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祈る者、猛る者の心知らず ◆2XEqsKa.CM



「……」

「ハァ……ハァ……」


知らず知らずに高まる胸の動悸。
嘆息の合間を縫うように、汗がたらりと頬を伝う。
私――便利屋小砂は、正直言って戦慄していた。
何に? ……言うまでもないだろう。
私の新しい師匠、高町なのはさんにだ。

事の顛末を話そう。
私となのはさんは、血走った目をしてナイフを持っていた女を威嚇し、捕獲した。
組み敷いた女に話を聞いてみたが、どうにも支離滅裂で理解し難い。
数時間前に一旦別れた私の仲間、タママ二等兵が彼女を襲い、のみならず彼女の知り合いを騙していると言うのだ。
この女――惣流・アスカ・ラングレーの話も、全く信じられないわけではない。
事実私も、タママには一度襲い掛かられているからだ。
今思えば、タママを撃退した直後のあのしおらしい態度は擬態だったのかもしれないとも推測できる。
この推測は、私がタママに対して「次に会ったら殺す必要がある」という荷を背負っているから出る邪推なのかも知れない。
知れない、が。
あの時垣間見た、タママの邪悪な顔は、その邪推を私の中で裏付けるに十分なものだった。
最も、ネブラが自分の手に戻ってくる確率を考えれば、それほど気にすることでもない。
問題は、大きな問題は、なのはさんの娘……ヴィヴィオの名前を、アスカが出した事だ。
アスカを警戒し、妙な真似をすればすぐに撃てる態勢を保ちながら、チラチラと横目でなのはさんの顔色を窺う。
私が冗談交じりに「アスカを痛めつけてヴィヴィオの居場所を吐かせよう」と言ってからというもの、
我が師匠の両瞳は徐々に生気を失い、その奥底に冥い暗黒を湛えていく。

「……」

「ハァ……! ハァ……!」

「な……なによ、あんた達」

師匠の目の色と私の段々と激しくなる息遣いに、アスカが流石に不審な目を向けてきた。
私が見る限りでは、その眼差しには少なからぬ動揺と怯えが見られる。
当然だろう……有利になると思って取引材料をチラつかせたら、それが暴力で奪われそうな流れを生じさせたのだ。
だが、この流れは私にとってはそう驚いたものでもない。
猛獣の鼻先に無防備に餌を吊るすということは、餌ごと噛み砕かれる危険を冒すということに他ならない。
相手と対等に立つ為には、餌だけではなく餌のみを噛ませる策がなくてはならないのだ。
相手が餌に食いついてくれば、戦力差があっても取引が成功する可能性はぐんと上がる。
最も、初対面の時から今までの彼女の様子を見ると、高度に策を練って私達を利用するなど到底不可能だったろうが。
それにしたって、ヴィヴィオの居場所を知っていると言ってしまったのはまずかった。
せめて「ヴィヴィオをタママ達の近くで見た」程度にしておけば、師匠をタママ達の近くに誘導する事は容易。
その後どうやってアスカが師匠にタママを殺させるかは、別問題だが……。
とにかくこうなってしまうと、銃を突きつけられていて拷問に抵抗することの出来ないアスカが辿る道は三つ。
アドバンテージを失って捨てられるか、意地を張り続けて死ぬか、だ。
そもそも情報自体が嘘だったとすれば、間違いなく殺害される。
もう、どう転んでも、アスカにいい目はないのだ。
変に条件など出さずに、居場所を教えてからしばらく行動を共にし、ヴィヴィオと合流した後ならば。
お人よしな師匠の事だ、あるいはアスカの話を信じて協力してくれていたのかもしれなかったのに。



「……」

「ひ……」

(ご愁傷様……)

光を失った目のままで、師匠がアスカとの距離を縮めていく。
短く悲鳴を上げ、しかし逃げられないアスカを見て、心の中で合唱。
師匠には回復まほーがある。
少しやりすぎても、治療してから拷問をいつまでも続けることが出来るのだ、これは大きい。
千切れた部分は治せないらしいから、主に殴打による拷問になるだろう。
馬乗りになって何度も殴り、何度も治療し、いつまでも殴り続ける。
ある程度肝が据わった者でも、いつかは吐くだろう。
恐らくパンピーのアスカでは、一回目の治療を迎えられるかどうかすら怪しい。
ある意味では、長く苦痛を味わわないで済むから幸運とも言えるか。

「……」

「ああ……あ……」

(掴んだ……始まるか! )

師匠が、アスカの両肩をがしり、と掴んだ。
銃を撃つことになった場合に弾が師匠に当たらないよう、少し動いて射線を確保する。
アスカの本格的に怯え始めた顔が見えた。
あれではろくに抵抗もできないと見ていいだろう。
いまアスカが見ているであろうなのはさんの表情を想像して、背中に怖気が走る。
流石は私の見込んだ師匠……一見善良に見えても、その本質は悪一文字か。
師匠はその態勢のまま、じっとアスカの顔を睨みつけて(予想)いる。


「……」

(沈黙で相手の気を揉ませ、恐怖を掻きたてるというわけか……ん? )


アスカの恐怖に歪んだ顔が、ふっと緩んだ気がした。
そして、師匠が……。


アスカを、優しく抱き留めた。



「……!? 」

「な、なんのつも……」

「大丈夫。もう、大丈夫」


小さく、しかし力強い声で、師匠が囁いた。
アスカは突然抱きしめられてきょとんとしているように見える。
私は師匠の表情がよく見えるように、またちょこちょこと移動した。
師匠はゆっくりとアスカを体から離し、言葉を継ぐ。

「怖かったんだよね? 当然だよ、こんな事にいきなり巻き込まれたんだもん。
 その上、襲われてそんな怪我までしちゃったら、人を疑って、荒んだ気持ちになっても無理ないよ」

「……う」

「でもね、怖がってるのはアスカだけじゃないんだよ? だから、さっきみたいな態度はどうかな?
 怖いからって、他の人を怖がらせるような事をしてたら、いつかアスカ自身が怖い人になっちゃうよ? 」

「そ、それは」

「だから、もうアスカはそういう風に生きていかなくてもいい。私が、守るから。
 アスカも、アスカの大事な人も。きっと! もう……安心して、いいんだよ、ね? 」

なのはさんは天使のような笑顔で、反論しようとしたアスカをもう一度抱き寄せる。
その福与かな胸が俯いたアスカの顔に当たり、埋もれさせる。
アスカは少しもがくような動きを見せたが、師匠のホールドは固く、すぐに諦める。
そのまましばらく、場に静寂な空気が流れた。
落ち着いたと判断したのか、師匠はアスカを抱いたまま見下ろす。
そして、言った。

「うん、わかってる。アスカの大事な人……加持さんが心配なんだよね?
 ヴィヴィオの事は、アスカが落ち着いてから教えてくれればいい。まずは、加持さん達の様子を見に行こう。
 でも、見た目が人間じゃないってだけで攻撃するのはやめよう? それが約束できるなら、私達も力を貸すよ」

「し、師匠! 」

「ほ、本当に!? 」




師匠が、あっさりとアスカの申し出を引き受けてしまった。
まいったな……タママとはなるべく会いたくなかったんだけど。
まあ、アスカの話(加持さんがタママに騙されている)とかは恐らく過剰妄想だろう。
師匠や冬月さんから聞いた話じゃあ加持さんとやらもまともな人間らしいし、
アスカも落ち着かせた状態で会えば騒動になるって事もあるまい。
だから、この決定自体はいいのだが……。

「……あのー、師匠。ヴィヴィオちゃんの事は本当にそれで……」

「……」

恐る恐る質問する。
あれほど偏執していたヴィヴィオを後回しにして、冬月さんたちの下へ向かっていいのだろうか。
今まで見てきた師匠の行動から見ると、なーんとなく、ドツボに嵌まりそうな気がしてならないのだが……。
師匠は一瞬表情を暗くして――すぐに、満面の笑顔を作って、自分と私に言い聞かせるように言った。
善人オーラ全開! 当社比どっかの熱血の5倍で!

「大丈夫だよ。冬樹くんみたいに、また助けられたはずの人を助けられなかったら……ヴィヴィオにも、フェイトちゃんにも、
 怒られちゃうからね。アスカの話だと、デバイス達も一緒みたいだし……ヴィヴィオも、強い子だから。
 だから、加持さんや小砂ちゃんの仲間に迫ってるかもしれない危険を放って、ヴィヴィオの所に行くわけには行かない!」

「おお……」



    ジャーン
                          ジャーン


げえっ、聖母!
いい人だとは思っていたが、まさかこれ程とは。
この決断は、ヴィヴィオへの信頼と、自分の務めへの強い責任感、そして大人としての決意がなくてはできないことだ。
これが出来るのならば、何があってもそうそう揺らぐことはないだろう。
ならば、私に出来ることはただ一つ。
師匠の手助けをして、冬月さん達と合流し、ヴィヴィオを探すのだ! 魔法を教えてもらう為に!

人助け=正義!

親子=愛!

打算=友情!




(しかし……くっ! また疼きだしやがった! )

全身に蕁麻疹を出しながら地面を転げ回る私を、アスカと師匠が、不思議そうに見つめていた……。








「……1、14歳ぃ!? 同い年かよ! 」

「驚くのは普通こっちでしょ。あんた……チビ過ぎない? ちゃんとご飯食べてんの?」


小砂ちゃんとアスカが、お互いの年齢を聞いて仰天している。
私はアスカの焼き切れた髪を整える為に、民家から拝借したハサミを走らせていた。
アスカはそんな事をしている暇はない、早く行かないと、と急かしたが。
もうじき放送だ。禁止エリアを聞いて、ちゃんとこれからの計画を立てて動いた方がいいだろう。
アスカが話してくれたが、ヴィヴィオは高校へ行った可能性が高いらしい。
向かうのはすぐ近くにいるであろう、加持さん達と合流し、アスカの誤解を解いてからになるだろう。
禁止エリアにならなければいいが……。

「緑岩の怪物の名前は分からないの? 」

「ええ。名乗らなかったしね」

アスカに、決して声の調子を崩さないように、静かに問う。
フェイトちゃんがヴィヴィオを探していた、と語ったというその怪物。
彼(?)がフェイトちゃんを殺したのだろうか。だとすれば……。
ハサミを持つ手に力が入る。
アスカの髪がパラパラと、規則正しく地面に落ちていく。
手の力を抜き、一息ついた。

「――なのは? 」

「ううん、なんでもないよ」

動きが止まったのを不審に思ったのか、振り向いて心配そうにこちらを窺うアスカ。
彼女は14歳。スバルやティアナより年下なのだ。しかも、彼女は一般人。
話を聞く限りでは、特殊な訓練も受けていない、ただの中学生。
そんな彼女が、このようなゲームの中で、筆舌尽くしがたい苦境を渡らされてきた。
私は、そんな彼女のお陰で、ほんの少し心の平静を取り戻せていた。
彼女は、母親を無くして泣き叫んでいた、あの日のヴィヴィオと同じなのだ。
そんな彼女を守ることは、管理局の仕事以前に、私こそがやらなくてはならない事のような気がした。
彼女だけではない。
今までヴィヴィオと自分の事しか考えていなかった自分が恥ずかしくなる。
フェイトちゃんも、アスカの仲間達……モッチーやハルヒも死んだ。
その死が、アスカを苦しめ、攻撃的にしてしまっている。
アスカを襲ったという怪物も、そしてフェイトちゃんを殺した人も、この状況で我を失ってしまっただけなのかも知れない。
子供の頃……10年前なら、私もフェイトちゃんの死に嘆き悲しみ、自棄になってしまっただろう。
だが、今の私は違う。
私は、部下を持ち、たくさんの世界とその文明と住民を守る使命を持った、自立した大人だ。大人なのだ。
"誰か"がこのゲームを止める為、鋼の精神で、崩れず壊れず揺らがずに行動しなくてはならないのならば。
その"誰か"は、私でなくてはならない。


(そうだよね? ……フェイトちゃん)


ハサミを持つ手には、もう余計な力は入らなくなっていた。







(……畜生! 気持ち悪いのよ、何が守る、だ! )

外面は小砂と談笑していながらも、アスカは心の中で悪口雑言罵詈雑言を尽くしていた。
アスカの胸中には、安心も、信頼も一切ない。
ついさっきまで心の中でわずかに心配していたヴィヴィオへの気持ちも、綺麗さっぱり無くなっている。
その全ては……。

(この、したり顔で私の髪を切ってる女のせいよ! わかってるんだからね……! あんたの魂胆!
 私を慰めてるような素振りをしてたけど、それは全部自分の精神を安定させるための口から出任せ!
 始めてみた時から言葉に感じた不安定さが、今はもうなくなってるもの! 私を体よく利用して、楽しいの!?
 大体、母親みたいな態度で接してくるのがうっとおしいのよ! 私のママは一人だけなんだから!
 人の心に土足で踏み込んできて、お説教!? ふざけんじゃないわよ、ババァ! 私にママって呼んで欲しいの!?
 冗談じゃないわよ、クソ野郎! 私が怖い人になっちゃう、ですって!? 私は選ばれた子供なのよ、馬鹿にしないで!
 本当に怖いのは、魔法なんて物を使えるアンタじゃない! 化物じゃなくても、化物と一緒よ! 死んじゃえばいいのに。
 この女、あのカエルの化物と話し合いをするみたいな雰囲気だったけど……化物と会話なんて、あんたバカァ?
 まあ、化物の同類にはお似合いだけど、私はそんなのゴメンだわ。こっそり加持さんを助けて、すぐに逃げ出してやる!
 アンタなんか、化物に殺されちゃえ! いつかの放送であんたの名前が呼ばれたら、大声で笑ってやるから! )

心の中であらゆる負の感情をぶちまけながらも、表情は笑顔、皮肉顔、心配するような顔をコロコロと転がしていく。
アスカは小砂の相手にウンザリしながら、支給品の時計に目をやった。

11:55分。
放送まで、あと五分。


(……ヴィヴィオの名前が、呼ばれればいいのに)



そうなったら困ったことになると分かっていても、アスカは残酷な想像を抑えることが出来なかった。
大人の顔色を窺いながら生きてきたアスカには、なのはがまだ完全に私情を消しきれていないと分かっていた。
この女は、あんな綺麗事を言った後に娘の死を聞いたらどんな顔をして、どんな言葉を吐くのか。
そして、どんな行動に出るのか。



(楽しみだなぁ)



実現すれば困ってしまうと知れた想像であっても、それが今のアスカにとって最も待ち遠しい瞬間だった。
時計の秒針が、踊る。
分針が滑るように、12の文字へ一歩近づいた。






【B-5 市街地/一日目・昼前(放送直前)】


【惣流・アスカ・ラングレー@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】右手人差し指喪失(治療済み)、背中に火傷(治療済み)、髪が肩までに焼き切れている(散髪中)、
    『化け物』への強い憎悪と殺意、精神不安定
【持ち物】
アーミーナイフ@現実、予備カートリッジ×12@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
コントロールユニット(ガイバーⅡ)@強殖装甲ガイバー、デイパック、基本セット、モッチーの首輪、モッチーの円盤石、
砂ぼうずの特殊ショットシェル用ポーチ(煙幕弾(2/3)、閃光弾(3/3)、グレネード弾(1/3)、ガス弾(1/3))@砂ぼうず、
ホテル外壁のメモ用紙
【思考】
0.なのはと小砂を利用して加持を助ける。
1.積極的に殺し合いには乗らない、ただし人間以外は問答無用で撃つ。ガイバーⅠ(深町晶)は必ず殺す。
2.高町なのはが大嫌い
3.ヴィヴィオの名前が呼ばれたらいいなぁ
【備考】
※参戦時期は少なくとも第弐拾四話以前。

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(小)、強い悲しみと決意、血まみれの制服が見えないようにカーテンを羽織っている
【持ち物】基本セット(名簿紛失) ディパック 
     ハンティングナイフ@現実 コマ@となりのトトロ、白い厚手のカーテン、ハサミ
【思考】
0.ヴィヴィオ……
1.一人の大人として、ゲームを止めるために動く
2.放送を聞いてから、アスカを連れてB-6公民館近くの民家へ冬月たちに会いに行き、互いの誤解を解きたい
3.それが済んだら高校にヴィヴィオを探しに行く
4.アスカと小砂を守る
※「ズーマ」「深町晶」を危険人物と認識しました。ただし本名は知りません


【小泉太湖(小砂)@砂ぼうず】
【状態】正常
【持ち物】IMIミニウージー(9mm口径短機関銃)(18/32)@現実、清潔なシーツ
      ディパック、基本セット
【思考】
0. 生き残る
1.「高町なのは」に弟子入りして魔法を教わる。そのためにもヴィヴィオを見つける
2.「川口夏子」と合流する
3.なのは達と共にB-6公民館近くの民家に戻り、危険人物のことなどを報告する
4.「碇シンジ」、「ガルル中尉」を探して接触する
5.「水野灌太」、「雨蜘蛛」には会いたくない。「水野灌太」の存在だけはきちんと確認したい
6. ネブラと合流出来た場合、ネブラとの約束を守るため"闇の者"達を討伐する 
※「高町なのは」を魔法使いと認識しました
※「ズーマ」を危険人物と認識しました。ただし本名は知りません
※「深町晶」を危険人物と認識しました。



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高町なのは
小泉太湖(小砂)






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