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第二回放送 ◆h6KpN01cDg



「よし、放送の時間だ」
暗い部屋の中。
男は、自らに背を向けコンピュータに向かっている少女に声をかける。
答えはないと理解していても。
「……ねえ有希君。いいことを思いついたんだ」
彼女が、眉を上げも唇を噛みもしないことを承知していても。
「……うんうん、考えるだけでわくわくしてきた。そうだ、そうしよう。是非そうしたい」
男はただ語る。
それが『義務』であるかのように。
「彼らに、ご褒美をあげよう。きっと誰だって欲しいものさ」
楽しそうに、愉しそうに、喜しそうに。
そう、まるで―――これから娘の名前を呼ぶことなど何とも思っていないかのように。

「頑張って人を殺した者にあげる―――とっておきのご褒美だ」

少女の細く白い指が、エンターキーをそっと叩いた。
それは、おそらくは肯定の合図だった。




『やあ、参加者の皆。元気にしているかな?
太陽もすっかり上りきって、暑くなってくるかもしれないねえ。それとも雨が降るかな?何にせよ、天候には注意ってとこかな。
どうだい?ここに来てもう12時間、楽しめていたら嬉しいなあ。
やっぱり、何をするにも楽しむことからさ。嫌なことを無理やりするのは大変だろう?辛いだろう?
……おっと、こんな話は蛇足だったかな?それでは、皆お待ちかねの禁止エリアの発表といこうかな。
さっきも言ったけれど、一回しか言わないからね?第一回目の放送を聞き逃しちゃった君は、聞いておかないと大変なことになっちゃうかもしれないよ?

午後13:00から J-03
午後15:00から E-01
午後17:00から H-05

どうかな、皆、メモはできたかなあ?
では、続いて惜しくも死んでしまった人の名前だ。
いやあ、残念だったねえ。せっかく一回放送を超えたのにねえ。

ホリィ
ガルル中尉
アシュラマン
草壁メイ
セイン

以上5名だよ。
それにしても……やっぱりいまいち人が死なないみたいだねえ。
こんな場所にいるんだから、人を殺さないと意味がないじゃないか。


……だから、僕は一つ君たちにご褒美をあげることにしたよ。
もちろん!これがもらえるのはちゃんと沢山殺している人だけだからね!誰でも、なんて甘いことは聞かないよ。
そう……じゃあ、人数は三人にしよう。……もう二人殺している人もいるみたいだし、その人にとってはもうすぐかな?
三人殺した人は、この放送までに他の皆がどこにいたのかを教えちゃおう!……あ、もちろん、そこまで連れていってくれ、なんてのはだめだよ?
たとえ過ぎ去った時間のことであっても、どうしても居場所が知りたい人、いるよね?……何か殺すことで利益があるって思うと、俄然やる気が出てくるってもんだよね?
ちなみに、本当は殺してないのに殺したなんて嘘吐いた人は、その場でさよなら、だからね。正直に、ね。
大丈夫だよ、僕はちゃんと分かっているからね。正直ものと嘘吐きはすぐに分かるんだ。

それじゃあ、皆頑張って殺し合ってね。また6時間後に会おう』

そして、男はマイクの電源を落とした。
そして満面の笑顔で、少女に向きなおる。

「……有希君、今みたいな感じでよかったかな?」
男の問いに、またも少女・長門は答えない。
ただ、無言でパネルを叩くのみ。
「……本当に有希君は熱心だなあ。さっきも中トトロのところに行ったんだろう?」
少女の表情は変わらない。しかし、キーボードを叩く手が一瞬、止まる。
「わざわざありがとうね、中トトロを元の位置に戻してくれて。やっぱり進行役はちゃんと進行してくれないとねえ」
「……構わない」
かたり、かたり、かたり。
薄ぼんやりと、少女の表情がコンピュータの液晶に移り込む。
そこには、何もない。
笑顔も、怒りも、悲しみもない。ただの、無表情。
「……まあ仕事熱心なのは構わないけど、たまには休んだ方がいいよ、有希君?」
草壁タツオは長門の肩を親しげにぽんと叩き、部屋を出ていく。
ドアが閉まる音。



「……問題、ない」
かちり、かちり、かちり。
少女が小さく零した言葉の意味は、誰も知らない。
「……」
草壁タツオは知っているのだろうか。
彼女が、参加者の一人と交戦したことを。
何も言わなかったということは、特に非難すべきことではない、ということなのだろう。

スバル・ナカジマ。
それが、先ほど長門が刃を交えた、参加者の名前だった。
彼女は一般人とは比べ物にならない強さを持っていたが、長門にかかれば赤子の手をひねるも同然。
そう、大した相手であるはずがない。
だから、長門が気にかけるはずもない、そのはずなのに。
「……そう、」
長門のコンピュータに映し出されている、画像。
会場の地図や現在の首輪位置といったものと並んで、一つそこにはあった。
『参加者』としてリスト化された、スバル・ナカジマのデータ。

長門は、少しの間それをじっと見つめていたが、やがてそのウィンドウごと消し、再びキーボードを叩く作業を開始した。
だから、今のところは誰にも分からない。
彼女がどんな思いで、その青髪の少女のデータを見つめていたのかなど。


長門有希と呼ばれる少女、たった一人だけが残された部屋。
その部屋には、ただディスプレイの光だけが射していた。

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第一回放送  草壁タツオ 誰がために
さらば愛しき中トトロ!! の巻 長門有希 心と口と行いと生きざまもて(前編)




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