……信頼など……オレはいらない! 」

こいつの言葉は、悪魔としての私を壊そうとする甘言だ。
敗北したプライドを更に粉砕し、正義超人に堕落させようとする謀策。
信じてなるものか、他人を、敵を、スバル・ナカジマを。
ふらつく足を無理矢理に立たせ、その場を離れようとする。
ガルルが素早く私の行く手に立ちはだかり、それを邪魔した。

「……勝者の言葉から逃げるな。最後まで、聞いてやれ」

「どけ……最初の約束通り、もう殺し合いには参加しない……それでいいんだろう」

「じゃあ、どこに行くの? 」

「……悪魔将軍の、下へ……」



一度は見限ったとはいえ、やはり悪魔将軍は我が将。
このジェネラル・パラストにおられると言う事は、完璧超人と正義超人を打ち倒す為、御復活なされたのだろう。
この惨めな、壊れた、罪悪である正義に心を傾けられている悪魔を。
アシュラマンを断罪し、悪魔界へ貢献する一欠けらの宝石にしてくれるのは、あの方しかいない。
あのお方に、再びこの身を委ねよう。
それが無惨にも敗北し、心をも支配されようとしている、私の似合いの末路だ。
どこにおられるかはわからないが、かならず探し出してみせる。
それまで……たとえ、キン肉マンが相手でも、戦うことはすまい。
悪魔のプライドに賭けて、『殺し合いをしない』という誓いは守ってみせる。
だが、こいつらの思い通りにはならない。それだけが、腑抜けた私に出来る、悪魔としての唯一の悪意だ。

「……じゃあ、私達も付いていく! その人は、あなたの大事な人なんでしょう? 」

「は……?」

「だって、この状況で貴方が会いたいと願うってことは、大なり小なりその人を信頼してるってことじゃない!
 その人と話せば、貴方にも本当は心があるって、証明できる! いや、してみせる! まさか、イヤとは言わないよね? 」

「フ……それでこそ、だ。二等陸士」


青臭い、屈託のない笑顔で、スバルは言い切った。
それに呆れるような、それでいて優しげな笑みをこぼすガルル。
ワケがわからない。なんだというのだ、こいつ等は?
悪魔将軍が私の大事な人だと?
勘違いするな、あの方はただの悪魔としての上官、それだけなんだからね!
……混乱する。
いつの間にか、こいつらが形成するゆるい空気も、悪くない……そんな風に思ってしまっている。
これも、悪魔を凋落させる手か?

「じゃあ、行きましょう! 中尉、歩けますか? 」

「問題ない。シャワーを浴びたい気分ではあるがな。……どうした、行くぞ、アシュラマン」

「……勝手にしろ」

再び座り込み、脱力する。
好きにすればいい。
私についてきて将軍に殺されようが、どうなろうが、こいつ等の勝手……いや、運命だ。
それに、こいつ等としばらく歩くのも、悪くは――――。








「いけないなぁ……悪魔が馴れ合いを覚えちゃあ」



ドブリ、と。
私の胸を、一本の指が貫いた。



背後の瓦礫が崩れる音。
がらり。
がらり、がらり。

巨大な指。超人の指。ぐるり、と私の臓腑をかき回し、更に押し込んでくる。
一瞬飛んだ意識が、銃声で覚醒する。
アサルト・ライフルの銃声。
あれは……私のディバッグの中に仕舞いこみ、オメガマンに渡したはずだ。
待てよ? オメガマンは試合中、確か、あの銃を――――。
つまり、この指の主は――――。


「そうだろう……? アシュラマン。 フォーフォフォフォフォフォ!!!!! 」

「オ……メ……」

「――――尉! ちゅ――――」


耳元で鳴り響く、オメガマンの笑い声。
彼岸の彼方から聞こえるような、スバルの叫び。
霞む目をそちらにやると、ガルルが頭と腹に弾丸を受け、倒れていた。


「アシュラマン……危ないところだったなぁ? 安心して死ぬがいい。戦えない超人なんて、生きていたってしょうがない!
 フォーフォフォフォフォ! フォーフォフォフォフォフォフォフォフォッフォフォーーーー!!!!!! 」


勝ち鬨のような声を上げるオメガマン。
指が引き抜かれ、私は地面に倒れ伏した。





「中尉! 中尉ッ! 」

「頭に銃弾を喰らって生きていると、本気でそう思っているのか? スバルナカジマン? 」


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 |,  もう試合終わってますよ!! |
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「黙れぇぇぇぇ!!!!!」

チョコチョコと足元によってきてプラカードをヒラヒラさせる実況中トトロを全力で蹴り飛ばすオメガマン。
実況中トトロは軽々と吹き飛ばされ、近くの森の中へと消えていった。

「ここはバトル・ロワイアル。どこにいようと、どんな状況であろうと、死合中だ」

オメガマンが、銃の弾を再装填させ、スバルにゆっくりと歩み寄っていく。
動かなくなったガルルを必死で揺さぶるスバルが、キッとオメガマンを睨みつける。

「なんで……アシュラマンまで……!」

「あんまり惨めで、見ていられなくなったんだよ。悪魔が飼い慣らされる姿なんて、怖気が走るではないか。
 ま……本音を言うとな、利用価値がなくなったのさ。そいつは混乱していた。自分の本当の姿を忘れる一歩手前だ」

「本当の……姿? 」

「何度もそいつ自身が言っていただろう? 悪魔、だよ」

「違う……その人は、きっと……」

「フォーフォフォフォ! 変わってもらっては困るんだよーーー! 悪魔は悪魔でなきゃあ!
 たかだか1000万パワーの超人とはいえ、火事場のクソ力を持つキン肉マンと組まれでもすれば脅威になる! 」

オメガマンの利己的で凶悪な笑い声に、スバルが憤る。拳を握り締め、わなわなと体躯を震わせる。
その憤りは、手元のレイジングハートにも伝わった。

『No cause for panic.(落ち着いてください)』

「じゃあ! お前は! 自分の都合の為だけに、変わろうとしてるアシュラマンを殺したのか!? 」

「そうだが? だったらどうだというのだ? 」

「悪魔は……お前の方だっ!! 」

レイジングハートの言葉を無視して本体を放り投げ、スバルの眼が変色する。
それは金色。スバルの全身が魔力を放棄し、それとは違う何らかの動力に支配される。
"戦闘機人モード"。そう呼ばれる状態にシフトしたスバルが、右拳を引き、オメガマンに突撃する。

「悪魔……? バカめ! この私こそ、すべての超人の上に立つ存在――――! 完璧超人の一角なのだーーー!!」



銃を構え、勝ち誇るように叫んだオメガマンの嘲笑が―― 一瞬で凍りついた。
引き金を引くよりも早く、10mほど離れていたスバルが一瞬で目の前に移動し、銃を握り潰していた。
銃は『握り潰される』などという生半可な表現では言い表せないほどに、凄まじい勢いで粉砕されていく。

「ゲエーー! 貴様、その力はいった……」

「IS発動。 『振動破砕』」

オメガマンのどてっぱらに、スバルの拳がねじ込まれる。
銃に起こった様な凶悪な破壊が、オメガマンの肉体に起こり、弾け飛ぶようにその身を吹き飛ばした。
足元に倒れていたアシュラマンもろとも、スバル達の会話を盗み聞きしていた瓦礫の奥にうずもれる。
墓標のように崩れ落ちたリングの残骸をしばらく見つめていたスバルが、ハッと我に帰った。
レイジングハートを拾い上げ、ガルルの元に駆け寄る。

「レイジングハート……ごめん」

「No problem」

「ガルル中尉は……まだ、脈はある! 助けなきゃ……でも、ここじゃ……」

手当て道具を探すため、ガルルを背負ってその場を離れようとするスバル。
一瞬立ち止まり、アシュラマンとオメガマンが消えた瓦礫の山に口惜しそうな視線を飛ばし――――。

「……」

涙を堪えて、走り出した。




数分後。
ごとり、と瓦礫が崩れ、巨大な影が姿を現す。




「……流石はロボット超人、か」


その影はオメガマン。
先刻の試合中に取り込んだウイングロードのお陰で、ダメージは最小限に抑えられていた。
振動破砕を受ける瞬間、ウイングロードで全身を包み、致命傷を逃れていたのだ。
代償として消えてなくなったウイングロードの魔力の残滓を振り払いながら、オメガマンは瓦礫の山を降りる。
スバルを殺すために。完璧超人として、完全に復活する為に。
そこで、もう一つ、その場に影が残っていることに気付く。


「死にぞこないが……」

「カーカカカ……」

アシュラマンが、瓦礫の山を跨ぐように、立ち塞がっていた。
オメガマンは嘲るような微笑を浮かべ、アシュラマンを揶揄する。

「仲間を裏切っての不意打ちを恨んでいるのか? 悪魔ともあろうものが……」

「そんなことはないぜ、オメガマン。甘くなりかけていたオレの隙を突いた攻撃、至極当然の事だ」

「ならば、どけ。それともなんだ、連中を守る為に、私の前に立ち塞がっているのか? 」

「違うな……完璧超人ッ! 」



アシュラマンの言葉に、ピクリとオメガマンが反応する。
アシュラマンが、不敵に笑い。
六本の腕を構え、満身創痍、としか言いようのない身体で。
悪魔勢力の為に、完璧超人の前に、立ち塞がる。




「アシュラマン……お前の超人強度は1000万パワー。そうだな? 」

「いかにも」

「俺の超人強度を教えてやろうか? お前に比すこと約九倍……8600万パワーだ」


その数字に、アシュラマンが僅かに腕を下げる。
だが次の瞬間には立ち直り、気を吐いていた。

「顔の数は私が三倍……」

「……」

「腕の数は私が二倍……ここまでで既に6倍、6000万パワー! 」

「下らんぞ! フォーフォフォフォ! 下らんことを言うじゃないか、アシュラマン! 」

「そして、魔界のクソ力で二倍ーーーっ!!!! 」

「ほう……」

「オレが悪魔である限り、常に一億二千万パワーの心意気よ! オメガマン! 悪魔超人の軍門に貴様を下してやる! 」

「下らんと言ったぞーーーーっ!! アシュラマンッ!! 」


強烈な気合と、熱気。
アシュラマンは、まさしく命を燃やしていた。
オメガマンもそれを踏みにじるべく、殺意の炎を燃やす。
燃えるものが既になくなったファイヤー・リングの残骸の上で。
二人の超人だけは、どうしようもなく燃えている。









最初に動いたのは、アシュラマンだった。






森の風景が、矢のように後ろに走っていく。

私は走っていた。
いつものように、走り続けていた。

「中尉……必ず、助けますから……! 」

「……」

中尉が、ボソリ、と呟いた気がした。
私の不手際を責めているのだろうか? ……そうに違いない。
アシュラマンと和解できるチャンスに油断した結果、この最悪の事態に。
理想を貫いた結果がこれだ。情けない。
私は――――自分の理想の膨大さを、ひしひしと感じていた。
そして、それに対する、自分の弱さをも。

「ごめんなさい……中尉、ごめんなさい……! 」

涙がこぼれる。
友達に、仲間になれるはずだったアシュラマンを死なせ、今また信頼できる中尉をも失おうとしている。
いくらオメガマンのような強敵を退けられても、守りたい人たちを死なせてしまっては、私の力には何の意味もないのだ。
過酷な現実の前に、私の心は折れかけていた。
本当に、この理想は実現可能なのか――?

そんな不安を象徴するかのように、私は転ぶ。
出っ張った木の根に躓いたようだ。

「あ……」

中尉が、空中に放り投げられ、木の幹に激突。
中尉は僅かにうめき声を上げ、眼を力なく開いた。


「……二等陸士。状況を説明しろ」

「それより手当て……手当てを、しないと……」

「不要だ。状況を説明しろ」

「でも! 頭にも、お腹にも、あの銃の弾が……」

「腹の弾は抜けている。頭に貰ったのは……頭蓋骨をちょっぴり削っただけで、致命傷にはなっていない。
 銃弾を受ける瞬間、仰け反ったのがよかったか……アシュラマンはどうなった? 」

「……死にました、多分……オメガマンも……」

「多分? ……確認するべきだったな、二等陸士。減点だ……まあいい、紙をくれ」

「あ、ほ、包帯ですか? 」


先程の試合の後、特に損傷が酷かった中尉の右腕には、私のハチマキが包帯代わりに巻かれている。
そのハチマキは半分外れかかっていて、乾いた血が薄皮と共に剥がれて、悪臭を放っている。
それ以前に動転していて気が回らなかったが、中尉はもっと酷い怪我をあちこちに負っているじゃないか。
ディバッグを漁るが、包帯はなかなか見つからない。そもそも入っているのだろうか?
必死で漁くる私に、中尉が「違う」と短く告げる。

「名簿でもなんでもいい……まっさらな紙だ」

「? ……これで、いいですか? 」

「ああ……」

たまたま手にとった紙を渡す。
中尉は口に指を突っ込み、新鮮な血液でなにか文字のようなものを書き始めた。
不思議そうに眼を丸めている私に説明するように、中尉が呟く。

「これは……俺の所属する星の文字……ケロン文字だ。お前の身上の潔白証明と協力の要請が書かれてある。
 失くすなよ。ケロロ軍曹、タママ二等兵、ドロロ兵長……このうち誰かに見せれば、お前の力になってくれるはずだ」

「え……」

「彼らは優秀な兵士だ……お前と同じように、未来への希望にあふれている」

「中尉だって、まだお若いじゃないですか! そんな……おじいさんみたいなこと……」

あるいは、死に逝く者の言うような事を。
言わないで下さい、中尉。
涙と嗚咽に遮られ、その言葉は出せなかった。
中尉は苦笑し、血文字が書かれた紙を私に手渡す。

「命令だ……とは言わん。俺を、ケロン軍人を信じられないなら、破り捨ててもらっても構わん」

「中尉を信じてないわけないじゃないですか! あなたは立派な軍人です! 」

「どうかな……甘いところも、幾分あるぞ」

「そりゃ……人間だったら、当たり前です! そういうところも含めて、中尉は立派な軍人なんです!
 でも、この手紙は要りません! 中尉が直接、お仲間達と協力すればいいじゃないですか! もちろん私も手伝います! 」

「状況をしっかりと把握しろ、と言った筈だ。それは……もう……できん」

中尉が、焼け焦げ、ボロボロになった右腕を挙げ、私の頭に手をやる。
コン、と頭を叩いて。
それは、あの時のディバッグの一撃より、痛かった。
次の言葉を待つ、私の心が、痛んでいた。


「……お前に、教授できることが残っていた。戦場では……」

「――――! 」

「『当たり所のよかった弾』など、存在……しない。失態の後に、奇跡は、起こらん。嘘と事後処置で取り繕うのが、精々だ」

「ちゅう、い……」

「これは、俺のミスだ。お前が気に病むことではない。だから――――お前は、奇跡を、理想を、追い続けていい」

「中尉っ……! 」

「もう一つ。一人で抱え込むな。自分の役割を果たし、その上で理想を叶えられるよう、邁進しろ」

「中尉、そんなっ……! 」

「お前の――本当の、教官の下で。信じられる、仲間と共に、な」

「中尉ぃぃぃぃっ! 」

「まあ、こちらは……言われずとも……分かっている、だろうが、な……」

「あ……」

中尉の命が、消えていく。
医学的なことは分からないが、それは如実に感じられた。
眼の光がゆっくりと薄れて。
伸ばしていた腕が、だらん、と垂れて。
背をもたれている木に添って、ゆっくりと体が滑り落ち。

そして、中尉は死んだ。
間違いなく、今、中尉の命の火は消えたのだ。

叱ってくれた。

導いてくれた。

信じてくれた。

そして……一緒に、戦ってくれた。


ガルル中尉は、もういない。



「~~~~~~~~!!!!」

知らないうちに、慟哭を上げていた。
治療も出来ず、最後に安らぎを与える言葉も言えず。
弱い。私は、こんなにも、無力で、無知で。
誰一人、救えなかった。

だけど。だけど、心は折れはしない。ガルル中尉の、最後の命を振り絞った、教導。
きっと中尉にだって家族がいて、最後にその人たちの事を考えるはずだったのに、それを廃して教えてくれた言葉。
それだけは、無力な私でも、無駄には出来ない!

「中尉が確信させてくれた、私の理想! 」

剛ッ、と。想い。

「中尉が守ってくれた、私の理想! 」

業ッ、と。誓い。

「中尉と! 私の! 共に願った、一つの理想! 」

轟ッ、と。『振動破砕』で穴を掘り。

「貫いて見せます……弱い私が! 強くなってッ! 」

人を守れる力が欲しい、そう願っていた。
だから、私は生きている。そのためにこそ、生きている。

中尉を埋葬し終えた時には、涙はもう消えていた。
これより、私は戦場に向かう。
理想を追う戦場へ! 奇跡を叶える戦場へ!

『I accompany it,you(私もお供します、スバル)』

「ありがとう、レイジングハート」

後ろは振り返らない。前に在る脅威にだけ、眼を向ける。
此は既に戦場。失態は死を呼ぶのだから。

「……」

ただ、今だけは、黙祷を捧げよう。
そして私は、一歩目を踏み出した。

【H-7 森の獣道/一日目・朝】


【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(大)、ところどころに擦り傷、軽い火傷
【持ち物】
デイパックと基本セット×2、メリケンサック@キン肉マン、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
砂漠アイテムセットA(アラミド日傘・零式ヘルメット・砂漠マント)@砂ぼうず、ガルルの遺文、スリングショットの弾×6
【思考】
1.人殺しはしない。なのは、ヴィヴィオと合流する
2.東の街道か森を通って、人を探しつつ北の市街地に向かう (ケロン人優先)
3.セインにわだかまり
※参戦時期は第19話「ゆりかご」の聖王の揺り籠が起動する前です
※ガルルの遺文はケロン文字で書かれている為、ケロン人以外には読めません。
 以下の要項が書かれています。
 1:ガルルのスバルへの評価と安全性の保障
 2:ケロロ、タママ、ドロロへのスバルに対する協力要請





物心付いた時には、悪魔だった。
人を信じるな。
人を頼るな。
最後まで信じられ、最後に頼りになるのは、自分の力だけだ。
寝物語のように刷り込まれた原理。
一切疑わず、一切合切その通りだと思っていた。
育った地は魔界。
育てた親は悪魔。
だから、自分も悪鬼の如し存在。

それに、僅かながらに疑問を感じるようになったのは、いつからだったか。
――――そうだ、あの人だ。
技を教え、目から出る熱い水を教え、自分の命を救ってくれた、あの人に出会ってからだ。
でも、結局あの人は死んだ。

        アクマノオキテ
その事実が、絶対摂理を裏付けるかのように鎖となって、自分を縛っていた。
今にして思えば、それは逃避だったのだろう。
死を恐れるからこそ、悪であれ。
死を恐れるからこそ、不信であれ。
自分を庇って死んでいったあの人の輝きに憧れながらも、怯えていたのだ。
他人を庇って死ぬ事に。

それでも、自分は間違っていたとは、思わない。
悪魔であるという事実と誇りは、確かにこの胸にあるのだから。
それでも、思わずにはいられない。
もしも――何か、きっかけがあれば。
自分も、あの家庭教師のようになれたのではないか、と。
しかし、直感もあった。

例えそうだとしても――自分は悪魔のサガからは、逃れられないだろう、という直感が。

結局――――私は、悪魔にしかなれないのだ……。

修羅ゆえに。
闘神ゆえに。





オメガマンは、瓦礫の山に腰掛けていた。
足元には五本の腕を踏みつけ。
背中の一指には、落ち窪んだ目のアシュラマンの顔を宿して。

「フォーフォフォフォ……私のこのゲームでのコレクションの一本目に、相応しい実力であったぞ、アシュラマン」

激戦の疲れを癒すべく、オメガマンは静かに、朝日を眺めていた。
次の狩りに備えて。

Ωメタモルフォーゼの材料にする為に強奪したアシュラマンの腕の一本を脇に抱え。
取り戻した、完璧超人としての自信を胸に。

アシュラマンの死相が、心を無くした死相が笑う。
災いなるかな、悪魔の力。
恵みなるかな、悪魔の力。

狩人は、リングの残滓の上で、一人牙を研ぎ続ける。

孤高のΩ。
最後のΩ。

「生き残るのは、俺だぜ……! 」



【ガルル中尉@ケロロ軍曹 死亡確認】
【アシュラマン@キン肉マンシリーズ 死亡確認】
【残り40人】  




【H-8 博物館前・ファイヤーデスマッチ用特設リング廃墟/一日目・朝】


【ジ・オメガマン@キン肉マンシリーズ】
【状態】中ダメージ、大疲労、アシュラマンの顔を指に蒐集
【持ち物】デイパック(支給品一式入り)×2、不明支給品1~3、5.56mm NATO弾x60、アシュラマンの腕
【思考】
1:皆殺し。
2:スエゾーは特に必ず殺す。


※バトルロワイアルを、自分にきた依頼と勘違いしています。 皆殺しをした後は報酬をもらうつもりでいます。
※Ωメタモルフォーゼは首輪の制限により参加者には効きません。
※完璧超人復活ッ 完璧超人復活ッ 完璧超人復活ッッ 完璧超人復活ッッ 完璧超人復ッッ活ッッ



【備考】
※実況中トトロはH-7辺りまで蹴飛ばされました。生死不明。


時系列順で読む


投下順で読む


GAME START 中トトロ やさしさとともに
灼熱のファイヤーデスマッチ!の巻 スバル・ナカジマ
ガルル中尉 GAME OVER
ジ・オメガマン 迷走失意 されどこの不運は連鎖のごとく
アシュラマン GAME OVER






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