※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

Nord Stream Pipeline -on stream- ◆5xPP7aGpCE



『ネオ・ゼクトール』


人間に生まれながらクロノスの超科学によって種の殻を打ち破った男。
男が目的とするのは復讐。

何の?
―――共に歩んできた仲間の仇

誰に対して?
―――アプトム

今攻撃しているのがその人?
―――違う、全くの他人だ

どうして関係の無い人を?
―――”褒美”を得る為、他者の命など復讐の前には知った事か

そうなんだ、でもうまく殺せるの?
―――殺せる、俺には死んでいった仲間達の力が有る!



自らの寿命と引き換えに男は力を得た。

超獣化兵エレゲンの電撃。
超獣化兵ダーゼルブの超高熱線。
超獣化兵ザンクルスの高周波ブレード。

そして、超獣化兵ガスターの生体ミサイル。

飛翔するゼクトールは眼下の森にそれを何発か放つ。
ミサイルは適切な間隔に広がり最小の弾数で最大の範囲が灼熱と爆風で満たされた。
落雷を凌ぐ轟音で大気が揺らぐ、焼け焦げた木片が煙を曳いて空を飛ぶ。

ゼクトールは空爆を一旦止めて旋回する、焼け焦げた地に動く影は無い。
が、あまりに破壊の惨状が酷すぎて少年の死体も見付からない。
最善なのは確認できる死だ、確信を持てない死で褒美を求める訳にはいかぬ。

(これ以上ミサイルの無駄遣いは出来んな、さすがに仕留めたとは思うが)

少年の足で移動できる範囲に満遍なくミサイルを降らせたのだ、確実に仕留める為とはいえ撃ち過ぎた。
死体は粉々になったかもしれないが問題は無い、要は確実性を積み増せば良い!

漆黒の巨体が高度を下げる、樹の枝を掠める程の低空飛行で森を縫う。
一瞬後、森に一つの太陽が出現した。
それはまるで溶鉱炉の白熱した金属、数千度の熱線が至近の生木をトーチへと変貌させる。
ヘーリオスの馬車が駆け抜けては生まれる炎の轍。

これが戦友ダーゼルブの力、超高熱。
破壊の跡を包む形で炎の環が出現する、息が有るかもしれない少年に逃れられない苦しみを与える為に。
炎が、そして濃密な煙が袋のネズミを追い詰める。

罠の口は、閉じた



       ※       ※       ※



海風が炎を煽る、好餌を得た獣の如く森を貪り尽くそうと荒れ狂う、火の粉が噴きあがり遠方にまで撒き散らされる。
その煙は天を突く柱状となって一気に空を黒くした。
こうなれば全てを燃やし尽くさぬ限り消えはしない。


ゼクトールは空中でホバリングしながらその様子を見ていた。
これ程火が広がるとは予想外、しかしすぐさま奇貨としてこれ利用すべきと判断する。

(これ程の火事だ、必ず興味を惹かれた奴が集う筈!)

その中にアプトムが居れば良し! 居なくても弱者は獲物に、強者が来たとしても飛行出来る己は逃げるのも容易い。
ゼクトールはここに二度目となる復讐の狼煙を上げた。


―――己の命を燃やし尽くす為に



       ※       ※       ※



ケロロは民家の窓からそれを見ていた。

(あそこに居るのが誰であろうと……これ以上人が死ぬのは御免であります!)

一時の混乱はなんとか脱した、マッハキャリバーの話によって不完全ながら状況が掴めた。
ズーマの襲撃と撃退の事を、自らへの献身的な治療によってなのはが体力も魔力も使い果たした事を、最後に命を助けてくれたカナブンの事を。
そして―――サツキが死んだ事を。

『……Ms.高町を責めないでください、全てはMr.ケロロの状態を気遣っての事です』

伝えたのはマッハキャリバーの独断だった。
放送も近付きケロロがサツキの死を知るのは時間の問題、そしてなにより今必要なのは正確な情報だというのがデバイスが導き出した答え。

「わかってるであります、ヴ……グスッ!! 悲しいですが高町殿は何も悪くないであります! ズズッ……」

振り返る事はしなかった。
これでもケロロは軍人だ、今すべきなのは悲しみに暮れる事ではないと解っている。
なのははまだ臥せっていた、自分の所為でこうなったのだと思うと少しでも休ませてやりたい。

窓の外、目と鼻の先で森が燃えている。
再び目の前で命が失われようとしていた。
冬月かアスカか見知らぬ誰かか―――誰であろうとケロロには関係ない、襲われている弱者は今度こそ助ける。

「それでは我輩は行ってくるであります!」

なのはに黙って出て行くのは心苦しいがマッハキャリバーに弁解を頼んである。
だがその足は突然の声によって止められた。

「駄目だよ忘れ物しちゃ……。マッハキャリバー、ケロロの事をお願い」

何時の間に起きたのだろう、振り向くとなのはがマッハキャリバーを差し出していた。
クマの出来た目で、それでもにっこりと笑う。

彼女もまた軍人だった。
ケロロの心中を察し、彼を信頼しているからこそ任せると決めた。

なのはとケロロの目と目が合う、それだけで互いの意志が伝わる。
二人の瞳に有るのは強い意志。
それ以上の必要は無かった、サツキの事も治療の事もこれで終わった。

マッハキャリバーが素直に取られる、そして送り出す者として背筋を伸ばして敬礼する。
―――行ってらっしゃい、でも死ぬなんて許さないよ。

「了解であります! ではこれより偵察及び人命救助作戦を遂行するであります!」

直立不動の体勢でケロロも右手を上げて敬礼する。
―――約束するであります、必ず戻ってくるであります。


一軒の民家の窓から緑の影か飛び出した。
すぐ他の建物の中に姿が消える。
上空の目が届かぬ場所を選んでたった一人による作戦が開始された。


もう誰も死なせない為に。




       ※       ※       ※



立ち上る煙は島の大半から見る事が出来た。
南部だけは山に遮られた、しかし市街地ではどの場所でも認められた。
そして同時に多くの参加者に対してそこで何かが起こっている事を伝えた。

アプトムとネブラは高校でそれを見た。
彼らが訪れた時には既に無人、荒れてはいたが求める深町晶の手掛かりは無かった。
代わりに消火器や砲丸等、少しでも使えそうな道具を集めている時に異変は起きた。

『あそこには多くの者が向かうだろう……君はどうするかね?』

かりそめのパートナーが問う、アプトムは迷わず答える。

「行くぞネブラ、深町が見ていれば奴は必ず現れる。危険を承知で出向く価値はある」

言い終わらぬうちから男の肉体は変形を始めていた。
ガイバーをかたどった歪な怪人に姿を変える、これで移動速度は大幅に上がる。
ネブラスーツはそのままだ、外見は黒の胴体に緑の四肢というツートンカラーという奇妙さ。

『私としても"闇の者"(ダークレイス)と戦うまたとない機会だ、それなりに協力しよう』

ネブラにも反対する理由は無い、深町晶については何の感情も持ってないが自身が狙う”敵”と出会える可能性は有る。
ならばもはや高校に留まる必要も無い。
しかし空は飛べない、さすがに目立ち過ぎてしまう。

故にアプトムは駆ける。
ギュオー、晶、冬月といったそれぞれ目的の異なる探し人と出会う為に。



               ※



リナ=インバースとドロロ兵長は高校を迂回中にそれを見た。
しばし足を止める、煙が上ってる以外には何も見えない。

「……今のあたし達には関係ないか、このまま遊園地に向かうわよ」
「そうでござるな」

だが直ぐに二人は歩みを再会する、待ち人との約束を果たす為に。

「あたし達だけなら考えたんだけどさー、見たところ遠いし行って戻るだけでも相当時間が掛かるわよね」
「確かに約束に遅れては拙者達の信用に関わるでござるな。少ない仲間は大事にせねばならぬでござる」

うんうんと頷き合いながらお互い「見なかった事にしよう」「男児たる者、約束を裏切れぬ」と煙を風景の一部として脳内処理する。
誰かが危険な目に遭っている可能性は有る、しかしその事を気にするあまり現実的な判断が出来なくなる程二人はお人好しでもなかった。

「じゃ、向こうは向こうあたしはあたしで動くとしますか」

そのまま時間を掛けて二人は高校を遣り過ごした。



               ※



惣流・アスカ・ラングレーは街角でしばしの休息を取っていた時にそれを見た。
確かめるとサツキやケロロを殺した公民館がある辺り、そこで彼女は考える。

「また化け物の仕業ね。方向からしてなのはかその仲間の仕業? 死んじゃえ!!」

彼女は今まで出会った殆どの参加者が化け物かその仲間として処理していた。
ならあの煙もまた”化け物”が絡んでいるのだろうと決め付ける。

―――でも化け物はなんで火事なんて起こしたのよ?

嫌悪はするが無視も出来ない、アスカは苛立ちながらも自然と頭を巡らせてしまう。

「落ち着くのよアスカ、可能性が高いのはあそこで戦闘があったという事。つまり―――化け物と『人間』が戦っている!」

何ですぐに気付かなかったのよ、とパアッと笑顔を浮かべて彼女は立ち上がった。
あそこにはなのはやタママといった化け物が居る、その連中が戦っているという事はその相手は間違いなく人間だろうと結論付ける。

街が化け物だらけなら『人間』の仲間もどこかに偏ってしまったしても不思議でない、その人たちがようやく反撃を始めたんだ。
彼女はそんな事を考えた。

唯一の武器であるナイフを突き出して燃えている方角へ向ける。

「アハハハハハハハハハハハハハハッ!! ざまあみろ化け物共! 所詮人間様には勝てっこないのよ!」

脳裏に浮かぶのは間一髪でインディアンから主人公を助けに来てくれる西部劇の騎兵隊。
合流し一緒に化け物を殺してゆく光景を思い浮かべると自然と笑みがこぼれる。
そしてアスカはバッグを掴んで駆け出した。


―――待ってて加持さん、すぐ助けてあげるから。




               ※




ズーマは警察署からそれを見た。
目的はネブラ型のアイテムを探す事、しかし建物内部には何も残ってはいなかった。
先客が居たか、と舌打ちしながら外に出た所で煙に気付く。

すぐさま引き返して屋上に上る、森と住宅地の端が盛んに炎を上げてる。
僅かな時間でここまでの破壊を行えるのだ、相当な実力者があそこに居ると判断する。

だが、暗殺者としてはまたと無い機会でもある。
何も実力者そのものを狙う必要も無い、あの場から逃げてくる弱者を一人ぐらいは狙えるだろう。
それに実力者同士の潰し合いなら最後の最後に漁夫の利を狙える―――運が良ければだが。

「無視はしない、当分は様子見をさせてもらうか」

方針は決まった、そのまま軽やかに屋上を飛び降りる。
影の様に敷地から暗殺者が走り去る。

まずは遠巻きに機会を窺わせてもらう。
あの煙を見て集まるのは一人や二人ではない筈、集結後の混乱が絶好の狙い目となるだろう。
その為には弱者を見つけても泳がせておく。


―――最後に勝つのはこのズーマだ。



               ※



ハムと夏子はB-7にある喫茶店のガラス越しにそれを見ていた。
戦闘の痕跡に点々と続く血痕を見つけて慎重に侵入したのが少し前。
人が居たのはかなり前だったのだろう、席は全て冷たくなっていた。
代わりに見つけたのが壁一面に書き殴られた巨大な文面。

『うとたまなこりふうのぞうえたまつまりあのなたまうがつあたゆきるばうにいたるぞ
 ともそうはふおまきこおいたこま

どうやら仲間に宛てたものらしい事は下に書かれた追記で解った。

 『仲間のことは気にしないで
  コサッチへ』

もし壁の文字だけを見ていたのなら異世界の呪術かと疑っていたかもしれない。
罠ならわざわざ暗号にしないだろうと二人で少し考えみたのだが「ムハ~、お手上げですね」と匙を投げたのがつい先程。

「恐らく下の追記にヒントが有ると思うのですが……手掛かりが乏しすぎます」

ハムが両手を上げた直後に落雷にも勝る爆発音でガラスが震えた。
すぐに隠れた二人が窓越しに見たのは森を攻撃する黒い飛行物体の姿、このまま潜もうという考えが視線だけで交わされた。
そして事態が火災発生から延焼中にどんどんと悪化する状況を見せられて今に至る。

「外に出たら空からは丸見え、あの飛行物体が見えなくなるまでここに居るしかないと判断するわ」

それが夏子の判断だった。
あの時と状況が似ていたが今回は敵の姿がはっきりしているので気付かれない限り奇襲は心配しなくて良い。

「今回は我輩も賛成ですな~、嵐は過ぎ去るのを待つべきです」

ハムもそれに賛同した、今無理して外に出る理由は無い。
第一、店の外はメインストリートで非常に見通しが良い
二人はこのまま喫茶店に居座る事を決意した。

「ところで、さっきからキョロキョロしてるけど何か見えるのかしら?」
「いや~、お人好しなマンタさんが姿を現さないかと思いまして」


―――現在、メインストリートに人影無し



               ※



話は少し前に遡る、朝倉涼子、キョンの妹、ヴィヴィオは早くも探し人を見つける事が出来た。
―――無言の死体としててはあるが。


「……喉を鋭利な刃物で一撃、か。状況からしてアスカの仕業とは考え難いわね」

簡単な検死を終えて私は立ち上がる。
血溜まりの中に小砂は倒れていた、乾き具合からいって死亡推定時刻は学校を離れた直後だろう。
深々と切り裂かれた首が犯人の腕力を物語っている、小砂の実力は知らないけど抵抗した様子がまるで無い事から犯人の実力も解る。

(恐らく戦闘の、ううん殺しのプロである可能性があるわね……全くもって厄介だわ)

小砂の表情に苦痛は無かった、抵抗どころか苦しむ間も無く死んだって事か。
あの支離滅裂なアスカには絶対に不可能なやり方だ。

さすがにこれ以上は解らない、犯人についての思考はひとまず打ち切る。
解っているのは付近には危険人物が確実に二人居る事か。
チラッと後ろを向いているヴィヴィオちゃんと横で小砂の死体を見下ろしている妹ちゃんを見やる。

私は右手の機械に視線を移す、拾い上げた直後から情報改変を試みているものだ。
軽い故障なら直っている筈、試しにスイッチを入れるがやはり反応は無しか。
もう少し調べる、裏蓋を開くとバッテリーがあった―――あら?

見覚えの有る形、バッグから使い道の無かった支給品を取り出して比べる。
形状、型番、端子から重量に至るまで完全に一致。
直ぐに中身を交換してスイッチON、液晶が光る―――ビンゴ、大正解ね。

「朝倉さん、それって何? ゲーム機みたいだけど」

妹ちゃんも興味深そうに覗き込む、画面にはマス目に光点が五つか、これは……

「ゲーム機とは違うわね。妹ちゃんここを動かないでくれる?」

予感めいたものがして私は二人からゆっくり離れる。
画面を注視すると光点が四つ移動してた、一つだけが真ん中から動かない。

「ヴィヴィオちゃ~~ん、こっちに来て♪」

手招きするとヴィヴィオちゃんが不思議そうな顔してとてとて私に向かってくる。
うん、やっぱり可愛いわ。
予想通りに光点の一つが真ん中の光点に向かって動いてた、これは間違いないかな?

探知機―――デバイスより広範囲かつ一目瞭然に周辺を警戒可能なガジェット。
元の持ち主は使用不能になったと思い込んで廃棄した、でも間違いだったわね。
ヴィヴィオちゃんにお礼を言うと頭をなでなでする、うん最高。
さて、後は―――

「涼子お姉ちゃん、小砂さんあのままだと可哀想だよ……」

わかってる、死体をこのままにしておくつもりは無い。
―――ヴィヴィオちゃんには悪いけど別の意味で、ね。


私は狭い路地裏に死体を移動させた。
隠すためだ、ヴィヴィオちゃんの視界から。
必要なのは首輪のサンプル、ナイフを首筋に当てたその時だ。

「朝倉さん」

突然後ろから声がした。
びっくりしたわよ妹ちゃん!

「それ……私にやらせてよ。でないとヴィヴィオちゃんに教えるよ?」

思い詰めた表情をしてた、こりゃ本気だ。
仇が既に死んでいて悔しいのかしら? ま……好きにさせとかないと収まらないか。
私は黙ってナイフを渡した。

「うんしょうんしょ……上手く切れないよ朝倉さん」
「ほら、ここが骨の隙間。刃を間に入れて、こじ開ける様に動かしてみて」

気合いとは裏腹に妹ちゃんは七区八苦していた。
これがお料理の手伝いとかなら微笑ましい光景なんだけどね。

「う~ん、えいっ!」

掛け声と共にブッツリと小砂の頭が分離した。
コロコロと転がるそれには目もくれない、目当ての首輪をそっと抜き取る。
これで解除に一歩ぐらいは近付いたか。

「気が済んだかしら、ゲンキ君しか見てない妹ちゃん?」

小砂の遺品にあったシーツで死体を隠す、お供え物として人形も置いておく。
これは唯の有機的物体だ、けどあの根暗女みたいにドライにも割り切れない。

「ううん、やっぱり自分の手で殺さないとダメ……全然仇を討った気分にならないよ」

納得出来ない顔して首を振る妹ちゃん、たぶんそれをやっても空しいだけと思うわよ。
ま、私としてはやる気ある状態なら構わないか。

「涼子お姉ちゃん、妹さん、あれ……向こうに煙が上がってる」

冷ややかな気持ちで路地を出た私が見たのは空を指差すヴィヴィオちゃんと立ち上る煙だった。
すぐに探知機を確認する、端の光点が高速で移動を始めていた。

「……かなり大きな火災みたいね、さすがにここからじゃ状況は理解できないか」

今度は反対の端に別の光点が現れる、こちらも早い。
進路からして遭遇はしない、問題は私達がどう動くか。
どうやら状況はアスカ一人に拘ってる場合じゃなさそうね。

一つは出来るだけ遠くに離れる。
探知機を見る限り興味を示す参加者が最低二人居る、そのどちらかが危険人物でも不思議はない。
言い方を変えれば安全策、ローリスクノーリターン。二人を守るだけならそれで良し。

では私達が現場に向かったとしてリスクに見合うリターンは果たして期待できるのか?
答えはYES、ゼロスさんやキン肉マンの他に古泉くん達がやってくる可能性はそれなりに有る。
あれだけの煙だ、きっと島の大半から見えているでしょうしね。

そして心強いのは探知機の存在だ、身を隠したまま周囲の動きが解るのは非常に大きな大きなアドバンテージ。
……心が傾いてきたわ。

少し考えに没頭し過ぎたらしい、気が付けばヴィヴィオちゃんも妹ちゃんもメイド服のスカートをキュッと握っていた。
怖いのは仕方ないか―――

「涼子お姉ちゃん、私……あそこに行ってみたい」
「私も賛成だよ、行かせて朝倉さん」

前言撤回、二人共服を引っ張っているのが催促だとは!
ま、妹ちゃんの理由は見当が付く、誰かに殺される前に自分の手でアスカを殺したいって事でしょうね。
ヴィヴィオちゃんはどうなのかしら?

「なのはママやスバルさんは人を助けようとして絶対あそこに来ると思う、だから行ってみたいの」

確かに善人なら来てもおかしくないでしょうね、でも絶対じゃないわ。
会いたいって気持ちは解らなくもないけど第一に自分の事を考えるべきじゃない?

「言うまでも無いけど……危険よ」

あえて冷たい言い方をする、生半可な気持ちで言っているのだとしたら自分勝手もいいところだ。
でもヴィヴィオちゃんは怯まず一途にお願いしてきた。

「それでも行きたい……」

そんな上目遣いで、しかも瞳を潤ませながら言われたら断れる? しかも妹ちゃんとのダブル攻撃。
―――うん、それ無理。

「解ったわ、行くだけ行ってみるわよ」

はあ……自分がこんなに子供に弱いなんて思わなかったな。
ま、私もこの子達の為に何かしてあげたいって思ってたしね。
こんなにママや知り合いに会いたがってるんだ、お手伝いするのも悪くないか。

「ただし! 危なくなったらすぐに逃げる事、それが条件よ」

さすがにこれだけは譲れない、いざという時は腕ずくで連れ戻すつもりだ。
私はもう一度煙を見上げた、勢いが更に増しているのは気のせいじゃない。
虎穴に入らずんば虎子を得ず……ね、いい言葉だわ。


―――さあ、行くとしますか




               ※



「……ヴェさん、ノーヴェさん」

あたしを呼ぶ声が聞こえる、でも身体は重くて動かせない。
ぼんやりと目を開ける、空が紅くなっていた。

「起きましたかノーヴェさん。彼がずっと心配してましたよ、安心させてあげて下さい」

頭の横に中トロがいた、『大丈夫?』なんてプラカードを掲げてる。
そっか、あたしリングで休んでいたら何時の間にか寝ちまったらしい。
……何か夢を見てた気もするけどまあいいか。

「あたしは大丈夫、ちょっと疲れちまっただけだ。勝てなくてごめんな中トロ」

頭を撫でてやると『気にしないで!』とプラカードの文字が変わった、ホント不思議な奴だ。
そして喋れない中トロに代わって起こしてくれた古泉もありがとな。

あたしと古泉、そしてオメガマンは頭を向け合う形でリングに大の字になっている。
将軍はコーナーで夕日を浴びながら一人佇んでいた、あれがダンディズムって奴なのか? 何か渋い。
そのまま静かに寝そべって風を浴びていると自然と試合の事が浮かんでくる。

……あたしは負けたんだ。
思い出すとまた悔しくなってきた、思わず拳を握り締める。
ダイヤモンドナックルに写るのは無様なあたしの姿、気のせいか輝きまで落ちて見える。

将軍の言う通り相手が重傷だからって油断した?
……否定できない。あたしは得意になっていた、誤魔化す事なんてできっこない!

どうしようもなく自分に腹が立った、悔しさで目頭が熱くなる。
中トロはそんなあたしを励ましてくれている、お前に見せたかったのはあんなあたしなんかじゃない!
でも泣くもんか、負けてその上泣くなんてどうしよもなく惨めじゃないかよ……

景色が滲みだした、あたしは思わず腕を上げて目元を隠す。
何やってんだ、バレバレじゃないかあたし……
二度とこんな想いなんてしたくない! 

「悔しいけど認める。オメガマン、あんたは強いよ。あたしなんかよりずっと強い!」

同じく寝そべっているオメガマンに向けて言う。
将軍に負けたからってあたしにも勝てるなんて勘違いしちまった、でもこいつには本物の実力があった。
だから謝る、そうしなけりゃあたしは変われない。

「クォクォクォーーーッ、この状況で油断する奴は大間抜けよ~~~」

高笑いするオメガマン、今更だし腹も立たなかった。
でもなんか自嘲気味に聞こえる、将軍に負けた事でも思い出してんのか?

「……大方油断して痛い目にあった、それも複数回。違いますか?」

古泉がツッコむと同時に高笑いが止んだ、こりゃど真ん中って事だよな。
思わず噴出しちまった、こいつもあたしと同じなんだ。

「ケッ、一流の超人というものは失敗を繰り返しながらも成長するもの……何度もブザマな姿は晒せんわ~~!」

正論だけど負け惜しみっぽく聞こえる、中トロも『やーいやーい』なんてプラカード掲げてる。
見えないけど古泉も笑ってる気がする。

「おやおや、あの時俺の姿を見て逃げた方の言葉とは思えませんね」
「フン、あれは冷静に状況を判断したまでの事よ~~~っ!!」

掛け合いの中で何時の間にか涙は止まっていた、これはオメガマンに助けられたって事になるのかな?
もっと色んな事を聞きたくなった。

「オメガマンは何であたしと戦ったんだ? 古泉を万太郎に相手させたのはあたしが舐められてるんだって思ったんだけどさ」

あの時のオメガマンは女だからって油断は全然しなかった。
古泉の方が強そうに見えたからなんて単純な理由じゃないのかな?

「苦い過去よ……朝方お前程の女機械超人に不覚をとった、女相手に二度敗北を味わわされるのも情けないわ~~!!」
「女だって! そいつの名は?」

あたしの知る限り機械女なんて三人しかいない、まさか!

「スバルナカジマン、それが奴の名よ」

やっぱり! タイプゼロセカンド!
あいつがオメガマンと戦って―――勝った?

「スバルナカジマンは強かったぜ~~~! 同じ急造タッグでもコンビネーションの出来はお前達と段違いよ~~~!!」

……二度も負けた気分になる、オメガマンの言ってる事はきっと正しい。
タイプゼロセカンドとあたし。

朝って事は出会ったばかりのタッグでベストのオメガマンに勝ったタイプゼロセカンド。
あたしは―――重傷のオメガマン相手に思い上がって空回りして、そして負けた。

「クォクォクォ、このオメガマンが戦士として教えてやろう。スバルナカジマンは戦いから貪欲に学んで成長した。
 対する小娘は戦う前から相手は弱いと油断して自分を見失った。どちらが上か超人ならずとも解るよな~~~っ!!」

ギリッと歯を食いしばる。
さっきなんかよりずっと悔しい、今のままじゃタイプゼロセカンドに勝てない!

「クォークォックォッ、その悔しさゆめゆめ忘れぬ事よーーーっ!!」

唇から血が出てるけどそんな事はどうでもいい!
あいつとあたし、遺伝子は共通の筈なのに!

「将軍、後でまた教えてくれ! あたし……もうこんな思いしたくない!」

悔しくてたらない、今のあたしじゃまだタイプゼロ・セカンドに勝てない。
もっともっと強くなりたい!

「あの女に雪辱を果たしたいのは俺も同じ。その為なら特訓の協力程度してやるぜ~~~!」
「……やけに親切なんですね。痛い目に遭って角が取れましたか?」

痛む身体をそれでも起こす、古泉もオメガマンも一緒に起きた。

「フン、俺にもプライドはある。このオメガマンの真の実力を解らせてその態度を変えてやろうとしてるまでの事。決してお前らの為などではないわ~~~っ!」

バンッと掌を打ち合わせる、なんか憎めない奴だな。
ま、何時までも一緒って訳にもいかないと思うけどよろしくな。

「フフフフ、ノーヴェよ、お前には人の結び付きを強める才が有るようだな」

今まで黙っていた将軍がそんな事言う。
褒めたってまだエアライナーは出ないからな。

「って! 何だよありゃ!?」

思わず声を上げちまった、街のある方で煙が上がりだしたじゃないかよ。
古泉やオメガマンもそっちの方を注目する、中トロにはあたしが腕に持って見せてやる。

「距離は遠い、騒がずとも直接の影響は無い」

将軍は真っ先に気付いていた筈だ、でも当然だって顔してる。
……そっか、アプトムやゼクトールを街に向かわせたんだから何時かはこうなるよな。

あたしは中トロを抱き締めたまま黙って煙を見続けた。





時系列順で読む


投下順で読む



Another Age 高町なのは Nord Stream Pipeline -blow out-
ケロロ軍曹
ネオ・ゼクトール
冬月コウゾウ
学校を出よう! キョンの妹
朝倉涼子
ヴィヴィオ
心と口と行いと生きざまもて(後編) アプトム
Scars of the War(後編) 惣流・アスカ・ラングレー
ラドック=ランザード(ズーマ)
情報を制する者はゲームを制す?(後編) 川口夏子
ハム
リナ=インバース Nord Stream Pipeline -Disaster-
ドロロ兵長
See you again,hero! 悪魔将軍
ノーヴェ
古泉一樹
ジ・オメガマン
中トトロ




| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー