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嵐が渦巻くリングに ◆NIKUcB1AGw


TURN0 中トトロ

 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 |,  お待たせシマウマー!  |
 |____________|
    .∧ | ∧     
   ,i  |_,! i、    
   i .。 |_ 。, `i    
   i -ー、―-、 |    
   i ,/"^ヘ^i i   
   i i'       | |   
   i ヽ_,._,/ ,'   
    ゙ー---―'

世界に羽ばたく、となりの中トトロだよ!
さて、僕は今、湖のリングでレフェリーを務めている最中なんだ。
じゃあ早速、リングにいる四人の様子を見てみようか。
おや、早くもノーヴェがピンチみたいだよ?


TURN1 ノーヴェ

くそっ、どうなってるんだ……。
このオメガマンとかいう奴、体はボロボロだしさっきはあたしと将軍であっさり倒せた。
たいした敵じゃない、そのはずなんだ。
なのに、それなのに……。
なんであたしが圧倒されてるんだ!


TURN2 オメガマン

私には、後がない。
もちろん、命の危機ということもある。この試合に負ければ、私は確実に悪魔将軍に始末されるだろう。
だが、それだけではない。
あの目玉の化け物に屈辱を味わわされ、ファイアーデスマッチでは不覚を取り、偽キン肉マンは後一歩まで追いつめながらとどめを刺せず……。
そして、悪魔将軍には完膚無きまでに叩きのめされた。
私の超人格闘者としての誇りは、もはやボロボロだ。
この戦いで負けてしまえば、たとえ命を拾ったとしても私は二度とリングに立てないだろう。
戦う者としての心が、完全に折れてしまうだろうから。
もはや報酬がどうのと言っていられる身分ではない。
私が今最も優先すべきは、勝利すること。そして改めて己の実力に自信を持つことだ。
そのためには、まずこの小娘に勝たなければならない。
この娘、身体能力はなかなかのものだ。だが、動きが洗練されていない。
おそらくは実戦経験が不足しているのだろう。こちらにとっては好都合だ。
ボロボロの体でも、基本に忠実な動きをしていれば十分に渡り合える。
どうもこの頃の私は、自分しか持たない特別な力にうぬぼれすぎて、基本をおろそかにしていた気がする。
追いつめられてようやくそれに気づくとは、皮肉な話だ。
ともかく私の体にしみこんだ長年の経験が、体に蓄積した疲労とダメージというハンデを打ち消して娘と互角以上の戦いをさせている。
娘の戦い方は、時間が経つにつれだんだんと粗くなってきていた。
おそらく、瀕死に見える私を相手にしながらクリーンヒットを奪えないことに焦りを感じているのだろう。
これも好都合、こちらのつけいる隙が増えるというものだ。
ほら、狙いが見え見えだ。左の連打で注意を引きつけておいて、渾身の右ストレートを私の顔面に叩き込むつもりなのだろう?
予想通りに、奴は顔面目がけて右のストレートを打ってくる。私は読み通りに来たその攻撃を回避し、伸びきった腕をつかむ。
そしてそのまま、一本背負いで娘を投げ飛ばした。
疲労の割には、技のキレは悪くなかった。だが娘は例の光の道をクッションに使い、ダメージを軽減してしまったようだ。
投げ技は防がれる可能性があるか。ならば、関節技で地道に体力を削っていくとしよう。
私はまだ体勢を立て直していない娘にタックルを敢行し、そのまま寝技に持ち込もうとした。
しかし娘も寝技の攻防では不利と理解しているせいか、必死の抵抗を見せる。
強引に私の手から逃れた娘は、光の道で上空に逃れようとした。
だが、空中戦でそちらが有利だというのは十分に見当がつくからな。そう簡単に空へは行かせんぞ!
私は背中の巨大指に、亡霊超人たちの首を出現させる。そして奴らを娘の足に噛みつかせ、強引にキャンバスに引きずり降ろした。


TURN3 悪魔将軍

まったく、ノーヴェは何をやっているのだ……。相手が怪我人だと見て油断したか?
その点については試合の後にでも注意するとして……。あれはどういうことだ?
スニゲーター、ジャンクマン、サンシャイン……。
この島でオメガマンに殺されたというアシュラマンはいいとして、なぜ他の悪魔騎士の首が奴の体に装着されているのだ!
悪魔騎士たちの体は、今まさに私のボディーを構成しているはずだろう!
オメガマンが持つ変身能力か? いや、あれは実物が目の前になければ使えないはず。
それに、悪魔超人の首領たる私にはわかる。あれは生きた超人の身体が変化したものではなく、間違いなく死体の首だ。
どういうことだ。なぜ、同じ超人たちの死体が二組存在しているのだ?
待てよ、たしかノーヴェの奴から聞いた話に、平行世界というのがあったな……。
「世界」が一つでないことぐらいは、私も元から知っていた。
たとえば我ら悪魔超人の本拠地である「魔界」や、ゴールドマンだった頃の私が生活していた「天上界」は、人間どもが生活する世界とは別の世界だ。
それにノーヴェや古泉がいた世界も、私の知る世界ではないだろう。
時空管理局などという組織は私の世界にはないし、古泉もノーヴェも超人の存在を知らなかったからな。
たとえ奴らが私の知らぬ遠い星の住人だったとしても、宇宙全域で活動している超人の存在を知らぬということは考えられない。
よって、奴らは私とは違う世界の出身者だと結論づけられる。
つまり平行世界が存在しているというのはさして考えずともわかることであって、あまり深く考える必要もない。
先程まで私はそう思っていた。だが、その考えを改めねばなるまい。
今までの私は、平行世界とは「まったく異なる世界」が複数あるものだと考えていた。これも間違いではないのだろう。
だがそれだけではなく、「ほとんど同じだが細かい点が違う世界」も存在しているのかもしれない。
何が言いたいのかというと、「悪魔騎士が正義超人ではなくオメガマンに倒された世界」があり、あのオメガマンはそこから来たのではないかということだ。
そう考えれば、あの万太郎が言っていたことにも説明がつく。奴は、自分を「キン肉スグルの息子」だと言っていたらしい。
だが、キン肉マンはまだ20代の前半だったはずだ。息子がいたとしても、父親と見間違えるほど成長しているはずがない。
しかし、私の世界と時間の流れが違い「すでにキン肉マンに息子が生まれ、青年にまで成長している世界」があるとすれば……。
あくまで仮定に過ぎないが、そうであれば奴の言葉は真実であってもおかしくないということになる。
そうなると、キン肉マンとウォーズマンも……。
おっと、弟子たちの試合中だというのについつい考え込んでしまったな。
この辺りは後でゆっくり考えるとして、今は試合の行く末を見守ることに集中するとしよう。


TURN4 古泉一樹

やれやれ、とんでもないことになってしまいました。
せっかく見つけた万太郎さんと、戦う羽目になってしまうとは……。
しかし、ここで悪魔将軍に俺の真意を見抜かれてしまえば、朝比奈さんの仇を討つことができません。
今は彼に従う振りをするしかないでしょう。
最悪……ここで万太郎さんを死なせてしまっても仕方ないでしょうね。「駒」の候補は彼以外にもいるのですから。
俺がそんなことを考えている間にも、試合は着々と進行していきます。あのオメガマンという男に足を捉えられたノーヴェさんは、キャンバスへと叩きつけられました。
そしてオメガマンはノーヴェさんにのしかかり、脚をロックします。

『あーっと! オメガマン、スコーピオン・デス・ロックでノーヴェの脚を締め上げるー!』

実況の彼が、そんなフレーズが書かれたプラカードを掲げています。
それにしても、あの小動物……。トトロにそっくりですね。というか、あのパソコンの壁紙に描かれていた生物そのものです。
主催者が用意したこのリングの管理を任されているということは、彼も主催者の一派なのでしょうか。
そうだとしたら、やはりトトロも……。

「ちくしょう、放しやがれーっ!」

俺の思考は、ノーヴェさんの叫び声によって中断させられました。彼女は必死にもがいて技を外そうとしていますが、オメガマンの方もそう簡単には技を解いてくれません。

「ノーヴェよ! 関節技は力で外すものではない! 体のひねりを使ってテクニックで外すのだー!」

リングの外から、将軍の檄が飛びます。ノーヴェさんはその言葉に素直に従い、体を回転させてオメガマンの拘束から逃れます。
しかしオメガマンは、崩れた体勢からすぐさま別の技へとつないできました。

『オメガマン、今度はアキレス腱固めだー!』

負傷させた脚を徹底的に攻める作戦ですか……。陰険ではありますが、実に理にかなった作戦ですね。
ノーヴェさんも実に辛そうです。ここは助け船を出すべきですか……。
しかし、超能力やプレッシャー・カノンをここで使っては、オメガマンと密着状態にあるノーヴェさんまで巻き込みかねません。
メガ・スマッシャーは論外です。リングごと吹き飛ばしてしまいます。
そうなると、攻撃範囲が狭くピンポイントで攻撃できるヘッドビームですか……。
俺はオメガマンに狙いを定め、ヘッドビームを発射しようとしました。ところがその瞬間、オメガマンが技を解除して跳び上がったのです。
そんな、攻撃を読まれた!?

「不意打ちというのは、モールでのお前のように相手に反応する間を与えずに攻撃するのが基本!
 そんなに長々と殺気を向けられたら、デビューしたてのルーキー超人でも気付けるぜー!」

くっ、攻撃方法を即座に決められなかったのが仇になりましたか……。

「そーら、そんなに助けたければくれてやるぞ!!」

オメガマンの手は、まだノーヴェさんの脚をつかんでいました。奴はノーヴェさんの体を振り回し、こちらに投げつけます。
その体を受け止めた俺でしたが、勢いを殺しきれずそのまま二人揃って湖へ落ちてしまいました。
しかし、すぐさまノーヴェさんを抱えてリングに戻ります。

「わ、悪い古泉……」
「お気になさらずに」
「あの野郎……! 今度こそ思いっきりぶっ飛ばしてやる!」
「いえ……。ノーヴェさん、あなたは一度、少し頭を冷やした方がいい」
「なに?」

顔をしかめるノーヴェさんの手に、俺は自分の手を重ねます。

「交代です。次は俺が行きます」


TURN5 キン肉万太郎

「向こうは交代してきたか……。こっちも交代だ!」
「う、うん……」

オメガマンのタッチを受け、僕はロープをくぐってリングに足を踏み入れる。
それにしても、妙なことになっちゃったなあ……。さっきは目が覚めたばっかりで頭がボーっとしてたから、つい引き受けちゃったけど……。
なんで僕が、アシュラマンさんを殺した張本人であるこいつとタッグを組まなきゃいけないのさ……。
しかも、戦う相手はさっき気絶していた僕を建物の中まで運んでくれた人じゃないか。
冷静になればなるほど、僕がここで戦うメリットなんてないように思えてくる。
けど、超人レスラーとしては一度上がったリングから降りるわけにもいかないし……。

「ねえ、なんで君は僕と戦うのさ? さっきは助けてくれたじゃない」

思わず僕は、自分に対して攻撃してくる黒い人――たしか、ガイバーⅢだっけ?――に聞いていた。

「俺自身は、あなたと戦いたくないんですけどね。将軍に逆らうわけにはいかないんですよ」

将軍? さっき僕をいきなり殴ってきた、あの鎧のこと?
待てよ? 鎧で将軍って、どっかで……。
あーっ! 思い出した! 悪魔将軍!
今まで正義超人が戦ってきた悪行超人の中でも、間違いなく三本の指に入るっていう伝説の悪魔超人じゃないか!
名簿で「悪魔将軍」って名前を見た時に、どこかで聞いたことある名前だなーとは思ってたんだけど……。今はっきりと思いだしたよ!
けど、悪魔将軍は30年近く前に、父上に倒されて消滅したはずじゃ……。なんでここにいるの?

「試合中によそ見は禁物ですよ!」

あいたっ! 考え事してたら、ガイバーのパンチをまともにくらってしまった。
やっぱり試合中に考え事なんてするもんじゃないね……。
続いて放たれたハイキックはなんとかかわし、いったん距離を取る。

「つまり君は、悪魔将軍の部下ってことか」
「俺自身はそういうつもりはないのですが……。従わなければ殺されてしまいますのでね。
 俺にはまだ、生きてやらなければならないことがある。ここで死ぬわけにはいかないんですよ。
 だから、将軍の命令通りあなたを倒します」
「悪魔将軍は、極悪非道の悪魔超人の頂点に君臨する存在……。悪の中の悪だ。
 そんな奴に手を貸すって言うのか!」
「彼が悪の権化だということは、よくわかっています。身に染みてね……」

一瞬だけ、ガイバーの声色が変わる。だけどそれを気にする間もなく、額からビームが飛んできた。
危ない危ない、もう少しで当たるところだった。いろんな超人と戦ったことはあるけど、ビームとか出せる超人って意外と少ないからこういうのは慣れてないんだよね。
なんて言ってる場合じゃない。ガイバーは間髪入れず、肘を叩き込もうとしてくる。
それをがっちりガードして、反撃のヘッドバット。今度は向こうが後ろに下がり、距離を取って攻撃を回避する。

「ですが、それでも俺は彼に従わなければならない! 死にたくはないのですよ!」
「でも、君があいつに手を貸せば……。あいつに不幸にされる人間が増える! それでもいいのか!」
「それは俺の望むところではありませんが……。生きて目的を果たすためには仕方ないでしょう」
「自分がよければそれでいいのか!」
「ですから、仕方ないんですよ! 常に死と隣り合わせのこんな状況では!」

もう話しながら戦っていると言うよりは、口げんかの合間に手を出している感じだ。
奇妙なことになっちゃったけど、ここで退くわけにはいかない。
ガイバーの考え方を、認めるわけにはいかないんだ。そんなの、絶対に間違っている!

「死にたくないって気持ちはわかる! だけど、だからといって悪に屈していいはずがない!
 自分も生き残り、なおかつ弱いものも守る! それが正しい道だろう!」
「ええ、それは非の打ち所のない、正しい道でしょう……! ですがそれを主張できるのは、あなたが超人だから……強いからです。
 俺は元々、ほんの少し超能力が使えるだけの普通の人間だったんです。悪に立ち向かえるだけの力なんてないんですよ」
「それでも……悪に手を貸すなんていうのは間違ってるよ!」
「何度も言わせないでください。それは強者の理屈です。誰もがあなたのように、強固な正義感を持っているわけではないんですよ!」

言葉と同時に、リバーブローが僕の体に突き刺さる。
彼の言っていることも、理解できない訳じゃない。だけど、その主張を認めるわけにはいかなかった。
僕は、正義超人だ。悪を肯定することだけは、どんなことがあっても許されない。

「この……分からず屋!」
「どっちがですか!」

僕のパンチと、ガイバーのキックが激突する。その衝撃で、ガイバーのバランスがわずかに崩れた。
僕は、その隙を逃さない。すぐさま低空タックルに繋ぎ、ガイバーをキャンバスに押し倒す。
そこから繋ぐのは、僕のオリジナルホールド。
交差させた相手の両脚に自分の脚を絡めて極め、同時に両手で首をつかんで思いっきりひねりあげる。

「マンタロー一番搾りー!!」


TURN6 ノーヴェ(2)

おいおい、どうしたんだよ古泉の奴……。あたしに頭冷やせなんて言っておきながら、自分が熱くなってるじゃないか。
あいつ、あんな何度も声を荒げるような性格だったか?
まあそれはいいとして……ピンチだな、あいつ。
万太郎とかいうブタ鼻男の関節技が、完全に極まっちゃってる。体がきしむ音が、こっちまで聞こえてきそうだ。
なんかもう、見た目が痛そうな技だ。あのまま技をかけていたら、古泉の体がどこかちぎれちゃうんじゃないかと不安になってくる。
やっぱりここは、あたしがバーンと乱入して古泉を助けてやるべきか。
たしか将軍から聞いたルールでは、乱入しても10カウント以内にリングの外に出れば反則にならないんだったな。
まあ、その辺はだいぶアバウトらしいけど。
とにかく、ちょっとだけなら私が乱入しても問題ないわけだ。待ってろ、古泉! 今助けに行くぞ!
あたしはエアライナーで、古泉のところまで一直線に突き進む。ところが古泉までもう少しと迫った時、何かが私の前に立ちふさがった。

「グフォフォ、ガイバーとやらにお前がついているように、万太郎には俺がついていることを忘れてもらっては困るぜー!」

ゲェーッ! オメガマン! そうか、こっちが乱入すれば当然こいつだって黙っちゃいないよな……。
しょうがない、まずはこいつをぶっ飛ばして……。な、なんだ!? 急に膝が折れて……。

「馬鹿め、さっきさんざん脚を痛めつけてやったのを忘れたか!」

馬鹿言うな、忘れてないっての! けど、ダメージはもう抜けたと思ってたんだけどな……。
とにかく体勢を立て直さなきゃ。そう思ったんだけど、それより先にあたしの体はオメガマンに担ぎ上げられてしまった。

「いくぞ、万太郎!!」

ブタ鼻男に呼びかけながら、オメガマンは私が作った道から飛び降りる。
おそらく、私を古泉に叩きつけるつもりだろう。まずい、これはまずい。
さっき激突させられた時は、衝撃を外に逃がせたからまだよかった。
だが、今回は古泉の体ががっちりと固められている。あの体勢で強い衝撃なんて受けたら、あいつの体がまっぷたつになっちまう!
まあ今のあいつはガイバーだから、それでも死なないかもしれないけど……。さすがにこの試合中に回復するのは不可能だろう。
というか、仲間としてはたとえ死ななくてもそんな目に遭わせたくないし。
このままいいようにやられてたまるかよ。戦闘機人を舐めるな!

「なにっ!?」

オメガマンの漏らした驚きの声が、あたしの鼓膜に届く。へっ、いい気味だ。
あたしが何をしたかといえば、両手を伸ばして古泉の頭をつかんだだけだ。
もちろんそれだけで落下の衝撃がゼロになる訳じゃないが、もろに激突するよりはよっぽどましだろう。
私は悪いと思いつつも古泉の頭に重心をかけ、動きを止めたオメガマンを蹴り飛ばした。
さらに返す刀で、万太郎の頭に膝を落とす。さすがに効いたのか、古泉を痛めつけていた技が緩んだ。
その隙を突いて、古泉は拘束から完全に脱出。それを確認してから、あたしは目を白黒させている万太郎の奴も蹴飛ばしてやる。

「大丈夫か、古泉!」
「ええ、すいませんノーヴェさん。助かりました……」

あたしの呼びかけに、古泉は苦しそうな声で応えた。

「気にするなって。仲間を助けるのは当然だろ?」
「仲間、ですか……」

古泉の声が、明らかに苦しさとは違う理由で沈む。うーん、ここは熱い返事を期待してたんだが……。
そう上手くはいかないか。

「貴様ら、いつまでもおしゃべりしているとは余裕だな……!」

さらに古泉に何か言おうとしたあたしだが、それをオメガマンの声が遮る。見ると、奴は万太郎と肩を貸しあって立っていた。
そうだ、こっちが押されっぱなしだから忘れそうになってたけど、向こうは元からかなりのダメージを受けてたんだ。
このまま押し切れば、十分に勝てる! 中トロが『ノーヴェとオメガマンは早くリングから出て!』なんてプラカードを掲げているけど、ここは見て見ぬふりをしておく。

「古泉、行くぞ!」

古泉の返事を待たずに、あたしは突っ込む。フラフラのオメガマンを狙って、スライディングキック。
バランスを崩したところにもう一発……と思ったが、万太郎が支えになったせいで思ったほど崩せていなかった。
逆に反撃を喰らいそうになり、慌てて下がる。

「ノーヴェさん、一人で突っ込むのは無謀ですよ」
「いや、行くぞって言っただろ! ついて来いよ!」
「返事する前に突っ込んでいったじゃないですか!」
「だから、いつまでおしゃべりしているつもりだ貴様らは!」

あたしと古泉が軽い口論のように言い合っていると、オメガマンと万太郎が二人同時にドロップキックで突っ込んできた。
とっさに防御して直撃は防いだが、あたしも古泉も吹っ飛ばされてしまった。
けど、これはかえってチャンスだ。吹っ飛ばされた先にはロープがある。
この勢いをロープで反動に変えて、あいつらにお返しの一発を食らわせてやる!

「タイミング合わせろよ、古泉!」

古泉に声をかけるのとほぼ同時に、あたしはロープに身を預け後退のエネルギーを前進に変える。
脚の痛みをこらえながら、猛ダッシュしてさらに勢いを付ける。
そしてオメガマンの奴の顔面に、思いっきりダイヤモンドナックルを……あ、あれ? 空振り?

「いくらボロボロでも、そんな直線的な攻撃ぐらいは避けられるぜー!」

オメガマンの忌々しい声が、頭上から響く。クッ、上を取られた!?
あたしを飛び越したオメガマンは、背後に着地する。慌てて方向転換をしようとするが、それより早くオメガマンの腕があたしのお腹辺りをロックした。
横を見ると、古泉も万太郎にまったく同じ体勢に捉えられていた。あいつまで何やってるんだよ!
文句を言う間もなく、あたしの体は持ち上げられる。

『ダブルジャーマンスープレックスホールド!!』

そして気が付いた時には、私の上半身はキャンバスに叩きつけられていた。頭にも半端じゃない衝撃が来て、目の前を火花が飛ぶ。
ちくしょう、エアライナーで防御しようとしたのに、タイミングがつかめなかった……。

『1』『2』『3』

ぼやける視界の隅っこで、中トロがカウントを取っているのが見える。
あたしが……負ける? こんな奴に? ……いやだ。あたしは、勝ちたい!

「うあああああ!!」

特に意味はないけれど、とにかく大声を出して自分に気合いを入れる。よし、ちょっと気合い入った。
あたしはありったけの力を振り絞り、未だ私の体を押さえ込んでいたオメガマンの腕から脱出した。
古泉もあたしの雄叫びにつられたのか、万太郎のホールドから脱出に成功したみたいだ。

「よし! 今度こそぶっ飛……ばして……?」

なんだ? 体から力が抜けて……。おいおい、まさか今ので体が限界に来ちゃったのか?
冗談じゃない、これから反撃ってところで力尽きるなんて……。もう少しがんばれよ、あたし!
でもいくら気合いを入れても、もう力は抜ける一方だった。まともに動けないあたしの体は、オメガマンの奴にあっさりホールドされてしまう。

「ノーヴェさん!」

あたしを助けようと、古泉が動く。だがあいつもダメージは深刻らしく、万太郎にあっけなく捕まってしまった。

「万太郎、私たちも体力に余裕がない。次で決めるぞ!」
「……わかった」

万太郎が、古泉を逆さまにして肩に担ぐ。あたしもオメガマンに逆さまにされ、手足をがっちりと極められてしまった。
そして奴の背中の手が、あたしの体を包み込む。あたしの視界が、一気に狭まった。
直後、あたしは突然の浮遊感を感じた。どうやら、オメガマンがジャンプしたらしい。
このまま、あたしをキャンバスに叩きつけられる気だろうか。まずいな、下手すれば死ぬ。
あたしは残されたわずかな体力と気力を振り絞り、クッションにするためのエアライナーを作り上げる。
もっと余力があれば、他にいくらでも策は使えるんだけど……。今はこれが精一杯だ。
けど、これで最悪の事態は……。な、なんだ!? 急に落下速度が!?


「キン肉バスター!」
「Ωカタストロフ・ドロップ!」

『正悪合体! マッスル・カタストロフ・ドッキングーっ!』


万太郎とオメガマンの重なる声を聞いたのを最後に、あたしは意識を失ってしまった。


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It's a show time 悪魔将軍 See you again,hero!
ノーヴェ
古泉一樹
ジ・オメガマン
キン肉万太郎
中トトロ




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