少年いずくんぞ獣人の志を知らんや ◆5xPP7aGpCE
「食料はちゃんと有る、助かった…。水はペットボトル一本だけか、川の水を入れられるから大丈夫だと思うけど」
ハムのティバッグを持って逃げたシンジは上流にある岩陰に身を潜めた後でようやく中身の検分を始めていた。
とりあえず当面の食料と水が確保出来た事に安堵すると次に折り畳まれた地図を取り出す。
闇雲に走ったので正確な位置は判らないが川の近くという手掛かりは大きいはずだ。
とりあえず当面の食料と水が確保出来た事に安堵すると次に折り畳まれた地図を取り出す。
闇雲に走ったので正確な位置は判らないが川の近くという手掛かりは大きいはずだ。
「えっと…川があるという事はE-07かE-08かな、結構登ったからF-08という事は無いよね。禁止エリアはE-10か、良かった…」
地図には親切にも禁止エリアの情報が書かれておりもう一つの不安が取り除かれてシンジはほっとため息を吐く。
他の禁止エリアは島の反対側で今のシンジに関係は無さそうだ。
今度は放送を聞き逃さない様にしないと、と反省する。
知りたい情報が得られたので地図を畳もうとしたその時、裏面に何か走り書きされている事に気付いた。
他の禁止エリアは島の反対側で今のシンジに関係は無さそうだ。
今度は放送を聞き逃さない様にしないと、と反省する。
知りたい情報が得られたので地図を畳もうとしたその時、裏面に何か走り書きされている事に気付いた。
「18時にB-06の公民館で待ち合わせ、無理の場合B-07のデパートへ…て何だよ」
そこでシンジは思い出した、あの喋るウサギが「敵の襲撃で皆バラバラになってしまった」という事。
あの怯える表情と涙を思い出して何となく嫌な気分になりかけたが無理矢理頭から追い払う。
あの怯える表情と涙を思い出して何となく嫌な気分になりかけたが無理矢理頭から追い払う。
「こんなの信じるもんか、でももし本当だったら…」
あのウサギは何度打たれても繰り返しシンジに訴えてきた。
その声を思い出すとつい心が揺らいでしまう。
その声を思い出すとつい心が揺らいでしまう。
「まだ先の話じゃないか!もう考えるのは止めるよ!」
しかし話が本当だとしたら怯えるウサギを追い払ってティバックを奪った僕は最低だ。
その答えに行き着くのが嫌でシンジは地図をバッグの中に押し込んだ。
因みにその真実とは―――
その答えに行き着くのが嫌でシンジは地図をバッグの中に押し込んだ。
因みにその真実とは―――
「夏子さん、我輩に万太郎さんとの合流場所を教えていただけませんか?」
シンジとハムが接触する少し前の事、ハムがこれから行おうとしている事の説明途中でそんな事を言い出した。
オメガマンの追撃から夏子達を逃がす為に一人残った万太郎に渡されたメモ、そこには事が済んだ後での合流地点が記されているのである。
だがシンジ追撃が第一目標の今、夏子もみくるとハムに教えるのを後回しにしていた。
オメガマンの追撃から夏子達を逃がす為に一人残った万太郎に渡されたメモ、そこには事が済んだ後での合流地点が記されているのである。
だがシンジ追撃が第一目標の今、夏子もみくるとハムに教えるのを後回しにしていた。
「言いそびれて悪かったわ。18時にB-06の公民館、そう書いたのよ。禁止エリア等で駄目だった場合の場所も書きたかったけどさすがに時間が無かったわ」
「18時?少し遅くないですか?6時間以上も先ですよ!」
「18時?少し遅くないですか?6時間以上も先ですよ!」
昼の放送もまだなのに第三放送の時間とは遅すぎませんか、とみくるは困惑した。
しかし夏子にはそれなりの理由があるらしい。
しかし夏子にはそれなりの理由があるらしい。
「成る程、マンタさんの性格ですか。途中で多少の寄り道しても大丈夫だろうという事ですね?」
「そう、そして時間に間に合わなかったとしても放送で安否が直ぐに確認できる。他の時間では来ない場合諦めきれず居座り続ける事にも成りかねない」
「では私はその間にパソコンの捜索を行うという事になりますね」
「そう、そして時間に間に合わなかったとしても放送で安否が直ぐに確認できる。他の時間では来ない場合諦めきれず居座り続ける事にも成りかねない」
「では私はその間にパソコンの捜索を行うという事になりますね」
答えを聞いたハムは地図を裏返して夏子に代筆を頼んだ。
「公民館が駄目だった場合の場所も書いていただけませんか? マンタさんが来てくれるか判りませんが決めておくべきです」
「そうね、では場所が近いデパートが第二の待ち合わせ場所。朝比奈さんも覚えておいて」
「わかりました、私も地図に書いておきます」
「そうね、では場所が近いデパートが第二の待ち合わせ場所。朝比奈さんも覚えておいて」
「わかりました、私も地図に書いておきます」
そして夏子から地図を受け取るとハムはそれをティバックに戻す。
「これでシンジさんが我輩達と合流したいと考えを改めた時、きっと役に立ってくれます」
そしてバッグの口を閉めるとシンジが居るであろう場所に向かってハムは歩き出したのである。
この様に全ては仕組まれた事であるがシンジはそれを疑っても合流地点に来ない限りは確かめる方法は無いという訳だ。
さて、地図を仕舞ったシンジは他に何か役に立つ物は無いかとさらにティバックの中を探る。
食料と水は有るが身を守るものがなければ心許無い。
銃、せめてナイフは無いかと探る指先に何か円筒形の物を掴んだ。
さて、地図を仕舞ったシンジは他に何か役に立つ物は無いかとさらにティバックの中を探る。
食料と水は有るが身を守るものがなければ心許無い。
銃、せめてナイフは無いかと探る指先に何か円筒形の物を掴んだ。
「これってスプレー缶? 何だ?『護身用強力トウガラシスプレー』、相手の顔に向かって吹き付けると猛獣でも退けられる…」
探しても他に入っているのはそれだけだった。
役に立つといえば立つが、相手を殺せる程強力な道具でも無い事にシンジは複雑な表情を浮かべる。
役に立つといえば立つが、相手を殺せる程強力な道具でも無い事にシンジは複雑な表情を浮かべる。
「石を拾っておこう…」
それでも無いよりはマシと考えてスプレー缶をティバッグに戻し、地面から適当な大きさの石を集めてポケットに詰める。
持ってきた木の枝も手元に置いて襲撃に備えた。
持ってきた木の枝も手元に置いて襲撃に備えた。
因みにこのトウガラシスプレーこそがハムが最初に取り出した支給品その一である。
その頃、市街地を目指す一行の間ではこんな会話が成されていた。
その頃、市街地を目指す一行の間ではこんな会話が成されていた。
「あんなスプレー缶よりやっぱり拳銃の方がいざという時、身を守る役に立ちませんか?」
「いえ、あのぐらいでちょうど良いのです。銃は確かに強力ですが変な気を起こさないとも限りません、万太郎さんのようなお人好しに出会えても誤解から撃ってしまう事もありえます。
その点あのスプレーでしたら積極的に殺そうとする事は出来ませんし、身を守る物を持っているという自信も多少は得られるでしょう」
「それについてはハムに賛成するわ、とても今のシンジ君に銃は渡せられない」
「いえ、あのぐらいでちょうど良いのです。銃は確かに強力ですが変な気を起こさないとも限りません、万太郎さんのようなお人好しに出会えても誤解から撃ってしまう事もありえます。
その点あのスプレーでしたら積極的に殺そうとする事は出来ませんし、身を守る物を持っているという自信も多少は得られるでしょう」
「それについてはハムに賛成するわ、とても今のシンジ君に銃は渡せられない」
そんな気遣いがあったとは露知らず、シンジは自分の運が悪いとしか思わなかった。
「大人なんか信じられるもんか」
岩陰で体育座りしながらそう呟くものの、森の中でひたすらじっとしているという状況ではどうしても心細さを感じてしまう。
このままずっと隠れていても仕方ないんじゃ、と思ったがとても他人は信じられなかった。
悩み続けていると突然シンジの腹がグ~ッと音を鳴らした。
思わず腹に手が伸びる
このままずっと隠れていても仕方ないんじゃ、と思ったがとても他人は信じられなかった。
悩み続けていると突然シンジの腹がグ~ッと音を鳴らした。
思わず腹に手が伸びる
「そういえば朝から何も食べてない…」
思い返せば開始以来まともに食事をした記憶が無い。
朝は気絶し続けていたし、起きてから今まで水しか飲んでいなかった。
鳴り続ける腹の虫を静める為、ティバッグから元々はハムのものだった食料をを取り出す。
支給品の食料は参加者全員が同じもので無いらしく容器は緑色の金属缶だった。
空けてみると銀色のアルミパックされた包が5個入っていた。
朝は気絶し続けていたし、起きてから今まで水しか飲んでいなかった。
鳴り続ける腹の虫を静める為、ティバッグから元々はハムのものだった食料をを取り出す。
支給品の食料は参加者全員が同じもので無いらしく容器は緑色の金属缶だった。
空けてみると銀色のアルミパックされた包が5個入っていた。
「『救命糧食(航空機用)』? 他に紙が入っているけど…何が書いてあるんだろう?」
袋に貼られたシールからしてどうやら非常食の一種らしい。
何かの説明かな?と思ってシンジが広げた紙には以下の内容が記されていた。
何かの説明かな?と思ってシンジが広げた紙には以下の内容が記されていた。
『がんばれ!元気を出せ!救助は必ずやってくる!』
この救命糧食は、特殊環境下においても速やかに心身の疲労を回復し、体力の維持をはかるために製造されたもので
糖類、脂肪、たんぱく質などの各種栄養素が有効に取れるように配合されています。
1食分のカロリーは、A食品 B食品 合わせて270カロリーあり、これを食べると熱とエネルギーを与え、直ちに元気百倍となります。
糖類、脂肪、たんぱく質などの各種栄養素が有効に取れるように配合されています。
1食分のカロリーは、A食品 B食品 合わせて270カロリーあり、これを食べると熱とエネルギーを与え、直ちに元気百倍となります。
A食品(ハードビスケット) 1食:48g
穀類を主原料とした加工食品で、糖質と脂肪およびたんぱく質を含み、ビスケット風な味と香りを持つ高カロリー食品です。
穀類を主原料とした加工食品で、糖質と脂肪およびたんぱく質を含み、ビスケット風な味と香りを持つ高カロリー食品です。
B食品(ゼリー) 1食:16g
糖類を主体とした加工食品で、風味高く口当たりの良い高カロリー食品です。
糖類を主体とした加工食品で、風味高く口当たりの良い高カロリー食品です。
以上である。
どうやらこれは遭難者向けの非常食で、シンジが読んだのは励ましの手紙らしい。
パッケージのラベルによれば航空自衛隊救難非常食、シンジは知る由も無いが通称『ガンバレ食』と呼ばれている品だった。
どうやらこれは遭難者向けの非常食で、シンジが読んだのは励ましの手紙らしい。
パッケージのラベルによれば航空自衛隊救難非常食、シンジは知る由も無いが通称『ガンバレ食』と呼ばれている品だった。
「何ががんばれだよ!人の事を馬鹿にして!」
馬鹿にされたと感じたのかシンジは励ましの頼りをくしゃくしゃに丸めて放り投げてしまった。
しかし肝心の中身は捨てる訳にいかない。
まずA食品のパックを破ると中から長方形に固められたビスケットが現れる。
シンジはそれを口に含んでから顎に力を込めると思ったより簡単に砕け、破片が口の中で入ってきた。
味はピーナッツの粉末が混ざっているらしくどことなくピーナッツバターに似た感じだとシンジは思う。
時々ペットボトルの水も含んだが口にあまり残らないよう作ってあるらしく意外にも食べやすい。
遭難者向けの非常食というたげあって塩の粒も含まれており、塩分の刺激がシンジには心地よかった。
気が付けば食べ終えてしまっていたので次に細長いパッケージのB食品を手に取る。
こちらはゴマが挟んでおり、甘みが疲れた今のシンジには何よりもありがたかった。
しかし肝心の中身は捨てる訳にいかない。
まずA食品のパックを破ると中から長方形に固められたビスケットが現れる。
シンジはそれを口に含んでから顎に力を込めると思ったより簡単に砕け、破片が口の中で入ってきた。
味はピーナッツの粉末が混ざっているらしくどことなくピーナッツバターに似た感じだとシンジは思う。
時々ペットボトルの水も含んだが口にあまり残らないよう作ってあるらしく意外にも食べやすい。
遭難者向けの非常食というたげあって塩の粒も含まれており、塩分の刺激がシンジには心地よかった。
気が付けば食べ終えてしまっていたので次に細長いパッケージのB食品を手に取る。
こちらはゴマが挟んでおり、甘みが疲れた今のシンジには何よりもありがたかった。
「ふう、意外と美味しいんだな。ケンスケが見たら喜ぶかな」
食事を終えたシンジは疎開したミリタリーマニアの友人を思い浮かべながら腹を撫でる。
そのまま疲れきった体を背後の岩に預けてシンジは身体の力を抜いた。
そのまま疲れきった体を背後の岩に預けてシンジは身体の力を抜いた。
みくるをどうするか、アスカを探すのか、地図に書かれた合流場所を向かうのかどうか。
これからどうすればいいのか答えはまだ出せないが今はとにかく休みたい。
しかし放送を聞き逃さないように注意しようと時計を見ながら意識は保つ事にする。
見上げると太陽はすっかり頭上に昇ってしまっていた。
次の放送では誰が呼ばれる事になるのだろう。
これからどうすればいいのか答えはまだ出せないが今はとにかく休みたい。
しかし放送を聞き逃さないように注意しようと時計を見ながら意識は保つ事にする。
見上げると太陽はすっかり頭上に昇ってしまっていた。
次の放送では誰が呼ばれる事になるのだろう。
「カヲル君、僕はどうしたらいいんだろう…」
弱気になる余り思わずそんな呟きが漏れる。
しかし、その答えは何処からも返っては来なかった。
森の中に独り残された少年はただ時間が過ぎるのをぼんやりと待っている事しか出来なかった。
しかし、その答えは何処からも返っては来なかった。
森の中に独り残された少年はただ時間が過ぎるのをぼんやりと待っている事しか出来なかった。
【E-08南西部 小川のほとり/一日目・昼前】
【碇シンジ@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】疲労(大)、左肘に銃創、疑心暗鬼
【持ち物】デイパック、基本セット(水は小川で補充済み、食料2食消費)、小説『k君とs君のkみそテクニック』
護身用トウガラシスプレー@現実、木の枝、ポケットに石を数個
【思考】
0.今は休みたい
1.死にたくない。独りになりたくないが、誰も信用できない。
2.朝比奈みくるに対し強い嫌悪感・敵対心、夏子を含む「大人」全般への疑心。
3.アスカと合流したい。
4.優勝したらカヲル君が――――?
【状態】疲労(大)、左肘に銃創、疑心暗鬼
【持ち物】デイパック、基本セット(水は小川で補充済み、食料2食消費)、小説『k君とs君のkみそテクニック』
護身用トウガラシスプレー@現実、木の枝、ポケットに石を数個
【思考】
0.今は休みたい
1.死にたくない。独りになりたくないが、誰も信用できない。
2.朝比奈みくるに対し強い嫌悪感・敵対心、夏子を含む「大人」全般への疑心。
3.アスカと合流したい。
4.優勝したらカヲル君が――――?
【備考】
※現在地の正確な位置は判っていませんがE-07かE-08のどちらかだろうと思っています。
※聞き逃していた禁止エリアの情報を知りました。
※地図の裏面には「18時にB-06の公民館で待ち合わせ、無理の場合B-07のデパートへ」と走り書きされています。
※現在地の正確な位置は判っていませんがE-07かE-08のどちらかだろうと思っています。
※聞き逃していた禁止エリアの情報を知りました。
※地図の裏面には「18時にB-06の公民館で待ち合わせ、無理の場合B-07のデパートへ」と走り書きされています。
「夏子さん、今はどの辺りですか?」
「川を越えてから一時間近く歩いたから、恐らくはD-07辺りだと思うわ」
「川を越えてから一時間近く歩いたから、恐らくはD-07辺りだと思うわ」
みくるの投げかけた質問に夏子は地図も見ないで即答する。
しかし周囲は木に囲まれており視界はまるで利かない。
麓の方に在る筈の湖も一行の誰も見ていなかった。
最もこれにはわざと視界の悪いルートを選んでいるという事情もある。
市街地に向かう事が決まって直ぐ夏子が言い出した事であった。
しかし周囲は木に囲まれており視界はまるで利かない。
麓の方に在る筈の湖も一行の誰も見ていなかった。
最もこれにはわざと視界の悪いルートを選んでいるという事情もある。
市街地に向かう事が決まって直ぐ夏子が言い出した事であった。
「改めて言いますが私は無闇に戦闘に関わるつもりはありません、だから極力人目に付かない場所を通って市街地を目指します」
「ムハ、我輩も賛成です。正直現在の戦力ではよほど相手に恵まれない限り勝てるとは思えませんから」
「基本的には賛成ですが、本当に困っている人を見つけたら助けてあげたいです」
「ムハ、我輩も賛成です。正直現在の戦力ではよほど相手に恵まれない限り勝てるとは思えませんから」
「基本的には賛成ですが、本当に困っている人を見つけたら助けてあげたいです」
ハムは即座に賛成を示し、みくるも戦力の不安はあるのだろう、条件付きながら賛成した。
「幸い私達には便利な道具が有ります、この指向性マイクを使えば相手に先んじる事も可能。
相手が集団の場合、話の内容を聞いてから接触するか決められる」
「ではそれは私が使います、どうせ戦闘に自信なんてありませんし。今役に立てるとしたらそのぐらいしか」
「ムハ、我輩は見ての通り人より耳に自信があります。マイクの死角に誰かが居ても我輩がカバーしてみます」
相手が集団の場合、話の内容を聞いてから接触するか決められる」
「ではそれは私が使います、どうせ戦闘に自信なんてありませんし。今役に立てるとしたらそのぐらいしか」
「ムハ、我輩は見ての通り人より耳に自信があります。マイクの死角に誰かが居ても我輩がカバーしてみます」
結果、ここまで誰の姿も見る事なく一行は市街地まで後1~2エリアという位置に到達したという訳である。
しかし道無き道の強行軍はさすがに疲労もそれなりに大きい。
放送も意識しなければならない時間となった頃、森の中に居るうちにと昼食を摂る事が決まった。
しかし道無き道の強行軍はさすがに疲労もそれなりに大きい。
放送も意識しなければならない時間となった頃、森の中に居るうちにと昼食を摂る事が決まった。
「そういえばこの近くに山小屋があるんですね、どうせなら其処で食事にしますか夏子さん?」
昼食の準備にとりかかろうとしたみくるだったが地図を確認してそんな提案を行う。
森の中もハイキング風味で良いがテーブルと椅子があるだろう山小屋ならもっと快適に食事ができる、そう考えての事だった。
しかし夏子は首を振って却下する。
森の中もハイキング風味で良いがテーブルと椅子があるだろう山小屋ならもっと快適に食事ができる、そう考えての事だった。
しかし夏子は首を振って却下する。
「駄目よ、さっき言った様に私達は今他人から隠れたい。食事中ともなればどうしても隙が出来るし万が一の事を考えると危険すぎる」
「でも其処にアスカちゃんが居るのかもしれませんし」
「ムハ、それなら食事は此処で行いその後マイクで山小屋に誰かが居るか調べるというのはどうですか?居るのが危険人物と判断すればそのまま通り過ぎれば良いのです」
「そうね、食事が済んでから確かめる程度ならいいでしょう」
「はい、それではその通りで構わないです」
「でも其処にアスカちゃんが居るのかもしれませんし」
「ムハ、それなら食事は此処で行いその後マイクで山小屋に誰かが居るか調べるというのはどうですか?居るのが危険人物と判断すればそのまま通り過ぎれば良いのです」
「そうね、食事が済んでから確かめる程度ならいいでしょう」
「はい、それではその通りで構わないです」
ハムの妥協案に夏子もみくるも一応は納得する。
こうしてティバックを椅子代わりに森の中でランチタイムが始まった。
食事は皆同じ方が良いです、とみくるが三人の分を提供したのだがティバックから出てきた食料はフランス軍のコンバットレーションだった。
世界各国の軍隊の中でも上位に入る味と評判の携帯軍用食だとはフランスという国の名前すら知らない夏子やハム、軍事に疎いみくるに知る由も無い。
こうしてティバックを椅子代わりに森の中でランチタイムが始まった。
食事は皆同じ方が良いです、とみくるが三人の分を提供したのだがティバックから出てきた食料はフランス軍のコンバットレーションだった。
世界各国の軍隊の中でも上位に入る味と評判の携帯軍用食だとはフランスという国の名前すら知らない夏子やハム、軍事に疎いみくるに知る由も無い。
防水セロファンに包まれた外箱の梱包を解くと中にはプルトップ式の缶詰やクラッカー、キャンディやチョコレートバー、粉末スープ、ココアに固形燃料を使った簡易ストーブも入っていた。
説明書は当然フランス語だったが何故か全員がその内容を理解する事が出来た。
説明書は当然フランス語だったが何故か全員がその内容を理解する事が出来た。
「へえ、缶詰だと馬鹿に出来ない味ね、これ程の料理はなかなかお目にかかれないわ」
開封したメインミールの牛肉と野菜のシチューを簡易ストーブで温めたものをスプーンで食した夏子は手放しで絶賛した。
軍人だけあって缶詰の食事は食べ飽きているがこの食事はオアシスで支給される塩辛いだけの肉の缶詰や色の抜けた野菜の缶詰とはまるで違う。
口に入れた肉はよほどじっくり煮込まれているのかホロホロと崩れ、野菜には肉の旨みが十分に染み込んでおり噛み締める毎に味が湧き出てくる。
身体が塩分を欲していたという事もあるがスプーンがとにかく動く。
軍人だけあって缶詰の食事は食べ飽きているがこの食事はオアシスで支給される塩辛いだけの肉の缶詰や色の抜けた野菜の缶詰とはまるで違う。
口に入れた肉はよほどじっくり煮込まれているのかホロホロと崩れ、野菜には肉の旨みが十分に染み込んでおり噛み締める毎に味が湧き出てくる。
身体が塩分を欲していたという事もあるがスプーンがとにかく動く。
「このクラッカーもなかなかですね、チョコチップが混じっていてパリッとして甘く溶けてくれます、しかし飲み物が水では不足ですね」
「あ、私がコーヒーを入れます」
「あ、私がコーヒーを入れます」
みくるは食事の手を止めて立ち上がると沸かしたお湯でレーション付属のインスタントコーヒーを淹れる。
夏子とハムにそれぞれ紙コップを手渡すとその手際の良さに感心の声が上がる。
夏子とハムにそれぞれ紙コップを手渡すとその手際の良さに感心の声が上がる。
「ありがとう朝比奈さん、それにしてもお茶汲みが様になっているわね」
「本当です、みくるさん!プロフェッショナルな感じがしましたが本職の方なんですか?」
「ある人に何度もやらされたんです、無茶な事をする人でしたけど私はその人が好きでした」
「本当です、みくるさん!プロフェッショナルな感じがしましたが本職の方なんですか?」
「ある人に何度もやらされたんです、無茶な事をする人でしたけど私はその人が好きでした」
一瞬影が差した気がしたが笑顔でみくるは二人に返した。
何かあったのかとはもちろん夏子もハムも口にしない、そのまま殺し合いの中でのひと時のランチタイムを楽しむのが全員の願いだ。
何かあったのかとはもちろん夏子もハムも口にしない、そのまま殺し合いの中でのひと時のランチタイムを楽しむのが全員の願いだ。
「ムハ!食事がこんなに楽しいとは!次の食事も皆さんで楽しくやりたいですな」
「そうね、出来ればまたやりたいわね」
「きっと出来ますよ!次はシンジさんや万太郎さんも一緒です!」
「そうね、出来ればまたやりたいわね」
「きっと出来ますよ!次はシンジさんや万太郎さんも一緒です!」
この殺し合いを終わらせればそれも適う、一行はここで気持ちを新たにする。
それは適わないかもしれないが先の事はわからない。
だからこそ力なき存在も前を目指すのだ。
それは適わないかもしれないが先の事はわからない。
だからこそ力なき存在も前を目指すのだ。
「時間は間も無く12時ですか、みくるさん周囲に異常はありませんか?」
「ちょっと待ってください…あ、何か聞こえました!」
「ちょっと待ってください…あ、何か聞こえました!」
食事の後片付けも終え、出発前にマイクで周囲の音を探っていたみくるが突然声を上げる。
夏子とハムが見たマイクの先にはしかし森の木しか見えない。
夏子とハムが見たマイクの先にはしかし森の木しか見えない。
「朝比奈さん、聞こえたのは会話?それとも足音?」
「我輩の耳では今の所何も聞こえませんね」
「それが…よく判らないんです。何か機械が動くような低い音で、今はもう聞こえません」
「我輩の耳では今の所何も聞こえませんね」
「それが…よく判らないんです。何か機械が動くような低い音で、今はもう聞こえません」
手に持つマイクを動かしながらみくるは首を傾げた。
代わって夏子がヘッドフォンを装着し、みくるの示した方角にマイクを向けるが木がザワザワと揺れる音しか聞こえない。
雑音が大きくなるのを承知でボリュームを最大に上げる。
更に目を閉じて耳に神経を集中、耳障りな雑音に混じってなにか有益な情報が含まれていないかじっと待つ。
十秒、二十秒…一分近くが経過したが尚も雑音しか聞こえない。
これ以上は無理か、と夏子が諦めかけたその時。
代わって夏子がヘッドフォンを装着し、みくるの示した方角にマイクを向けるが木がザワザワと揺れる音しか聞こえない。
雑音が大きくなるのを承知でボリュームを最大に上げる。
更に目を閉じて耳に神経を集中、耳障りな雑音に混じってなにか有益な情報が含まれていないかじっと待つ。
十秒、二十秒…一分近くが経過したが尚も雑音しか聞こえない。
これ以上は無理か、と夏子が諦めかけたその時。
『キュァァックル~』
それは確かに鳴き声だった。
慌てて夏子は再び集中する。
慌てて夏子は再び集中する。
『キュ~』
間違いない、確かに何かがこの先に居る。
夏子は一旦ヘッドフォンを外すと聞こえたままをみくるとハムに伝える。
時計を確認すると放送は近い。
さすがに今は動けないがその後は?
夏子は一旦ヘッドフォンを外すと聞こえたままをみくるとハムに伝える。
時計を確認すると放送は近い。
さすがに今は動けないがその後は?
――――果たして動くか、動かざるぺきか。
【D-07 山小屋付近/一日目・昼前】
【川口夏子@砂ぼうず】
【状態】疲労(小)
【持ち物】デイパック、基本セット(水は補充済み) 、高性能指向性マイク@現実、ビニール紐@現実(少し消費)、コルトSAA(5/6)@現実、.45ACL弾(18/18)、夏子とみくるのメモ
【思考】
0.何をしてでも生き残る。終盤までは徒党を組みたい。
1.シンジとみくるに対して申し訳ない気持ち。みくるのことが心配。
2.市街地に向かいパソコンとシンジの知り合い(特にアスカ)を探す。
3.ハムを少し警戒。
4.力が欲しい。
5.水野灌太と会ったら――――
【状態】疲労(小)
【持ち物】デイパック、基本セット(水は補充済み) 、高性能指向性マイク@現実、ビニール紐@現実(少し消費)、コルトSAA(5/6)@現実、.45ACL弾(18/18)、夏子とみくるのメモ
【思考】
0.何をしてでも生き残る。終盤までは徒党を組みたい。
1.シンジとみくるに対して申し訳ない気持ち。みくるのことが心配。
2.市街地に向かいパソコンとシンジの知り合い(特にアスカ)を探す。
3.ハムを少し警戒。
4.力が欲しい。
5.水野灌太と会ったら――――
【備考】
※主催者が監視をしている事に気がつきました。
※みくるの持っている情報を教えられましたが、全て理解できてはいません。
※万太郎に渡したメモには「18時にB-06の公民館」と合流場所が書かれています。
※主催者が監視をしている事に気がつきました。
※みくるの持っている情報を教えられましたが、全て理解できてはいません。
※万太郎に渡したメモには「18時にB-06の公民館」と合流場所が書かれています。
【朝比奈みくる@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】疲労(小)、左肩に切り傷(応急処置済み)、深い悲しみ、シンジが心配
【持ち物】デイパック、基本セット(食料を三人分消費) 、スタームルガー レッドホーク(5/6)@砂ぼうず、.44マグナム弾30発、
コンバットナイフ@涼宮ハルヒの憂鬱、七色煙玉セット@砂ぼうず(赤・黄・青消費、残り四個)
【状態】疲労(小)、左肩に切り傷(応急処置済み)、深い悲しみ、シンジが心配
【持ち物】デイパック、基本セット(食料を三人分消費) 、スタームルガー レッドホーク(5/6)@砂ぼうず、.44マグナム弾30発、
コンバットナイフ@涼宮ハルヒの憂鬱、七色煙玉セット@砂ぼうず(赤・黄・青消費、残り四個)
【思考】
1.長門有希の真意を確かめる
2.北の市街地(パソコン)を目指す。
3.市街地についたらパソコンのある施設を探し、情報を探索。可能なら長門との交信を試みる。
4.シンジの知り合い(特にアスカ)を探し彼の説得と保護を依頼する。
5.朝倉涼子は警戒、古泉に対しても疑念。
6.この殺し合いの枠組みを解明する。
7.ハルヒが生き返るとすれば……
1.長門有希の真意を確かめる
2.北の市街地(パソコン)を目指す。
3.市街地についたらパソコンのある施設を探し、情報を探索。可能なら長門との交信を試みる。
4.シンジの知り合い(特にアスカ)を探し彼の説得と保護を依頼する。
5.朝倉涼子は警戒、古泉に対しても疑念。
6.この殺し合いの枠組みを解明する。
7.ハルヒが生き返るとすれば……
【備考】
※ハルヒが自身の能力によって生き返る可能性もあると考えていますが、極めて可能性は薄いと思っています。
※トトロの外見のみ認識しました。
※主催者が監視をしている事を知りました。
※シンジに何らかの特殊能力があるのではないかと考えました(今は思いつき程度です)。
※ハルヒが自身の能力によって生き返る可能性もあると考えていますが、極めて可能性は薄いと思っています。
※トトロの外見のみ認識しました。
※主催者が監視をしている事を知りました。
※シンジに何らかの特殊能力があるのではないかと考えました(今は思いつき程度です)。
【ハム@モンスターファーム~円盤石の秘密~】
【状態】疲労(小)、少しの擦り傷
【持ち物】 基本セット(ペットボトル1本、食料半分消費)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
1.夏子達に同行し、市街地に向かう。でも危なくなったら逃げる。
2.頼りになる仲間をスカウトしたい。
3.シンジの知り合い(特にアスカ)を探し彼の説得と保護を依頼する。
4.アシュラマンも後でスカウトしたい。
5.殺し合いについては……。
【状態】疲労(小)、少しの擦り傷
【持ち物】 基本セット(ペットボトル1本、食料半分消費)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
1.夏子達に同行し、市街地に向かう。でも危なくなったら逃げる。
2.頼りになる仲間をスカウトしたい。
3.シンジの知り合い(特にアスカ)を探し彼の説得と保護を依頼する。
4.アシュラマンも後でスカウトしたい。
5.殺し合いについては……。
【備考】
※ゲンキたちと会う前の時代から来たようです。
※アシュラマンをキン肉万太郎と同じ時代から来ていると勘違いしています。
※スタンスは次のかたにお任せします。仲間集めはあくまで生存率アップのためです。
※ゲンキたちと会う前の時代から来たようです。
※アシュラマンをキン肉万太郎と同じ時代から来ていると勘違いしています。
※スタンスは次のかたにお任せします。仲間集めはあくまで生存率アップのためです。
【護身用トウガラシスプレー@現実】
暴漢や猛獣撃退用に使用される催涙スプレーの一種、下記のような効果をもたらす。
暴漢や猛獣撃退用に使用される催涙スプレーの一種、下記のような効果をもたらす。
3~15分続く呼吸困難、鼻水、せきなどの呼吸障害
15~30分ほど続く一時的な盲目
45~60分続く皮膚の灼熱感
15~30分ほど続く一時的な盲目
45~60分続く皮膚の灼熱感
【高性能指向性マイク@現実】
テレビ撮影で使われる様な棒状の高性能マイクロフォン。
特定方向のみの音を増幅する為、雑音の多い環境でもピンポイントで目的の音を拾える。
ヘッドフォンを二人分接続可能で同時に聞ける。
ボリューム調整も可能、交換用電池も付属。
特定方向のみの音を増幅する為、雑音の多い環境でもピンポイントで目的の音を拾える。
ヘッドフォンを二人分接続可能で同時に聞ける。
ボリューム調整も可能、交換用電池も付属。
【ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
ナンバーズの一人、ノーヴェの装備品であるジェットエンジン付きのローラーブレード
一般人が装備して使える品なのかは不明。
ナンバーズの一人、ノーヴェの装備品であるジェットエンジン付きのローラーブレード
一般人が装備して使える品なのかは不明。
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少年追い易く信頼成り難し | 碇シンジ | 彼の心乱せ魔将 |
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