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心のかたち 人のかたち ◆MUwCM75A2U



 昇ったばかりの朝日が森を暖かく照らす。
 どこからか、小鳥の鳴き声が聞こえてきた。この状況下じゃなければ最高の場所だ。
 あたしは悠々と森を歩いていた。
 勿論、無防備にぶらぶら歩くはずが無い。ナイフはいつでも取り出せる状態だった。
 ウィンチェスターをあの怪物に奪われたのが残念だけど仕方が無い。

 ――次に会ったとき、ぶっ殺して奪い返せばいいのだから。

 ガイバーⅠを殺してやる。化け物は皆、殺してやる。
 ……あたしだって、やれば出来る。
 何をしてでも生き残る。加持さんと一緒にネルフへ帰るんだ。
 自分は、何も出来ずに殺された奴らとは違う。
 絶対に違う。
 帰る場所だって、きっとある。
 だから大丈夫。早く化け物どもを消し去らなくちゃ。

 そんな事を考えながら、さくさくと森の道を踏みしめて歩く。ちょっと市街地から離れすぎたかもしれない。
 特に目的がある訳ではなく、ただ南へ南へと歩いてきたからだ。
 そろそろ引き返さないといけない。
 市街地は人が多く集まる。さっきのガイバーⅠのような化け物もいるだろう。
 だけど、人がいるかどうか分からない南へ向かうよりかはマシだと思った。
 今直ぐに戦い直す気は無いけれど、ガイバーは北にいる。
 それに、沢山ある様々な施設から有効利用できそうな物を見つけられるかもしれない。
 戻らないと、と思い方向転換したとき、地面に何かが落ちているのを見つけた。

 地面に突き刺さっているディスク。
 鈍く光る、銀色の首輪。
 そして、砕け散った槍のような物の残骸。

 心臓が跳ね上がるのを感じた。

「これって……」

 あの襲撃者が持っていた槍だ。
 間違いない。あの緑顔が持っていた槍だった。
 それが見る影もなく砕かれて転がっている。
 何故こんな所に? そんなの、――決まっている。

 あの緑顔も襲われて、おそらくはただならぬダメージを負った。
 そして……たぶん、死んだ。

「……はは、あははははは、ははははははははははは」

 乾いた笑いが口から漏れた。
 武器がこんなになるのだから、本人はもう生きているはずがない。
 死体が近くにないからどこかへ逃げたのだろうか。魔法が使えるみたいだったけど死んだに違いない。
 放送で呼ばれた知らない名前は二人分。日向冬樹にゼルガディス=グレイワーズ。
 見たところ日本人面では無いし、そもそも人外だからあいつの名前はゼルガディスと言うのだろう。
 あいつは死んだ。
 直接確認していないけど断言できる。

 化け物だから、死んだんだ。

 モッチーだって、好戦的では無く危険でも無いが人間じゃなかった。
 仕方ないさ、化け物なんだから。
 「化け物と会話しようとしたのが間違いだった」って考えていたけど頭の中で訂正する。
 化け物は消える運命にある。
 ……モッチーを惜しむ気持ちが無いわけじゃない。今まで三匹出会った化け物の中でまともなのは一匹だけ。
 使徒だって化け物の中に入るからまともな奴はそうそういない。
 人間が持っていない力を持つのは凄いと思うけれど、結局は消える程度の存在なんだ。
 ゼルガディスとかいう奴だってガイバーⅠだって。
 日向冬樹とかいう奴は人間だったのか化け物だったのか。
 それは分からないけど、化け物だったら死んで当然。人間だったらその程度の存在だったということだ。
 一瞬、ヴィヴィオの母親のフェイトの事が頭によぎるが振り払う。
 どんな奴かは知らないしもう関係はない。忘れよう。
 ……うん、そうだ。あの少女の事は忘れよう。考えれば考える程、胸にもやもやが溜まってくる。
 確かに自分と似た境遇で、同情があると言えばあるけれど、……もう関係は無いんだ。
 そう自分に言い聞かせる。
 今はとにかく、化け物を蹴散らして生き残り、加持さんと合流することだけを考えなくちゃ。

 もう一度地面を見る。
 この槍はもう使えない。大体、化け物の襲撃者が使っていた槍なんか使う気すら起きない。
 ……このディスクはどうしようか。
 ひょっとしたら何かに使えるかもしれない。一応持って行こう。使えなかったらどこかで捨てればいいことだ。
 残ったのはこの首輪。
 まさか、誰かが首輪を外したのだろうか?
 だとしても変だ。緑顔の首輪か誰の首輪かは分からないけれど、こんな場所に放置する理由が分からない。
 外した首輪を放置するなんて、他人に首輪の解除方法を無償で提供しているようなもの。
 科学や――あるいは魔法――に詳しい人にヒントを与えてしまう。自分だったら他人にわざわざヒントは与えない。
 そっと拾い上げてみる。特に変わったところはなさそうだった。
 首輪の内側に小さな字で何かが書いてあった。

『Mocchi』

 ――え?
 ひょっとして、これはモッチーの首輪?
 何故こんな所にとか、死んだモッチーからどうやって奪ったんだろう、とか色々疑問が浮かんできた。
 死体の首を切り離して手に入れたとしても、この付近にモッチーの死体は見あたらなかった。
 ……考えたって分かるはずが無い。
 さっきの化け物と同じ思考に行き着くのが嫌だけど、科学や何やらに詳しい人に見せれば何かが分かるかも。
 そう判断して、デイパックに首輪を入れた。
 他には何も落ちていない。
 緑顔を襲った襲撃者は必要な分だけ持って行ったようだ。
 首輪を見落としていたのは大きいと思うけど。
 絶対に優勝できるから首輪の解除は必要ないと思い込んでいる奴なのか。
 ほら、……あたしは『出来る子』なんだ。『要らない子』なんかじゃない。絶対に。
 大丈夫。絶対に大丈夫。
 自分はまだネルフに必要とされている。
 さっきから同じような事を頭の中で繰り返す。
 ……本当は、まだ不安だった。
 もしもさっきの奴より、強い奴が襲ってきたら。
 もしも、化け物同士が徒党を組んで参加者を殺し回っていたとしたら。
 自分は果たして大丈夫なのだろうか? 加持さんといっしょに帰れるんだろうか?
 ただ不安を押し隠す為に大丈夫、大丈夫、と言い聞かせてきただけだった。

「………………っ」

 僅かに手が震える。
 頭を冷やす為にかぶった水のせいで、制服が張り付いて気持ち悪い。
 ぐちゃぐちゃになっている右手の人差し指が気持ち悪い。
 さっき指を噛んで捻ったせいか、口の中に血の味が残っていて気持ち悪い。
 ざあ、と風が吹く。
 ――――遠くから、血の臭いが漂ってきた。
 ……臭いが気持ち悪い。吐き気がする。
 ここまで臭ってくるような出血をしている参加者が森にいる。
 おそらく、自分より酷い怪我をしている。あるいは……死んでいる。
 本当に、気持ち悪い。
 まとわりついている制服は、冷静になる為に水を掛けたからこうなった。
 人差し指と口の中にある鉄の味はあの化け物のせい。

 ――じゃあ、これ以上あたしに気持ち悪い思いをさせているのは誰のせい?

 ウザったい。
 さっきとはまた違う風に胸の中が「もやもや」してきた。
 誰だか知らないけど、死ぬのなら勝手に死んでくれればいいのに。
 大怪我をするような状況になったのはそいつの責任だ。あたしは関係無いのに、不快にさせられている。
 どこのどいつだろう。
 このあたしにこんな思いをさせるなんて。
 ムカツク。いらいらする。

 そんな奴なんか、消えちゃえば、いいのに。

 引き寄せられるようにして、ふらふらと血の臭いがする方向へと向かっていった。


 すぐに、原因となる奴が見つかった。
 赤い水たまり。
 どこかで見たことがある焼け焦げたローブ、蒼い岩肌。
 さっき見た槍の持ち主の、おそらくゼルガディスとかいう化け物だった。
 否、“化け物だった”存在にすぎない。
 顎から上が綺麗に潰されている。潰れたトマト、という表現がぴったりと当てはまるように思えた。
 そんな表現しか出来ないのが嫌だけど、実際に見るとそうとしか見えない。
 むせかえるような血の臭い。
 ぐちゃぐちゃになった顔面。
 火傷を負っているらしい、蒼い岩肌の手足。
 胃液がこみあげてきて、吐きそうになった。
 だけど、吐いたりなんかしない。
 自分もこうなるかもしれない――なんていう恐怖は一切襲ってこなかった。

 今のあたしを包み込んでいるのは、確信と自信。

 やっぱり、この化け物は死んでいた。読みが当たった。
 女子供と化け物一匹という、普通に考えれば戦力外な集団を襲ったくせに、まんまと逃げられた上にもう死んでいる。
 化け物は消えるべくして消えたんだ。
 当然の結果。当たり前。妥当。正論、正当。
 なんだかまた笑いがこみあげてくる。
 魔法って奴が使えても使えなくても所詮死ぬ存在なんだ。
 死体に近づく。
 もう気持ち悪くなんかない。一種の高揚感のような物だって感じている。

「馬鹿じゃないの」

 襲撃したくせに逃げられて。しかももう死んでいるなんて。
 死体の腕をぐりぐりと踏みつける。思ったよりも感触は硬かった。

「……あたしは人間だし、こんな風に無惨に殺されたりはしない。あんたみたいなバケモノとは違うから」

 更に、強く踏む。

「バケモノなんか死ね。消えろ。それが当たり前」

 今度は死体を蹴り上げる。ぴくり、と動いた気がした。

「死ね……死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねッ!」

 「死ね」を呪詛のように呟きながら何回も何回も力強く蹴飛ばす。
 ――あぁ、コイツはもう死んでいるか。そうだったね。
 更に何回か蹴り上げた後で、よろよろと後ずさった。息が荒い。
 靴の裏をその辺りにあった石になすりつける。皮膚だか血だか分からないけどナニカがくっついていそうで嫌だった。
 大きく深呼吸をする。
 落ち着く為に森に来た、っていうのに何やってんだか。自分が馬鹿らしく思えてきた。
 でもまあ、いいや。
 自信がついたし、首輪も手に入ったし、化け物が死ぬべき存在ってことも確認出来た。
 最後に、思いっきり蔑みを込めた視線で死体を見下ろす。
 自分は違う。
 こんな風に、無惨に殺される訳がない。
 勿論、化け物を弔う気などさらさら起きなかった。
 だから、もうコイツに用は無い。
 背中を向けて、また歩き出した。

 歩きながら、また考える。
 次はどこへ向かおうか。市街地から離れるつもりはないからとりあえず戻ろう。
 ……でも、全然落ち着けていないから、もうちょっとだけ森にいよう。
 アイツを殺した襲撃者が近くにいるかもしれないという考えは捨てておいた。
 効率よく殺し回るとしたら、北の市街地へと向かったと考えるのが妥当だろう。
 真北にある施設は公民館。その付近にホテル、デパートなどがある。
 もしかするとこの辺りに潜んでいるのかもしれない。
 ホテル付近にガイバーとかいう奴がいたからせいぜい潰し合ってくれればいいけれど。
 ……でも、こんな目に会わされたんだから次に会ったらただじゃおかない。
 装備が頼りないのが事実だ。
 ウィンチェスターが無い今、相手に直接ダメージを与えられるのはナイフだけ。
 グレネードだってダメージを与えられるが、肝心のショットガンが無い。
 投げつければ爆発してくれる可能性もあるが、外してしまったり爆発しなかったりしたら一環の終わりだ。
 さっき、ナイフで切りかかろうとしたけれど、力ではガイバーの方が上。
 このままでは勝てないのは一目瞭然だった。ちょっと今の武器だけでは厳しい。
 もう少しいい物が手に入らないかな……と考えながら地図を見る。
 先ほど挙げた三つの施設に行くのは、今はパス。
 あの化け物を完膚無きまでに叩きのめす相手とは、人間にしろそれ以外にしろ接触したくない。
 きちんと準備してから行くのならよさそうだ。
 海の家に武器があるはずないし、行くとしたら――警察署。
 拳銃があったらいいけれど、簡単に転がっている物では無いと思う。
 当たりが拳銃、外れでも警棒とか護身用の武器とか、何か使える物が手に入るといいな。
 他は、学校に図書館に倉庫群か。
 倉庫群、って言われても何の倉庫なのかピンと来ない。行くとしても後回し。
 小学校と中・高等学校には…………武器は無いだろう。
 「高校に行く」とか言っていた涼宮ハルヒの事を思い出す。
 ……アイツはもう死んだんだ。モッチーだって、襲撃者の化け物だって。
 だからもう関係無い。一人、どこかで生きているはずの少女がいるけれど――あたしには関係無い。

「……警察署へ行こうっと」

 確認の為に呟く。
 C-4まで森の中を通っていき、そこから北へ向かえばすぐだ。
 今は西に向けて歩こう。……それと、落ち着こう。
 それが、きっと最善の選択だ。生き残る為にも、化け物を殺す為にも。
 ガイバーはどういう風に殺してやろうか。
 銃で撃ち抜くか、グレネードで吹っ飛ばすか、ナイフで切り裂くのか……。
 ……まぁ、どれでもいいか。指の痛みとプライドを傷つけられた分、仕返しをしてやれればいいんだから。


 ナイフを握りしめて、あたしは歩き出した。




【C-5/一日目・朝】


【惣流・アスカ・ラングレー@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】右手人差し指喪失、精神不安定、『化け物』に対する強い殺意
【持ち物】
アーミーナイフ@現実、予備カートリッジx12@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
コントロールユニット(ガイバーⅡ)@強殖装甲ガイバー、デイパック(支給品一式入り) 、モッチーの首輪、モッチーの円盤石
砂ぼうずの特殊ショットシェル用ポーチ(煙幕弾(2/3)、閃光弾(3/3)、グレネード弾(1/3)、ガス弾(2/3))@砂ぼうず
【思考】
0.森で休んで落ち着き、警察署へ向かう。武器が欲しい。
1.積極的に殺し合いには乗らない、ただし人間以外は問答無用で撃つ。ガイバーⅠ(深町晶)は必ず殺す。
2.加地と再会したい。シンジに関しては、そこまで執着はない。
【備考】
※参戦時期は少なくとも第弐拾四話以前。
※気にしないようにしていますが、ヴィヴィオの事を気に掛けています。

※【C-6】の森、ゼルガディスの死体から少し離れた所に、砕けたストラーダが落ちています

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模倣より生まれ来る創造 惣流・アスカ・ラングレー 命の選択を:序






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