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朝日とともに這い寄るモノ ◆2XEqsKa.CM



朝日の光も眩く届く、森から伸びた遊歩道。
市街地へ続くその道の半ばで、一人の男がのんびりと歩いていた。

「やっぱり歩くなら街道ですよねぇ」

男の着ているローブは、草や泥で汚れている。
道の脇を見れば森から生い茂った藪草の一端が荒々しく掻き分けられ、踏み拉かれていた。
どうやらこの男は、その藪道を通って歩道に至ったようだ。
歩く先に見える町を眺め、ふむふむと頭を頷かせる。

「なかなか大きな都市ですね……建物も随分と独創的ですし」

男が肩に下げたディバッグから茶色の封筒を取り出し、中身の紙を手に取る。
前方の町の建築物のいくつかは、遠目に見ても男の知るそれとは幾分違っていた。
今取り出した紙に書かれていた文字と同じように、違う文化の物なのだろうか、と思惟する男。

「あれなんか大きさはちょっとした物ですが、城にしては飾り気がありませんし」

男が――常人より遥かに利く――視覚を延ばした先には、一棟の巨大な建造物。
彼が知る由もないが、その建物の名前は『中・高等学校校舎』。

「どうせ当面の予定もないですし」

男が、適当に歩いてきた道をチラリと振り返り、森を一瞥して呟く。

「ちょっと行ってみましょうか……おや? 」

男の眼が鋭く光り、こちらに近づいてくる物体を発見した。
それは奇妙な形の鋼鉄で、上に誰かを乗せて地面から僅かに浮いて走っている。
男は、それは馬のような……人を運ぶ為の物だと直感した。
そして、それに跨るようにして乗っているのは――――。

「……子供、ですか? 」

男が足を止めた。
その時点で鋼鉄の馬側も男に気付いたようで、動作を止める。
男は数秒の静寂を破り、来訪者たちに声をかけた。

「僕はゼロスと言う者です。よろしければ、この謎の神官と街までご一緒しませんか? 」

――――満面の笑みを浮かべて。




『だが断るであります! そちらの素性がわからない以上、ホイホイとついていくわけにはいかないのであります! 』

『コ、コラ! 俺達はナビだぞ! 決断は装着者に……』

『先輩固いこと言い過ぎですぅ~ オラッ』

『ぐはっ! 』

『ク~~~クックック~~』

ゼロスの言葉に帰ってきたのは、奇妙に電子的な音声での漫才だった。
同時に鋼鉄の馬――KRR-SPから、可愛らしい少女が降りて来る。
その出で立ちは青く薄い布地の上に鎧を纏うという、魔族であるゼロスには理解し難いものだ。

(でもふとももが露出しているのは個人的にちょっとポイント高いですね)

きっと理解し難いものだ。

「……おや」
          テストスロットル
『イージスシステム試作動。 目標包囲終了。包囲状態維持』


ゼロスの周囲を、少女の鎧から飛び出した一対の盾が囲んだ。
やれやれといったような様子で肩をすくめるゼロスに、おずおずと少女が語りかける。

「ご、ごめんなさい……わた、わたし達、学校に行きたいから……」

「学校……ふむ、あの大きな建物の事ですね? それなら、僕も丁度行こうと思っていたんですよ」

恐慌状態に近い少女に優しく声をかけるゼロス。
周囲を囲む盾の存在などまるで意に介していない。
少女が答える前に、KRR-SPに残っていた少年が、のそりと機体から降りる。
少年は静止しようとする少女を抑えてKRR-SPにもたれる様に立ち、ゼロスに応答を始めた。


「悪いな……状況が状況だからさ」

「お気になさらず。そのご様子ではなにやら危険な目に合った後みたいだし、当然の反応ですよ……」

そこで、ゼロスの言葉が、途切れた。
少年をまじまじと見つめている。
軽薄な笑みは掻き消え、その表情は驚いたような、あるいは……。
少年と少女が疑問を感じる一瞬前に、ゼロスは平静を取り戻す。

「……こんな事態ですしね。えーと……」

「あ、俺はゲンキ! 」

「ゲンキさん。怪我をされているようですが」

「わたし達は、ゲンキ君の怪我を治すために、が、学校を目指してるの……」

僅かに震えながら、ゲンキを庇うようにして動く少女。
ゼロスは微笑を浮かべ、両手を上げて降伏のようなジェスチャーを取る。
ゲンキはほっとしたように体をKRR-SPに委ね、少女もふう、と息を吐いた。

「この通り、僕はあなた達に危害を加える気はありません」

「よ、よかったぁ……」

『油断するな! 奴の作戦ではないとは限らんぞ! 』

脱力する少女をナビが一喝する。
ゼロスは苦笑して、脇に下げていたディバッグを地面に落とす。


「僕は嘘はつきませんよ♪ 」

『ム……』

『ク~クックック~』

『意味もなく笑うな! 』

「そっちに敵意がないのはわかったよ。でも……一緒に行動するかどうかは……別の……ぐっ……」

「ゲンキ君!? 」

腹部を押さえ、痛みに耐える素振りを見せるゲンキ。
ゼロスが心配そうな顔で崩れ落ちたゲンキに近づく。
少女は一瞬躊躇したが、盾を戻してゼロスの包囲を解いた。

「酷い怪我ですね……」

ゼロスが呟き、ゲンキを抱きかかえてKRR-SPに戻した。
少女に向き直り、KRR-SPを運転するよう促す。

「彼の傷の処置は学校に着いてからにしましょう。さ、行きましょうか」

「は、はい! でも、あなたは……」

「大丈夫、足は速い方でして。どうぞご遠慮なく、そのおもちゃで進んでください。着いて行きますから」

『……結局同行することになってしまったな……嫌な予感がしやがる』

『ゲロッ!? そういうことを本人に聞こえるように言うのは死亡フラグであります! 』

『ク~クックック~』


ナビたちの会話を聞き流しながら、ゼロスとKRR-SPに乗った少女が並列して走り出す。
少女は焦りからか かなりの速度を出していたが、ゼロスがそれに置き去りにされることもなく。
十数分程で、街へ到着した。






同じ区画に隣接する中学校と高校。
エスカレーター式の学園だろうか。
一同はそんな風に思いを馳せる暇もなく、学校へと駆け込んだ。
選んだのは中学校。KRR-SPに乗ったまま侵入し、目当ての部屋を探す。
一階をしらみつぶしに探索する。
職員室、教室、図書室……。
やがて辿り付いたその部屋の前にKRR-SPを止め、内部に入り込んだ。

『保険室』。

薬品の臭いがツンと鼻を突くその部屋の白いベッドに、少女がゲンキを横たわらせる。
心配そうな顔で覗き込む少女にどぎまぎするゲンキを微笑ましく見守るゼロス。
一息ついてから、ゼロスは部屋の棚から応急処置に使えそうな用具を選び出し、ゲンキの手当てを始めた。
なかなか堂に入った手際で事を済ませるゼロス。

「こんなところですかね」

「大丈夫? ゲンキ君」

「ああ……大分楽になったよ。ゼロスさん、ありがとな」

「私達だけじゃ、こんなにちゃんと出来なかったと思う……さっきは本当にごめんね、ゼロスさん! 」

「いえいえ。もっと楽に治せる方法もなくもないんですが……ちょっと問題がありますからね、
 この程度の事しか出来なくて逆に申し訳ないくらいですよ。ま、しばらく安静にしていないといけませんよ? 」

「うん……ちょっと休んで、また仲間達を探しに行くよ。本当にありがとうな、ゼロスさん」

ペラペラと語るゼロスに重ねて礼を言い、ゲンキは少女に視線を向ける。

「お前も……悪いな、俺の怪我のせいで迷惑かけちまって……」

「えへへ、気にしないでよ、ゲンキ君。私達、友達でしょでしょ? 」

ほのぼのとした空気が保険室を包む。
ゼロスはにこやかに顔を歪めながら、ふと思い出したように少女に切り出した。

「そういえば、あなたの名前はまだ聞いていませんでしたね」


「わたし? わたしは[検閲されました]」

「[検閲されました]ですか。……あれ、[検閲されました]さん、貴女の名前は名簿には載っていませんでしたが? 」

「ああ、コイツ、『キョンの妹』って名前で載ってるんだ」

「……それは……災難でしたね……。では、これからは『妹さん』と呼ばせていただきますね、妹さん」

「うん……」

妹、と言う言葉に反応して、僅かに少女が表情を暗くする。
目ざとくそれを見抜き、更にその背景にある理由も看過するゼロス。
あくまで軽い口調で、その言葉を紡ぐ。

「お兄さんと何かありましたか? 」

「……! 」

「ゼロスさん、それは……」


少女を気遣うように半身を起こそうとしたゲンキを手で制し、"キョンの妹"は力なく笑いながら言った。

「それは……禁則事項、だよ」

「……そうですか」


大体の事情を察し、目を伏せるゼロス。
重くなった場の空気を取り繕うように、ゲンキが慌てて話題を振る。


「そ、そうだ! ゼロスさんは、ゲームに乗ってないんだよな? じゃあ、俺達と一緒に仲間を探して……」

「当面はそのつもりですよ。僕の場合、捜索を優先するのは知り合いよりこれを外せる人ですけどね」

首輪を指して笑うゼロスに、キョンの妹が不思議そうに尋ねる。

「ゼロスさんは知り合いの人たちの事、心配じゃないの? 」

「もう一人は死んでしまっていますし、後は僕が心配する必要なんてない人ですからね。
 まあ、ここで死んだならそれだけの人だったって事ですよ」

「……そうか」

ゲンキが、ゼロスから視線を外し、想う。

飄々と語ってはいるが、この人も見知った人をこの理不尽なゲームで失ったのだ――――。
『ここで死んだならそれだけの人だった』というのは厳しい意見ではあるが、それがこの人の価値観なのだろう。

ゲンキの脳裏を一人(?)の仲間の姿がよぎり、一瞬で消える。
気を取り直して、ゼロスに問い掛けた。


「ゼロスさんの知り合いってのは……」

「ゼルガディスさんと、リナ・インバースさんです」

「ゼルガディスさんって……」

「そう。一体どこで、どんな風に死んでしまったんでしょうねえ」

笑みを絶やさずに、しかし心なしか悲しそうに語るゼロス。
他の二人もしばし黙り込み、やがてゼロスの催促でポツポツと自分達の仲間の事を語りだした。

「わたしの知り合いはね……キョンくんと、ハルにゃん……涼宮ハルヒさんと、古泉くんと、みくるちゃん」

「涼宮さん……という方は、確か……」

「うん……」

「俺の方は、モッチー、ハム、スエゾー、ナーガ、ホリィ……」



「ホリィさん? 」

ゲンキの言葉を遮って、ゼロスが驚いたような声を上げた。
遮られたゲンキは数秒思考が停止したように動かなかったが、すぐに火薬に火が付いたようにゼロスを質問攻めにかける。

「ホリィに会ったのか!? どこで……ぐっ! 」

「ゲンキ君! まだ動いちゃダメだよ! 」

「そうでしたか……あなたが、ホリィさんの……」


血気ばみ、ベッドから半身を起こしかけたゲンキの脇に置かれた花瓶を眺めながら、ゼロスが静かに呟く。
その言調にただならぬ物を感じたゲンキは、必死にゼロスに食い下がる。

最悪の想像を、心の底に追いやりながら。


「頼む、ゼロスさん。あいつに会ったなら、場所を教えてくれ。あいつは俺の……俺の大事な……」

「……」

「お願いだ、教えてくれ! 」


閉じた貝のように口を噤み、沈痛な面持ちを作っているゼロスに、なおもゲンキは哀願する。
既に、最悪の想像――最悪の予感は、抑え切れないほどに膨れ上がっている。
そして、その予感は、ゼロスのたった一つの言葉で、いとも、いとも簡単に、的中、した。

「彼女は……僕の、目の前で……くっ」

「……そん、な」

「嘘だぁぁぁぁぁッ!!!! 」



キョンの妹の漏らした嗚咽と、ゲンキの悲痛な叫び。
それがほぼ同時に、保険室に響き渡った。

「何でだ! 何でだよ! なんで……なんでだよぉ……」

「ゲンキ君……」

「……僕のせいなんです。僕が……あんなことをしなければ……」


先程とは打って変わって、軽薄さのかけらもない真剣な眼で、ゲンキを見つめるゼロス。
ゲンキはその眼を見て、これが冗談ではないことを再確認する。
再確認させられる。
同時にゲンキの心には、ゼロスに対する一見理不尽とも見える怒りが湧き上がってきた。

「あんた、ホリィが死んだ時に一緒にいたんだろ! 何で守ってやれなかったんだよ! 」

「何も言い訳できません……周囲への注意を怠って不用意な行動を取った、僕が全ての元凶です」

「ゼロスさん……」


肩を震わせ、初対面からはまるで想像できないような一面を見せるゼロスに、キョンの妹が気遣うように声をかける。
それを見てゲンキもまた、自分の怒りを吐き出してしまったことを恥じ、目を伏せてゼロスに静かに問う。

「あいつは……ホリィは、どんな風に……? 」

「それは……とても、僕の口からは言えません……」

「……そうか」

ゲンキの目から、生気が失われる。
何もかもを忘れたい、というように、起こしかけていた半身をベッドに横たえた。
沈黙に包まれる保険室。
やがて、キョンの妹がたどたどしく励ますように、ゲンキに語りかける。

「ゲンキ君……まだ、何もかも終わっちゃったわけじゃないよ……」

「……ホリィはさ、俺達の中心で……みんなに好かれるような、優しい奴だったんだ」

「……」

「あいつは……」

「失礼! 」


ゲンキの泣き言とも取れる呟きを止めるように、ゼロスがゲンキの頬を叩く。

ぱしん、と乾いた音が響き、ゲンキが激痛に身を捩じらせる。
驚愕するキョンの妹の目には、いまだ真剣な表情のゼロスの姿。


「ゼロスさん!? 」

「ぐっ……何を……」

「僕が言えた義理ではないかも知れませんが! 」

ゼロスは、そこでぐっ、と溜めるように言葉を切り、二人の反応を見る。
キョンの妹もゲンキも、驚いたような顔で、ゼロスの次の言葉を待っていた。

「ホリィさんは……自分が死んだ後、あなたにそんな風になってほしいと想う人だったでしょうか!? 」

「……! 」

「ゼロス、さん……」


ゼロスは、目尻に水滴を浮かべていた。
そして、ゲンキを叱咤するように、二の句を継ぐ。

「僕は……そうは思いません。彼女は、最後まで仲間の事を考えていました。
 自分の死を聞かされ、ゲンキさんが生きる意志を僅かでも失う事を望む人とは思えません」

「ホリィ……」


ぼそりと呟くゲンキの声を最後に、保健室に再び長い沈黙が流れる。
その沈黙が打ち破られた時、ゲンキの目には再びガッツが宿っていた。

「そうだよな……ついさっき、お前に言ったじゃないか……落ち込んで、泣いてばっかいても、何も始まらないって」

「ゲンキ……くん……っ! 」

「泣くなって……」


ゲンキの心境を鑑み、涙するキョンの妹を、ガッツ持つ少年は健気にも、自ら慰めていた。
ゼロスが立ち上がり、保険室のドアへ向かう。
当然、呼び止めるゲンキ。

「どこに……? 」

「ホリィさんを死なせてしまったのは僕。その事実は、たとえゲンキさんやホリィさん自身に許されようと変わりません」

「……」

「だから……せめて、あの人の仲間の貴方だけは、僕が守って見せます」


振り向いたゼロスの顔は、笑顔だった。
憎めない笑顔だった。


「この"中学校"と、お隣の"高校"……危険な人物がいないか、偵察してきます」

「一人で行くのか……? 」

「妹さんには、ゲンキさんを守ってもらう必要がありますから」

「うん……気をつけてね、ゼロスさん」



ええ、と手を振って廊下に消えていったゼロスの後ろ姿を見届ける二人。
どちらともなく、ゲンキとキョンの妹が話し始める。

「いい人……だよね」

「……そうだと、思うよ」

「……」

「……」


何度目か数えるのも嫌になる沈黙。
キョンの妹が、無理しておどける様に、その沈黙を踏破する。

「ゲンキ君はわたしのナイトになってもらうはずだったのに……わたしが守っちゃってるよね」

「……ごめん」

「この借りは、ちゃーんと返してもらうからねっ! 」

『そうだぞゲンキ、女に守られるとは情けない奴め! 今度鍛えてやる』

『いや~無理ッしょ? ナビだし』

『く~くっくっ~』

「ハハ……」

安らぎ。
仲間を失い、傷付いた心の中でも、ゲンキは安らぎを覚えていた。
ホリィの死を教え、真摯に接してくれたゼロス。
女の子なのに、自分を励まそうと頑張ってくれるキョンの妹(ナビ込)。
そんな、新しい仲間達の輪の中にいる、という安らぎ。
その安らぎの中で、ゲンキは、もう一度だけ。


ほんの少しだけ、泣いた。



【C-03 中学校・一階・保険室/一日目・朝】


【名前】佐倉ゲンキ@モンスターファーム~円盤石の秘密~
【状態】重傷(全身強打、行動に支障)※処置済み
【持ち物】S&WM10(リボルバー)ディパック(支給品一式)
【思考】
1:キョンの妹を守る。キョンの行動に疑問
2:自分とキョンの妹の知り合いを探す
3:ゼロスをそれなりに信頼。
4:『人類補完計画』計画書を解読できそうな人物を見つけて、首輪解除の手がかりを探る
5:主催者は絶対に倒すが、長門有希に関してはもう少し情報が欲しい


【備考】
※キョンがハルヒを殺したのではないかと疑っています


【名前】キョンの妹@涼宮ハルヒの憂鬱
【状態】健康
【持ち物】KRR-SP@ケロロ軍曹、『人類補完計画』計画書@新世紀エヴァンゲリオン、地球人専用専守防衛型強化服、
ディパック(支給品一式)
【思考】
1:ゲンキを守る
2:殺し合いを止める
3:自分とゲンキの知り合いを探す
4:ゼロスをそれなりに信頼
5:『人類補完計画』計画書を解読できそうな人物を見つけて、首輪解除の手がかりを探る
6:主催者に協力している長門有希のことが気になる




「……あんな感じで、良かったんでしょうかねぇ」

ゼロスは手に持った……保険室の花瓶から抜き取った花を弄くりながら、廊下をゆったりと歩いていた。
先程見せたような真剣な表情は、一切無くなっている。
軽薄で、そして、邪悪な笑み。
ゲンキたちには見せなかった、邪悪な笑み。
花の茎から染み出た水滴が、ポタリと木造の廊下の上に落ち、吸い込まれる。

「嘘は言ってませんよ、嘘は」

ゼロスはいつも通りに、一言も嘘を吐いていない。
ただ、自分の思い通りになるよう、言葉を弄くっただけだ。

「でも、ああいうお涙頂戴のお芝居なんて、柄じゃないんですよねぇ」

ゼロスは魔族であり、涙も、悲しみも、情緒すらない。
そんな彼がわざわざゲンキたちの前で一芝居売ったのには、当然それなりの理由がある。

「ゲンキさん、ですか……興味深いですねぇ」

ゲンキと初めて相対した時、確かに感じたものがあった。
それは高位魔族のゼロスをも戦慄させた、えもいえぬ力。
ゼロスたちが餌にする人間の負の感情とはまるで逆の、それのみならず異様に強力な力。

「色々やってみたお陰で、感情の変化で上下するものだというのは分かりましたが……」

ゼロスが、ゲンキがホリィの仲間と知りこれ幸いと仕掛けた、心理の揺さぶり。
それによって、ゼロスはゲンキの底知れない力にますます興味を抱いていた。

「ホリィさんは期待はずれでしたが……彼には、見る目がありそうです」

にこにこと笑いながら、上機嫌で歩くゼロス。
ふと、その顔が笑みを消した。

(まあ……複雑ではありますが。あのゲンキさんの力は、僕達魔族とは相容れないもの。直感でわかります。
 それを、ゲームに乗った人の抑止力に使うためとはいえ、自分の手で守るんですからねぇ)

笑みが消えていたのはほんの数秒で、二階への階段に足を伸ばした時には、既にその顔は笑っている。


「まあ……それも事の成り行き渡る世間、ってことで。帰ってから獣王様にお仕置きされなきゃいいんですがね」

ぶつぶつと愚痴りながら階段を昇る。
見回りを終えたら二人にあの原稿の文字が読めるかどうか聞いてみるか、等と思いつつ、ゼロスは校舎二階に到達した。


窓から、朝日が染み込んでいる。
ゼロスは目を細めることもなく、朝日の光を染めるように、黒く、黒く笑んだ。


【C-03 中学校・二階・廊下/一日目・朝】

【ゼロス@スレイヤーズREVOLUTION】
【状態】わずかな精神的疲労
【持ち物】デイパック×2、基本セット×2(地図一枚紛失)、不明支給品1~4
      草壁タツオの原稿@となりのトトロ
【思考】
0.首輪を手に入れ解析するとともに、解除に役立つ人材を探す
1.当面はゲンキを保護。ゲンキが自力で動けるようになったら別れる
2.中学校、高校を見回る
3.ゲンキの力(ガッツ)に興味
4.セイギノミカタを増やす
5.見回りが終わったら原稿をゲンキとキョンの妹に読ませてみる


【備考】
※簡単な漢字を少しずつ覚えていっています
※ウォーズマンの名前と容姿を覚えました。


時系列順で読む


投下順で読む


理想と妄想と現実 キョンの妹 少年少女よ大志を抱け
理想と妄想と現実 佐倉ゲンキ
正義超人と魔族の出会い。そして悲劇の終焉 ゼロス 警戒でしょでしょ?




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