※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

Another Age ◆igHRJuEN0s



いつの間にか、私・冬月コウゾウはそこにいた。
そこは白く何もない殺風景な空間だ。
遠くを見回しても、白いだけの景色以外、何も見当たらない。
広いのか狭いのかすらよくわからん。
ただ、私はいつの間にかその空間に立っていた。

意識がある程度覚醒した所で、私はそれまでの事を思い返す。

私は高町君にサツキ君を託し、そして私は撃たれた者を若返らせることができるらしい夢成長促進銃を使った所で……その後の記憶がない。

――その後はどうなった?
かけがえのない妹の死に、精神に限界をきたし暴走してしまったサツキ君は?
それを追いかけに行ったアスカ君とケロロ君は?
私がサツキ君を託した高町君は?
小砂君はいったいどこへ?
行方知れずの加持君とタママ君は?
そして、私はなぜここにいる?

頭が急に働き始めると、気になる事が雪崩のように沢山溢れてくる。
しかし、この出口らしきものも見当たらない空間においてそれを知る事はできそうもなかった。

ただ、少しだけわかることはあった……

「あの銃を使ったハズなのに、なぜ私は若返ってないのだ?」

視界に映る、自分の手を見た。
しかし、そこにあるのは私が期待していた若々しい肌ではなく、老人らしいシワだらけのいつもの私の手であった。
手の様子だけでなく、自分の顔にも触れてみる。
……この手から伝わる肌の感触からして、私はまったく若返ってない事を悟った。
夢成長促進銃で若返る効果が、たった1、2歳程度しかないという事も有り得る。
しかし私は自分の身体の事をよく知っている。
この様子だと少しでも若返っていることはないようだ。
落胆によるものか、私はため息を吐いた。

それにしても、ここは結局どこなのか?
私が若返ってない事とこの空間は関係あるのだろうか?
関係するのであれば、ここは夢の世界か……あの世であろう。


サツキ君に刺された私は高町君の治療を受けるも、彼女の力が及ばずに死んでしまった可能性もある。
ならば、この無力な老人が、ケロロ君やサツキ君のような者たちに何もしてやれなかった、と悔いるしかない。
だが、これが夢の世界ならば、とっとと覚めてほしい。
私には生きている限り、やらねばならないことがあるのだ。

とにかく、ここがどこなのか、状況はどうなっているかを知りたい。
知らなければ何も始まらない――その思いで、当てもなく真っ白な空間を歩き出そうとした時だった。
後ろから男の声が聞こえたのだ。

「おい、そこのジイさん」
「!!」

突然の出来事に心臓が跳ね上がる。
今までは気配すらしなかったのにいつの間に私の後ろに!?
私は反射的ににディパックから武器になるものを取り出そうとして……ディパックがない事に気づく。
なぜ、手元にないんだ?!
……どうやら、私は無手で身構える事にした。
次の瞬間、なにをされるかわかったものではないからな。
まずは後ろへ振り返り、相手の正体を確認する。

「……ケロロ君?
いや違う、君は誰なんだ?」

そこにいたのは、ケロロ君やタママ君と似たシルエットを持つ小さき者、ケロン人だった。
しかし、体色は黄色く、眼には渦巻き型レンズの眼鏡をかけ、仕草もどこかあの二人とは違う。
発する声もまた、なんとなく青葉君によく似た声をしていた。

「俺?
おめーさんの持ってる夢成長促進銃の制作者だよ」
「制作者?」

夢成長促進銃の制作者と名乗った彼に私はピンときた。

「もしかして、君はケロロ君の知り合いの……」
「ああ、奴は隊長で俺は隊の技術顧問って事になるな」

どうやら、やけに高慢な話し方をする彼は、ケロロ君の知り合いで間違いないらしい。
しかし、ケロロ君たちの話が正しければ、彼はこの場にいないハズだ。
じゃあ、その彼がなぜ、私の目の前にいるのだろうか?
そんなことを考えていると、彼の方から話しかけてきた。

「それよりジイさん、ここがどこだが知りたいんじゃねぇのか?」

それはついさっきまで私が知りたかった事だ。
彼自身の事も気になるが、そちらの事も聞いておきたい。



「では、ここはどこなんだね?
君は知っているのか?」
「ここはジイさん、つまりおめーさんの夢の中だ」
「そうか、ここは夢の世界か……なら君がここにいることも納得できるな」

彼の答えから、私やいないハズの彼がここにいる疑問も解消できた。
私は死んだわけではなく、目の前の彼はおそらくケロロ君たちから聞いた情報から連想され、夢の中に現れた私が想像する『夢成長促進銃の制作者』の形なんだろう。
とりあえず、夢の世界と聞いて少しは安心した。
もっとも、本当に夢の世界である保障は無く、臨死状態の時に見る幻覚である可能性もあるが、そちらはあまり考えたくはない。
どちらにせよ、とっとと現実世界に戻してほしいものだ。
それを望みつつ、ケロン人に話しかける私。

「ここが夢の世界だとすると、いつになったらこの夢は覚めるのかね?」
「そう焦んなくてもいいぜ。
待ってりゃその内、目覚める」
「そうか……」
「目覚める前に、ジイさんに会いたがってる奴がいるぜぇ」
「はて? 私に会いたい者?」

彼と話していると、意外な答えが返ってきた。
夢の世界で、私に会いたい者がいるそうだ。
いったい誰が?

「そんじゃま、入ってこいよ、クックック~」

不思議な笑い方をしながら彼が空間の明後日の方向を見ると、そこに誰かが現れた。

それは少女であった。
年齢はアスカ君よりは上、高町君よりは若干下ぐらいだ。
一瞬だけ、アスカ君と間違えそうになったのは、彼女と同じオレンジ色の髪におさげをしているからであろう。
着ている服装は軍服のようだが、どことなく高町君の着ていた軍服と類似点がある。
そして小綺麗で端正な顔立ちからは外国人にも見える。
以上をまとめると、私にとって見覚えのない少女である。
では、彼女は何者なのか?
私の夢が生み出した産物なのかもしれない。
そんな事を考えていると、彼女の方から話しけてきた。

「初めまして、冬月コウゾウさん」

なぜか彼女は私の名前を口に出した。
私は彼女を知らないハズだが、彼女は私を知っているようだ。



「なぜ、私の名前を知っているんだ?
そして君は何者なのかね」
「私の名前はティ[ガガガ……ザーーーッ]……あれ?」
「な、なんだ!?」

少女が自分の名前を述べようとした時、ノイズのようなものが走り、ちょうど名前の部分を聞きとれなくした。
少女もまた、この異常に驚き、ケロン人の彼に顔を向ける。

「……どうやら、ジイさんが目覚める時間が目前まで迫っているようだぜ。
チッ、もう少しは時間があると思ったんだがな」

彼によると、先程のノイズは『私』が目覚めようとしているのが原因らしい。
私にとってはそれで構わないのだがな。
一方、少女の方は急いで話しを続ける。

「もう、時間がないみたいです。
ですから、手短に言わせていただきます!」

少女は幾分か焦っているようだ。
何をそんなに焦っているのだろうか?

「あなたにお願いがあるんです。
今、あなたやあなたの仲間に危機に迫っています」
「なに?」

少女はどうやら、私とケロロ君やサツキ君たちのような同行者の身に危険が迫っている事を警告しているようだ。

「詳しく言うと、このまま『その人』と接触しても、なのはさんの命は助かるでしょう。
その人は、なのはさんを殺さないように約束を受けているからです。
でも、あなたや近くにいる仲間の命は保障できません。
その人は、目的のために人殺しも辞さない人だからです。
是非、仲間を護ってあげてください」

そんな事が……
いや、これは仮にも夢の出来事だ。
信憑性などないだろう。
……とはいえ、例え彼女が夢の産物であろうとも、礼儀を尽くさねばならん・尽くさなければならない気がした。

「だいたいの事情は把握した。
この命に変えても、仲間を護ってみせよう」



この殺しあいを破壊するには、高町君のような者たちの力が必要だ。
まだ幼いサツキ君も、生きて帰してあげたい。
情報がない今、この殺しあいが人類補完計画に関連することなのかはわからないが、なんにせよこの殺しあいは止めなければなるまい。
その仮定で私が死んでしまおうとも、高町君やケロロ君のような殺しあいからの脱出・破壊を考える者たちのプラスになれれば良い。
元より多少の未練はあろうとも、私は生きる事への執着はさほどないだからな。
だからこそ、私は尽力できそうな気がする。
その思いを込めて少女と、迫る危機から仲間を護る約束をしていた。

「その言葉が聞けてよかった……でも、一つだけ言わせてください」

私の言葉を聞いた彼女は、少しだけ悲しそうな表情をして、「あなたも、どうか生きてこのゲームから脱出してください」、と言ったのだ。

「人柱とか、身代わりになるとか、自己犠牲による解決は避けて」

少女の言葉に私は自嘲気に笑った。

「フッ、面白い事を言うではないか。
この老い先短く、おそらく死んで深く悲しむ者もいないだろう老人に、生きろとはな……」
「……そんなことはないと思います。
あなたがいなくなって悲しむ人はきっといますよ」
「さぁ、どうだろうな?
私にそれほどの価値などあるんだろうかな?」

その問いかけに、彼女は笑顔で答えてくれた。

「価値なんてものは、生きている内にいくらでも上がりますよ。
今までがダメでも、これから価値を作れば良いんです。
……死んでしまえば、自分のために努力する事も、誰かのために頑張る事も、できなくなってしまうんですから」
「ほぅ……」

少女の言う事はもっともだ。
生きていれば何かができる。
死ねば何もできなくなる。
では、特に深い未練……しいていえば補完計画はあるが、おそらく私抜きでも計画は進行するだろうし、そこに私の価値はそれほどないハズだ……ほぼやり終えていると言って良い。
また、考えに矛盾が孕むがこのゲームが補完後の世界だという可能性もある。

では、私の価値とは……?
彼女の言う通り、これから生み出せるものなのか?――補完後の世界ならそれも無駄だがな。




と、そこで唐突に私の身体全身がまばゆく光出した。

「これは……いったい」
「どうやら時間がきちまったみてぇだ。
ジイさんはいよいよ起きる時だぜ」
「そうなのか」

少女のやり取りの間に時間がきてしまったらしい。
彼はそれを告げてくれた。
もうじき私は目覚めるのだろう、その前に私は少女について気になっている事を尋ねることにした。

「ところで、高町君たちを護る役目をなぜ私に任せたのだ?
私よりもっと力があり、殺しあいに乗らない意思を持つ者も別にいただろうに」

おそらく、これを聞かねば二度と聞けなくなる気がするのだ。
少女は私に接触してきた理由を述べる。

「……一つは、あなたがなのはさん達に近かったから」

なるほど、単純かつ合理的な理由だ。

「もう一つは、なのはさん達を護るのに、最も動ける人間はあなたしかいなかったから」

高町君やケロロ君たちは何かしらの理由で動けないのか?
だとしたら、助けてやらねばならないな。

「最後の一つは、あなたやなのはさんやス[ジジ……]のような人に、一人でも多く生き延びてほしいから、一人でも多く死なせたくないから、あなたに危機を伝えにきたんです」

……なるほど、私を含めた人間を助けるために、彼女はわざわざ危機を知らせにきたというわけか。
答えを聞いた私は、少女に微笑む。




「もし、それが本当の事ならば、私は本当の意味で仲間たちの助けになれるかもしれん……ありがとう」

もし、少女が夢幻なら敬意を払うだけ無意味なのだが……果たして彼女は本当に夢や幻の存在なのだろうか?
彼女と話している内に、そうとは思えなくなってきた。
夢幻でない根拠などないが、ただ、「ありがとう」と言わねばならない気がしていた。

私から放たれる光が強くなった。
身体が、感覚が、意識が、この夢の世界から消え、おそらく現実世界へ戻されようとしている寸前、少女は言った。

「本当は……私があなたに頼む義理はありませんが、なのはさん達をお願いします。
そして――」







「――あなたも絶対に生きていください」

その言葉を最後に、私の意識は『夢の世界』から消え去った。


-----------




私が目覚めると、そこは公民館近くの地面の上だった。
今は夕方なのだろう、夕日が地面は赤く染めている。

意識を完全に取り戻すのに時間はかからなかった。
まず、思い浮かぶのはついさっきまで見ていた夢の事。

(ずいぶん不思議な夢な見ていた気がする)

感想はそんな所である。
すでに夢の記憶自体が薄れ始めており、とても朧げだ。
なんだか大切な事を忘れている気がする。
その大切な事を言ってくれたのは誰であり、どんな人間だったかも思いだせない……

(よそう、どうせ夢の話だ、考えた所で仕方がない)

結局、私は夢についてはあまり深く考えないことにした。
それよりも、やるべき事がある。
一刻も早く、ケロロ君たちと合流しなければならない。
あれからどれだけの時間が立ったかわからないが、早くした方が良い。
私はすぐに身を起こそうとし……異変に気づく。

(身体がやけに軽い……服が大きくなっている気がする……まさか!?)

身体の異変の理由については思いあたるものはある。
その確信が欲しくて、長くなった袖の中に隠れている手を見る。

袖から頭を出した手は、普段よりやや小さく、以前のようなシワクチャではなく、血がよく通った若々しい肌をしていた。
それで私は確信を持った。
私は、あの銃によって若返る事ができたのだと。


『クックック~。
どうだよ、俺の発明品のできは?
クックック~。』


……今、頭の中でそんな言葉が聞こえたのは、気のせいだろうか?

ともかく、私は立ち上がり、手だけではなく全身をざっと確かめてみる。
顔に触れると、とてもハリのある肌を実感できた。
ヒゲの感触が無い所からして大分若いのだろう。
服が大きくなったと感じたのは、私が縮んだからだろう。
身体は軽く、特に間接は動かす事に負担を感じない。
声を出してみると、高くはないものの、幾分か若く、よく通りそうな声に変わっていた。



以上の事からして、私はシンジ君に近い年齢まで若返る事ができたようだ。
もっと掘り下げると、声変わりを終えた十代半ば・高校生に近いくらいか?
欲を言えば、もっとも体力のある年齢にあたる加持君くらいがよかったのだが、贅沢は言ってられない。
老人の身体よりかは遥かにマシであるし、幼児にならなかっただけ僥倖だ。

公民館に入って鏡を見れば、自分がいくつぐらいになっているか、もっと知る事ができるが、そんな暇はなさそうだ。
それに遊び目的で若返ったわけでもない。
ケロロ君たちの足手まといにならないために若返ったのだ。
若返った以上、ケロロ君たちの元へ早く向かわねば……

「急がないと」

ディパックに夢成長促進銃をしまい、高町君たちが向かっていった市街地へ駆けだそうとした。
だが、長くなった裾に足を引っかけ転倒してしまう。

「気を取り直して……急がねば」

しかし、結果は同じく、数歩走った所で裾に足を引っかけて転んでしまう。

「くぅ……邪魔だな」

縮んだ身体で長い裾や袖は邪魔になり、行動に支障が出る。
変わりの服を探してる時間はない。
だが、このままではいけないとと思った私は、ディパックからナイフを取り出し、余計な袖と裾を切ってしまう事にした。
最初は余分な部分だけを切り落とすつもりだったが、この服は辞令用で運動には適さない。
そのため、少しでも間接の動きの邪魔にならないように肘や膝の部分まで切ってしまう事にした。
こうして、即席の短袖・短パンの服ができあがった。

「これでよし……う」

三度目の正直で、向かおうとするが、今度は貧血でふらつく。
思い返せば、サツキ君に刺されてだいぶ血を失っているのだ。
傷そのものは高町君が応急処置をしてくれたが、失った血液までは戻ってこないようだ。
血が足りないので、私はディパックにあるバナナの最後の一本を取り出し、ほうばる。
食べると少し元気が湧いてきた。

元気がでて貧血が軽くなってきた所で、私は改めて市街地へ向かう事にした。
銃声こそもうしないが、何があるかわからん。
催涙スプレー、スタンガン、そしてナイフはいつでも取り出せるようにしておこう。

-----------



私がサツキ君を見つけたのは、公民館から離れてすぐであった。
そんな彼女は、ボロボロになって、冷たかろう地面に倒れ伏していた。

「サツキ君……」

その惨状に、私は息を飲んだ。
まだ生きているかもしれないと希望を持ち、彼女を抱き起こして、その首に手を当てるが、脈は停まっており、肌は白く冷たい。
彼女はすでに亡き者になっていたのだ。

「すまない、サツキ君……」

涙こそ流しはしないが、彼女への申し訳ない気持ちから心を痛ませる。
守ってやりたかったのに守れなかったことがとても悔しい。
打撲だらけの彼女の表情が苦痛に満ちていた事から、何を思って死んだのかと思うと悲しさを感じている。
せめて死に顔だけでも安らかにしてあげようと、開きっぱなしの眼は閉じてあげる事にした。

いったい彼女の身に何が起きたのか?
彼女を抱えつつ、私は周囲を見回す。

民間が建ち並ぶ市街地のあちこちに戦闘の爪痕、サツキ君の近くには僅かながらも鮮血、そして死因は打撲によるものと思われるサツキ君の屍。
サツキ君は戦闘に巻き込まれたのだろうか?
だとしたら同じく巻き込まれただろう、ケロロ君、アスカ君、小砂君、そして高町君はどこへ行ったんだ?
彼女たちが公民館から離れてからだいぶ経っているのに戻ってこなかったのはなぜだろう?

「手に負えない相手が現れて遠くへ逃げたのか?
または、近くにいるのかもしれない。
それとも……まさか四人とも……」

最悪の事態が頭に浮かんだ。
それだけはあってほしくないが、有り得ないことでもない。
私は四人の無事を祈るしかない。



その時、私は気づいた。
私の後ろに何者かがいることに。
サツキ君をできるだけ丁寧に降ろし、すぐに後ろを振り返る。

それにより、私は驚かされる事になる。
私の後ろ、正確には空中には大きなカブトムシの怪人がいた。
私が使徒などの異形を見慣れていない人間だったら、腰を抜かしていたかもしれない。



それはさておき、この怪人……首輪をつけている所からして参加者に違いないだろうが、何やら危険な臭いがする。
同じ異形でもケロロ君やタママ君の方が愛嬌があるが、この怪人の場合は使徒に近い。
それは決して見た目の判断からではなく、私の60年分磨いてきたカンがそう告げているのだ。
故に何がきても良いように身構える。
スタンガンや催涙スプレーが効くような相手には見えないが、殺しあいに乗っている場合は覚悟しなければなるまい。
サツキ君を殺した相手の可能性もある。
今、大切なのは見極めることだ。

ふと、怪人が地上に降りて話しかけてきた。

「この姿を見て逃げる様子もないとは……肝がすわった小僧だな」

小僧……?
ああ、今の私のことだな。

「それなりに見慣れてるものでね」

嘘ではない。
ほとんど画面ごしとはいえ、使徒のようなありえない存在を散々見てきたのだ。
今さら、怪人が出ようとも恐れはしない。

「……そうか、そういう人間もいるのだな」
「は?」
「いや、こちらの都合だ。
なんでもない」

なにやら、一人で勝手に納得している怪人に、私は首を傾げる。
次は私が怪人に質問した。

「……彼女を殺したの君なのか?
君は殺しあいに乗っているのか!?」
「……いや、俺がここにきたのはたった今だ。
それに俺はこんなゲームに興味はない」

怪人の言うことが本当か嘘かは、この時点では判断できないな。
口頭だけで、警戒を解く浅はかな真似はできない。
次に怪人が話しかけてきた。

「ところで小僧。
アプトムという奴を知らないか」
「いや、聞いた事もないが……」
「そうか……、では高町なのは、筋肉スグル、ウォーズマンという者は知らないか?」

アプトムや筋肉スグルはともかく、彼は高町君を知っているのか?
いや、目的がわからん以上、彼女の事を教えるのは得策ではない。
どっちにしろ所在は知らない上、共にいた時間は僅かだが、安易に教えてはならない気がする。
私はあたかも、高町君の事を知らない口ぶりで答える。



「さぁ、知らないな。
君はその、アプトムや高町なのはという人物にあったら何をするつもり――」

瞬間、怪人から殺気のようなものが膨らんだのを感じた。
突然、怪人がこちらに飛びかかってきて、その硬そうな腕を振り下ろそうとした。
私は咄嗟に右へと避け、なんとかその腕をかわすことができた。

グシャ ベキベキッ

……私が避けることができた代わりに、サツキ君の骸の腹に鉄槌のごとき暴力が振り下ろされる事になる。
その際に、内臓と骨がバラバラになる音が立った。
骨と内臓が潰れたせいか、怪人が腕を放すと腹は不自然に凹み、口や鼻からは血が吐き出され、せっかく閉じた瞳は再び開き、以前にも増して彼女の骸は惨憺たるものと化した。

サツキ君の惨状からか、目の前の怪人の恐怖からか、私は声を出せなくなった。

「あ……ああ……」
「……チッ、素手だけで殺せるかと思ったが……後ろから襲うか、生体ミサイルにしておけばよかったな」

吐き捨てるように言う怪人、あの一撃を避けなければ私の頭はトマトのように潰れていただろう。
とても恐ろしい相手だが、ここは取り乱せば殺される!
私はすぐに冷静さを取り戻し、怪人が後ずさりながら言葉を強く吐き出す。

「君は殺しあいに乗ってないのではなかったのか!?」
「ゲームや優勝に興味がないのは本当だ。
しかし、残念だが小僧には死んでもらう。
俺の目的のためにな!!」
「目的?
それはいったい……」
「今から死ぬおまえに、話す舌は持たん!!」

怪人の目的などの疑問を余所に、再び怪人は襲いかかってきた。
今度は体勢からしてタックルを仕掛けてくるようだ。
その巨体を武器に突撃してくるカブトムシの怪人。

「くっ!」

私はディパックから、催涙スプレーを取り出し、向かってくる怪人に吹きかけた!

「な、ぐおお!?」

催涙スプレーは上手く怪人の眼に入り、怯み気味のタックルを私はすんででかわすことができた。

「眼が……おのれぇ」

催涙スプレーは怪人にもそれなりに効果があったようだ。
怪人は眼を押さえて、悶えている。
しかし、いかにも硬くてタフそうなこのカブトムシの怪人には、ナイフやスタンガンによる無力化は効果がないだろう。
無茶をして、仲間たちの助力になれないまま死ぬ気もない。
よって、この隙をついての逃走を選択した。



逃げる先は森。
木をはじめとする遮蔽物の多い森なら、相手の足が速くともまくことができそうな気がしたからだ。
あるいは、この周辺で他に逃げられそうな場所が見つからないからだ。

そうと決まれば、速く森へ逃げなくては!
催涙スプレーの効果はいつまでも持つわけない。
今は、ケロロ君や高町君たちと合流し、少しでも支えになってあげるためにも、私は死んではならない!

すぐに森の方向へ駆け込む。

あと100m。
走りながら振り返ると怪人はまだ眼に手をあてている。

あと50m。
怪人はまだ、動かない。

あと30m。
もう振り返っている暇もないだろうが、追ってきてる様子はない。
このままいけば振り切れるか!?



森まであと5m。
そこで、私は何かが急接近してくる音に向かってきているのに気づいた。
咄嗟に後ろを振り向くと、そこにはいくつものミサイルのような物が私に向かってきていて……



-----------



鳴り響く、爆音。

-----------



とある民家の中。
突然の爆音に、ケロロは飛び起きた。

「ゲロ!?
今の音は何でありますか!?」

ケロロが覚醒して驚いていたのはそれだけではない。
彼の目の前には、高町なのはが倒れていた。

「た、高町殿!?」

なぜ、自分の前に彼女が倒れているのか。
そしてアスカに腹部を刺されたハズの自分が、なぜケガもほぼ治され、どこぞの民家の中にいるのか。
外はすでに夕日が挿しているが、今はいつ頃なのだろうか。
そしてサツキは……
とにかく疑問だらけなのである。

先程まで、もっぱら気絶していた彼には、今の状況が飲み込めずにいるのだ。
とりあえずケロロは、状況を知っているかもしれないなのはを、まずは揺さぶって起こそうとする。

「高町殿、……かまち殿!」
「う、ぅぅん……」

だが、彼女が起き上がる様子はない。
特に外傷等はないため、死に至る状態ではなさそうだが、衰弱を感じる。
目元にはうっすらとクマもできていた。

「……疲労の色が濃い、起こすのは無理そうでありますな」

動けそうにない彼女を起こすのは得策ではないし、何よりこの状態で無理に起こすのは酷な話だ。
ケロロはなのはを起こすのを諦める事にした。


そして、再び爆音。


「ゲロッ! この音からして、周辺からでありますか?」

二度目の爆音は、状況がまったくわからないケロロを混乱させるには十分であった。
できれば、今すぐにでも逃げるか確かめに行くかしたいが、動けないなのはを放ってはおけない。
ケロロは知ることも、確かめることも、逃げることも今はできないのだ。

「いったい全体、何がどーなってるでありますか……」

彼、彼女は状況に取り残されていた。



【B-6 民家/一日目・夕方】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(特大)、魔力消費(特大)、気絶中
【持ち物】基本セット(名簿紛失)、ディパック、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS
ハンティングナイフ@現実、コマ@となりのトトロ、白い厚手のカーテン、ハサミ
【思考】
0、気絶中
1、冬月と合流する。
2、一人の大人として、ゲームを止めるために動く。
3、アスカと小砂を探す。
4、それが済んだら高校にヴィヴィオを探しに行く。
5、アスカと小砂を守る。
※「ズーマ」「深町晶」を危険人物と認識しました。ただしズーマの本名は知りません。
※マッハキャリバーから、タママと加持の顛末についてある程度聞きました。

【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹】
【状態】傷はほぼ治ったものの、まだ残っています、やや混乱気味
【持ち物】なし
【思考】
0、状況がわからない
1、サツキを何があっても守る
2、加持、なのはに対し強い信頼と感謝。何かあったら絶対に助けたい。
3、冬樹とメイの仇は、必ず探しだして償わせる。
4、協力者を探す。
5、ゲームに乗った者、企画した者には容赦しない。
6、で、結局トトロって誰よ?

※漫画等の知識に制限がかかっています。自分の見たことのある作品の知識は曖昧になっているようです

-----------



時は少しだけ遡る。
少女の死体の前にいる少年(冬月)と接触したゼクトールは、まず冬月を値踏みした。
一見、何の力も持たなそうな少年だが、自分を見て逃げない所からして強者の部類かとも思った。
マスクをしていた男(古泉)の例もあるからだ。
だが、この会場にいる限り、もふもふ(トトロ)やカナブンと接触する可能性があるのだ。
その意味で「見慣れてしまった」という人間もいるのだ、とゼクトールは知った。
それはともかく、地上から降りて近づいてみても、やはり少年からはこれっぽっちの力も感じず、仲間がいる気配もなかった。

こんな少年なら確実に殺れる。
そして、アプトムや正義超人、高町なのはの情報も持ってないようだ。
これなら、アプトムへの復讐に近づくため、もとい例のご褒美を得るための糧となってもらった方がマシだ。

(恨みはないが、死んでもらう)

そして、少年に襲いかかったゼクトール。
だが、結果は予期せぬ反撃に会い、催涙スプレーで眼をやられる事になる。
おそらく、ここまで催涙スプレーが効いたのは、このキルゲームでの強者に課せられた制限、つまりある程度の肉体的な弱体化によるものだろう。
しかし、ゼクトールは強化に強化を重ねられた損種実験体。
催涙スプレーは確かに効いたが、痛みが引くのも早い。

「くっ……逃がすか!」

ものの数分で立ち直ったゼクトールは、森へ逃げ込もうとする少年への仕返しと言わんばかりに、生体ミサイルを放った。
いくつものミサイルが離れた距離にいる少年へと向かっていき、着弾とともに爆発。
森の入口辺りを焼くことになった。

「やったか……いや……」

これなら少年も無事ですまないと思っていたが、爆風が晴れた時に眼を懲らすと、森の中で例の少年の影が見えた。
しかも、すぐに走って逃げようとしてする所から、ピンピンしているようである。

(ミサイル撃てば済むと思っていたのが甘かったか。
ちょこまかと逃げる上に、悪運まで強いときた)

少年の生存を確認したゼクトールは、羽根を広げて飛び上がり追撃を開始する。




(俺が殺しあいに乗っていることをあまり言い触らされるとまずい。
あの小僧のような奴ならまだしも、それで複数の人間や強者と連携を取られると無為な消耗をしいられてしまう。
アプトムをこの手で殺すまでは、そんな事態はなるべく避けたい)

ゼクトールとしてはどうしても、アプトムを叩き潰すまでは多大な消耗やこれ以上の行動の縮小、最低でも死ぬ事だけは避けたかった。
よってゼクトールは少年を追いかけ、そして……

(必ず殺す。
それに足も大して速くはない。
きっと殺せる。
これ以上、余計な火種を作らないためにも小僧を殺す)

飛行しながら森へと入ったゼクトールは少年を追いつつ、ニ射目の生体ミサイルを放った。

【B-6 森林地帯/一日目・夕方】

【ネオ・ゼクトール@強殖装甲ガイバー】
【状態】軽い消耗
【持ち物】ディパック(支給品一式)、黄金のマスク型ブロジェクター@キン肉マン、
不明支給品0~1、ストラーダ(修復中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
0、アプトムを探し出して殺す。
1、ホテル・デパートなど人が集まりそうな場所を回り、殺せそうな参加者を『確実』に殺して褒美をもらう。
2、1と火種をあまり増やさないために、小僧(冬月)を殺す。
3、正義超人、高町なのはと出会ったら悪魔将軍が湖のリングで待っているとの伝言を伝える。ただし無理はしない。
4、機会があれば服を手に入れる(可能なら検討する程度)。
5、ヴィヴィオに会っても手出ししない?
6、アプトムを倒した後は悪魔将軍ともう一度会ってみる?

【備考】
※キン肉スグル、ウォーズマン、高町なのはの特徴を聞きました。(強者と認識)
※ストラーダの修復がいつ終わるかは次以降の書き手さんに任せます。



-----------




私は幸い、ミサイルのような物体の直撃を避ける事ができた。
ギリギリの辺りで木々の中へと飛び込み、自生している木が障害物となりミサイルをうまく防いでくれた。
爆風による被害も木々のおかげで分散し、私へのダメージはあちこちに擦り傷を作る程度に留まった。
高町君に塞いでもらった腹の傷も開いていない。
結果としては、私はとても運が良かったようだ。

「っ……まさかあんな物まで持っているとはな。
無理をして正面から戦おうとしなくて正解だったな」

追撃を恐れた私はすぐに立ち上がり、逃走を継続する。

後ろに眼をやると、怪人は私を追ってきている。
しかも速い。

あんな化け物に追われる絶望的な状況……私は一瞬だけ弱気になった。

だが、それでも私は足を止めずに走り続け、弱気を振り払った。

(いや、私はまだ仲間たちに何もしてやれていない。
それまで私はここで死ぬ気はない!
生きるんだ!)
と、自分に言い聞かせながら。

そうこうしている内に二度目のミサイルのような物が私に向かってくる。
しかし、今度も木々が盾になってくれたおかげで、避けることができた。
森を逃走経路に選んだのは成功だったかもしれん。


-----------



逃げている内に私は、あの夢の事を断片的にだが思いだしていた。

名も知らぬ、オレンジ色でおさげの髪を持つ少女に
『なのはさん達をお願いします』
『そして、あなたも絶対に生きていください』
と頼まれた事を。

(あの少女が結局何者なんだろうな)

その事を疑問に抱きつつ、一方で私は決意を固める。

(だが、良かろう。
彼女の願い通りに、高町君たちの支えとなり、生き抜いてやろう)

自分は普段、こんなキャラではないのにな、と思いながらも、なんとなく呟く。

「女性の願いを聞いてやらねば、男が廃るというものだろうからな」



その言葉を口にした時、今は若返り、ティーンエイジャーの姿をしている冬月コウゾウは、不適に笑っていた。
それは、怪人に追われている絶望感からくるものではなく、まして皮肉や自嘲からくるものでもない。
彼がネルフの副指令になってから、もしくはそれより以前からしてなかったかもしろない、決意に満ちた笑顔であった。




【B-6 森林地帯/一日目・夕方】

【冬月コウゾウ@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】10代半ば、短袖短パン風の姿、疲労(中)、ダメージ(中)、腹部に刺し傷(傷は一応塞がっている)、決意
【持ち物】スタンガン&催涙スプレー@現実、ジェロニモのナイフ×2@キン肉マン、
     夢成長促進銃@ケロロ軍曹(一回使用済み)、ディパック、基本セット(名簿破棄)
【思考】
0、ゲームを止め、草壁達を打ち倒す。
1、仲間たちの助力になるべく、生き抜く。
2、1のために、まずは怪人(ゼクトール)から逃げ切る。
3、小砂達と共に、高校へ向かう?
4、シンジ、夏子、ドロロを探し、導く
5、タママとケロロを信頼
6、首輪を解除する方法を模索する
7、アスカの事情はわからないが、何とか保護したい

※現状況を補完後の世界だと考えていましたが、小砂やタママのこともあり矛盾を感じています
※「深町晶」「ズーマ」を危険人物だと認識しました。
※マッハキャリバーから、タママと加持の顛末についてある程度聞きました。
※夢成長促進銃を使用し、10代半ばまで若返りました。
※体力が回復しているのは、若返って一時的に体力が向上しているのと、ソンナ・バナナを食したからです。
※夢については、断片的に覚えています。


※公民館の近くにジェロニモのナイフが落ちています。
※ケロロのデイバック(支給品一式、北高女子の制服@涼宮ハルヒの憂鬱、自転車@現実)、サツキのディパック(支給品一式、拡声器@現実)はB-6の公民館に残されています。
※サツキの死体の状態が悪化しました。


時系列順で読む


投下順で読む


誰がために 高町なのは Nord Stream Pipeline -on stream-
ケロロ軍曹
ネオ・ゼクトール
ななついろ☆デンジャラス(後編) 冬月コウゾウ




| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー