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俺達はとんでもない思い違いをしていたのかもしれない ◆5xPP7aGpCE




一人と二匹は森の中に居た。
いや、正しくは隠れていると言った方が適当かもしれない。
戦闘の末、荷物を全て失って怪我で満足に動けない状態ともなれば仕方のない事だろう。
しかし当人にとってはそれはとても耐えられる事では無かった。

「くっ、やっぱりいつもより治るのが遅い…、しかし何時までもこうしていられない」
「晶、まだ動いたらあかんっ!せめて後少し休んだれや!」

怪我を押し無理に出発しようとする晶をスエゾーが慌てて押し留めた。
小柄な小トトロも心配そうに晶の足元に縋り付き同じく出発に反対する。
実際晶の状態はとても万全とは言い難い。
特に背中は文字通り黒焦げだ、完全に炭化しておりボロボロと欠片が崩れ落ちる。
再生が進みつつもその痛みは耐え難い。
己の最強武器でもあるメガ・スマッシャーの威力を晶は自ら思い知らされていた。

「そや!話をせえへんか?考えたらお互いの事碌に知らんやろ、休んどるのが嫌ならせめてお話タイムって考えたらどうや?」
「スエゾー、しかし今こうしている間にも!」

言いかけて晶は気付いた、スエゾーもまたかなりの怪我を負っている。
晶の腕の中だったとはいえメガ・スマッシャーのただ中に居たのだ、何の影響も受けないはずはない。
高熱に晒され全身に火傷を負っているらしく皮膚が腫れあちこちに水泡が出来ていた。
なのに自分は泣き言一つ言わずに今まで晶の心配をしていてくれたのだ。
よく見れば小トトロも毛の一部が縮れている、なのに焦る余りにそれが見えていなかった事に晶は己を恥じた。

「…すまない、お前達の事も考えずに。スエゾーの言う通り暫くこうしていよう」
「何言っとんのや、晶が庇ってくれへんかったらオレは今頃消し炭や。小トトロもそう思っとるわ」

同調する様に小トトロが身体を摺り寄せる。
詫びる晶に対し二匹は感謝の意を示しつつ休んでくれる事に安心した。

「確かにお互いの事をよく話していなかったな、悪かった。スエゾーの仲間についても聞かせてくれ」

晶はレストランで目を覚ましたスエゾーとは軽い自己紹介と行動方針の確認しか行っていない事を思い出した。
自分には瀬川哲郎や巻島顎人といった元々の仲間は参加していないがスエゾーにはゲンキとホリィという仲間が島の何処かに居るのである。
数時間前に会ったばかりであるが、先程0号ガイバーとの戦いで身を挺して助けてくれたスエゾーを晶はもう敵と疑っていなかった。
だからこそ彼の仲間について知っておきたい、心からそう思った。

「よっしゃ!まずゲンキについて話すで!日本って所から来た小学生なんやけどガッツは誰よりも持っとるんや。
 ホリィはオレを円盤石から誕生されてくれた幼馴染の女の子や。戦うよりまとめ役って感じやな、皆の料理も作ってくれとるんやで。
 ハムは昔詐欺師をしとった奴だが今は信用できる!頭が良くて腕以外でも頼りになる奴や。
 モッチーは…、子供やったけど本当に勇気を持っとる奴やった…」

元気良く仲間の事を話し出すスエゾーだったが既に放送で名前が呼ばれたモッチーの事になると声が小さくなる。
聞いた直後は信じていいのか判らなかったかもしれないが、自らも幾度と命を失いかけるという事実を突きつけられて疑う理由は殆ど無い。

「あいつ、最初は喋れへんでチーチーとしか言えなかったんやで?おまけにオレらに毒の実を食わすっつうドジっぷりやった、けど」

言葉を区切ってからスエゾーは語る。
モッチーがどれ程皆の為に頑張ってくれていたのか、皆の助けになったのか、晶には理解できない内容が多々含まれていたものの
スエゾーが仲間を大切にする気持ちは十分に伝わって来る。
嘘では無いだろうと思うと同時に最初ゾアノイドと疑って殺そうとした事を恥ずかしく感じた。
拳を握り締めてまだ生きている仲間と再会させてやりたいと思う。

「晶、しんみりした話になってすまん。小トトロもそんな顔せへんでいいで、だからといってオレは挫けたりせえへん」

もふもふと身体を摺り寄せる小トトロをスエゾーは気にせんでええ、と言葉をかける。
堪えていた思いを吐き出して気持ちの整理を付けたかったのかもしれない。
話し終えて疲れたらしくスエゾーは木にもたれかかった。

「次は俺の番だな、話すと長いんだが元々俺はスエゾーの言う所の日本の普通の高校生だった。ガイバーと出会うまでは…」

座りながら晶は自らの「とても他人には信じられない話」を口にする。
偶然の殖装から始まって秘密結社クロノスの存在と襲い掛かるゾアノイドとの戦い、そして父親との非情な別れ、ギュオーとの戦い。
ここに来る直前まで起こった事を晶は二匹に説明した。

「晶、お前ホンマに苦労したんやな。正直よく判らん話やけどムー以外にもそんな悪い奴がおったとは全然知らんかったわ」

先ほどの晶と同じくスエゾーもまた理解できない部分が多かった、しかし晶の苦労とここに居ない仲間に対する想いはしっかりと伝わっている。
見た目だけでワルモンかと疑ってしまったがゲンキにも負けず劣らずのガッツを感じて出会えた事に感謝した。

「それよりも今はこの殺し合いを止める事が大事だ、けどいつもの力が出せない。くそっ、クロノスめ!」

身の上を話した事でクロノスに対する怒りを新しくしたのか晶が叫ぶ。
自分の力が出せていればスエゾーの仲間を救えたかもしれないし先程の0号ガイバーからの攻撃もうまく避けられた可能性があったのだ。
背中の再生はまだ完了していない、以前なら完全に戻っているだけの時間が経過しているというのに。

「晶、落ち着くんや。それより気になったんやかこの殺し合いを行っとるのはその『クロノス』という連中なんか?」

スエゾーも主催者の事は気になっていたのだろう、晶に疑問を口にする。
少なくともモンスターファーム界でこのような事を行える、行うような存在には心当たりが無い様だ。

「そうとしか考えられない、名簿にはギュオーやゼクトールといったクロノスの敵の名前がある。しかし奴らが何を目的としているかは判らない」

疑問を感じつつも晶はそうと断言した。
ガイバーである自分も含めた多数の参加者を集めるだけの組織力、0号ガイバーの存在、ゾアノイドかもしれないモッチーや小トトロの存在、
加えてギュオー、ゼクトール、アプトムといった敵の名前があればクロノスの関与を疑う理由は揃っている。
しかし…そう言いながらも晶は強い違和感を感じていた。

果たしてクロノスがこんなまどろっこしい事をするだろうか?埋められていたあの小さなカエルに似たゾアノイドか実験体といい、
どうしても過去向き合ってきた組織の仕業にしてはスッキリしない部分が多過ぎる。
こんな時に哲郎さんに聞けたら、とこの場に居ない友人の事を思った。

「奴らに何をされたのかは判らないが普段の力が出せない、せめて外部に連絡できれば解決の手掛かりを聞けるかもしれないんだが」

それでも他に答えを持ち合わせていない晶はクロノスの可能性を否定できない。
しかし態度には出てしまったのだろう、スエゾーが自信の無さに気付いたらしい。

「ま、そんな事今考えても仕方ないやろ。後で自然に解ってくる可能性だってあるわ」
「すまない、奴らの目的が解れば何か手の打ちようがあるかもしれないのに」

スエゾーは解らない事を考えても仕方ないとばかりに晶に言って話を打ち切る。
しかし晶の頭の中ではこの違和感を放置する事が正しいのかどうか決めかねていた。

「何なら吐き出してみたらどうや?オレはハムみたいに頭が良くあらへんけど話を聞く程度なら出来るで」

腹の中に余計なものを溜めているのは身体に良くないとばかりにスエゾーは晶に勧める。
口が大きく身体が小さいだけあって人一倍気になるのかもしれない。

「そうだな、まず俺はスエゾーや小トトロをクロノスに調整されたゾアノイドか実験体と思っていた。
 けど攫われて調整された訳じゃなく円盤石から誕生した、『イイモン』が『ワルモン』に変えられて元に戻す為に冒険をしているという話を聞いて
 どう受け止めればいいのかまるで解らない。もちろんスエゾーが嘘を言っているとは思ってない」

晶も口に出す程度はしてみた方が良いと思ったのだろう、先程の話から感じていた疑問を口にする。
スエゾーも内容に口を挟まず晶の言いたい様にさせておいてくれている。
小トトロはもふもふと両者の間をくるくる歩き回って場の空気を和ませていた。

「クロノスは俺の命とガイバーを狙っていたのに捕らえておきながらこんな事をさせる理由にも心当たりが無い。
 さっき戦った別のガイバーの事も気になるがそっちは最初から解らない、俺と違ってクロノスに逆らう気が無いなら奴らも仲間として働かせた方がいいはずだ。
 スエゾーの仲間を参加させているのに俺の仲間は一人も居ない、けどこれは哲郎さん達がうまく逃げてくれたのかもしれない。
 あの二人も初めて見る顔だった、クロノスは巨大だから不思議じゃないけどギュオー達とは…理由がある訳じゃないが何か違うと感じた」

確かに胸に抱え込むよりは良い。
感じた事を口に出す度に解決しないまでも多少気分が落ち着いてきた。
それと共に膨らむ疑問。

―――本当に黒幕はクロノスなのか?

他に思い当たる組織が無いからと無意識の内に否定していた考えだが違和感は次から次に湧き出てくる。
もちろん晶はクロノスの組織について詳しい訳でも無い、しかし今自分が向き合っている相手とクロノスは同じ組織にしては違いすぎた。
目的、そのやり方、非情さといった部分ではなくもっと根本的な空気の部分で違う。

「…今はこれぐらいだスエゾー、無理に聞かせてすまなかったな」
「全然構へん、けどそこまで言うのだったら晶の中で結論は既に出てると違うんか?」

聞き終えたスエゾーが放つ言葉に晶は一瞬身を震わせた。
絶句したそんな晶とスエゾーの間では相変わらず小トトロがくるくると回ってる。

「ちょっと待ってくれ、そんな事が…」

その結論に異議を唱える様に晶の口が動くが後は続かない。
無言のまま晶はその結論を反芻する。


―――この殺し合いは、クロノスとは無関係なのか?

確かにそう考える事も出来るが、如何せん情報が少な過ぎる。
しかしこれ程の事を行えるのはクロノスしか心当たりが無い。

「言ったやろ、今は考えてもしょうがあらへん。それより晶の知る危ない奴を教えてくれんか?名簿無くなって不便やけど」

再び疑問の堂々巡りに陥りかけていたのだろう、見かねたらしいスエゾーが口を挟んで話題を変える。
ティバックと共に参加者名簿は失ってしまったが数人の名前だけなら書かずとも覚えられるだろう。

「わかった、確かにこの問題は後回しにしよう。俺の知っている乗りそうな参加者はギュオー、ゼクトール、アプトム、さっき言った様に敵であるクロノスの連中だけだ。
 さっきの0号ガイバーは元々一般人らしいが、誰かは流石に解らないな」

晶も必要な情報交換はまだ終わっていない事を思い出したらしく自らの知る危険人物の情報を伝える。
特に危険なのがギュオー、クロノスの幹部だった男で他の二人よりも実力は上だとスエゾーに教えた。
もちろん二人の実力も侮れないという事も過去の経験を交えて話す。
この殺し合いがクロノスの手によるもので無いとしても彼らが乗る可能性は高い、晶はそう考えた。
他の参加者はざっと名簿を見た限りでは知っている人物は居なかったが草壁メイ、サツキの二人は主催者草壁タツオの関係者ではないかという事も話しておく。

「名前からして女性か女の子だと思うけど本人が乗ってなくても安心は出来ない、もし間違いだとしたらと思うと疑いたくは無いんだが…」

名簿を確認した時から浮かんでいた「二人がゾアノイドに調整済み」という可能性。
本人に自覚が無いだけに大人数の中で目覚めさせられたら、と思うと背筋が寒くなる。
当然何人かの犠牲者が出るだろうし、犠牲無しに退けられたとしても突然人間が化け物になる場面を見せられたら今後他人を信用しようとする気持ちなど無くなってしまうだろう。
その集団もそのまま疑心暗鬼に陥って崩壊してしまうかもしれない。

「危険なんか、その二人?」
「そうと決まった訳じゃない、ただ会っても様子がおかしくないか確かめるぐらいはした方が良いかもしれない」

この考えが杞憂だった場合、話すのは余計な火種になりかねない、晶はそう判断した。
元の世界の敵以外は島で出会ったのがスエゾーと正体不明のままである0号ガイバー、そして埋まっていたカエルに似た死体と少なかった事もあり晶の話はここまでだった。

「次はスエゾーの知っている事を話してくれ」
「オレも晶と同じくろくに他人と出会っておらへんのや。けど危ないのは最初に襲われた見かけないワルモンやな、思い出すのも嫌や」

再び出会ったら、と考えるだけでも恐ろしいのだろう、スエゾーがブルッと身体を震わせた。
それでもその男(オメガマン)の特徴や技を晶へと一つ一つ伝えていく。

「それから、俺の事を超人とか訳わからん事言っとったわ。あかん寒気がする…」
「超人か、それが何かの手掛かりという事かもしれない」

もちろん晶には『超人』という言葉に心当たりは無い。
しかしその危険な参加者の名前を知る手掛かり程度にはなるだろうと頭に留める事にする。

「それともう一人、名簿に載っとったナーガって奴。ワルモン四天王の一人や…」

恐怖から一転怒りを見せてスエゾーは語る。
過去、村を襲われてホリィと自分の二人だけが助かった事、非常に残虐な性格でまず乗っていると考えて間違いないだろう事。
話し終えるとスエゾーの瞳に宿った怒りもようやく収まる。
このスエゾーがそこまで憎む相手とは、と驚いた晶もしっかりと心にその名を刻み付けた。


「オレが知っている危ない奴はそれだけやな、それよりそろそろ博物館へ行こか」

確かに話している内に背中の再生は大分進んでくれていた。
まだ再生途中であり痛みは残っているが移動する分には支障が無い。

「何しとる晶。今度はオレがお前を置いていくで~!」

持って行く荷物が無い為、スエゾーはそのまま東の方へと歩き出した。
晶もようやく思考を打ち切って立ち上がる。

疲労は残っているが痛みは大分和らいでいた。
これなら多少の戦いは問題無いだろう。

「そうだな、今は殺し合いに巻き込まれた人を救うのが先決だ」

黒幕はクロノスとは限らない、その可能性も考える事にして晶はスエゾーの後を追い始めた。
思考を完全に切り替えてこれから先の事を考える。

正直大分時間が過ぎており博物館には既に誰も居ないかもしれないがせめて何があったか見ておきたい。
失った道具の代わりに使える物も探す必要がある、怪我人が残っているなら保護して話を聞きたい。

自分とスエゾーの世界観の食い違い、これは他の参加者も感じているのだろうか?
早く誰かに会って確かめたいと晶は思った。

そして首輪の事、抑えられたガイバーの力、参加しているクロノスの敵…殺し合いを止めるにはまだまだ考えねばならない事がある。
いずれにせよ簡単にはいかないだろうと気を引き締める。

「瑞紀、待っていてくれ…」

自分の帰りを待っているだろう少女に対して晶は心の中で詫びる。
会いたいが今はこの島で殺し合いを止め、主催者を打ち倒さねばならない。
その為出会える日が先に延びる事を許して欲しいと呟いた。


こうして休息を取ったガイバーⅠこと深町晶は博物館へ向けて森を駆ける。
果たして彼が最愛の少女の元へ戻れる日は来るのだろうか?
戦え、ガイバーⅠ!




【H-08 博物館近くの森/一日目・昼前】


【深町晶@強殖装甲ガイバー】
【状態】:背中にダメージ(回復中)、疲労(中)、苦悩
【持ち物】 小トトロ@となりのトトロ
【思考】
0:博物館へ向かう。襲われている人がいるなら保護する。
1:ゲームを破壊する。
2:巻島のような非情さがほしい……?
3:スエゾーの仲間(ゲンキ、ホリィ、ハム)を探す。
4:クロノスメンバーが他者に危害を加える前に倒す。
5:もう一人のガイバー(キョン)を止めたい。
6:メイ、サツキの正体を確認し、必要なら守る。
7:巻き込まれた人たちを守る。


【備考】
※ゲームの黒幕をクロノスだと考えていましたが揺らいでいます。
※トトロ、スエゾーを獣化兵かもしれないと考えています。
※小トトロはトトロの関係者だと結論しました。
※参戦時期は第25話「胎動の蛹」終了時。
※【巨人殖装(ギガンティック)】が現時点では使用できません。
  以後何らかの要因で使用できるかどうかは後の書き手さんにお任せします。
※ガイバーに課せられた制限に気づきました。
※ナーガは危険人物だと認識しました



【スエゾー@モンスターファーム~円盤石の秘密~】
【状態】:全身に傷(手当済み)、火傷、貧血気味
【持ち物】 なし
【思考】
0:晶、小トトロと行動を共にする。
1:ゲンキ、ホリィたちを探す。
2:オメガマン(容姿のみ記憶)には二度と会いたくない。


【備考】
※スエゾーの舐める、キッス、唾にはガッツダウンの効果があるようです。
※ガッツダウン技はくらえばくらうほど、相手は疲れます。スエゾーも疲れます。
※スエゾーが見える範囲は周囲一エリアが限界です。日が昇ったので人影がはっきり見えるかも知れません。
※ギュオー、ゼクトール、アプトムを危険人物と認識しました。


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0対1~似て非なる少年たち~ 深町晶 舞い降りたWho are you?
スエゾー






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