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Sand Mission ◆S828SR0enc


 鬱蒼と茂る木々は、照りつける太陽を覆い隠す。
 さわさわと鳴る葉々は砂漠育ちの人間にとっては恐ろしく慣れないもののはずだ。
 しかしそんなことは全く気にも留めず、砂ぼうずこと水野灌太は踊るような足取りで森を行く。

(待ってろよ~ボインちゃん三姉妹~♪)

 ここが殺し合いの場であることを忘れたように鼻歌さえ口ずさみ、灌太はずんずんと森を進んでいく。
 足に絡まる蔦や頭を打ちすえる枝も無視して、ただ一直線に目指すは北である。
 そのあまりに楽しげな様子からは、つい数時間前に同行者を失ったことへの悲しみも焦りも何もうかがえない。
 例えるなら目の前に横たわっているはずの宝の山へ飛び込もうとする、頭の軽い山賊さながらの様子である。

 が、しかし。

『――やあ、参加者の皆。元気にしているかな?』

 耳障りな雑音混じりに聞こえ始めた音に、灌太の鼻歌はぴたりとやんだ。
 緩み切っていた口元がきりりと引き締まり、眼差しは一気に鋭さを取り戻す。
 しかしそれでいて足取りは変わらず、何ら速度を落とすことなく歩き続ける彼の頭の上を、放送が滔々と流れていく。

『――さっきも言ったけれど、一回しか言わないからね――』

 一層高く茂った木立をうるさげにはねのければ、少し前が開ける。
 いくつかの曲がりくねった木を超えた先に、見るからに朽ち果てた家屋が姿を見せた。

『――いやあ、残念だったねえ。せっかく一回放送を超えたのにねえ。――』

 近づけば近づくほど、その家屋が荒れ果てているのが見えてくる。
 二階建ての木製の壁は所々がはがれおち、角の部屋は中の様子が見えるほどに崩落している。
 屋根もあちこちに穴があき、窓に張られたガラスは例外なく割れている。
 かつては小さな花壇か何かでもあったのか、玄関先には欠けた白い杭がいくつも地面に刺さっていた。

『――三人殺した人は、この放送までに他の皆がどこにいたのかを教えちゃおう!――』

 玄関の扉は閉ざされているが、蝶つがいが外れて傾いているためにその意味を為していない。
 きれいな模様の彫られたガラスはすでに半分も残っておらず、ドアノブは外れかかっている。

 そしてそのいくつかの落ち葉のたまったステップには、すでに泥だらけの足跡が一足分残っていた。

『――それじゃあ、皆頑張って殺し合ってね。また6時間後に会おう』

 ぶつん、という音をたてて声は途切れる。
 その間無言で進み続けた道を省みることもなく、立ち止まることもなく。
 灌太はすでに何者かが侵入し、そして出て行ったと思わしき玄関前に立つと。

「――くそったれが!」

 怒号ともつかない声とともに、玄関扉を蹴り開けた。


◇ ◇ ◇


 かつてはそれなりの家だったであろう廃屋の中を遠慮のない足取りで歩きながら、灌太は絶えまなく周囲を警戒していた。
 玄関前の足跡は同じものが出た跡と入った跡があったために、その主がこの屋敷内にいないのは確かだ。
 しかし、他の誰かが待ち伏せをしている可能性もある。
 注意深く床のほこり――そしてそこに残った痕跡を見ながら、灌太はひとつひとつ、屋敷の扉を開けていく。

「――うおっ、と」

 開けた瞬間、その向こうの床がなかったために声が漏れた。
 室内は淀んだ空気に満ち、骨組だけのソファと思しきものの残骸が転がっている。
 先ほどから見てきた部屋はどこもこんな調子で床が抜け、荒廃し尽くしていた。
 隙なく室内を検分し、特にめぼしいモノがないとわかると、灌太はすぐさま次の部屋へと足を延ばす。

「――、おお!」

 今度は軽い感嘆の息が漏れた。
 一階の最奥に当たる部屋は奇跡的に床が抜けてもおらず、比較的損傷が少ない。

 そしてその中心部の床には、ほこりがまったくと言っていいほどなかった。

「このサイズからすると、相当の大男だな――万が一にもボインちゃんってことはないだろ。
 ほこりの具合から考えると、玄関から入ってここで休憩、そしてまた出て行った、ってところか――?」

 ぐるりと足もとに気をつけ部屋の中を回ってみると、白い紙が目に入った。
 お、と喜びの声を漏らして拾い上げ、しかし灌太はすぐに落胆した。

「なんだ、名簿かよ……」

 よく見ると部屋の隅の暗がりにはデイパックも落ちている。
 開けてみるとぱっと見武器の類はなくなっているものの、食糧などの基本の支給品は手つかずだ。

「奪ったバッグから武器だけネコババ、ってところだな」

 ひょっとして底の方にまだ何かあるかもしれないと思い、念のため名簿を入れてそのバッグを担ぎあげる。
 そして灌太は今一度部屋の中を見渡し、他に変わったものがないことを確認した。

 万が一あったとしても、すでにここを訪れた者が持っていった可能性が高いだろうと判断し、灌太は踵を返す。
 頭脳を絶えまなく働かせながらも、彼の歩みは止まらない。
 灌太の足は、一階から続く腐りかけの階段へと向かった。

「――よ、と、――とと、!」

 あちこちの板が腐っているため、踏んだら最後、下まで真っ逆さまである。
 それだけでなく手すりもぼろぼろなので、一瞬たりとも気は抜けない。
 とはいえそこは砂漠の妖怪と恐れられし男。
 灌太はうまい具合にバランスをとり、どうにか分厚くほこりの積もった階段を登りきった。

「ふぃー、まったく脅かしやがって。
 これで二階になんもないとかいうオチだったら、完全に無駄足だな」

 そういって一階と同じように、次々と扉を開けていく。
 しかし灌太の期待も虚しく、どこの部屋も一階と大差ない荒れ具合であり、目につくものはない。
 むしろ床を踏み抜いたらよりまずいことになる分、一階よりもハラハラし通しだった。
 こりゃはずれかな、とぼやきながら、灌太はついに最後に角部屋の扉を開けた。

「――ん、んん?」

 開けた瞬間、灌太の目前を白い波が襲う。
 とっさに払いのけると、それはぱさりという音をたてて足もとに落ちた。

「なんだこりゃ……楽譜?」

 多少色あせてはいるが、まぎれもなくそれは楽譜だった。
 そっち方面の教養はない灌太には何の曲かはわからないが、どうにも金持ち連中の好きそうな感じのするものである。
 あっても役には立ちそうにないな、とそれを足もとに落とし、灌太は改めて室内を見回した。

「…………」

 綺麗だった。
 あちこち錆びつき、床が抜けている場所もあるが、それでも他の部屋に比べて格段に整理されている。
 朽ちはて具合はどっこいどっこいというところだが、綺麗という印象を受けるのは部屋が掃除されたような状態になっているからだろう。
 室内には古めかしいピアノ、そしていくつかの棚が残されているのみである。
 そしてその向こうにある窓は、どういうわけか開いていた。

「……こいつは」

 窓に近づき、灌太は目を見張る。
 家がこんな状態になるまで窓が開きっぱなしだったなら、雨ざらしになって色あせたりさびたりするのが普通だ。
 だが、この窓にはそういった跡はない。ごく最近に誰かが開けでもしたかのようにきれいだった。
 試しにピアノに触れてみると、ぽーん、と狂いなく澄んだ音が響く。

「――けっ、不気味なトコだな」

 色褪せた床には、何のつもりか意味のわからない模様のようなものまででかでかと書かれている。
 こちらも床の色と比べると真新しく綺麗で、それがまた気味が悪い。
 窓から吹き込む風で、ピアノの上や棚に乗せられた楽譜が次々と宙を舞う。

 言い知れぬ違和感を覚え、それを払拭するように頭を振りながら灌太は部屋を後にする。
 なんとなくではあるが、あまりいい感じがしない。
 そう思うと壁に掛けられた目のたくさんついた趣味の悪い仮面が無性に不気味に見えたりして、灌太は背筋を震わせた。

「あ、あーあ、まったく、こんな辛気臭いところに長くいられっかよ!」

 誰に言うでもなく、大声で自分を鼓舞して灌太は階段を下りていく。
 奥の開け放たれた扉、その向こうからは今も風に乗って楽譜がひらひらと廊下へ舞い落ちていた。


◇ ◇ ◇


「――どっこいしょ、と」

 屋敷を出て、玄関先に座り込み、灌太はようやく一息をつく。
 砂漠の妖怪と恐れられた自分がたかが廃墟を不気味に思って逃げだすなど、とてもあほらしい話だと思う。
 しかしその一方で灌太は自分の予感には言い知れぬ自信を持っていた。
 それに、長くこの場にとどまってもいられない理由もある。

「……あーあ、死んじまったのかよ……」

 デイパックから壊れたウインチを引きずり出しながら、ぼやく。
 考えるのは先ほど放送で名を呼ばれた、やけに渋いカエルのことだ。
 そのいかにも責任感の強そうな風貌に特に思うことはないのだが、同行者の少女を思うと気分が晴れない。

「ま、死んではいないってことなんだろうけどなぁ……」

 はー、と長いため息が漏れる。
 手元でウインチを可能な限り解体しながら、灌太はあの凛々しい少女を――正確にはその乳を思い出していた。

(あのカエルがただで死ぬわけねぇから、あの二人は何かすげぇのに襲われたってことになる。
 そうすると死んでなくてもスバルが怪我を負ってる可能性は高いわけでー……
 んで、別に怪我してなくてもコースを変更したり気分が変わったりした可能性がめっちゃ高い、と。
 つまり時間通りに待ち合わせ場所に来る確率は低く、しかも遅刻どころか端から来ないのもありえるわけで……
 と、いうことはぁ――)

 がくー、と頭をたらし、灌太は天に向かってぼやいた。

「あーくそっ! 乳揉んどけばよかったなぁ……」

 戦力の分断やらなんやらよりも、そこにこだわる灌太であった。
 せっかくだからお礼のときによー、とぼやき、無意味に手を空中でにぎにぎする。
 セインの妹のノーヴェやボイン三姉妹が残っているとはいえ、自分がすばらしい乳をいじくりまわす機会を失ったのはどうしようもなく惜しい。
 むしろあの軍人カエルが死んだとか、そんなのがどうでもよくなるくらい惜しい。

「もったいな――いてっ!」

 そんな不埒なことを考えていたために罰が当たったのか、指先に痛みが走った。
 壊れたウインチの尖った大きめの鉄材が掠ったらしい。
 こういう壊れた部品がデイパックに手を突っ込んだ時に触れないようにするために、そしてロープなどまだ使える部品を有効活用するためにウインチを分解していたというのに、本末転倒である。

「あー……」

 指先からわずかに滴る血を舐めて癒して、どうにかばらした部品をまとめてデイパックに戻す。
 ボインを揉む機会が減るし、指は怪我するしでまったくツいていない。
 そう思いながら、ついでに三つあったデイパックの中身を一つのバッグに全部移してしまい、身を軽くする。
 廃屋で拾ったものも中を改めたが、結局基本の支給品しか入っていなかった。
 とはいえ名簿などは予備があっても困らないし、食糧は大切だ。ひとつたりとも無駄にはしない。

 そして二つのバッグを空にすると、それには特に用もないので近くの地面に投げ捨てた。
 そうすると幾分すっきりしたのか、今度は妙に晴れやかな顔になって、灌太は立ちあがった。

「ま、ホテルに行けばひょっとしたら会えるかもしれないし!
 それにノーヴェに三姉妹もいるからなー。
 待ってろよボインちゃん達、この俺様ががっちりきっちり、上から下まで警固してあげるからね~ん♪」

 まったくもって、灌太の頭の中にはそれしかなかった。
 そしてそれゆえに深く落ち込むこともなく、灌太は再び歩きはじめる。
 しかしその足が向かう方向は北ではない、西だ。
 灌太の次なる目的地は、すでに市街地ではなくなっていた。

(しっかしあの主催者ども、かんっぜんに遊んでやがるな。
 ま、初めっからそうだと思ってたが、この禁止エリアの決めっぷりで決まりだ)

 灌太が考える主催者像はこうだ。
 連中は完全な道楽でこの腐った集まりを開いていて、やっていることに意味はない。
 何もない海を二つも禁止エリアにしたのも、人の集まりやすい北をあえて完全に無視しているのも、遊びだからだ。
 案外かけごとの対象か何かにされているかもしれないし、禁止エリアもサイコロでも転がして決めているのかもしれない。
 要するに奴らは苦しんだり悲しんだりするこっちを見て笑っているだけ。
 生き残りを助けるだの願いをかなえるだのという話も、情報の話も気まぐれ、要するに嘘だ。
 どれもこれもが殺し合いを促進するためのギミックにすぎず、そしてそれに縋るこっちを見てまた楽しむ。
 三人殺した奴に嘘の情報を吹き込んで、さらに殺し合い促進、とでも考えているのかもしれない。

 いずれにせよ、主催の意図に乗ってやるつもりはさらさらになかった。

「――でもまぁ、これはさすがに気になるしなぁ」

 そう言って灌太が見上げるのは西――遊園地。
 三方を禁止エリアに閉ざされたそこは、まさに『何かありますよー』と誘っているようなものだ。
 普通に考えてばりばりに怪しい。
 しかし、しかしである。

「……連中が遊んでいるんなら、本当に何かあるのかもなぁ……」

 かけごとというのは、そして遊びというのはリスクがあったほうがより燃える。
 連中が本当に“何か大事なもの”を遊園地に気まぐれに隠した可能性も、ないとは言えない。
 そして灌太は、生き残るためなら何でもやる男なのである。

「ま、長居しなけりゃ問題ないだろ」

 そう結論づけ、灌太は遊園地を目指す。
 さすがに三方が閉ざされるとなるとわざわざ訪れる奴も少ないだろうし、何かあったら手榴弾を囮に逃げればいい。
 ボインちゃんとの出会いが後回しになるが、全ては命あってのもの。
 出来る限りの手段は打っておくべきというのが、灌太の信条だった。
 そのためには、常日頃抱いている欲望すら抑えつける。

「――ああ、でもボインちゃんがなぁ……」

 たとえ未練がましく手をワキワキさせていたとしても、である。



 しかし、そんな灌太のボインへの飽くなき思いが作用したのだろうか。
 廃屋出発して数分もたたぬうちに、灌太はとんでもないものを見つけた。

「……おい、おい……」

 茂みの中にしどけなく横たわるは、白い肌。
 すらりと伸びた足、むしゃぶりつきたくなる細い腰はタイトスカートに隠されている。
 投げだされた両腕は誰かの抱擁を待つかの様に柔らかに広げられ、たわわに実った二つの果実が胸を飾る。
 そしてその上には金色の美しい髪が散らばり、あどけなさと艶やかさが同居した可憐な顔にもかかっている。
 うっすらと開かれた瞳に、甘えるようにかすかに開いた口元は、男の情念を限りなく掻き立てるものだった。

――その首が、あらぬ方向に曲がってさえいなければ。


「…………」

 音を立てず、灌太はその物言わぬ体に近寄った。
 その身体的特徴や制服から、これがスバルやセインの言っていた“フェイト”という人物なのはすぐにわかった。
 そしてその体が、どうしようもなく生きていないのも。

「…………」

 死後六時間以上が経過したために、鮮やかな色だっただろう瞳は白濁し、
 白い肌はもはや血の気が完全に引いた蒼白で、あちこちに不気味な血色の斑を浮かび上がらせ、
 しなやかな肢体は死後硬直のために完全に凝り固まり。
 そこにあったのは、かつて“フェイト・T・ハラオウン”と呼ばれた少女の死体でしかなかった。
 もはやそれは、命の絶えた肉の塊でしかなかった。

「…………」

 それを見て灌太は、何かに魅入られたような瞳でただ茫然としばし立ちすくむ。
 そして――

――わしっ。

 おもむろに死体に馬乗りになると、その豊かな胸を鷲づかんだ。
 いや、鷲づかんだだけでは飽き足らず、もにゅもにゅと力を入れて揉む。
 はたから見れば変態を通り越して犯罪者だが、そんなことは欠片も気にせずに揉む。
 そして、ただ無心に揉み続けながら、

「……うっ、うっ、うううう……」

 灌太はぼろぼろと、涙をこぼしていた。

 灌太の手の中の二つの魅惑の果実は、もはやただの冷たい脂肪の塊だった。
 これほど美しく、生きていた時はさぞ魅力的だった体が、今やただの“もの”と化してしまった。
 灌太の指さばきに声をもらすことも、身をよじることも、表情を艶めかせることもない。

「う、おお、うおおおおお……」

 それが悲しくて、灌太はひたすらに泣いた。
 死んでしまった“フェイト”という、美しい体を持つ少女のために泣いた。
 それが彼の劣情を発端とするものだとしても、今この瞬間、灌太は間違いなく、“フェイト”のために悲しんでいた。


 そのまま、何分たっただろうか。
 無言のままフェイトの体から立ち上がると、灌太はくるりと踵を返した。
 涙をぬぐいながら先ほどの廃屋に駆け込み、玄関近くの窓にかかっていた汚れたカーテンをはぎ取る。
 それを抱え込んだまま、灌太は再びフェイトのもとへと戻った。

「ああ、本当にもったいねぇ……」

 心から惜しみながら、灌太はそっとフェイトの顔を見る。
 土汚れた顔は、悲しみとも慈悲ともつかない、淡い表情を浮かべたままだ。
 それにたいし、ぱんっ、と音が経つほどに灌太は手を合わせる。
 さすがに時間が掛かりすぎるために埋葬などはしてやれないが、せめて体を野ざらしにはしておかないつもりだった。

 灌太が惜しむようにその美しい顔をなでても、少女だった“もの”は何も言わない。
 それを悲しげな、なんとも言えない眼で見やりながら灌太は、


――手に持っていたウインチの鉄材を、少女の首に突き刺した。

 先ほど灌太の指先をえぐった鉄材は、断面が刃物のように鋭くとがっている。
 それをねじれたまま凝り固まった筋肉に無理やり突き刺し、肉を、骨を断つ。
 死んだ少女の体は痙攣ひとつなくそれを受け入れ、時折頭ががくがくと地面に打ち付けられるのにも反応を返さない。

 森の中にしばらくごり、ごり、と肉と骨の壊れていく音が響き、やがてごとん、という音とともにそれは止んだ。


◇ ◇ ◇


「……名前が彫ってあるな」

 くるりと手に乗った首輪を回し、灌太は呟く。
 首輪は裏側に丁寧に“フェイト・T・ハラオウン”の名が彫られ、そしてどす黒い血にまみれている。
 それを廃屋から持ってきたカーテンでぬぐいながら、灌太は自分に嵌っている首輪のことを考えた。

 人を液体にする首輪は、灌太にとって完全にオーバーテクノロジーな代物である。
 自分の首輪をはずすためにも、今後誰かと交渉するためにも、首輪の解析は必要不可欠だ。
 そしてそれには、サンプルがなくてはならない。

「ま、悪く思うなよ」

 首輪をバッグにしまってしまうと、灌太はカーテンを、今は首が分断された少女の死体にかけていく。
 首の断面が恐ろしいことになっているが、相手は死体なので文句はないだろうと結論づけ、その体をカーテンで覆う。
 死んでから時間がたっていたために、死体から血が噴き出さなかったのはラッキーだったと思いながら。

「だいじょーぶ、大事な“なのはさん”やらスバルは、俺がちゃーんとどうにかするから。
 あっちのほうもコッチのほうも、俺様が完璧にエスコートだ、ひっひっひ!」

 一応離れてしまった首は胴体にくっつけ、薄く開いていた目も閉ざしてやる。
 そうすると少女の死に顔は途端にあどけなく、眠っているようにしか見えないものになった。
 その顔に無言のうちに彼女の大切な人たちを任されたような気がして、灌太は一人でにやりと笑う。
 この少女も、自分の首輪が大切な人たちを助けるために役に立つなら本望だろうと思いながら。

「さーて、急ぐとするかぁ!」

 ぴょん、と飛び跳ねるように身を起こし、灌太は西に向かって駆けだす。
 時間を考えるとのんびりしている暇はないとばかりに足早に、振り返ることなく。


――背後の少女の遺体にかぶさったカーテンが、じわじわと赤く濡れていった。


【E-05 森/一日目・昼過ぎ】
【水野灌太(砂ぼうず)@砂ぼうず】
【状態】ダメージ(中)
【持ち物】オカリナ@となりのトトロ、 手榴弾×1@現実 、分解したワイヤーウインチ@砂ぼうず、朝倉涼子・草壁メイ・リヒャルト・ギュオーの髪の毛、
      デイパック、基本セット×3、レストランの飲食物いろいろ、手書きの契約書、不明支給品0~2(セインが見た限り強力な武器や防具は無い) 、フェイトの首輪
【思考】
0.何が何でも生き残る。脱出・優勝と方法は問わない。
1.遊園地が怪しいので一応行ってみるが、長居はしない。
2.その後は北の市街地に向かい、ボインちゃんを雨蜘蛛から守る。一応ホテルには向かう。
3.ノーヴェを探す。そして……いっひっひっひ 。
4.蛇野郎(ナーガ)は準備を万全にしてから絶対に殺す。
5.首輪を分析したい。また、分析できる協力者が欲しい。
6.関東大砂漠に帰る場合は、小泉太湖と川口夏子の口封じ。あと雨蜘蛛も?
※セインから次元世界の事を聞きましたが、あまり理解していません。


※【E-5 廃屋】内のピアノのある部屋の床には何らかの模様(紋章?)があります。
 これが【B-6 民家】にあるものと同じかは後続の書き手さんにまかせます。
※【E-5 廃屋】の玄関先に空のデイパック二つが落ちています。



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舌は踊り、血は騒ぐ 水野灌太(砂ぼうず) 砂漠妖怪カンタ Sand Destiny






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