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少年少女よ大志を抱け ◆h6KpN01cDg




―――もしかして、キョン君があんなことしたのは、ハルにゃんが原因かもしれない。
二人以外の人間は誰もいない保健室。
キョンの妹は、眠るゲンキを見守りながら、そう考えていた。
他にすることもなかったためか、自然に思考はそちらに向かう。
放送で呼ばれた、知り合いの名前。
涼宮ハルヒ。
兄は特別何も言わなかったが、彼女が自分の兄にとって特殊な存在であることだけは理解していた。
だから、もしかすれば―――

―――キョン君、もしかして、ハルにゃんの死んだところを、見たの?

先ほどのゲンキや自分の反応が、よりキョンの妹の推理を確実なものにする。
ゲンキは取り乱し、明らかに冷静ではなかった。
妹本人も、ハルヒの死を知った時はショックのあまり一瞬視界が真っ黒になったくらいだった。
そう、―――知る人が死ぬということは、人から判断力を奪う。
基本的には善良な兄があんなことをするとしたら、理由は一つしか考えられなかった。
―――そうか……もしかして、ハルにゃんが死んで、キョン君……暴走しちゃったの?

兄の凶行を思い浮かべるだけで胸が痛むが、考えなければいけない気がした。
理由はどうあれ、自分の肉親のことなのだ。

―――だったら……

そうだとすれば、自分はどうすればいい?
兄を助けるためには―――
今ならまだ、戻れるかもしれない。もしかしたら、助けられるかもしれない。
でも、どうやって?
兄の力は普通じゃなかった。もしまた攻撃してきたら?
そう考えると震えが止まらない。
でも、それでも。

キョンの妹は、それをただ、考える。

もっとも、キョンの妹の推理には二つほど抜けがある。

一つは、彼女の兄は『目撃者』ではなく『加害者』であるということ。
そしてもう一つは、キョンにとっての涼宮ハルヒの『重さ』を知らなかったこと。

それに、少なくとも今は、彼女は気付かない。
どうすればいいのか考えを巡らせているちょうどその時だった―――ゲンキが、目覚めたのは。


暖かい。少年はそう思った。
暖かく、柔らかい。
春のまどろみに似た、心地よさ。

「 」
少年は呟く。
それが誰の名前か、分からなかった。

モッチー。
ホリィ。
放送で、口頭で。
死を聞かされた仲間の姿が、過ぎって消える。

―――ごめん。

守ってやれなかった。大切な仲間だったのに。

―――ごめんな。
―――でも―――

でも、俺は負ける訳にはいかないんだ。
残された仲間―――ハムとスエゾーのためにも、そして―――
―――の、ために。


「……ん?」
そして、ゲンキは目覚めた。
意識がじょじょに覚醒していく。それと同時に、感じる柔らかな感触。
どこか、いい匂いもする気がした。
「……おはよう、ゲンキ君」
そして―――少女の声。
誰のものかは、すぐに分かった。
「 」という本名でありながら、この名簿には「キョンの妹」という名前で乗せられている、現在の同行者。
彼女の声が、自分の頭上からする。
「……んん……?」
どうにも様子が変だ。どうして背丈もそう変わらないキョンの妹が自分を見下ろしているんだろう。
そして、違和感はもうひとつ。
ゲンキの頭の下に、何かがある。
『それ』は決してコンクリートのような堅く冷たいものではなく、かと言って毛布のようなものとも少し違う。
それは、先ほどからずっと感じていた、どこかくすぐったいような柔らかさ。
「……えっと……」
「あのね、ゲンキ君、泣いた後寝ちゃったんだよ?疲れてたんだね。もう、あと少しで放送みたいだよ」
ゲンキははっとする。放送。
先ほどモッチーが呼ばれたそれで、今度はホリィの名前も呼ばれる。その胸が潰れるような現実に、一気に目を覚まし起き上がる。
「ご、ごめん、俺―――」
守らなければ、そう決めたのにそのまま眠ってしまうなんて。
その間に敵が襲って来ていれば、キョンの妹も危なかっただろうに。
そう思うと、申し訳なさが湧き上がった。
そうだ、キョンの妹に膝枕してもらって眠っている場合では―――

―――ん?
―――え?
―――何だって?

まだ幼い少年であっても、一瞬判断に迷う。

だって、自分の頭の下にはずっと『柔らかい何か』があって―――
目の前には少女の顔が見えて―――
起き上がったところには、「    」がちょこんと正座していたんだから。
「よく眠れた?ゲンキ君」
そして年相応の純粋な笑顔。
それで、もう十分だった。

「……!」
乙女心に鈍感なゲンキとて、頬が赤くなるのを感じる。
女の子の膝枕でぐっすり眠るなんて―――恥ずかしい。
きっと予想外に長く目覚められなかったのはキョンの妹の膝が心地よかったからに違いない。
「……っわ、悪い!」
ばっとキョンの妹から飛びのく。羞恥が勝手にそうさせたのだ。
「ううん、大丈夫だよ。ゲンキ君はもう平気かな?」
問いかけるキョンの妹に、ゲンキはただこくこくと頷いた。
「そう、良かった。……本当に、良かった」
その顔が、作り笑いであることはゲンキにもすぐに分かった。
当然だ。彼女だって知り合いをなくしている。その上兄にも襲われている。
元気でいられるはずがない。

―――ハルヒ、って人を殺したのは……
先ほど考えたことが、再びゲンキの頭をよぎる。
子供心ながら、彼は何故かそれは間違っていないのではないか、と考えていた。
でも、それを、少女に言うことは、できない。
『キョンの妹』と呼ばれる彼女に、その事実はあまりにも重いだろう。
先ほどゼロスからホリィの死を告げられたゲンキだからこそ分かる。仲間たちと何度も危険な目にも会ってきた自分でさえああなのだ、普通の女の子であるキョンの妹にそのい実は重すぎる。
ゲンキは子供ではあったが、そのようなことを平然と口に出せるほど幼くもなかった。
「……あのさ、」
「何?」
だから、これは彼なりのただの、誓い。
口にしていれば、どこか落ち着いた。
「……絶対、次は俺がお前を守るから」

『ゲンキ君はわたしのナイトになってもらうはずだったのに……わたしが守っちゃってるよね』

その通りだ―――ゲンキは、キョンの妹に助けられてばかりだ。
こうして怪我を負ってから、彼女だって辛いはずなのに。
だから、―――もう、泣かない。
夢に現われたモッチーやホリィのためにも、そして「   」のためにも。
ゲンキは、もう逃げるわけにはいかないのだから。

「……う、うん」
真剣なゲンキの口調に、思わず顔を赤らめるキョンの妹。
「…………あ、ああ、げ、ゲンキ君!もうすぐ放送だよ……」
視線をそらし話題を変えるキョンの妹を見て、ゲンキはもう一度心に決めた。

絶対に、この子を守ってみせる。
それをきっと、死んだモッチーやホリィも一番望むと思うから。

それは、恋というにはあまりにこの場にふさわしくなく。
友情というにはあまりにも拙く。
同情というにはあまりにも強過ぎる。

二人の間にこれから何が起こるのか―――それは神の知るままに。


(で、我々はどうすればいいのでありますか……?)
(と、とても入りにくい空気ですう……)
(うむ……これは一体どうしたものか……)
(くーっくっくっく、若いっていいねえ)

そしてナビが、陰ながらこんな話をしていたのもまた事実であった。


【C-03 中学校・一階・保険室/一日目・昼(放送10分ほど前)】

【名前】佐倉ゲンキ@モンスターファーム~円盤石の秘密~
【状態】重傷(全身強打、行動に支障)※処置済み
【持ち物】S&WM10(リボルバー)ディパック(支給品一式)
【思考】
0:放送を待つ
1:キョンの妹を守る。キョンの行動に疑問
2:自分とキョンの妹の知り合いを探す
3:ゼロスをそれなりに信頼。
4:『人類補完計画』計画書を解読できそうな人物を見つけて、首輪解除の手がかりを探る
5:主催者は絶対に倒すが、長門有希に関してはもう少し情報が欲しい
【備考】
※キョンがハルヒを殺したのではないかと疑っていますが、キョンの妹にはまだ言うつもりはありません。

【名前】キョンの妹@涼宮ハルヒの憂鬱
【状態】健康
【持ち物】KRR-SP@ケロロ軍曹、『人類補完計画』計画書@新世紀エヴァンゲリオン、地球人専用専守防衛型強化服、
ディパック(支給品一式)
【思考】
0:放送を待つ
1:ゲンキを守る
2:殺し合いを止める
3:自分とゲンキの知り合いを探す
4:ゼロスをそれなりに信頼
5:『人類補完計画』計画書を解読できそうな人物を見つけて、首輪解除の手がかりを探る
6:主催者に協力している長門有希のことが気になる

※キョンはハルヒの死を知って混乱していたのではないか、と思っています。


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朝日とともに這い寄るモノ キョンの妹 崖っぷちのメルヘン
佐倉ゲンキ







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