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道化は踊り蜘蛛は笑う ◆321goTfE72


鬱蒼とした、ロクな思い出がない森をどうにか抜け出て
なぜか殺し合いの名簿にすら『キョン』という名で記載されていた俺は南下した。
今更だがこれはないだろ、長門。
というか俺はまだいいが…『キョンの妹』で登録されてるあいつって…
あいつのアイデンティティは俺の妹ってことだけなのか?
それに俺の妹なんてことが分かったら…余計な危害がいくかもしれないってのに。
…今の俺にとってはそのほうが都合はいいかもしれないがな。

そんなとりとめのないことを考えながら歩いていると
ようやく目的の建物が視界に入ってきた。

「あれが…レストランか」

J-5に位置するレストラン。
さっき戦った場所から一番手近で安全そうな施設だ。
ガイバーショウ達から奪った荷物の中身を確認し整理したはいいが
肝心の俺の肉体はボロボロ、疲労困憊もいいところだ。少しでもいいから寝転びたい。
レストランに期待するのも無理があるかもしれんが布団とかがあって欲しい。
そんなことを思いながら『果実とスープのキッチン』という看板をちらりと見遣る。
食欲の湧きそうな店名しやがって。
生憎だが食欲はない。ガイバーになったせいで腹が減らなくなってるからだろう。
決して、何かを食べたいと思うような気分じゃないからとか、そういうわけではない。

俺はレストランの戸を開いた。
そして中に入るまでもなく、そこはのんきに寝転がってるような状況下ではなかった。

割れた花瓶。
折れたテーブル。
粉砕された椅子。

ここで戦闘があったのは明白だ。
……何をやってるんだ俺は。
疲れているとはいえ何の警戒もなく扉を開けて
正面から侵入とか阿呆以外の何者でもないだろう。
誰もいなかったからよかったものの…うっかりしすぎだ。
俺にドジっこ属性がついたところで誰が喜ぶんだ。
いかんいかん、やはり脳に栄養が回っていない。
レストランに来たついでだ、何か甘いものでも探そう。
そういうわけで首を横に振って脳を少しでもしゃきっとさせ
俺はレストランの中へと一歩踏み出した。

のだが―――
店内の荒れっぷりに目が行って足元がお留守になることは別に仕方ないよな?
何か、たぶん糸を足で引っ掛けてそれが切れたみたいなんだ。
それだけなら荒れたレストランの中のゴミにでも引っ掛かっただけと割り切るんだが。

――ぐわ~んっ!!

頭に衝撃。一瞬意識が飛びそうになり、
自分の頭に落ちてきたものが地面に落ちる音でハッとして意識を繋ぎとめた。
ふらりとしながら足元を見ると、そこには喧しい音を立てながら揺れる金ダライ。

おいおい、俺にコントでもやらせようっていうのか?
というかこれ普通に痛いぞ。ド○フターズ身体張りすぎだろう。

って、それどころじゃない。
俺でもわかる。これは罠だ。
すなわち、近くに誰かいるということだが―――

「ぐがっ!!?」

見渡すまでもなかった。
タライに目を遣ったほんの一瞬。そのほんのわずかな間に俺の身体は締め上げられた。
身体の自由を奪われ、トゲが突き刺さる痛みのおまけつきだ。
腕ごと胴体に巻きつけられたのが有刺鉄線と気付くのにさほど時間はかからなかった。

そして俺の眉間に冷たく硬いものが当てられたのに気付いたのも、ほぼ同時だった。

「おおっと動くなよ。おめえは既においらの茨の結界に入ったわあ。
 逃れる術はねえし、変な真似をすれば……ズガン、だぜ」

……最悪だ。
銃口の向いている場所が別の部位ならムリヤリ有刺鉄線を引き千切り
反撃することもできたかもしれないが…
当のその場所はよりにもよって眉間――コントロールメタル。
説明書によればガイバーの急所にあたる場所だ。
――この正面に立つア○ゴボイスのおっさんがそれを知ってか知らずかはどうでもいい。
言えることは、ここでこれ以上のヘマをやらかせば…
俺の冒険終わりでしょでしょ―――ってことだ。

「まさか、念のためにやっといた罠に引っ掛かるやつがいるとはツキが回ってきたかぁ?
 鉄線を切るペンチっぽいのも見つかったし順風満帆だな」

おっさんが銃を構える手とは逆の手には、木になった果物とかを枝から切り落とす
小型の枝切りハサミが握られていた。
つまり、俺の身体に巻きつけられている有刺鉄線はあれを使って切り分けられたのだろう。

「さて、では変なスーツを着たお前。持ってるディバックを手放せ」

おっさんの命令に俺は素直に従った。
銃は相変わらずコントロールメタルに接触しているんだから仕方ない。
荷物がなくなったところで戦闘はできる。
どうせこのおっさんも俺は殺すつもりだ。その後に奪い返せばいいだけだ。

俺の足元に落ちたディバックをおっさんは足で手繰り寄せ、
おっさんから見て後方、俺からは手の届かないところに蹴り飛ばした。

「さぁて、ここからは楽しい楽し~い質問タイムだ。
 本当なら思わず喘いじゃうような魂の取立人フルコースを
 味あわせてやりたいところだが…
 お前さんは噂に聞いた暗黒時代の"番人"に類似する点があるんだよなあ」

暗黒時代?悪いが俺の習った世界史には
世界を震撼させた魔王とかはいなかったと思うんだが。

「と、いうわけで。この鉄線を引き千切ることぐらいは平気でやりそうだ。
 つーわけで残念な話だがいつでも引き金をひけるようにしとく。
 嘘をつくとおじちゃんの人差し指は躊躇なく動いちゃうからね~?」

「…わ、分かった」

というわけと言われてもどういうわけかはさっぱりわからんが。
こいつ、俺が有刺鉄線を引き千切れることを予想してやがるのか…
これは本当にヤバいかもしれんな、俺。

「では、一つ目だ。水野灌太――通称砂ぼうずという、目つきの悪い男を知らないか?」

「そんな奴はしらん。会ってない」

おっさんのフルフェイスについてるレンズがきらりと光り、俺の眼を覗き込む。
蛇に睨まれた蛙ってのは多分こんな心境なんだろう。
さっきガイバーショウを超えてやるって決意したのにもう蛙に変える、か。って言ってる場合か。

「嘘は言ってないだろうな?」

「本当だ。なんなら、俺がここに来てから会った奴の名前を全て挙げていこうか?」

言った後で気付いたが名前を知らない奴が結構多いぞ。
遊園地で会った化け物とか目つき悪かったし髪なくてぼうずだったなそういや。
あれのことだったら俺どうしよ―――

バチ…ンッ!

「ぐあぁあああぁっっ!!!?」

突如として俺の左手の小指を襲った激痛が、
一人ボケツッコミ中だった俺の意識を現実に引き戻した。

一瞬何が起こったかは分からなかったが…おっさんの持つ道具を見てすぐに分かった。
有刺鉄線を切った枝切りハサミで俺の小指をちょん切りやがったんだ。
ガイバーに殖装しているおかげで指もそのうち再生するだろうが…
こいつ…正真正銘のヤバい奴だ。

「本当に、本当だな?」

生命の脈動が感じられないフルフェイスで、俺の眼を覗き込みながらおっさんが問う。
先程よりも背が伸びているように感じた。…ビビってんだろうな、俺。

「はぁっはぁっ…ああ…嘘じゃない」

身じろぎせず、俺の顔をなめまわすように見るおっさん。
怖い、と思っている俺がいる。やっぱビビってるな、俺。

「どうやら、本当みたいだな。
 じゃあ次だ。最初の広間にいた草壁タツオと長門有希。
 あいつらについて何か知っていることは―――」

おっさんはそこで言葉を打ち切った。
…まぁ、俺が明らかに狼狽したからだろう。
痛みをこらえるのでいっぱいいっぱいで
まさか主催者について聞かれるとは思ってなかったんでな。
ここでもまたドジ踏んじまったわけだ。その代償が―――

「――知ってるんだな?」

この不気味なアナ○ボイスってワケか。

「知ってることを洗いざらい言いな。じゃないと銃弾を脳にプレゼントしちゃうよ」

残念ながら、俺は長門について語る以外の選択肢を見つけることができなかった。


「ってーっと…お前さんの話を纏めるとこうだな?
 長門有希は友人で、同じ団体に所属する身。
 関係は良好であの女はお前さんの命の恩人でもあり、どちらかといえば善人。
 まぁ、ここまではいいだろう」

ごほん、と咳払いを一つはさみおっさんは続けた。

「あの女の背後にはとてつもなく大きい組織――こんな場所を用意したり
 参加者全員を一瞬で拉致したり人間をオレンジの液体にしたり――
 それぐらいのことはわけもなくできるだろう技術を持った連中がいる。
 で、あの女はその組織の命令には逆らえない。
 この催しの進行役を任されその仕事を淡々としているのだろう。
 ………お前さんはこれを俺に信じろっていうのか?」

銃口でコンコンとコントロールメタルをつつきつつ、おっさんが言った。
俺の語った内容にものすごく不満気だ。
その証拠に、俺の足元には左手の小指にお供するように薬指と右手の小指も転がっていた。
これを語る俺自身も、中学時代にこんな話を信じろと言われたら
相手の虚言癖を疑うのが関の山だったろうから
信じないことに関しておっさんを責める気はないが……俺にはMっ気はないから勘弁してくれ。
そもそも俺は嘘は言ってないのだから信じてもらわないと仕方ない。
もっとも、古泉をはじめとしたSOS団の面々のことや
長門が宇宙人の一種だということはぼかしたが…なぜなら余計にいかがわしくなるからだ。

「信じろとしか言えない。胡散臭い話だってのは重々承知だが俺は嘘は言ってない」

さて、こう言ってはみたもののどう出るか。
もし本当に発砲しそうなら一か八か攻撃に出るしかないが…

「まぁいっか」

軽いノリで簡単に引き下がってくれた。
なんなんだこいつは。でもこれで解放されれば、あとは―――

「で、最後の質問だ。お前さんはここで何をするつもりなんだ?」

こっちが油断した瞬間にまた核心を突いてきやがったなこのおっさん。
全員殺そうとしている―――なんて答えるわけにもいかないよな。
そんなことすれば死ぬのは俺だ。
だから、どう返事すればいいか困っていたわけだが。

「ま、言わなくても大体予想はつくわな。
 大方、全員殺して無事帰ろう――とか思ってるクチなんだろ?」

…ホントなんなんだこいつは。心を読めるとは聞いちゃいねぇぞ?

「なんで分かったんだ…って様子だな?カーンタンなことさ。
 まず、お前さんの身体からする臭い。…こりゃあ血の臭いだ。
 わざわざ素手で、既に一人以上殺してるんだよなあ?」

………。

「で、次にだ。お前さんは俺に捕えられてからずーっと殺気ビンビンだった。
 懐柔しようとか説得しようとかって気はなく、最初から俺を殺す機会を伺ってたよな?
 これが、俺がお前さんが殺し合いに乗っていると判断した材料だぁ」

…どうしたもんなんだろうな。
これが蛇の化け物が言ってた年季・実力、そして格の差…なんだろうか。
やっぱり俺はここで殺されちまうんだろうか?

いや、バカなことは考えるな。この程度のピンチを乗り越えられなくてどうする?
歴代のヒーローというのはピンチをチャンスに変え成長していってるだろう?
これは、チャンスだ。
この場を丸くおさめおっさんを上手くけしかけて殺し合いの促進ができれば
俺の負担も少なくなる。
そうだ、それがいい。というかそれしかない。

そう決意し、俺はこのおっさんを説得するために口を開いた。

「ホームズも真っ青の名推理だ。だが、一つだけ付け加えておきたいところがある」

「ほお~?」

「俺は全員殺して、無事帰る。だがその前に死んだ奴を生き返らせてもらってからな」

「死んだ奴を生き返らせる?そんなことも長門有希はできるってえのか?」

「ああ」

本当のところ、俺だって長門のできることできないことなんて分かっちゃいないが…
ここで『できない』とは言えないだろ?…俺が、発狂してしまう。
そんなことは考えちゃいけない。俺は続けて口を開く。

「俺からも一つだけ質問させてくれ」

「言ってみな」

「お前はここでどうするつもりなんだ?
 長門と対立して他の参加者とこの島からの脱出を目指すか
 俺のように全ての参加者を殺して優勝を目指すか、どっちなんだ」

おっさんは少し考えるような素振りを見せた後、こう言った。

「俺は自分が生き残れればそれでいい」

俺は心の中でガッツポーズをした。これなら上手くいくかもしれない。

「なら、おっさん。俺と手を組んでくれないか?」

自分の声が少し震えているように感じた。
俺だけじゃない、ハルヒ達の命もかかってるんだからしょうがないよな。
指をちょん切ってくれたおっさんに頼みごとをするのは癪だがな。

「おっさんは自分の好きなように振舞ってくれればいい。
 それこそ、参加者を殺しまわってもいいし主催に対抗する集団に入ってもいい。
 ……もっとも、後者の場合はおっさん以外を不意打ちで殺させてもらうが…。
 そして、俺は優勝したとすればおっさんも含めてみんな生き返らせる。
 どちらが生き残ったにせよ最終的にはおっさんは生きて帰ることができる。
 生存率が二倍になるんだ、悪い話じゃないと思う」

おっさんは俺の言葉を吟味するようにじーっとしていた。
少ししてから、動きを見せた。
コントロールメタルを銃口でぐりぐりと押さえつけながら喋りだす。
「言いたいことは分かった。確かに悪い話じゃないな。
 ………お前さんが本当に俺を生き返らせるつもりがあるのか、
 そもそもそれが本当に可能なら……だが」

ああ、結局はそこにいくのか。そりゃ信じろと言っても無理があるよな。
だが本気なんだから信じてもらわないと困る…ってこんなんばかりだな。
どうにかして俺の状況を理解してもらわないといけないんだが…

「俺は、マジだ」

我ながらなんて説得力のない言葉を口に出すんだ。
古泉に胡散臭い話をべらべらと平常心で喋る術を教えてもらっておけばよかった。
などと現実逃避しかけながらも俺はおっさんの言葉を待った。
そして、おっさんが紡いだ言葉とは―――

「よぉし、おじさんが一肌脱いでやろう」

―――予想外に、いい意味で期待を裏切るものだった。

「それは…俺の提案を呑んでくれるってことか?」

「そういうことだ、ほーらよ」

おっさんは自分の言葉を証明するようにずっとコントロールメタルに当てていた銃を下げた。
まだ一応警戒しているのだろう、俺の身体に巻きつけた有刺鉄線はそのままだが。

「協力体制ということなら断る理由は大してないしな。
 仲直りのしるしだ、俺から知ってることを色々と話してやるぜ」

そしておっさんはこちらに来てからのことを話し出した。
主催者である草壁タツオの子供、サツキとメイが参加者として紛れていること。
神社に人が何人かいたこと。
そして、その神社にいた四人の中に
少し青みがかった長髪の、眉毛が太めな十代半ばの女がいたということ。
………確実に朝倉だ。神社にいたのか。

さらに、おっさんは自身ことについても軽く説明を加えた。
名を雨蜘蛛。魂すら取り立てる砂漠の死神(なんだこの陳腐なネーミングは)と
恐れられている借金取立て屋だそうでカントー大砂漠というところの出身らしい。
知らん地名だ。そもそも名前がモロに漢字だし日本人?
でも日本にはそんな砂漠は……カントー…関東?いや、まさかなぁ?

俺も雨蜘蛛のおっさんに応えるように自分のこれまでの話を始めた。
知り合いである古泉、朝倉、朝比奈さん、そして俺の妹が参加していること。
現在、古泉と共同戦線を張っていること。
遊園地で出会った化け物のこと。
ガイバーショウと戦闘をしたこと。
………それ以外のここで起きた出来事はとてもじゃないが話す気になれなかった。

そもそも、おっさんはその話よりも俺自身の話のほうに興味があるようだった。
別の国にある砂漠にいけばどうかは知らんが
俺の住んでいた国では水不足にでもならない限り一般市民でも気軽に水を使えていたこと。
えらくその話が気になる様子だ。まあ砂漠出身なら水はやっぱり貴重なんだろうな。

おっさんにはオアシス政府なるものを知っているかと聞かれたが
そんなものは聞いたことがないのでそう答えた。

その返答に対し、何かおっさんの中で結論が出たのだろう。
納得した様子で情報交換を打ち切った。

「で、キョンって言ったな?お前さんはこれからどこに向かうんだ?」

「俺はここから西に向かい、参加者を減らしていく。
 午後六時に採掘場で古泉と合流するまで基本的にはその方針だ。
 雨蜘蛛さんはどうするんです…だ?」

年上で、一応友好関係になったのだから敬語を使おうかとも思ったが
なぜか敬ってはいけない気がしたので中断した。
……ここまで堕ちた俺がそんなことを思う資格はないのかもしれんが。

「俺は主催者の娘である草壁サツキを捜すつもりだが…
 その場その場で立ち回りを決める。
 お前のお望み通り『好きなように振舞う』わ、ふははははは」

おっさんの笑い声がむなしくレストランに響いた。
いや、俺の心にむなしく響いたのかもな。
そういえばこの荒れまくりのレストランと俺の心は似てるかもしれない。
荒れまくり…か。それどころかもう壊れているのかもな。
だって、俺は今まさにとんでもないことを言おうとしてるんだから。

「雨蜘蛛さん。報酬は出すから、少しだけ頼まれてくれないか?」

「頼み?報酬によるが、何を出すつもりなんだ?」

俺はその質問に答えるために、ディバックのほうへと歩き出した。

「こいつだ」

そして、俺の取り上げられていたディバックの一つをおっさんのほうへと蹴り飛ばす。

「その中には支給品一式と、鉄バットとロケット弾が入ってる。それが報酬だ」

おっさんがディバックの中身を確認する。
俺の言っていることが本当だと分かるとこちらを向き直った。

「何をさせようってんだ?」

おっさんの目の位置にあるレンズが鋭く光った。
俺は意を決して、言葉を続けた。

「俺は全員を殺すつもりだ。…だけど妹と朝比奈さんだけは自分の手で殺したくない。
 甘いことを言ってるってのは分かってるがな。
 だから、雨蜘蛛さん…もしこの二人に出会ったら……二人を…その……」

「みなまで言うな――お前さんの望み、この雨蜘蛛様が叶えてやろう」

俺が言葉を窮しているのをみかねたのか、おっさんが助け舟を出してくれた。
……とうとう言っちまったなぁ、俺。
堕ちるところまで堕ちたと思っていたがまだまだ底があるんじゃないだろうか。
下には下があるもんだ…と馬鹿らしい思考が頭を過ぎ去っていった。

その後、俺はおっさんに妹と朝比奈さんの容姿をできる限り伝え、
最後に身体に巻きついた有刺鉄線を切ってもらいレストランを後にした。


身体が休まるどころの話じゃなかったな。
雨蜘蛛のおっさんに渡さなかったほうのディバックから取り出した地図を見ながら俺は溜息をついた。
この先にあるコテージ郡で今度こそ休もう、そう思いながら地図を片付けた。
確かに疲れはしたが、決して無駄な疲労ではなかった。
あのおっさんがどう動いたとしても俺にとってそう悪い話にはならないだろうし
せこい話だが博物館のほうについては意図的に何も言わなかった。
あっちに向かって強者を潰してくれればいいんだが。
その上、俺には実行困難だった頼みごとも引き受けてくれた。
その頼みごとの対象である二人の顔が頭に浮かんでくる。

…ごめんな、妹よ。こんな馬鹿兄貴で。
…すいません、朝比奈さん。こんな阿呆後輩で。

俺は懺悔もそこそこに、浮かんできた顔を振り払うようにして走り出した。

二人とも、安心してくれ。
どんな怖い目にあったとしても、ちゃんと長門に記憶を消して生き返らせてもらうから。



【J-05 街道/一日目・昼前】



【名前】キョン@涼宮ハルヒの憂鬱
【状態】ダメージ(中)、疲労(極大)、左手薬指・小指・右手小指欠損、0号ガイバー状態、
    返り血に塗れている、精神的に不安定、強い決意
【持ち物】デイパック(支給品一式入り)、 SDカード@現実、
     大キナ物カラ小サナ物マデ銃(残り9回)@ケロロ軍曹、タムタムの木の種@キン肉マン

【思考】
1:仲間も含めた参加者は全員殺す。そして、長門に仲間を蘇生してもらう。
2:出来ればコテージ郡辺りで休憩したい。
3:島の南西を周り、見つけた参加者を殺す。
4:強くなりたい
5:午後6時に、採掘場で古泉と合流。
6:妹やハルヒ達の記憶は長門に消してもらう
7:博物館方向にいる人物を警戒



※ハルヒを殺したことへのショックでやや精神不安定ですが、理性はあります。
※アシュラマン・草壁姉妹の名前、容姿を知りましたが大体の感覚でしかわかっていません。
※ちぎれた指もガイバーの再生能力でそのうち再生します。




レストランに取り残された雨蜘蛛は椅子に腰掛け、じーっとしていた。

「色々と、面白いことになってきたじゃねぇか」

キョンから得た情報。
やはり、オアシス政府の感知しない所で水が豊富な場所があるらしい。
あいつの話によれば自分の国から離れた場所には砂漠があるところもあるらしい。
逆に言えば関東大砂漠から遠く離れた場所に水が豊富な地域があるのだろう。

関東大砂漠に外がある―――ということ自体、真面目に考えたことはなかったが
そういう場所があるというのなら機会があれば一度ちゃんと考えてみることにしよう。


そして、主催者の情報。
これは運が良かったとしか言い様がない。
キョンがサツキを知らなかったことから主催者二人の繋がりが分からなくなったが
……まぁ、男と女が裏でどう繋がっていても不思議ではない。
長門のバックにとんでもない組織がついているというのを信じるというのなら
優勝しない限り生きて帰ることはほぼ不可能だと判断するより他ないのが残念ではあったが
得られた情報は決して利用価値の小さいものではなかった。。


さらに、キョン自身。
これはいい手駒だ。駆け引きというのをまるで分かっちゃいない。
もし主催に対する集団に潜り込むというのならあいつにその集団を襲わせて、
一人か二人か死んだあたりで自分が突如として割って入りキョンを殺せば
多少の信頼を得ることは容易いだろう。
最後には雨蜘蛛自身をも殺して優勝する…と言っていたが
武器と事前準備が揃っていればあの程度の狂犬に負ける道理はない。
こいつの全てを利用してやろう。死、そのものさえも。
午後六時に採掘場で古泉とかいうのと落ち合うと言っていたが…気が向けば行くとしよう。


最後に、キョンの依頼。
未だに七、八歳程度にしか見えない外見の十歳そこらの妹。
あどけない顔立ちをしたボインの少女。

―――この二人を好きなようにしちゃってくれちゃっていいってことだよな?
―――そんな二人を、ちょめちょめをアレしてアレをちょめちょめっちゃっていいってことだ。

雨蜘蛛は椅子から立ち上がり、ディバックを持ち上げた。
力がふつふつと湧き上がり集中するのを感じる。
………主に、股間へと。

「やれやれ、また捜す人間が増えちまったな~♪」

おっさん、語尾語尾――などとツッコミをくれる人は既にいない。
今にも鼻歌でも歌いだしそうな様子で雨蜘蛛はレストランの戸を開いた。

「ふは、ふははははははは~」

そして突然不気味な高笑いを始め彼もレストランを後にした。

いつもの『彼』がいたならその光景を見てこう思っただろう。
"なんだこの変態は…"と。
いつものではない『彼』はその変態と共に打算という道を歩き始めたのだった。



【J-05 レストラン前/一日目・昼前】



【名前】雨蜘蛛@砂ぼうず
【状態】胸に軽い切り傷 マントやや損傷
【持ち物】S&W M10 ミリタリーポリス@現実、有刺鉄線@現実、枝切りハサミ
     スタングレネード(残弾2)@現実、デイパック(支給品一式)×4
     ホーミングモードの鉄バット@涼宮ハルヒの憂鬱、RPG-7@現実(残弾三発)
【思考】
1:生き残る為には手段を選ばない。邪魔な参加者は必要に応じて殺す。
2:水野灌太と決着をつけたい。
3:キョンの妹・朝比奈みくるをちょめちょめする。
4:草壁サツキに会って主催側の情報、及び彼女のいた場所の情報の収集。その後は……。(トトロ?ああ、ついででいいや)
5:キョンを利用する。午後六時に採掘場に行くかは保留。



【備考】
※第二十話「裏と、便」終了後に参戦。(まだ水野灌太が爆発に巻き込まれていない時期)
※雨蜘蛛が着ている砂漠スーツはあくまでも衣装としてです。
 索敵機能などは制限されています。詳しい事は次の書き手さんにお任せします。
※メイのいた場所が、自分のいた場所とは異なる世界観だと理解しました。
※サツキがメイの姉であること、トトロが正体不明の生命体であること、
 草壁タツオが二人の親だと知りました。サツキとトトロの詳しい容姿についても把握済みです。
※サツキやメイのいた場所に、政府の目が届かないオアシスがある、
 もしくはキョンの世界と同様に関東大砂漠から遠い場所だと思っています。
※長門有希と草壁サツキが関係あるかもしれないと考えています。
※長門有希とキョンの関係を簡単に把握しました。
※朝比奈みくる(小)・キョンの妹・古泉一樹・ガイバーショウの容姿を伝え聞きました。
※蛇の化け物(ナーガ)を危険人物と認識しました。
※有刺鉄線がどれくらいでなくなるかは以降の書き手さんにお任せです。

※J-05レストランにガイバーの指三つが放置されています。


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0対1~似て非なる少年たち~ キョン 走り続けてこそ人生
少女×雨×拷問 雨蜘蛛 蜘蛛は水を求め、水を恐れる







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