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彼の心乱せ魔将(前編) ◆2XEqsKa.CM



踏み込む。
水面が爆ぜた。
飛沫を上げ、一足飛びに向かう影は異形、されど優麗。
加速、極まって。
向かう先には魔人。
その構えは武骨にして百錬。
魔人と異形の視線が激突した。
同時に、異形の腕が傾ぐ。
肘部から飛び出す両刃。
出現したソードが高速で振動し、魔人へと振り下ろされた。
接触した物体の分子結合を弱め、あらゆる物質を切り裂く刃先が、魔人の二本の指に挟まれる。
1秒にも満たぬ拮抗。

破砕音。

異形は、粉々に砕けた刃の破片が宙に舞うのを見た。
魔人は、力で高周波ソードの振動を止め、そのままの勢いで粉砕したのだ。

(物理法則も何もあったものではありませんね……)

「古泉よ、何度言わせれば分かるのだ。狙うのは胴でも肩でもなく、頭か首だ」

魔人が短く呟き、無造作に腕を振るう。
古泉と呼ばれた異形が、最初に踏み込んだ位置まで一瞬で戻された。
"腹にパンチを受けた"と古泉が認識するまでに、魔人――悪魔将軍は、三度、舌を鳴らした。

「ッッッッ~~~~~! 」

「我々超人の攻撃は相手の体のどこに打ち込んでも試合展開を一変させる威力を持たせるため、日々研鑽されておる。
 だが、お前のような闘争とは縁遠い人間はそうもいくまい。だから確実に、敵の息の根を止める必要がある。一撃でな」

「これは模擬戦だと思っていたのですが……」

「模擬戦だからこそ、お前は躊躇無く急所を狙えるのだ。私がお前の未熟な太刀筋で首を刎ねられると思うのか? 」

並の人間が受ければ絶命致死の一撃を受け、しかし古泉は立ち上がった。
古泉が身に纏うのは生きた鋼殻、強殖装甲<<ガイバー>>。
その凶悪な性能は、一介の男子高校生の手には余ると言わざるを得ない。
だが、生き残る為にそれを使いこなさなくてはならない事も古泉は理解していた。
一旦殖装を解除し、再殖装。
高周波ソードは瞬く間に再生し、再び肘部から露出する。


「便利な体だな。……では、先程話した技をお前にかけるぞ、古泉。
 先のノーヴェのようになりたくなければ、全力で免れてみせろ! 」

「全力で……と言うことは」

「五回ほど前の手合わせと同じようにガイバーの全性能を使ってかまわん、ということだ」

「分かりました」



構える古泉に迷いは無い。
ここに至るまでの十数回に及ぶ手合わせ/訓練/特訓の積み重ねから来る確信。
悪魔将軍と自分との力量には大人と子供どころではない程の開きがある、と。
事実、全性能を開放した模擬戦においてもノーヴェから教わったメガスマッシャーですら悪魔将軍には当たらなかった。
ゆえに最初から全力全開。
じりじりと、二人の間合いが詰まる。
今から古泉を襲うと決められている技を、彼は一度見ていた。
頭に取りとめも無く浮かぶその技への対処法を、ゆっくりと醸成する。
悪魔将軍が動いた。
ガイバーによって得られた古泉の瞬発力と動体視力を、凍りつかせる程のスピードで迫る。
僅かに体を揺らしただけで、足場が水であるにもかかわらず一瞬で古泉の視界から消えた。
移動の痕跡を認識させない速度で悪魔が古泉の背後に回る。
接触へ至るまでは刹那。
だが、余りにも歴然とした力量差からくる死の直感は、古泉に己の限界を超える反応を許した。
悪魔将軍が古泉の首を掴もうとした瞬間に、宙返りしてその場を離脱する。

「ほう! いい反応ではないか! 」

「ふんもっふ! 」

「その掛け声はどうかと思うがな……」

感嘆の声をあげる悪魔将軍に、空中で逆しまになった古泉の怒号が届く。
裂帛の気合と共に、ガイバーの額の球体が輝き、ヘッド・ビームが照射される。
不可視、亜光速の赤外線レーザーを前に、なおも悪魔将軍には余裕あり。
拳を水面に叩き込む事で、巨大な水柱を発生。下から突き上げる水はビームを減衰させ、無力化した。

「流石です、今のビームは僕自身今始めて撃てることに気付いたというのに」

「無駄口を叩くな」

「はい……では失礼して、セカンドレイッ! 」

水面に着地し、古泉が悪魔将軍に向き直る。
同時に両腕を突き出し、腰に備えられた重力制御球が生む極小ワームホールを衝撃波に変換。
悪魔将軍に照準を合わせて放出する。
回避不可能な間合いで撃ち込まれた衝撃波に、悪魔将軍の鎧の胸部が激しく凹んだ。

「フン! 」

鎧に隠された悪魔騎士の集合体である肉体を隆起させ、筋肉で押し戻して鎧を元に戻す悪魔将軍。
その一瞬の隙を突き、古泉が全速で悪魔将軍に接近する。

(先程は当たりませんでしたが……この距離なら! )

「ほう。粒子砲を撃つ気か。いいぞ、避けんから撃ってみろ」

スタンスを開いて仁王立ちになる将軍に古泉は一瞬戸惑うが、胸の装甲を剥がし、メガスマッシャーを……。

「Kano……うわっ!? 」

「邪魔しないとは言っていないがな」

放とうとした古泉の足を、スタンスを開いた悪魔将軍の足が払う。
前のめりに倒れた古泉、しかし発射態勢に入っていたメガスマッシャーは止まらない。
うつ伏せの古泉が放つ"超"粒子砲は一瞬で湖水を蒸発させ、湖底に凶暴な傷跡を残す。
無論それだけでは終わらず、古泉の体は宙に舞い上げられた。
数秒送れて"揺り戻し"の湖水が爆発するように天に昇り、古泉の体を濡らした。
悪魔将軍は上方へ駆け上がる水流に乗り、古泉の四肢をホールドする。

「大砲を撃てるということは、その反動に耐えられるボディを持っているということだ。
 だが貴様はその強化された体にかまけて態勢を考えず、勢いに任せてメガスマッシャーを撃った。結果がこれよ! 」

「く……」

悪魔将軍は古泉を担ぐように持ち上げ、両足を掴み、そのまま急速に落下する。
その態勢こそが、悪魔将軍が古泉に掛けると宣言した技。

           デビル
「キン肉バスター・悪魔流ーッ! 」

キン肉マンの十倍以上の超人強度を持つ悪魔将軍が放つその技は、
落下の衝撃を必要とせずに空中で「首折り」、「股裂き」、「背骨折り」を済ませ、
落下の勢いそのままに相手の頭をリング……この場合は水面に叩きつける荒技である。

だが、そのとき不思議なことが起こった!

古泉を抱えた悪魔将軍の落下スピードが、徐々に低下していくのだ。
何事かと古泉を見上げた悪魔将軍の目に初めて動揺の色が浮かぶ。
古泉が自然の法則に逆らい、空中に浮こうとしているのだ。
更に古泉の周りに形成された重力場が、悪魔将軍の体を蝕む。
堪らず体を離し、水面に着地する悪魔将軍。
空中に浮いている古泉も、自分の身に起こったことに驚いているようだった。

「人間の分際で飛ぶとは非常識な! 」

(閉鎖空間で使える超能力……ではないようですが……)

「ガイバーの能力か? まあいい、私のキン肉バスターを外したのは事実。合格だ、降りて来い」

慣れた様子で水面に着地する古泉に、悪魔将軍が労いの言葉を掛ける。

「ご苦労だったな。今の技……キン肉バスターは私の敵であるキン肉マンのフェイバリット・ホールド。
 私にとっては大した技でもないが、あれを打ち破れるならば、貴様も早々死ぬことはあるまい」

「どうも、色々心配していただいて……」

「勘違いするな、貴様に簡単に死んでもらっては困るだけだ。これから私の元で働くのだからな」

「僕は高校一年生なので就職の話はまだちょっと……」


「しかし今の返し技は見事だった。超人としては空中を浮くことで一度極められた技をしのぐなどということは許されんが、
 今はまだ人間であるお前にはそこまで望むのは酷というものだからな。十分に及第点と言ってやろう。
 私の魔・キン肉バスターをまともに喰らえば……ああなっていたのだからな」

悪魔将軍が指差す先。
二人が立っている場所から、少し離れた湖水の上。
二本の足が、逆さになって突き出している。
頭から水面に突っ込んだような態勢。

ぶっちゃけ犬神家のアレ。

「……手を貸したら怒られるかと思って放置してましたが、起きてきませんね」

「うむ……これで放送で奴の名前が呼ばれたら笑い話にもならんな」

「……ちょっと起こしてきます」

起こしたら殴られた。




湖を後にして川に沿うように、三人の異形が歩いている。
戦闘機人、殖装体、悪魔超人。
その異形達は、おぞましいほど普通に、賑やかに会話を交わしている。


「てめえら! 人を無視して盛り上がりやがって……10分くらい沈んでたぞ! 」

「申し訳ありません」

「技を外せなかったお前が悪いのだぞ、ノーヴェ」

「ったく……『戦闘機人でよかった』って思ったのは何気に初めてだったぜ」

悪魔将軍と古泉の模擬戦にいつの間にか巻き込まれ、変形キン肉バスターを受けたノーヴェ。
運の悪いことに湖底の岩と岩の間に頭を挟まれ、抜けられなくなってしまっていた彼女は、
怒りも露わに古泉と悪魔将軍を怒鳴りつけていた。
古泉は爽やかな笑顔で平謝りだったが、悪魔将軍は反省の色が見えないどころか逆に説教を始めようとしている。

「ノーヴェよ、お前は怠けているのだ」

「あぁ!? 」

「機械の体だから鍛えなくてもいいなどという考えは甘えに過ぎん。
 魔法だの固定兵装だのに頼っているから、先程のような無様を晒すことになるのだぞ。」

「それと湖に頭から沈んだあたしを助けなかったことにどういう関係があるんだよ!
 大体何で長々と訓練してんだ!? あたしがさっさと別れようって言ってんのに無視しやがって……」

「まあまあ、落ち着いて……」

ノーヴェと悪魔将軍の間に割り込むようにして、古泉が仲裁に入る。
程なくして、なんとかノーヴェの機嫌は治まった。
ぶすっとした顔で、愚痴を叩く程度には。

「つうか、エアライナー使ってたら外せてたってんだよ。古泉、これであたしよりてめえが強いなんて思うんじゃねえぞ! 」

「はは、分かっていますよ、ノーヴェさん」

柔和に笑ってノーヴェを宥める古泉を脇目に、悪魔将軍は時計をチラリと見遣る。
あと5分かそこらで放送が始まるぞ、と呟く悪魔将軍の言葉に、古泉とノーヴェの表情が曇る。
悪魔将軍はそんな二人をなんとも言えない目つきで眺め、名簿を取り出す。
何事かと訝る二人を前にして、悪魔将軍は静かに宣言した。

「古泉よ、涼宮ハルヒについてより詳しい話が聞きたい。質問に答えろ」

「涼宮さんの……ですか? 」

「ああ、模擬戦の間ずっと考えていたのだが、一つ仮説が浮かんだのでな。その検証だ」

考え事をしながらあの強さだったのか……と冷や汗を流す古泉。
返答を待つ悪魔将軍に、ノーヴェが食ってかかる。

「おい! 古泉の気持ちも考えろよ! 仲間が……」

「いえ、構いません……何をお聞きしたいんですか? 」

「涼宮ハルヒは世界を自分の思うがままに変える能力を持ち、非日常的な存在を求めている……そうだな? 」

名簿の"涼宮ハルヒ"にペンで丸を付けながら、悪魔将軍が問う。
古泉は静かに答えた。

「はい。その力がどういった原理から生まれるのかは意見が分かれるところですが……」

「原理など聞いていない。実際に、非日常的な存在を産み、怪現象を引き起こしたのは確かに事実なのだな? 」

「事実です。僕はその後始末を幾度となくやってきましたからね」

「ふむ。そこで質問だが、宇宙を股にかけて戦う超人だの、機械製の人造生命体だのは、涼宮ハルヒの趣味に合うか?」

「――――! 」


古泉は、悪魔将軍の言いたいことを察した。
彼自身、今まで一度も考えなかったわけではない。
この舞台は、【涼宮ハルヒの望んだ世界】なのではないか、と。
しかし、その考えは彼の中では既に否定されていた。
ノーヴェはしばらくぽかんとしていたが、二人に遅れて会話の内容を察したようで、突然大声をあげる。

「つまり……あたしや将軍は、そのハルヒの想像上の存在だってのか!?
 冗談じゃねえぜ! あたしにはちゃんと記憶もあるし、自分の親や姉妹の事だって覚えてる! 」

「いえ、それは恐らくありえません。涼宮さんがSOS団の仲間をこんな目に合わせるとは考えられない」

「仲間意識か、反吐が出るな。ではお前はこの状況をなんだと思っているのだ? 」

「そうですね……将軍が仰るように、明らかに僕の住む世界と違う文明の存在がいることは確かです。
 ノーヴェさんの世界には多次元世界を移動する術があると言いますし……僕達は」

「所謂並行世界から集められたとでも言う気か? 古泉よ、並行世界というのは交わらぬから並行世界と呼ばれるのだ。
 最も、私以外には、自分が架空の存在であるなどという考え方はできんだろうからな。そちらの考えに寄るのが妥当か」

「そりゃそうだろ。自分の存在を否定出来る奴なんてあたしの知る限りじゃいねーよ」

「私は元々虚ろな存在だから、な……まあそれはどうでもいい。少し聞き方を変えるぞ、古泉」


悪魔将軍は一息つき、古泉は身構える。
古泉は、最初に将軍と出遭った時の事を思い出していた。
今再び、試されているような感覚。

「お前の現時点での目的を答えろ」

「涼宮さんの意思に従って、"彼"を救い、この殺し合いを終わらせることです」

「その目的は何故、何時、どうやって決めた。よく思い出して答えろ」

「……ノーヴェさんと出会ってすぐに気絶してしまいしてね。その時に見た夢の中で、涼宮さんに頼まれたんですよ
 内容も詳しく話しましょうか?」

「話せ」

古泉が、夢の内容を事細かに話す。
よほど心に残っていたのだろうか、彼は夢とは思えないほど詳細に記憶していた。




「……ああ、あの時言ってたわけの分からん事はそういうアレだったのか、古泉。頭がイカれてたわけじゃなかったんだな」

「ハハ……」

苦笑いする古泉に、悪魔将軍が鋭く斬り込む。
その語調は、僅かに先程より強くなっていた。

「待て。お前の夢の中で涼宮ハルヒが言った言葉……"アホ面ブタ顔のおっさんとクロッチ達"とは何だ?
 お前がこの島で会ったという者の中に、そんな奴がいたとは聞いていないが」

「……すいません、分かりません。何分夢の事ですので」

「アホ面ブタ顔のおっさんというのに私は心当たりがある。先程貴様等に見せた技……キン肉バスターの使い手だ。
 仮に、仮にだが。奴が涼宮ハルヒと行動を共にしていたとすれば、だ。お前は自分の知り得ない情報を得た事になるな。
 夢の中で――――涼宮ハルヒの、手によってだ」

「それは……」

「涼宮ハルヒの死に方と、彼奴を殺したキョンとやらの道のりもお前から聞いたが……それにも違和感を覚える。
 妹に会い、人間を捨てたことを知られ――仲間を殺し――お前との殺人同盟を結ぶ。
 ほんの数時間で、この広い島で知り合いに次々と出くわし、心を痛めていく。
 あまりにも、ドラマティックすぎるとは思わんか? お前の話では涼宮ハルヒはキョンとやらに好意を覚えていたと聞く。
 女が男の手にかかり、男の心に永遠に残るなどと言うのはいかにも年ごろの娘が考えそうな夢物語ではないか? 」

「……」

「更に涼宮ハルヒの能力が額面どおりならば、彼奴にとっては死ですら擬態可能なものに過ぎんだろう。
 その上、SOS団とやらの仲間……フン、仲間の長門有希が主催者側にいるのだからな。
 最後の最後で愛を語らう、人間を捨てたキョンと"奇跡的"に生き返った涼宮ハルヒ。絵になるだろうな。
 さて、そこで最期の質問だ」

ガイバーに隠された古泉の表情に、動揺が走っていることを見通しているのか。
悪魔将軍は、その言葉を投げかけた。

「お前は……涼宮ハルヒの傀儡と化しているのではないか? 」


空気が、凍った。
古泉は瞬発的に反論しようとして――遮られる。
突如始まった、放送によって。







水の流れる音が聞こえる、川沿いの小道。
脇には、森に続く茂みがある。
そこに、一人の少年がうつ伏せになって倒れていた。
放送が聞こえてはいたが、聞き取っている様子がない。
少年は、名を碇シンジといった。
シンジは、腹痛と吐き気に苛まれ、身悶えている。

「痛い……痛いよ……」

のどの渇きに耐えられず、不用意に川の水を飲んだのが失敗だった。
最初のうちはなんとも無かったが、お世辞にも強いとはいえない彼の胃腸は、
この島で行われた激戦で数多の血を吸い、更に管理もされていない野晒しの水を受け入れる事は出来なかった。
せっかく食べた食料も吐いた。
自分の吐瀉物を避けるようになんとか数mは歩いたが、それで限界。
痛みが治まらないかと思ってがぶ飲みしたペットボトルの中の清水も既に空。
治まるどころか悪化した痛みは、シンジの意識を奪おうと、波のように激しく打ち寄せる。

「誰か……誰か助けてよぉ……」

痛みは、川の水だけが原因ではない。
少年を蝕む孤独は、彼の精神状態を加速度的に悪くしていた。
弱気になれば、生気もなくす。
少年は時折、「死にたい」と呟くようになっていた。

「大人は信用できない……もういやだ……戦うのもイヤなんだ……家にも帰りたくない……誰とも関わりたくないんだ」

ブツブツと、うわ言のように呟くシンジ。
自分が何を言っているのか分からなくなるまでに、そう時間はかからなかった。

「綾波も、父さんも、誰も信じられないんだ。信じたくないんだ。でも、僕の事は信じてよ。必要だって言ってよ! 」

取り留めの無い、愚痴と呪詛が混同した言葉を呟き続けて、どれほど時間が立っただろうか。
シンジの体を、一本の影が覆った。
シンジはそれに気付かない。
首も動かせず、目も半ば閉じているのだ。当然だろう。
影は、シンジを抱き起こし、介抱を始めた。
そこでようやく、シンジが影の存在に気付く。

「夏子さん……? 」



「いえ、通りすがりの好青年です」

シンジのうわ言に笑顔で返答して、好青年――古泉一樹は黙々とシンジの介抱を続けた。
シンジは僅かに抵抗する様子を見せたが、古泉が学生服を着ているのに気付くと、安心したように目を閉じた。

(……大人は信用できない、ですか。何があったんでしょうね)

介抱を終えた古泉は、シンジを地面に座らせる。
シンジはまだ気分の悪そうな顔であぐらをかき、古泉を見上げた。

「大丈夫ですか? 今にも死にそうなあなたの声が聞こえたので、お節介だとは思いましたが、介抱させていただきました」

「あ……ありがとうございます。僕は……碇、シンジといいます」

シンジはそれだけ言うと、視線を下に沈める。
古泉は対応に困る、というように心中で両手を広げた。

(随分ナイーブな方のようですね。どうしたものでしょうか……)

「あ、あの……」

「はい? 」

シンジが、意を決したように顔をあげた。
何かを、大事な何かを伝えようと決心したかのような顔だ。
古泉は身構え、シンジと目線を合わせる。

「主催者の手下がいるんです! 多分、あっちに……」

「ほう! 」

シンジの言葉が終わった直後。
シンジのものでも古泉のものでもない野太い声が響き、道の脇の茂みから角が付いた仮面が飛び出した。
一瞬遅れて、不機嫌極まりない表情の少女の顔が、その横から飛び出す。
シンジのほぼ目と鼻の先だった。
首だけの二人の目が、同時にシンジに注がれる。


「うわああああああああああああああああ!!!! 」

「詳しく話してもらうぞ、小僧」

「ひ、ひいいいいっ! 」

「うぜえな、騒ぐんじゃねえよ」

不機嫌そうな少女が茂みから抜け出し、シンジを睨みつける。
仮面の男も同じく身を乗り出し……その巨体は、シンジを威圧するに十分すぎた。

「お二人とも……出てこないという約束ですよ、彼が怯えています」

「お前のやり方がまどろっこしいのだ。キン肉スグル辺りの情報を持っていればいいと思って接触させたが……
 まさか、"主催者の手下"とはな! コソコソ隠れてお前に任せるというわけにもいかなくなった!
 小僧……この悪魔将軍に利用される名誉を与えよう! さあ、包み隠さず話すのだ、貴様の持つ情報を! 」

「アワワワワワワワワ……」

「チッ」

少女、ノーヴェが不快感と苛立ちを露わにして、舌打ちする。
殺意に近いその感情に触れ、シンジの萎縮はより進む。

「セインが死んだのに……なんでこんな奴が生きてんだ」

「う、うう……」

「……シンジ君、申し訳ありません。危害を加えるつもりはありません。主催者の手先と言う人の話を聞かせてください」

「……」

「主催者の手下ならば、隠すこともなかろう。被害者同士ではないか、なぁ? 」

「ぐ……うう……」

悪魔将軍の、殺意が篭った優しい声。
シンジに、抗う術と気力はなかった。
そして――。

「朝比奈みくる……そいつが、僕の仲間を騙してるんです! 」

抗うつもりも無かった。







「ムハ! 万太郎さんは無事なようでなによりですな」

「相手の名前も呼ばれてないってことは……逃げたか、倒してトドメを刺さなかったか、かしら」

「まだ戦闘中とも考えられますね」

繁々と木の枝葉が頭上を覆う、狭い狭い森の一角、茂みの中。
かすかに届く光だけを頼りに、二人の女性と獣が会話を交わしている。
その表情には、安堵の色が見られた。

「アシュラマン……さんの事は残念でしたが、我々の知り合いは皆無事なようで何よりですな」

「これからどうしますか、夏子さん? このまま市街地に……? 」

「いえ、まだ油断はできないわ、朝比奈さん。さっきの轟音、戦車の大砲の比じゃなかった。もうしばらくここに留まりましょう」

彼等の行動を阻害しているのは、先程湖の方から聞こえてきた二度の大音量。
砲撃の可能性もある……という夏子の推測に、みくるとハムは震え上がり、移動を断念したのだ。
轟音が聞こえたのは、放送十分前くらいだったろうか。
放送が聞けなくなったらどうする――と戦々恐々としていた三人だったが、幸い轟音はすぐに終わった。
そして、放送が終わって10分。
轟音はなりを潜め、静寂が森を支配している。

「森の中とは言え、下手に動いて砲弾でドガン、なんてことがありえないとも限らないですからなぁ。
 運のいい事に我々が今いるところは視界が悪い……つまり、先程の轟音を引き起こした者からも隠れられる、と」

「朝比奈さん、マイクで湖の方を探れる? 」

「うーん……やってますけど、もう何も聞こえません。一度、足音が聞こえたような気はしたんですけど……」

「! 静かに! 」

ハムが小さく叫び、夏子とみくるの頭を抑える。
みくるに茂みから飛び出しているマイクをしまう様に手振りで指示し、ハムは身を伏せて目を細めた。
夏子とみくるもそれに従い、茂みの切れ目からハムの視線の先を見る。
真っ直ぐに――何の迷いも無く――それ"等"は来た。
足跡も消し、気配もなるべく消していた二人と一匹の位置を、一瞬で掴む。

「あそこですね」

「三人か。出て来い」

「……」



ゆっくりと退路を探しながら、夏子、ハム、みくるの順で茂みから出る。
最初に夏子達の目に入ったのは、全身鎧に仮面の巨漢。表情は読み取れない。
続いて、一本角の怪物。表情は読み取れない。様子を見ると、この怪物が夏子達を発見したらしい。
奇妙なボディスーツを着込んだ少女。不機嫌そうだ。
そして――。

「シンジ君!? 」

「あ……」

碇シンジ。どこか、嬉しそうな笑顔の。
夏子はハムとみくるを守るように一歩前に出て、銃を抜いた。
シンジは鎧の男の後ろに隠れるように一歩下がったが、他の来訪者はまるで恐れる様子を見せない。
戦闘の鎧の男に至っては、銃を見て鼻で笑った。

(ロボット兵の類か……? )

夏子は湧き出そうになる汗を抑えながら、銃の撃鉄を上げる。
状況から見れば、シンジが彼等に捕まっていると思われる。
すぐに殺されていないのは幸運だったが……マズイ状況だ。
彼等は自分達に対してシンジを人質に使うつもりだろうか?


「朝比奈みくるは……どいつだ? 」

「……ここにはいないようですが」

「あいつです! あいつが朝比奈みくるです! 」


シンジが、みくるを指差して声を張り上げる。
一本角の怪物がそちらに目をやり、首を傾げた。
怪物に睨みつけられたみくるは「ヒッ」と声を上げて、ふるふると震えて一歩下がる。
ハムからしか見えていないが、みくるは怯えた振りをして銃を後ろ手に持っていた。

「……もしや未来の? 」

「殖装を解いてみろ、古泉」

瞬間、光が走り、一本角の怪物が少年と青年の中間のような年齢の男性に変わった。
それを見て、みくるが目を丸くする。

「こ……古泉君ですか? 」

「朝比奈さん! その姿は……? 」

「な、なんだよ! あんたたち、まさかグルだったのか!? 」

親しげに視線を交わすみくると古泉に、非難の声を上げるシンジ。
それを見て、夏子は直感した。
シンジはみくるを疑い、主催者の手下だと思い込んだままだった。
それを通りすがりの参加者に触れ回ったが、たまたま相手がみくるの知り合いだったのだろう。
確かにみくるは主催者・長門の知り合いだが、それイコール手下などと言うことはありえない。
それをシンジにようやく理解させるチャンスが来たのだ。
夏子は僅かに緊張を解き、シンジに向き直って――――。

茂みの中まで、吹き飛ばされた。


「ッ!? 」

「夏子さ――ガッ!? 」

一瞬遅れて、ハムも夏子に折り重なるように投げ飛ばされる。

「夏子さん!? 将軍、何をするんですか、僕が頼んだのは……」

「ああ、朝比奈みくる以外に用はない。一刻も早く失せろ。この悪魔将軍の前からな」

「く……」

ハムの体を退け、コルトSAAを構えて引き金に指を掛ける夏子。
銃口からマズル・フラッシュが飛び、銃弾が飛ぶ。
倒れたままの無理な体勢から撃たれたにも関わらず、銃弾は正確に悪魔将軍を捉えた。
脇腹に直撃し、鎧を抜いて将軍を僅かに仰け反らせる。
しかし、それだけだった。
"痛い"という感情をまるで見せずに、じっと夏子を見つめる悪魔将軍。

(やはりロボット兵……!? それにしたって……)

夏子の鼻から、一筋の血が滴り落ちる。
先程自分が悪魔将軍に吹き飛ばされた時何が起きていたのかを、武術を修めた夏子は正確に把握していた。
裏拳一閃。
鍛えぬいた夏子の動体視力を、遥かに超越する速度の。
しかも、当たる直前に寸止めし、拳圧だけで自分を数m吹き飛ばした。
背筋が凍る。

(――勝てない)

現在の装備、人員では、勝利は不可能。
逃走ですら、三人一緒では……。
次の瞬間、ハムが夏子の腰を掴み、悪魔将軍達に背を向けて叫んだ。

「ジェットエッジ! 」

「な……」


いつの間にか足にローラースケートを付けていたハムが、夏子を抱えて一気にその場を離脱した。
今まで無言で情景を眺めていたノーヴェが、目の色を変えて追いかけようとする。

「あたしのジェットエッジじゃねえか! 待……」

「待つのはお前だ、ノーヴェ。放っておけ」

「指図するんじゃねえよ! てめえが余計な事しなけりゃ……あたしは連中を追いかけるからな! 」


仲間を見捨てて逃げた者たちを実に心地よさげな目で見送る悪魔将軍に、ノーヴェが噛み付く。
それに乗じるように、古泉も静かに意見を出した。


「将軍……人死にを控えてくれたのはありがたいのですが、無闇に敵を増やすようなことは……」

「あの程度の威圧で逃げるような腰抜けなど、敵に回すのを恐れる意味も無いわ。それより、こちらだ」

悪魔将軍は置いてけぼりにされたみくるの首を掴み、足が地面から離れる程度に持ち上げた。
咳き込むみくるを見て、ハムたちを追いかけようとしていたノーヴェの足が止まる。
ノーヴェは古泉に心配そうな視線を送り、発動しかけていたエアライナーを消して悪魔将軍に向き返った。

「何する気だよ、将軍。返答によっちゃあ……」

「朝比奈みくるよ、貴様は未来人らしいな。時間を越えて古泉達の時代に来た……そう、いわば時間超人! 」

「それは、き、禁則事項です~」

「さあ! 見せてみろ、時間を越える力を! そして私と戦おうではないか! 」

「無理ですよ、将軍。話していませんでしたが、彼女は恐らく単独では能力を発揮できません」

「そうなのか? 」


興を殺がれた、と言った口ぶりで、詰まらなそうにみくるを離す悪魔将軍。
介抱されたみくるは、激しく咳き込んで、涙目になってへたり込む。
シンジはそんなみくるを激しい憎悪と暗い満足のこもった目で睨みつけていた。

(ようやく夏子さん達とこの悪魔を引き離せた。夏子さんには怒られるだろうけど、これはみんなの為なんだ。
 主催者の手下を野放しにしておくわけにはいかないんだ。それが分かってくれれば、きっと夏子さんだって許してくれる。
 そうだ! この古泉って人も、みくるの仲間だったんだ! お、お願いしなきゃ! )

「将軍! 古泉もみくるの仲間……きっと主催者の手先なんです! やっつけてください! 」

「そういうわけにはいかん。古泉にはまだ利用価値があるからな。そして、お前にはもう用はない」

「え? 」

将軍の足払いが、シンジをみくるに圧し掛からせるように転ばせる。
シンジは何が起きたのかよく分からないまま、みくるの豊かな胸に顔を埋めていた。

「朝比奈みくるにもがっかりさせられた……古泉には悪いが、二人一緒に死んでもらうことにしよう! 」

「しょ、将軍!? 」

「てめえ! 何言ってんだ! 」

ノーヴェがみくるを庇う為に将軍の前に身を乗り出し、古泉は殖装して将軍の背後に回る。
悪魔将軍はそんな二人を鼻で笑い、体を横にして前方のノーヴェ、後方の古泉両方に目を合わせる。

「貴様等は悪魔が約束を律儀に守るとでも信じていたのか? 私の利益にならない事を、貴様らの為にする気はない」

「待ってください。朝比奈さんは確かにあなたのお眼鏡には適わなかったかもしれませんが、
 あなたの迷惑にはならないはずです。あなたと別れて、僕がこの手で彼女を守ればいいだけの事ですから」

「それが迷惑だと、言っているのだ……古泉よ、お前は今自分を見失っている。
 涼宮ハルヒの言葉に踊らされ、彼奴の精神的奴隷に位置しておる! 一度私と契約を交わした以上、そんな事では困る。
 はっきり言っておくが、お前が私を利用するのでも、ハルヒがお前を利用するのでもない、私がお前を利用するのだ! 」

自信たっぷりに言い放つ悪魔将軍に気圧される古泉とノーヴェ。
その隙を突き、悪魔将軍は足元のシンジの首根っこを掴み、強引に立たせた。
たどたどしくディバッグに手を伸ばすシンジの腕を掴んで阻止し、ディバッグを放り投げる。

「わああああっ! やめて! 殺さないで! 」

「死ね! 魔のショーグン・クローッ! 」

古泉とノーヴェが止める暇もなく、悪魔将軍の手がシンジの頭を掴み、力を込める。
悪魔将軍にとっては卵を割るようなささいな力だったが、シンジからすればそれは万力で頭を締め付けられるようなもの。
ぎりぎりと、シンジの頭が鳴り。


ぱぁん。



「……シンジ君を、離しなさいッ! 」

「朝比奈さん!? 」


みくるが、マグナムリボルバーを構え、悪魔将軍に向けて撃ち込んでいた。
大口径で扱いの難しい銃の為、銃弾は標的を逸れ、あらぬ方向へ飛んでいく。
それだけには留まらず、みくるの肩は反動で脱臼し、だらりと崩れ落ちた。
悪魔将軍は全く意に介さず、シンジの頭を締め付け続ける。

「う、ううっ」

外れた腕とは逆の腕で弾を込め、続けて射撃しようとする。
その壮絶な様子に、古泉は、ノーヴェは、そしてシンジは、雷に打たれたようなショックを受けた。

「朝比奈さん、無理はよしてください! シンジ君は僕たちが……」

「てめえ、離しやがれ! 」

古泉はみくるから銃を取り上げて寝かせ、悪魔将軍を説得する方法を考える。
一方ノーヴェは悪魔将軍に殴りかかるが、微動だにしない。

シンジは、今のみくるの行動を見て、自分がやって来たことは間違いだったのかもしれない、と思い始めていた。
全ては自分の早とちりではなかったか。みくるの笑顔には、本当は裏などなかったのではないか。
勝手に自分が、みくるをミサトとダブらせて暴走していただけなのではないか。
夏子の言葉を思い出す。『思い上がらないで』……。みくるを殺すことが、正しいことだと思い込んでいた。
結局、自分に芽生えた正義感は子供の我侭で、大人を信じたくなかっただけなのではないか?
後悔が渦を巻いてシンジを揺らす。


(……死にたくない。なんで、何でこんなことに。どこで間違ったんだろう)


シンジの意識が絶望に沈んで消えかけたとき、突如悪魔将軍の手がその頭を離した。
古泉とノーヴェが訝しげに悪魔将軍の表情を窺うが、そこからは何も読み取れない。



「気が変わった。小僧、死にたくないと言ったな? 」

「痛い、痛い……」

「小僧! 」

「し、死にたくない! 助けて! 」

「うむ。古泉達もお前を殺したくないようだからな。一つ提案しよう」

「てい、あん? 」

悪魔将軍は、地面に倒れたシンジを見下しながら、提案を始める。
それは正に、悪魔の提案としか言いようのない物だった。

「ウォーズマン、という男がいる。そいつを次の放送までに探し出して殺せれば、お前と朝比奈みくるの命を助けてやろう」

「ウォーズマン……? で、でも人殺しなんて……」

「案ずるな、そやつは私と同じ超人。人間である貴様が奴を殺しても、賞賛されることはあれ非難されることなど無い。
 ……無理だ、というような顔だな。確かに力では貴様などに殺せる相手ではない。頭を使うことをオススメするぞ」

「おい! 何を言い出すんだ!? 」

「ノーヴェ、お前は黙っていろ……どうする、やるか? 」

「……」

「やらなければ、貴様も朝比奈みくるも今ここで死ぬことになる」

「や、やります。じゃあ、やります」

「シンジ君! そんな事……ぐうっ……」

シンジを止めようとして、みくるは肩が外れた痛みで縮こまる。そして、そのまま意識を失った。
ノーヴェと古泉はなんともいえない表情で、悪魔将軍にどう言葉をぶつけるか考えているようだ。
悪魔将軍は、了承したシンジに、より細かい提案の内容を語る。

「次の放送まで五時間強……成功したかどうかは、三回目の放送で判断する。精々急ぐことだな。
 言っておくが、逃げた場合は朝比奈みくるを殺した後、貴様を地の果てまで追いかけてこの私の手で殺してやる。
 運よくウォーズマンが貴様とは関係ないところで死んだとしても、寛大な私は許してやろう。
 人質の受け渡しの場所はそこの湖の中心部にあるリングだ。わかったな? 」


怯えながらコクコクと頷くシンジを見て、古泉が止めようとする。
だが、それは悪魔将軍の一睨みによって押し止められた。
後ずさりしながらその場を去ろうとするシンジを悪魔将軍が呼び止め、
更にノーヴェにディバッグを拾って渡してやるようにと命令する。
ノーヴェは一瞬躊躇したが、少し遠くに投げられたシンジのディバッグを拾い、なにやら細工して投げ渡した。

「幸運を祈るぞ、小僧。行け! 」

悪魔将軍の喝と共に、シンジは走り出す。
その姿が森の向こうに消えて見えなくなってから、ノーヴェが不機嫌に悪魔将軍に話しかけた。


「どういうつもりだよ。ウォーズマンってのはアンタの宿敵の正義超人って奴だろ?
 あんな貧弱なガキにどうこうできるわけねえじゃねえか。嫌がらせかよ? 」


「そんな事は百も承知よ。あんな小僧がウォーズマンを倒せるなどとは期待しておらんし、絶対にありえん。
 だがお人よしの正義超人のこと。自分を殺しに来た相手でも、子供で更に非力とくれば必ず生け捕りにして
 事情を聞きだそうとするだろう。いわばあの小僧はメッセンジャーだ。私とウォーズマンがあのリングで戦うためのな。
 だが最初から情報を伝えることだけを命令しては、小僧にも余裕が出て必死に探さなくなるかも知れん。
 だからわざわざ、こんな状況を作ってやったと言うわけだ」


「じゃあ、朝比奈みくるとアイツを殺すって言ったのもハッタリかよ! 脅かしやがって……」

「その件だがな……古泉」

「はい? 」



悪魔将軍の本音を聞き、安堵していた古泉が突然話を振られて動転する。
自分の腕の中で気絶しているみくるを彼女のディバッグを枕にして寝かせ、悪魔将軍に顔を向ける。
悪魔将軍は何気ない調子で、さらっとその言葉を言った。


「朝比奈みくるを殺せ」


「……はい? 」


「朝比奈みくるを、殺せ」




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