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鍵を握る者 ◆S828SR0enc



 かち、こち、とささやかな音が静寂に満ちた部屋にこだまする。
 どことなく埃っぽい空気が充満した建造物――C-3、図書館のカウンターを前に、リナはソファの上に座り込んでいた。
 傍らには同行者であるドロロがその短い手足を投げ出し、ぐったりとした様子で目を閉じている。
 かすかに上下する胸は、それでも少し前と比べればだいぶ落ち着いた様子だ。
 それに安堵の溜息を吐いて、リナはやわらなか臙脂色のソファの上でぐぅっと足を伸ばし、天井を仰いだ。


 遊園地を出発し約十分、長々と伸びた街道は市街地に入って大通りとなり、リナたちはそこを走っていた。
 地図によればもっとも近くにあるのは「中・高等学校」というリナにはあまりなじみのない施設。
 とはいえドロロによればかなり巨大な施設であり、彼の世界ではいわゆる少年少女にとってはここで最も縁ある施設と言っても過言ではないらしい。
 探し人である「ノーヴェ」がいるとも限らないが、人がいる確率はかなり高い。
 そう言ったドロロの言葉に従い、リナたちはまっすぐに学校を目指していた。

(思えば、あん時にちゃんと気づいておくべきだったんだわ……)

 思い出すのは、顔にだらだらと汗をかいていたドロロの姿。
 太陽が昇り気温が上がってきたために、見るからにカエル系な彼は人より消耗が激しいんだろうか、くらいにしか思っていなかった。
 しかしよくよく考えれば、息も通常時より荒かったように思う。

 そもそも今までリナが旅してきた仲間というのは、みんなよくいえば自分に正直だった。
 疲れたらすぐに疲れたといい、文句があれば即座に口に出す。
 そういう関係の中で生きてきたリナは、ドロロが強がっていることに気がつかなかった。

(もともと、遠慮する性格なのか……それともあたしに対しそこまで信用が置けないからか……。
 いずれにせよ、温泉でさえロクに休めないまま、ほとんどノンストップでここまで来たんだもの。
 体力の限界を迎えていたとしても、何もおかしくない……)



 敵地にある緊張感。
 応急措置程度しかなされていない全身に、傷ついた左目。
 加えて、リナと違いなんら回復しないままにここまで来た強行軍。

 それらすべてがあだとなり、高校を前にしてドロロは突然気を失った。

 慌てて起こしてみても意識はなく、全身から激しく発汗し、ぜいぜいと喉が音を立てている。
 疲労が限界に達したらしいことに気づいたが、呼びかけても答えはない。
 どこかで休ませなくちゃ、ととっさに思い、そしてドロロを抱えあげたままリナは校内へと駆け込んだ。

 しかし、ふと顔を上げたリナは次の瞬間踵を返し、振り返ることなく校舎を後にした。
 その原因は二つある。

 ひとつは、校舎の外壁にあいた、ちょうど人が通れそうな大きさの穴だった。
 しかもただの穴ではなく、瓦礫が校舎の外側に散らばった形になっていたのだ。
 明らかに何者かが壁をぶち破ってでも外に出なければならない状態に遭遇し、逃げだした跡だった。

(穴の開け方から見て、開けた奴は生身で壁を突き破れるレベル……。
 そんな奴が壁をぶち破って逃げなきゃいけなかったってことは、そいつを超える敵があの中にいたということ……)

 逃亡者が殺し合いに乗ったものか否かはわからない。
 しかしもしそいつが殺し合いに乗った襲撃者から逃げるために穴を開けたのだとしたら、中にいるのはとんでもない化け物ということになる。
 普段は強気なリナでも、まさか倒れたドロロを抱えたままそいつとやり合おうとは思わなかった。

 そして、もうひとつの理由は言ってしまえば勘だった。
 校舎に入ろうとした瞬間、リナの何かが「ここはヤバい」と警告してきたのだ。

(校舎を出るとき、ちらっと魔力らしきものも感じられたし……。
 ひょっとしたらゼロスあたりが、あそこに転がりこんでいるかもしれない)


 リナは自分を信じ、自分の勘を信じた。
 そして、一目散にこの図書館まで逃げて来たのだ。
 殺し合いの場で図書館に長期滞在しようなんて酔狂な輩は、いたとしても一般人か負傷者。
 殺し合いに積極的に乗っている奴は先ず来ないだろうと踏んでのことだった。


 そして、リナのその考えは間違ってはいなかった。
 たどりついた図書館には人っ子一人おらず、一応見回ってみたが誰の気配もない。
 ようやく少し息を落ち着けて、リナはドロロをソファに下ろしたのである。



(もうすぐ10時か……)

 ちらと見上げた時計の針は変わらず時を刻みつけている。
 傍らのドロロは心配だが、今はとりあえず寝かせておくしかない。
 体の傷に「回復」を使うにしても、まずはドロロの体力を回復させるのが先だ。

「んー……」

 勢いをつけて立ち上がり、あたりを見回す。
 ぱっと目についたのは、ドロロが遊園地でいじっていた白い箱――パソコンとか言う情報集めの道具。
 その原理は工学に疎いリナにはよくわからないが、とりあえずドロロが遊園地でやっていたことをやってみることにした。

「ま、他にやることもないし」

 軽く鼻歌さえ歌いながらポチリと丸いボタンを押す。
 しばらくパソコンの画面が明滅していたが、やがて毛におおわれたモンスターと青い背景の画面が現れる。
 慣れない手つきでドロロがいじっていた「マウス」というものを握り、唯一背景とは違う絵の上で二回ボタンを押す。
 少し時間をおいて、"kskバトルロワイアルにようこそ!"とでかでかと書かれたページが現れた。

「しっかしこれ、どういう原理なのかしらね」

 見たこともない文字なのに、その意味がわかる。
 不思議な現象に首をかしげながら、リナは「掲示板」と書かれたボタンを押してみた。
 現れた画面は遊園地で見たときと特に変わりなく、それは「チャット」と書かれたボタンにしても同様。
 最後に「ksk」と書かれた部分をクリックすると、おなじみの画面に切り替わった。

「えーっと、何なに?
 "ヒント:ロストしたモンスターを復活させることが出来るもの"……ロスト?」

 モンスターはともかくとして、聞きなれない言葉にリナは戸惑う。
 もちろんわかったところでさすがにキーボードの操作まではできないリナに入力できるはずもないのだが、なんとなくくやしい。
 何も打ち込まないままもう一度クリックすると、今度は違う質問が現れる。
 しかし今度の質問も、リナの知らないものだった。

「"ヒント:ロストしたモンスターはこれに戻る"……ってだからロストってなによ!?
 あー、ったく、もうちょっと優しくしなさいよねーこの箱ー」

 ぺしぺしとパソコンをたたくも、機械は唸り声一つ上げない。
 それに小さくため息をついて、リナはパソコンの前から離れた。

 くるりと見渡す天井の高い部屋の中は、見渡す限り本ばかりだ。
 ちらりとうかがったドロロは未だ目覚める様子もなく、先ほどよりは穏やかな表情でぐっすりと眠りこけている。

「あーあ、魔導書とかあればいいんだけど」

 一つ独り言をつぶやいて、リナは暇つぶしとばかりにと本の森の中へと飛び込んで行った。


◇ ◇ ◇


 白濁した視界。右は白、そして左は黒。
 やむことのない痛みは左目の眼窩から、絶えず頭の中心へと送られてくる。
 そのひとつの疼きごとに全身の傷が呼応して痛む。
 白けた視界がゆっくりと色を取り戻し始めても、左半分だけは相変わらず闇に閉ざされたまま。

 浅い呼吸を繰り返し、ドロロはゆっくりと目を覚ます。


「……ここは……」

 紙と埃のにおいが入り混じり、窓からは午前の太陽がやわらかに降り注ぐ。
 体を受け止めるソファから身を起こせば、頭上の時計は11時30分を過ぎたあたり。
 痛みに顔をしかめて見渡すと本棚がいくつも目に入り、ようやくドロロはここが図書館であろうことを悟った。

「リナ殿……?」

 寝起きゆえか、ひっそりとした声が空気を震わせる。
 小さな声であったが、静かな空間にはよく響いたのか、ひょいとリナが本棚の間から顔をのぞかせた。

「二度目のおはようってとこかしらね。
 体の具合はどう?」

 そう言われて、ドロロは自分が意識を失ったことを思い出した。
 リナのペースに合わせて走っている間は、正直に言ってかなり無理をしていたように思う。
 街に入ったあたりから目の前が暗くなってきたくらいだ。
 だというのに最後まで意地を張ったのは、己の誇りか、それとも友人を殺された怒りゆえか。

「かたじけない、リナ殿。面倒をおかけしたでござる……」
「ま、今回はひとつ貸しってことにしとくわ。
 それより体はどう?ちょっとは疲れがとれた感じ?」
「それはまぁ、眠らせていただいたのでだいぶ楽になったでござるが……」

 全身の痛みはひかないが、疲労はだいたい回復した。
 そっと足を床におろしても立ちくらみなどはない。これなら戦うこともできそうだ。
 そう思って顔をあげると、すぐ近くに起動しっぱなしのパソコンがあった。

「ドロロー、ロストってなんだかわかるー?」
「ロスト、でござるか?」
「そこのkskのヒントになってんだけど、あたしにはわかんなかったからー」

 横着者なのか、再び本棚の奥に顔を引っ込めてしまったリナが大声で話しかけてくる。
 図書館では大声は出したらいけないでござる、と言いたくなったが、どうぜ誰もいないのだからと口をつぐんだ。
 そっとパソコンに向かい合い、リナの言ったとおりkskのヒントを確認する。
 ドロロにもよくわからないヒントだった。

「だめでござるー」
「そー、じゃあさっさと移動した方がいいかもね、ここ本しかないしー」


 なんというか、リナの声はよく通る。
 本人の声と壁にぶつかった声が両方とも耳に入ってきている感じがした。

「ところでリナ殿、拙者が倒れた後に何か変わったことはなかったでござるか?」
「あーっとね、高校のことなんだけどー」

 姿が見えないまま、リナの声は壁の穴や自分の勘のことを告げる。
 まだ幼さの残る少女であっても、リナも立派に修羅場をくぐりぬけてきた戦士である。
 その勘というのは信用してもいいように思われたので、ドロロは今度は掲示板のページを開き、高校の事を書きこんだ。

『 4 :生け花が趣味の両きき:××××/××/01(×) 11:31:17 ID:×××
    C-3、中・高等学校内に危険人物が現在も潜んでいる可能性あり。
    付近を通行する際は注意されたし。                      』


 かちりとボタンを押してしまうと、再び痛みがこみ上げてくる。
 しかし気にしている場合ではないと気を引き締め、ドロロは近くにあった自分のデイパックを手にリナのもとへと向かった。

「ん? 終わった?」

 デイパックを肩から担ぎ、いつでも出発できるという態勢でリナは本棚を物色していた。
 例によって鞄の口からは、ガメたのであろう数々の文房具がのぞいている。
 まるで盗賊でござるなぁ、というと、あたしは盗賊殺しよ、と笑って返された。

「何をしているでござるか?」
「暇つぶしも兼ねて本の物色。でもいい魔導書とかはなさそうだけど」

 ぺし、と本棚を軽く叩き、リナは肩をすくめる。
 ここは人も来ないし大したものもないから隠れるのにはうってつけだが、ドロロ達はむしろ人を探している身だ。

「リナ殿、めぼしいモノがないのならばそろそろ出発してはどうでござるか?
 とはいっても、休ませた拙者がこんなことを言うのはおこがましいかもしれないでござるが……」
「いいわよ、あたしもちょうど行こうと思ってたし。
 ――と、忘れるとこだった。『治癒(リカバリィ)』」


 す、とドロロに向けたリナの手から柔らかな光があふれ、ドロロの体を包み込む。
 光は瞬く間に消え去ったが、ドロロは全身を覆う痛みがかなり軽くなったのを感じた。

「まーちょっとした治癒程度だけど、気休めにはなるっしょ」

 そう言って先を歩きだしたリナの背中からは、何とも言えない頼もしさが感じられた。

「……かたじけない、リナ殿」

 思いを込めて一歩を踏み出し、前を見据える。
 これからどこに行くのか、それが問題だ。
 学校に戻るにしても放送時間が近すぎる、敵と戦闘して放送を聞き逃すのは避けたい。
 この近くだと施設は小学校や倉庫だが、それよりもここから東を目指し、人がいる場所を探した方がいいだろうか。
 確か隣のエリアには警察署もあったし、そのあたりで一度様子を伺った方が――――

「――ああっ!?」
「リナ殿!?」

 己の考えに没頭していると、先を行くリナが奇妙な声を上げた。
 まさか敵が、と思って飛びこむと、リナはなんとも言えない呆けた表情で本棚の一点を凝視している。
 頭上には「華麗な 書物の 感謝祭」のプレートが揺れる、小さな本棚だ。

「リナ殿、なにか――」
「え、ええええ!?なんでぇ!?
 なんでこのおっさんの本がこんなとこにあるわけぇ!?」

 がばし、という勢いでリナが本棚から本を引っこ抜く。
 筋肉に覆われた肉体を華美な鎧で飾った髭の生えた男性の絵が描かれた、あまり厚くない本。
 それをばらばらとめくりながら、リナは「うわー」とか「あー」とは唸り声を上げ始めた。

「リナ殿、どうしたのでござるか?」
「あー、いやさ、ちょっとこれ見てよ」

 そう言って向けられた本の一ページには、表紙の男の挿絵がついていた。
 劇画調のタッチで描かれた男は、その筋肉がたっぷりとついた腕やら顔やらから激しく汗を飛び散らせ、「人畜無害キィィィック!!!」とマンガのごとく台詞を叫びながら黒い鎧の集団に向けてものすごい形相で蹴りを放っている。
 なんというか、激しくムサイ。


「…………」
「なーんでこの人がこんな本になって、しかもこんなとこにあるわけぇ!?」
「……お知り合いで、ござるか」
「あー……あたしの仲間のアメリアの親父さんで、セイルーンって国の王子……いや本当に」
「王子……」

 言葉のイメージから著しく乖離している気がしないでもない。
 むさいーと悲鳴を上げるリナを尻目に、なんとなくその本があった本棚を眺めてみる。
 あまり厚くない本が9冊、多少倒れたりもしつつ並んでいた。
 背表紙には一様に金文字で題名と「Yuki.N」の字が刻まれていて、こうして見ると高そうな本に見える。
 しかしそのうちの一冊に、ドロロの興味は激しく引かれた。

「『623の俺詩集 ~好きって事さ♪~…Nエディション』……ってまさか!?」

 リナと同じような仕草で本を引っこ抜けば、表紙には見覚えのある帽子をかぶった少年が微笑んでいる。
 同じケロロ小隊の仲間であるクルルのパートナーである人物に間違いない。
 ぱらぱらとページをめくって確認してみたが、ところどころにある挿絵はやはり彼を描いたものに違いなかった。

 とっさに本の裏表紙を開くと、奥付が描かれている。
 地球で販売される形態の本にしては、やけに簡易な奥付だった。

『 著者: Yuki. N
  監修: KSK   』

 その本を手に持ったまま、適当に本棚からさらに本を引き抜く。
 『プロジェクトF ~挑戦者たち~』とあるその本の奥付にも、やはり同様のことが書かれていた。

「ね、ちょっと!このおっさん、例のギュオーってやつじゃない!?
 なんかデフォルメされれても胡散臭いわねこのオッサンは!」

 横で大声をあげたリナが見せびらかすのは、『がんばれ閣下!! 第一巻 あるかんふぇるをぶっとばせ!の巻』。
 ぱらぱらとめくってみせるマンガの中に出てくる完全な変身形態は、リナたちと戦ったあの男のものに相違ない。
 受け取って最後のページを見てみれば、同じシンプルな奥付が貼り付けられていた。

「これってこの殺し合いの参加者の世界についての本なのかしらね?
 ひょっとしてお宝?」

 次々と本棚から本を取り出してはめくるリナを尻目に、ドロロは奥付を凝視したままだ。

(Yuki.N……ゆき、ながと)


 思い出すのは、あの狂った開幕劇にいた人形のような少女。
 草壁タツオと名乗った男に「ながとゆき」と呼ばれていた彼女が、この本の作者なのだろうか?
 だとしたら何のためにこんな本を、とドロロはじっと本を見つめる。

(それにこのKSK……確かあの温泉にも、遊園地にも……)

 温泉の入口に、遊園地のゲートにと、この言葉は冠されていた。
 この図書館も入口あたりには「KSK図書館」という看板が立っているのかもしれない。
 それに件のイントラネットにすら、この言葉は使われていた。

 この殺し合いを象徴する言葉――KSK。

(KSK……監修、ということは人名かもしくは団体名でござろうな。
 人名……そういえばゲームマスターと名乗ったあの男の名はたしか「くさかべ」……。
 KSKの「K」が「くさかべ」の頭文字だとしたら、この殺し合いを運営する人間は三人ということになるでござる。
 しかし「ながとゆき」は「S」でも「K」でもないし……)

 むむむ、と唸る。
 会場のあちこちにちりばめられたこの言葉がまったく無意味なはずはない。
 そこには何か、主催につながるニュアンスが込められているはずなのだ。

(KSK……Kと、Sと、K……)

 うーと唸ったところで、ぽん、と突然肩を叩かれた。
 見上げればリナが、なぜかにんまりとした笑みを浮かべてこちらを見下ろしている。

「ふっふっふ……さすがはあたし、観察眼はただごとじゃないわ。
 ダメもとで来た場所ですら、こーんないいもんを見つけるんだから♪」

 そう言ってリナは持っていた本をドロロに向かって「ジャーン!」と言いながら広げる。
 こちらは文字ばかりがびっしりと並ぶ、何かの歴史書や研究書を思わせる本だ。

「ほーら、ここ見てここ!」

 びしっとリナが指差す先には、ちょうど見出なのか太字でこんなことが書かれていた。

『モンスター復活の要、伝説の存在、ヒノトリ』

「リ、リナ殿これは!」
「さらにダメ押しで、ほら!」

 さらに指し示された先には、『モンスターがロストし円盤石へと戻ると……』という一文。
 思わず振り返った先では、まだ電源を落としていなかったパソコンの画面が待ち構えるがごとくに光っていた。


◇ ◇ ◇



「『ロストしたモンスターを復活させることが出来るもの』……「ヒ、ノ、ト、リ」、と」

 ぱちぱちとドロロがキーボードをはじくと、ぱっと画面が変わる。
 その様子にリナは会心の笑みを浮かべた。

「うんうん、やっぱあたしの勘は正しいってことね!」
「で、ござるなぁ」

 現れた画面には縦にそっけない風に数字と字が並び、上に「Time」とある。
 画面の下の方には「現在時刻  11:47:52時点」とあった。

「で、何が書いてあんのかしらー?」

 ぐい、と身を乗り出してリナは期待とともに画面を覗き込む。
 画面には黒い字でただこれだけが書かれていた。


『 05:38:12 F-10 モール 3階・書店
  05:51:09 F-10 モール 1階・電気機器店
  09:22:30 D-2 遊園地 ジェットコースター裏・スタッフルーム
  11:31:01 B-3 図書館 1階カウンター前
  11:49:26 B-3 図書館 1階カウンター前                  』

「9時に遊園地、11時に図書館が二回……これってあたしたちのこと?」
「むむ……どうやら、これはアクセス記録のようでござるな。
 拙者たちがパソコンに接触した時間と重なるでござるし、この図書館が二回カウントされているのは一度このkskのページから接続を切ったから。
 そう考えると、ただパソコンをつけただけではなく、このkskページを利用した場所と時間を示している……ということになるでござる」

 ドロロは改めて別窓でkskの掲示板のページを開く。
 最初に見つけた「朝比奈みくるを殺してください」の書き込みは、投稿時刻から考えてモールの1階・電気機器店からのもののようだ。
 だからと言ってそれを書いた人物がわかるわけではないが。

「でもこれ、あんま役に立たないんじゃない?」


 後ろから画面を眺め、リナが言う。
 これが役に立つとしたら、たとえば時間ごとに参加者現在位置を表記した地図か何かと組み合わせなくてはならない。
 人が来ない図書館だからお宝があるかと思えば、どうやらあまりいい拾いものとは言えないようだった。

「まぁ、気を取り直して、でござるよ。
 とりあえずこう言ったものがあるというのがわかっただけでも良しとするでござる」
「まーね、それはそうだけど……」

 顔を伏せて唸るリナをどう思ったのか、ドロロはとりあえず先ほどの本棚からすべての本を引っ張り出してきた。
 これで参加者の分析が出来るかも、ということらしい。

「とはいえ拙者たちの世界の本に拙者たちのことはほんのちらっと書かれている程度でござるし……。
 必ずしも役に立つというわけではなさそうでござるが」

 そう言っていそいそと本を開くドロロは、片方の目を使いづらそうにぱしぱしと閉じたり開けたりする。
 その瞼を見つめながら、リナは静かな口調で口を開いた。

「ね、ちょっと言っておきたいことがあるの」
「? なんでござる?」
「ゼロスについてなんだけど、ね」

 ぴく、とドロロの肩がこわばったのがわかった。
 ドロロは会場に来て早々ゼロスに襲われ、リナの助けがなければ死ぬところだった。
 それを思い出したのかもしれないと思いながら、しかしリナは言葉を止めない。

「あいつさ、前からふざけた奴なのよ。気まぐれっていうの?
 あたしの監視業務中に手助けしてきたり、そうかと思えば横から色々かっさらったり、必要なくなったら見捨てたり。
 最近じゃ完全に敵対してちょっと大変なこともあったし……うん、とにかくそういう奴なの。
 自分の役目とかやりたいことのためなら人情も何も気にしない――まぁ、魔族ってだいたいそうなんだけどね。
 とにかく状況次第でころっと態度を変える奴なわけ。わかる?」
「……それが、どうしたんでござるか?」

 リナの言葉の裏を探ろうというのか、ドロロの声も静かだった。


「つまりこれから先、あいつがあたしたちを助けることがあるかもしれないってことなのよ。
 ひょっとしたらどうか協力してください、一緒にゲームマスターを倒しましょう、くらいは言ってくるかもしれないわ。
 そん時にアイツと協力し合うのは別にいいのよ。それであっちもこっちも得出来るんなら。
 ただ、その協力するって言った口でいつあたしたちを敵に売り、いつ背中に斬りかかってくるかわからない奴だってこと、覚えておいて」

 きっぱりと言い切り、リナは凝り固まった背筋を伸ばす。
 ドロロの目覚めを待っている間は、本を探しながらずっとそのことを考えていた。
 生きるために相手を利用する、手を組む、というならリナもゼロスも同じだが、ゼロスは反面手を切るのも早い。
 これから先ゼロスと再び会うことがあったときのために、ドロロに釘を刺しておきたかったのだ。

「……わかっているでござるよ。
 拙者とてある程度の戦場を超えてきた身でござる」
「そりゃ失礼。ま、ちょっとした忠告だしね。
 さーて、せっかくだからこの十冊の本、全部読んじゃう?
 なんか面白いことが書いてあるかも」

 そう言って打って変ってうきうきと本を開くリナだが、これは彼女が元々切り替えの早い性格だから出来ること。
 ドロロの方は眉間にしわを寄せたまま、じっと本の裏表紙をにらんでいる。
 あんまり言わない方がよかったかなぁ、と少し思いながらも、リナはぺらりと本のページをめくった。

 再び静けさを取り戻した空間の中で、かちこち、かちこち、と鳴りながら壁の時計が針を進めていく。
 現在時刻、11時55分。




【B-3 図書館/一日目・昼前(放送直前)】

【ドロロ兵長@ケロロ軍曹】
【状態】疲労(小)、左眼球損傷、腹部にわずかな痛み、全身包帯
【持ち物】匕首@現実世界、魚(大量)、デイパック、基本セット一式、遊園地で集めた雑貨や食糧
【思考】
0.殺し合いを止める。
1.もう少し図書館で本を読み、放送を待つ。
2.市街地にて人を探し、ノーヴェ、および車に詳しい人を見つけたら遊園地のパソコンへ連れて行く。
3.リナとともに行動し、一般人を保護する。
4.ケロロ小隊と合流する。
5.「KSK」という言葉の意味が気になる。

※なのは世界の単語を多数見ましたが、車に関することだと思ってます


【リナ=インバース@スレイヤーズREVOLUTION】
【状態】疲労(小)、精神的疲労(小)
【持ち物】ハサミ@涼宮ハルヒの憂鬱、パイプ椅子@キン肉マン、浴衣五十着、タオル百枚、
     レリック@魔法少女リリカルなのはStrikerS、 遊園地でがめた雑貨や食糧、ペンや紙など各種文房具、
     デイパック、 基本セット一式
【思考】
0.殺し合いには乗らない。絶対に生き残る。
1.もう少しだけ図書館で本を読み、放送を待つ。
2.市街地を散策し、ノーヴェ、および車に詳しい人を見つけたら遊園地のパソコンへ連れて行く。
3.とりあえずはドロロと一緒に行動する。
4.ゼロスを警戒。でも状況次第では協力してやってもいい。

※レリックの魔力を取り込み、精神回復ができるようになりました。
 魔力を取り込むことで、どのような影響が出るかは不明です


※図書館のパソコンから"ksk"に接続すると、モンスターファームの世界の単語がキーワードとして聞かれます。
 "ksk"内には"ksk Explorer"への通信記録(どの施設のパソコンを使い、いつ通信したか)"が記載されています。
 ひょっとしたらページ内に隠しリンクがあるかもしれません。



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投下順で読む


数字、その意味 ドロロ兵長 舞い降りたWho are you?
リナ=インバース







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