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我が銃よ、俺の決意を示せ ◆5xPP7aGpCE



『スバル、魔力反応は消失しました』

不測の事態も予想していた、だから即座に動けるようにも備えていた、
レイジングハートの声を聞きながらあたしは自分が何をすべきかを決めた。

「ここを出るよレイジングハート!」

電話を掛けて罠に気付いていると警告する、それは果たせたと思う。
予想通りあなたは嘘を吐いていた。
あの言葉が本当なら助けを求めないはずは無い、あんな焦った声を出すはずが無い。

そしてあなたは動いた。
直後に魔力を検知、カーテン越しでも認識できる程の光が見えた。
もう反応は消えたとレイジングハートは言ったけど、集音機からは慌しい足音が聞こえてくる。

『賛成です、こちらの居場所を探知された可能性が有ります』

希望的観測はしない、気付かれていないなんて思い込みは命取りになるかもしれない。
だから場所を移して見極める。

あなたは逃げる? それとも戦う?
あたしは決して引かない、必ずあなたを止めてみせる!

素早くコテージを出る、向こうも同じタイミングで飛び出してきた。
そして目が合う、全身が緑色で長い角、どう見ても人間には思えなかった。
オメガマンの様な超人か、中尉と同じ宇宙人かもしれない。

その驚きが隙に繋がったのかもしれない。
あたしが動こうとするその前に、あなたの額が輝いた。



       ※       ※       ※



なんで俺の周りにはトラブルの種しか転がっていないんだ?
突然の不審電話に次は光るパソコンかよ、一人ぼやきたくなるってもんだ。

その時の俺の気持ちを表わすには食事の準備中に地震に襲われた主婦って考えると解りやすいかもしれない。
すぐ火を消さなくてはまずい、でないと大変な事になっちまう―――簡単だろう?
俺の悪い予感は何故か当たる、あのパソコンをそのままにしちゃおけない。

かといってマウスでウィンドウを閉じるなんてのんびりした真似はしちゃいられない。
あの光る画面の前に行くのはハルヒの理不尽な命令と同じくらい嫌な予感がする。
だから俺は非常手段でパソコンを止めた。

電源を引っこ抜いた訳じゃないぞ、それでも危ないし遅すぎる。
動作無しのヘッドビームでパソコンをぶっ壊したんだ。
成功だった、本体ケースに大穴が開いてディスプレイは真っ黒になってくれた。

残骸がパチパチとスパークしてるがこっちの問題はこれでいい。
そうだ! あの電話はどうなったんだ!
再び受話器を耳に押し当てると何か叫びの様な声が聞こえた。

あの女が動き出した、それだけは今の俺にも解る。
どうやったのか知らないが、電話をかけてきたって事は俺の居場所は突き止められて嘘も見破られている。
加えてこの有様だ、室内とはいえ派手にやらかしちまった。

もし近くで見ていたら確実にあの女は来るだろう、俺はとてつもない失敗をしちまったのか?
お人好しの相手を騙し討ちにするつもりが、逆に危険人物と知られておまけに居場所もバレているという状況。
つまり、ここに居るのはまずいって事だ。

すぐさまティバッグを掴んで駆け出した。
その時ベッドまで吹っ飛んでいたカードリーダーも反射的に拾って詰めた。
何となくここで捨てるのは惜しい気がしただけだ、やっぱり正体不明でも支給品は大事にしないとな。
基盤が焼けた臭いで充満した部屋を飛び出した途端、離れたコテージから人影が飛び出してきやがった。
嘘だろ! こんな目と鼻の先にいたのかよ!

ヘルメットにガスマスク姿、首から下を見なければ相手が女とは気づけなかったかもしれん。
そして手に持ったいかにも恥ずかしい杖。


―――普段なら絶対に係わり合いになりたくないタイプだった。


と、固まっちゃいられない。
ナーガのおっさんの時みたいな失敗はごめんだった。
俺は先手必勝とばかりにヘッドビームをコスプレ女に撃った、もちろん狙いは定めてだ。
予定は狂ったがやる事は変わりない、俺は必ず殺してみせる!

『Protection.』

何だ!? ビームがバリアみたいな青い壁に防がれちまった!
ならソニック・バスターだ! 口の部分から衝撃波を発射する。
今度は効いた、コスプレ女のヘルメットが吹っ飛んだ―――てっ! そのまま突っ込んできやがった!

そして俺はまた自分の考えが間違っていた事を思い知らされた。
電話の相手が女で、しかもおどおどした口調だったから大した事無いと思い込んでいた。
なのにどうだ、パンチ一発で俺は宙に浮くほど吹っ飛ばされちまった。

何なんだよ、この反則は。
ナーガのおっさんみたいなゴツイ相手なら今の状況も解る。
ところが俺より頭一つは小さい女に拳一発でダウンとは、本当に冗談キツイぜ。


―――ほらキョン、何をグズグズしてんのよ! 早く立ちなさい!


突然あいつの顔を思い浮かべちまった。
今更許してもらおうなんて思っちゃいない、けど―――今の俺には何よりの励みだ!
疲れた身体に鞭打って立ち上がる、こんなところで終わる訳にはいかない。

―――俺は、ハルヒを生き返らせるんだ

我が侭で、好き勝手に俺を振り回して、そして俺の心を何時の間にか占領しちまったあいつを必ず取り戻す!
だがこっから逆転できんのか?
もちろんだ、切り札はまだ残っている。
俺は半開きのティバックから素早くそれを取り出して―――自分のこめかみに押し当てた。



       ※       ※       ※



最初の攻撃、次の攻撃はレイジングハートが障壁で守ってくれた。
だからあたしは自分の攻撃だけに集中できた。
ガルル中尉もオメガマンも強かった、そしてあなたは魔力を持っているみたい。
普通の人間相手なら手加減するところだけど、ここは全力でいかせてもらう!

―――あ、あれっ?

殴ったあたしの方が驚いてしまった。
いかにもタフで頑丈そうなのに一発でそんな大げさに吹き飛ぶなんて。

「レイジングハート、魔力は感じられる?」
『いいえ、全く検知できません』

何故魔法を使わないんだろうか? さっきの攻撃にも魔力を感じられなかったってレイジングハートは言っている。
ひょっとしたら戦闘向きの術は使えないのかもしれない。
とにかく倒れてくれたのは好都合だった、すぐ拘束しようとあたしは動く。

ところが、その手が届く前にあなたは銃を頭に押し付けた。
それは何のつもり? あたなは自決するの? 負けたから生きるのを諦めるというの?

あたしの脳裏に自分を殺せと言ってきたアシュラマンの姿が浮かぶ。
彼も中尉と同じく誇り高い人だった、あなたも同じだというの?

「やめなさい!」

あたしは叫ぶ。
声が届いてくれた、引き金を引こうとするあなたの指がピクリと止まった。
お願いだから早まらないで! もう目の前で命を失いたくはない!

「撃つならあたしを撃ちなさい! その代わり外したらこれ以上卑劣な真似はしないと誓いなさい!」

カラン、とレイジングハートを地面に置いてあたしは両腕を広げる。
止めたい、その為には多少の身の危険は仕方ない。

もちろんここで命を落とすつもりも無い。
あなたが攻撃してきてもレイジングハートが障壁を展開してくれる、その隙にあたしは動く!

『スバル、危険です。それに相手に本当に死ぬ気があるのか解りません』
「わかってる、でも1%でも可能性があったらと思うと動く訳にはいかないよ」

レイジングハートが警告してくれる。
言いたい事は解る、また人の優しさにつけこむ手段かもしれない。
それでも、あたしはその可能性を無視することができない!

しかしあたしの声は届かなかったのだろうか、一度は止まった引き金がまた動き出していた。

「……さよならだ」

あなたの言葉がわたしを白く染めた。
わたしはそれを止めようと全力で駆け出した。



       ※       ※       ※



あの女の声に俺は思わず固まっちまった。
それがハルヒみたいに有無を言わせない調子だったからかもしれない。

年貢の納め時か、と思ったがこの女は勝手に勘違いしてくれたらしい。
ご熱心な説教を俺は心の中で笑い飛ばした。
すぐ引き金を引かなかったのは女の道化っぷりが見ていて可笑しかったからだ。

こいつもあのガイバーショウと同じ偽善者か。
見ていろよ、俺が何をしようとしているのか。
その甘っちょろい考えがどんな結果を生むのかすぐ解らせてやるよ。

だから言ってやった、さよならってな。
俺じゃあない、お前がこの世とおさらばするんだ。

指に力を込める。
これで俺は勝てる、そう確信した瞬間に腕を捻られた。



       ※       ※       ※



死なせたくない、出来るだけ多くの命を助けたい。
その決意があたしの力の源。
デバイス無しでこれ程加速出来たのって初めてだと思う。

銃口が何処を向くかなんて考えない、あなたの頭に向けさせない事が何よりの優先。
引き金はもう止められない、その弾が放たれる前に手首を捻り上げる。

間に合った、そう思った。
ただ命を救えた事が嬉しかった。
だから―――どうでも良かった。

その銃口が自分に向いていた事なんて。

最初に感じたのは視界の変化、急に景色が小さく見えた。
次に感じたのはとても小さいレイジングハートの声。
そして最後に感じたのは、右手に握り締められて暴れているあなた。

そういえば小さい頃絵本で見た事がある。
船が難破して流れ着いた先は小人の国って話だった。
見渡せばミニチュアの様に小さなコテージが並んでいる。
真下を見るとフォーク程に縮んでしまったレイジングハート。
壊さないよう慎重に指先で摘んで持ち上げる。
声が聞き取りにくいけどあたしの事を心配してくれてるみたい。

「……これってあなたの仕業?」

手の中の小人さんに尋ねてみる、ジタバタしているので恐らく正解だろう。
暴れられたり逃げられたりしないように両手で拘束、腕からトゲが出てきたけど避けて掴めば大丈夫だよね。
つまり、あなたに死ぬ気は無くて巨大化して反撃するつもりだったという事か。
早とちりしたあたしがちょっぴり恥ずかしい。

「はい質問! あたしはどうすれば元に戻れるの?」

思いもしなかった巨人体験だけど大きいままは不便だし、目立つのは困る。
さすがに一生このままって事は無いと思うけど戻れるなら早く戻りたい。

「い、一時間から二時間で元に戻るらしい……」

耳を澄ますとそんな答えが返ってきた、それならあまり心配する事はないかもしれない。
そして反撃は無駄って諦めてくれたのかな? あなたは暴れるのを止めてくれた。
そういえばあの銃は、と思って探すけど何故か見付からなかった。
小さすぎてあたしには見えないのかな?

その時のあたしは正直浮かれていた。
危険人物は拘束したし、この状態を少しでも楽しんでみたい気持ちがあったのだと思う。
状況を良く見ろ、その言葉を失念した報いは直ぐにやって来た。

地面を探していたら指で摘んでいるレイジングハートが何か言っているのに気付く。
耳元に持ってきてみると急を告げる声が飛び込んできた。

『スバル! 何者かが急速接近中!』

その言葉を理解する前にあたしの顔は爆発した。
違う! これは零式ヘルメットに被弾したんだ!

ゴーグルがひび割れて視界に蜘蛛の巣が広がる、幸いなことに顔は傷付いていない。
急いでヘルメットを脱ぎ去ると身体を投げ出してあたしは伏せた。
手の中のあなたがうめき声をあげた気もするけど、ごめん今は気にしていられない。

『スバル、相手を確認しましたか?』
「一瞬だったけど見えた、通りを挟んだ向こうのコテージの影に蛇みたいなのが居たよ」

思わず背筋が寒くなる。
蛇なんて動物園ぐらいでしか見た事ないけど何であんなに気持ち悪いんだろう?
とにかくこれじゃうかつに頭を上げられない、障壁もあたしが大きくなった分薄くなってしまう。
見渡しても盾になる程大きな建物は無い、なら自分で盾を作る!

あたしは近くのコテージの屋根を掴んでベリベリと引き剥がす。
一軒だけじゃ足りない、五軒の屋根を剥がしてそれを重ね合わせた。
準備が整ってから髪に挿したレイジングハートに訊ねる。

「レイジングハート、敵の居場所は解る?」
『索敵範囲から離れたようです、探知不能』

逃げた? ううん、そんな簡単に諦めるとは思えない。
あたしが大きくなっても傷を負わせられる手段があるのなら、逆に的が大きいうちに倒すのが好都合のはず。
必ずまた近付いてくる、でも近付けばレイジングハートが教えてくれる。
その時が勝負、一回で勝負を決める。

先程あの蛇を見た方向を重点的に警戒する。
コテージと白樺の林で視界は利かない、レイジングハートだけが頼りだ。
左手に小さなあなた、右手に即席の盾を持ってその時を待つ。

『スバル、高エネルギー反応急速接近! 後ろからです!』

直後あたしは吹き飛ばされた。
両手が塞がっていて伏せているという最悪の体勢、それでも下半身の力だけで前方に跳んでエネルギー弾を避けた。
レイジングハートが教えてくれなければ間違いなく直撃していたと思う。
爆風や粉々になったコテージの破片が大してあたしを傷つけていないのはとっさに集中させた障壁のおかげだった。

「敵の位置は?」
『索敵範囲にありません、どうやら遠距離から狙われてる模様です』

完全に裏をかかれた。
不用意に接近するつもりは無いらしい、今度の相手は戦い慣れている!
このまま伏せていてもまたエネルギー弾が飛んでくる、危険を承知で打って出るしかない。

「レイジングハート、障壁を盾に集中して!」
『了解です、但し他の部分は無防備ですので注意してください』

急造の盾が青く輝きだす、あたしはそれを掲げ持って宙へ跳んだ。
一気にパノラマな光景が視界に飛び込んでくる。
同時に紫のビームがあたしを襲う、盾の表面で二つの光が激突する。
盾は耐えてくれた、そして相手の位置も見えた。

「今度は逃がさないよ! ウイングロード!」

光の帯が伸びてゆく、蛇が潜むコテージまで魔法の橋が架かる。
何故か普段より疲れる、制限じゃない、大きくなった分魔力の消費が増えたんだ。
でも、これで終わらせれば関係は無い!

ウイングロードを一気に駆ける、たちまち目標との距離が縮む。
コテージや林を障害として計算していたのならこれは蛇にとって最大の誤算のはず。

『敵を感知、コテージ内から動きません』

レイジングハートが蛇を探知してくれた、これで離されない限り何処に隠れても見付けられる。
そしてあたしは二度と離されるつもりは無い、得意な距離で必ず決める!

光弾は来ない、あの威力を考えると連続で撃てないのかもしれない。
両手は塞がっている、でもあたしは足技にも自信がある。
今の状態ならコテージ程度一撃で粉々に出来る。

でもあたしは殺さない、だから狙ったのはコテージの上部。
強引にでもお日様の下に出して捕まえる!

軸足はウイングロードへ、走る勢いをそのまま使って薙ぐ様に蹴る。
あたしの誤算、それはコテージが見た目とはまるで違っていた事。
ごく普通の木で出来た建物と思った、ところが足に伝わったのは鋼鉄の硬さとその重さ。

常人ならきっと足が砕けていた、あたしは砕けなかったが思わずバランスを崩した。
コテージは壊れなかった、建物全体が震えたけど吹き飛んだのは表面の建材だけだった。
無防備な半身が晒される、コテージの窓が紫に光る。

やって来たのは灼熱の棒で突き刺された様な激しい痛み。
狙われたのは足、太ももの肉が一瞬で焦げた。
あの蛇はあたしを動けなくするつもりだ、でもこの程度何て事は無い!

体勢を立て直して第二撃、振動破砕を使って今度こそ上部構造を吹き飛ばす。
でもあの蛇は中に居なかった。
レイジングハートがすぐ教えてくれた、隣接しているコテージだと。

攻撃即移動、ヒット・アンド・アウェイがあの蛇の戦い方か。
そして地の利も蛇にある、この奇妙なコテージの事をよく知っている。
追撃の蹴りが粉砕したコテージ、中に強力なトリモチが詰まっていた。

絡みつく粘りを振り解きながらあたしは気付いた。
身体が10倍大きくなっても全てがスケールアップする訳じゃないって。
身体能力は確かに底上げされた、でも大きさに見合うほどじゃない。
動きは今の方が落ちている、そして消耗は何倍も激しい。
魔力も総量は変わってない、威力が増してもそれに見合う負担が身体に掛かる。

でも、敵にとってはスピードも破壊力も普段のあたしより遥かに上!
早く決めれば問題は無い!



       ※       ※       ※



我に地の利有り、そして敵に遠当ての技無し―――

そう判断したからこそナーガは戦いを挑んだのだった。
女が『悪あがきをする者』である事は小僧への対処から知れた。
巨人と化したのは本人の能力か支給品の効果かは知れないが、的が大きくなる分好都合でもあった。

最初の一撃は有効打とはならなかった、しかし応射が無かった事は遠距離は不得意という事だ。
ならば近付かなければ良い、遠くから射掛ける事で仕留められる。
しかしその判断はすぐ誤りとなった。

戦いに誤算は付き物、ナーガはそれを身をもって承知している。
女が距離を詰めてくる事も予想していなかった訳ではない、そこに散策の成果が生かされた。
コテージの迷路、そこを蛇の砦として無知な相手を翻弄しようと試みる。

次なる誤算、それは女がナーガを見失わない事。
何処に身を隠してもその居場所を突き止められる。
如何に堅固な建物だろうが女の足に砕かれる。

ならばその先を行けば良い、常に動き同じ場所へは留まらぬ。
そして蹴りは隙が大きい技、その度にこちらも反撃を積み重ねる。

蛇は蠢く、女はそれに応えて華麗に舞う。
その度に迷宮は少しずつ役割を終える。
砕かれて形を成さなくなった建物が増えてゆく。



       ※       ※       ※



……この女、俺の事を忘れちゃいないか?

飛んだり跳ねたりする度に物凄い加速が掛かって目の前が暗くなるんだぞ。
しかも時々拳を握り締めようとするもんだからプレス機で挟まれている気分だ。
どんな絶叫マシーンでもこいつには敵わないだろう、上昇下降加速減速おまけに爆発に怪光線まで何でも有りだぜ?

戦況は逃げるおっさんを女が追うって構図だ。
おっさんはなかなか捕まらない、コテージからコテージへと素早く移動しながら女に反撃している。
自分よりデカい相手に対等とは、これが格の違いって奴なのか?

ああ念の為に言っておくが、俺はまだ諦めちゃあいない。
今まで何回失敗したと思っているんだ? 立ち直るのは慣れている。
……まあ、確かにコスプレ女を巨大化しちまった時は少し弱気になっちまったがな。

俺は”その時”って奴をひたすら待っているんだ。
お人形さん状態から脱出して女を殺す為の当てはある。

女はあの銃の行方に気付いてなかったが、俺はちゃんと見てたんだ。
手を捻られて離しちまった銃が女の腰ポケットに入った瞬間をな。
だから力で逃げられないって解った後はチャンスを待っていた訳だ、ナーガのおっさんが来たのは予想外だったがな。

幸いぶん回されている内に両腕を指から出す事ができた、女が全然気にしなくて助かった。
ここまで説明したら解るだろう? 女の腕が腰に近付いた瞬間が”その時”だ。

俺は夢中でポケットを切り裂いた。
零れ落ちる銃を寸前で掴む、思わず心の中でガッツポーズを取った。
はは、俺にも運が向いてきたって事か?

また女が動く、俺は加速減速に耐えながらなんとか目盛を『小』に合わせた。
落ち着け俺、脱出するのにもタイミングって奴がある。
ナーガのおっさんがすぐ反撃できそうな場面を狙う、それなら女も俺を追えない。

聞いているか『俺』
何度でも言ってやるよ、俺は優勝してハルヒや皆を生き返らせるんだ。
10回や20回の失敗がなんだ、最終的に勝ちゃあいいんだ。
ここで立ち止まったらそれこそあいつに合わせる顔が無いだろう?


俺はハルヒを想いながら引き金を引いた。



       ※       ※       ※



戦いに決着を付けたのは一人の道化。
蛇も女も意識の外にあった第三者の仕業。
道化は踊る、そして舞台は動く。




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逃れられぬ蛇の視線 ナーガ 嗚呼、素晴らしき人生哉!
キョン
スバル・ナカジマ




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