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蜘蛛は何処に消えた? ◆5xPP7aGpCE



「ギュギュッチー、ボクを選んでくれてありがとうですぅー!」

タママが併走するギュオーにそんな言葉を投げかける。
パッチリした瞳に小柄な身体、見た目には無害なこのケロン人―――中は真っ黒!

(メイちゃんの仇は絶対楽に殺さないですぅ! 後悔させて後悔させて心底反省する程痛めつけてから殺すですぅ!)

彼の脳内で恐ろしい光景が繰り広げられる、もし他人が垣間見ればトラウマどころかショック死しかねないスプラッタのエンドレス。
それは妄想でも強がりでも無い、実際に行う為のイメージトレーニングである。彼は本気も本気、大マジで犯人を処刑するつもりなのだ。

未遂に終わったが―――先程気に入らないという理由だけで加持に延々と暴力を振るい殺そうとした事実が彼の恐ろしさを物語っている。
現時点での殺害スコアはゼロであるものの、それは今まで遭遇した相手が友好的だったからにすぎない。
彼が本気になれば優勝を狙う事も不可能では無い!

「気にする事は無い、向こうは居場所がハッキリしておるがこちらは大まかな行き先しか解らん……どちらに助けが必要かは一目瞭然と思わんかね?」

そして実際に加持を殺したのがこのリヒャルト・ギュオー、彼も分類すれば悪人のカテゴリーに入るだろう。
私欲の為にクロノスの頂点を簒奪せんとした彼はこの島でも変わらず頂点を目指す、即ち優勝狙い。
タママやウォーズマンに同行しているのもその力を利用せんとの下心あっての事である、時が来れば始末する。

二人はお互いを腹黒と知りつつ今は協力関係にあった、利害は一致している、どちらにも争う理由は無い。
草壁メイ殺害犯を追うという目的の元に両者は西を目指す、だが腹黒の言葉を額面通りに受け取ってはいけない。

(フフフ……今コテージに向かえば確実に危険な奴と関わらねばならぬ。しかしこちらなら犯人は遠くに逃げており危険は少ない、徒労に終わろうが安全に比べれば安いものだ)

元より草壁メイの敵討ちなど興味は無い、より自分に得になりそうな選択をしたというだけである。
彼自身の実力は参加者の中でもトップクラス、しかし一度重傷を負ったことで慎重に行動しようと決めていた。

ならどちらにも行かず一人神社で帰りを待つという選択肢は無かったのか?
ギュオーもそれを考えなかった訳ではない、ただ愚策として真っ先に却下した。
何もしない事は確実に二人の心証を悪くするだろう、今回限りの身の安全と引き換えに信頼を損なうのはデメリットが大きすぎる。

(どうせ奴が逃げたのは何時間も前、探すフリをして施設の探索でもさせてもらうとしよう)

ギュオーが今迄見た島の施設は神社とレストランのみ、どちらも首輪解析に繋がる手掛かりや道具一つ見付からなかった。
せめて市街地に行く前にあと一箇所程度調べておきたい、この機会を利用しようと考える。

「タマタマタマタマタマーーーッ!! それでは飛ばすですよーーっ!!」

そんな彼の本心に気付いているのか不明だが遅れを取り戻すべく腹黒ケロン人が加速する。
ここには邪魔な車など存在しない、広い車道を独占して二人は駆ける。

(人間風情でボクの足から逃げられるとは思わない事ですぅ! すぐ追いついてみせるですぅ!)
(ケロン人の一兵卒でこの脚力……やはり侮れんな、降臨者との関係も機を見て訊ねるとしよう)

タママは走る走る、センターラインの上を仇に早く追いつこうと風の様に疾走する。
ギュオーもそれに苦区も無く付いてゆく、さすがは腐っても獣神将。

緑豊かな丘陵を左手、こんもりと盛り上がる砂丘を右手に見ながら一向にペースを落とさない。
この二人、身体能力だけならかなりのものであるが見ていてやたら不安なのは気のせいか。


―――たぶん間違ってない


腹黒ランナーが過ぎ去って暫くした砂丘で突然砂が盛り上がる。
地中に何者かが隠れていたのだ、男は二人か戻ってこない事をそのまま動かずに確認する。

「……どうや行っちまったようだな。それにしてもあんな派手な格好で動くとはね~、よっぽどの馬鹿だなアイツは」

赤は遠距離からでも非常に目立つ、緑の背景となれば尚更目立つ。
タママ一人だったのたら結果は違っていたかもしれない、しかしより早く二人を発見したのは雨蜘蛛。
只ならぬ速度で向かってくる不審者に関わる気にはとてもなれず砂に潜り込んでやり過ごしたのだった。

「う~、まだ気持ち悪い。あの緑の場所で休むか……」

まあ、実際には体調が優れない以上どんな相手でも接触する気分にはなれなかったろうが。
雨蜘蛛はそのまま道路を素早く横断して森へと消えた。


―――これでタママ本人が知る事無く接触の機会は過ぎ去ったのだった。




               ※       




「左に行けば博物館、右はやや遠いが人が集まりそうなモールか。どうするかねタママ君?」

ここはI-8、Y字路の前で標識を見ながらギュオーが訊ねる。
休み無く駆けて来たにも関わらず殆ど息は乱れてない、タママも同じくケロリとしてる。
手掛かりの殆ど無い中、犯人が何処に行ったか考える。

「う~ん、博物館の方が近いですけどぉ……海から遠いですしねぇ。モールは遠いですけどぉ、途中の道路は海沿いで奴が居そうですしぃ……迷いますねぇ」

犯人は海を東に移動したとウォーズマンは言っていた。
E-10に禁止エリアが有る為既に何処かへ上陸したと考えるのが自然、そして行き先となりえるのがこの二つだ。

ニアミスが有ったとも知らずに相談する二人、まあ彼らも雨蜘蛛がそんな近くに居るとは思わなかったので仕方無いのだが。
所謂灯台下暗しという奴である。

「ならば二手に別れるとしよう、私は博物館でタママ君がモールだ。採掘場で待ち合わせして神社に戻る、どうだね?」

ギュオーが左の道路に位置取りしながらタママに提案する。
相談の形をとってはいるが今にも走り出さんとする体勢、実質的にYesかNoの二択のみ。
何か思う所が有るのか彼はそちらに行きたいらしい、果たしてタママはどう答える?

「わかったですぅ! ギュギュッチー、もし奴が見つかったら生かして採掘場に連れてくるですぅ!」

タママはあっさりと了承する、彼はとにかく早く犯人に追い付きたかった。
提案に含みがあろうと気にしてる暇は無い、そっちは任せるですぅと言い残すと砲弾の様な勢いで右の道路へ走り去った。
その後ろ姿を見送ってギュオーはニヤリと笑った、ようやく訪れた自由時間ともなれば喜んで当然だろう。

(反論された場合の言い訳も用意していたが必要は無かったな、せいぜい頑張ってくれたまえタママ君)

せめて犯人がそっちに居る事を祈る程度はしてやろう、そしてギュオーは犯人探しを頭の隅に追いやった。
好き勝手出来る時間は一秒たりとも無駄にはできん、善は急げとばかりに先程以上の速度で駆ける。

「博物館……いかにも首輪や主催者に繋がる何かが得られそうな場所だ、それに移動距離も短く体力の消耗も抑えられる」

体力の節約と情報の収集、一石二鳥だとしたり顔のギュオー。
モール行きも現地調達の魅力は有る、しかし物品と知識を比べた場合ギュオーが欲するのは知識だ。
主催者がわざわざ用意した博物館という見せる為の施設、そこに如何なる展示があるのか?
ギュオーはそれを確かめないまま市街地を目指すつもりは無かった。



               ※       



右は海岸、左は森。
ギョロォ~っと双眸を恐ろしく見開いてタママ二等兵は海岸沿いの道路を駆けてゆく。
視線を隈なく巡らせながら人影や上陸の痕跡を探す、肉体は忙しいが先程より頭の働きに余裕が出来る、するとあの時のギュオーの態度が何となく気になった。

「ひょっとして、ギュギュッチは博物館が気になるのですかぁ? それはそれで構いませんけどぉ」

思い出せばギュオーはそちら行きの道路を気にしていた、何か探し物でもあるのかもしれない。
だからと言ってタママが不利益を受ける訳でも無い、提案は納得できるものだったしわざわざ引き返す程の事でも無い。

「犯人が見付かるならそんな事どうだっていいですぅ! オラオラオラオラオラーーーッ!!!」

単純に犯人がそっちに居る可能性が高いと踏んだだけかもしれないと解釈してタママは一人納得する。
そして一層ターボを効かせながら海岸道路を突き進んでいった。



               ※       



「これはこれは……誰の仕業か知らんが見事な暴れぶりだな」

博物館の敷地に足を踏み入れたギュオーが見た光景、それは一面に広がる破壊の跡だった。
緑豊かな芝生は大部分が焼け野原と化し、その真ん中に黒焦げの残骸と化したリングが僅かに煙を上げている。
近付いて手を当ててみるがさほど熱は感じられない、どうやら鎮火してかなりの時間が経過しているらしい。
一方で博物館の建物については外見の異常は見られない、他人が争おうがどうでも良いが収蔵品に被害が及んでない事をギュオーは祈った。

中に入る前に一応リングの検分もしておく、戦闘は終わってるとはいえ遺留品が無いとも限らない。
直ぐにそれは見付かった、リングの成れの果てに首無しの死体が埋もれていたのだ。

「首輪を回収したか、やはり考える事は皆同じらしい。血の固まり具合からして死亡は早朝、メイ殺しの犯人とは別人と見るのが妥当だな」

詳細名簿を見ていた為ガイシャの身元はすぐに解った。
アシュラマン―――六本の腕を持つ参加者という特徴は間違えようがない。
冷静に検死を終えてギュオーは解った事を整理する。

見たところ別の死体は埋まっていない、何人が戦ったのか不明だが犠牲者は彼一人と考えるのが自然だろう。
その犯人はウォーズマンに匹敵する強者、一人或いは複数でアシュラマンを殺害し首輪を持ち去った。
死体の状態や残骸の熱からして殺害時間はかなり前、いつまでも近くに留まっているとは考えにくい。
こんな場所にリングが設置されていた理由については考えるだけ無駄だろう、そもそも殺し合いの目的すら不明なのだ。

「危ない奴は予想以上に多い……やはりウォーズマン達との信頼を保つに越した事は無い」

新たな強者の存在を感じ、ますます集団で行動すべきだなという思いをギュオーは強くする。
一歩間違えれば自分がこうなっていたかもしれないのだ、暫くは強者同士手を組んでゆくしかないだろう。
そう結論付けてギュオーはリングを後にした。

元より本命は博物館、哀れなアシュラマンの死体をそのままにしておく事に一切躊躇いは無い。
残された物言わぬ抜け殻は朽ち果てるのをただ待つのみだった。



               ※       



「『解剖! アリゾナ総本部』『貴方も一日でムキムキマンに! クロノス調整槽のひみつ』か、うぬぬ……」

メサに偽装された総本部を縦割りした模型に人がすっぽりと入る調整槽。
念入りに入り口から様子を窺って人影が無い事を確認したギュオーが発見したのはそんな展示物だった。
十二神将の一人である彼にとってはその真贋を見分けるのは容易い―――その結論は嘘偽り無い本物。

主催者の連中はクロノスの機密すら容易く奪える、その事実を突きつけられギュオーは一つの説を考える。
―――この展示物はお前達の事なら何でも知っているぞ、という警告ではないか?

この会場から脱出したとしても隠れる場所は何処にも無い、そう思わせるのも目的の一つという訳だ。
しかし何一つ証拠は無い、ここは展示に嘘が無い事だけを考えるべきだとギュオーは雑念を払う。

ホールを見渡せば隅まで展示された彼にとって9つもの異世界の物品と情報。
名簿の裏をメモにしてギュオーは熱心に観察する。


―――当然ながらメイ殺しの犯人など彼の頭からは消えていた。




               ※       



改めて場面が変わりこちらはタママ二等兵。
犯人を発見できないまま海岸沿いに北上した結果、辿り着いたのは終着点とも言えるショッピングモールだった。
ここまで手掛かり無し、約束の時間まで採掘場に向かわなければならない事を考えるとモールが最後の捜索場所になる。

奴はあそこに居ますかぁと意気込んだのも束の間、ただならぬ気配を感じて咄嗟に茂みに身を潜めた。
タママには解る、これは腹黒などとは次元の違う純粋な漆黒のオーラ。

(な、なんですかぁ!? このボクに冷や汗を流させるなんてぇ!)

生物的本能がモールへ近付く危険を告げていた、そのまま気配を消していると人影が見えた。
距離は離れていたが判別に不自由しない程姿を現した人物は特徴的だった。

最初に出てきたのは銀色の巨人、彼にヘッドロック状態で拘束されたホッケーマスクの男。
禍々しいオーラはその巨人が放っていた、先程より弱まっているがタママの掌がじっとりと汗ばむ。

遅れて別の人影が現れる。
今度は気絶した男を背負ったまっくろくろすけ、クロエの知り合いですかねぇと何となく思った。
背負われている男は体格の良いマッチョだったが戦闘の結果か酷く傷だらけだった。

そして最後、ボディースーツを着た赤毛の少女がその後をついていく。
瓦礫が踏まれたのか何かが捻じ曲がるような音が時折聴こえる。

(犯人を知ってるかもしれませんけどぉ、あまり係わり合いになりたくない人たちですねぇ……)

銀色の巨人以外は戦えない事もない、しかしいくらタママといえ話しかけられそうな雰囲気ではない。
遠目にも解るモールの惨状といい相当な争いがあったのは確実だろう。

関係ない厄介ごとに関わるのはご免ですぅとそのまま背中を見送った。
気になったのは背負われていた男がクロエの探し人に似ていた事、再開した時伝えますぅとだけ決める。
やがて百鬼夜行は完全に去り、タママもまたモールに犯人無しとして採掘場の方角に消えた。



               ※       




「いかんなもうこんな時間か。つい夢中になりすぎた」

ギュオーが気付いた時には既にかなりの時間が進んでいた。
タママはとっくに採掘場で待っているかもしれない、まだ見て回りたいがこちらに来られたらサボッた事がバレるかもしれんと思い直す。
せめてあと少しと案内図を見ると『ロッカールーム』という文字に目が留まった。

「我がクロノス戦闘員の服に加持が着ていたものと似た制服、それに一般的な学生服か……十分な成果だ」

10分後、そこには元気に博物館を後にするリヒャルト・ギュオーの姿が!

ロッカールームには何種類もの制服が入っていた。
サイズの合うものは三着しか無かったがそれでも服の心配が無くなったのは大きい。

「フフ……これで緊急時に躊躇い無く獣化できる」

変身の度に服を脱ぐのではいつかは隙を付かれる、その心配が無くなってギュオーは満足げに採掘場へ向かった。




「大丈夫だスエゾー、きっと何処かに食べ物が置いてある」
「ホンマならええんやけどな、あ~早く食いモンが欲しいわ~」

ギュオーが立ち去って数分後、階段を降りてくるガイバーとモンスターの姿があった。
彼らは今の今まで部屋に篭りきりでパソコンに集中していたので束の間の訪問者には気付く事が無かった。

そしてギュオーも全ての部屋を確認する手間を惜しんだ為に彼らの居た部屋を見逃した。
こうして第二のニアミスは誰一人気付かぬまま過ぎ去ったのである。



               ※       



「こんなに探して居ないなんてぇ……ギュギュッチは本当に真面目に捜してくれたんですかぁ?」

G-7採掘場、互いに成果が無かった事を確認した二人は今後の相談に移っていた。
いきなりタママが疑いの目でギュオーを見る、本性モードで凝視されるとさすがの獣神将も思わず顎を引く。

「も、もちろんだタママ君、私は熱意を持って博物館を捜索したが奴の姿は影も形も見当たらなかったのだよ!
「そうですかぁ? じゃあ奴は何処に隠れてるってんですかぁ!?」

熱意を持って博物館を回ったのは本当だ、探し物は違うが嘘は何一つ言っていない。
タママとしても確かめる術は無い、それでも不機嫌さは治まらないまま愚痴を吐いている。

「タママ君、そもそも犯人は本当に東に向かったのか? ここは最初から考えてみる事から始めようではないか」

このままでは不審がられる、それはマズいとギュオーは矛先を逸らす事を試みる。
そうしなければこの腹黒蛙、いつ態度を翻すかわかったものではない。

地面に地図を広げるとタママが話を聞く構えを見せた。
成功だとほくそえみながら間髪を入れずに話を続ける。

「メイが拉致されたのは明け方の神社だ、遺体発見現場がこの辺り……そして昼間にレストランを訪れている」

指で地図をなぞりながらギュオーは一つ一つ判明している事を確認する。
タママは頷きながらそれを聞いていたが最後で首を傾げる。

「そういえばクロエから奴が東に向かった理由を聞いてなかったですねぇ、ひょっとしてハズレって事だったんですかねぇ?」

二人がウォーズマンから聞いたのは海岸に残された痕跡のみ、肝心の根拠は伝えられていなかった。
それに対してギュオーは独自の推理を展開する。

「では考えてみよう、まずウォーズマンが見つけた食事の跡が確かに犯人のものであるのか? 答えはYESだ」

その理由は何ですかぁ?と聞きたげなタママの視線を受けながらギュオーは理由を説明する。

「朝の食事か昼の食事かは煮炊きの跡を調べれば解る。機械超人であるウォーズマンの分析は十分信ずるに足る、放送の前か後かは不明だが昼間に奴が海岸に居たのは間違いない」

ギュオーはトントンと地図の海岸を叩いた。

「わざわざ辺鄙な場所を選んだのは食事中に隙が出来るからだろうが……自炊したのは食料を節約する為か他の理由か。奴がメイの荷物を手に入れてる事から食料を失ったとは考え難い」

そこまでは解らないがさして重要とは思えない部分、タママも気にせず話は先に続く。

「成る程ですぅ~、それで東に向かった理由はどう考えるです?」

ここからが肝心な部分だ。一度咳払いしてからギュオーは口を開いた。

「私が彼の考えを知らない以上、その結論も一度忘れるとしよう。ここは奴の気持ちになってみる事だ」

犯人の気持ち、と言った途端タママの目元が歪むが他に言いようが無い。
さすがにその程度で爆発しないだろうと話を続ける。

「奴の行き先に放送が影響したのか不明な以上、まずは聞いてないという前提で考えてみよう。ボートに乗る目的は何だねタママ君?」
「それは移動する為ですぅ!」

即答が来た、当然の答えだ。
それに満足そうな表情を浮かべギュオーは地図に置いた指を海上に伸ばした。

「奴が海に出た時点ではJ-3の禁止エリアは無かった、となれば西回りと東回りのどちらで移動を始めた……」

ギュオーの指が東に動く、海岸沿いを進んでぐるりと曲がり真っ直ぐ北へ。
そしてF-10で止まる、これ以上は禁止エリアで先に進めない。

「東回りなら誰だってモールを目指しますよねぇ、でもそこに居た連中が犯人とは思えなかったですぅ。そして東の海岸には足跡一つ無かったですう」

納得の行かないという表情のタママ、余程熱心に捜索した事が窺える。
だがモールで他者を見たというのは初めて聞いた、その連中について尋ねたかったが今話の腰を折るのは得策ではないと思い直す。
タママもその事に気付いたのだろう、後で話しますぅとだけ目で合図してきた。

「なら理由はわからんが南部の何処かに上陸したとしか考えられん、その場合施設を避けて行動してるという事になるな」

ギュオーは施設から離れた森へと指を動かした。
西から神社、採掘場、博物館、モールと並ぶ施設を避けると近いのは山小屋か廃屋、そこで指が止まる。
気のせいかタママの眼光が強くなった。

「……とはいっても決め手は無い、今度は西回りの可能性を考えるとしようタママ君」

結論を急ぐことは無いとギュオーは再び指を南部の海岸に戻す。

「コテージが目的地ならわざわざボートで移動する必要は無い、温泉も少し海から離れている、行くとしたらその先と考えるべきだな」

ツツツと指が狭い海上を動く、それはあくまで地図の都合で実際には水平線が見える程開けているのだろうが。
指が止まったその場所は―――遊園地。

「二つの禁止エリアで封鎖されかけた施設、如何にも興味をそそられる場所と思わんかね? さらに足を伸ばして市街地を目指した可能性もある」

如何にもな可能性にタママの表情は真剣だ、きっとその頭の中では「ありえるですぅ」という考えが巡っているのだろう。
だが西回りと考えるにはクリアせねばならぬ問題がある。

「でも、奴が放送を聞いてから海に出た可能性もあるんですよねぇ。そしたら西は危ないと避けませんかぁ?」

最もな意見だ、一時間以内に禁止エリアになる場所に飛び込むのは危なすぎる。
しかしギュオーはそれを予測して既に答えを用意していた。

「逆だ、むしろそちらに何か有ると気付いた可能性がある。遊園地の禁止エリアが意図的ならその前に立ちふさがるJ-3も意図的……そう思わんかね?」

キラリと歯を見せて結論付ける、証拠は何一つ無いが犯人探しに熱心だというポーズは見せられた……筈。
するとタママは突然キラキラーッとギュオーに向けた瞳を輝かせた。

「凄いですぅーーーーーっ!! そんなギュギュッチの事を疑ったなんてボク恥ずかしいですぅ!」

……どうやら効果は予想以上だったらしい。

「とにかく一度神社に戻ってウォーズマンと改めて相談だ、奴の推理の根拠も聞く必要があるからな」

さっきまでの憤りが雲散霧消した事に内心安堵しながらギュオーはこれからの行動を口にする。
話しているうちにもかなり時間が経過してしまっていた、早く神社に戻らねばならない。

「はいですぅ! 今度こそ奴をとっ捕まえるですぅ!」

早足で前を進むタママの後姿を見ながらギュオーは地図をバッグに格納した。
その中には彼を欺いて得た成果が詰まっている。
多くの異世界に関する知識がその中には有る。

残念ながら直接首輪解除に繋がるような展示物は見当たらなかった。
いや、全てを見た訳ではないのであったかもしれないが確かめる術は無い。

ともかくこれで―――


(信頼と休息と知識を得られたか、後は分析と実験だな)


ギュオーが求める世界に一歩近付いたのか―――それはまだ、解らない。






【G-7/採掘場/一日目・夕方】


【リヒャルト・ギュオー@強殖装甲ガイバー】
【状態】 全身打撲、中ダメージ、回復中
【持ち物】参加者詳細名簿&基本セット×2(片方水損失)、首輪(草壁メイ) 首輪(加持リョウジ)、E:アスカのプラグスーツ@新世紀エヴァンゲリオン、ガイバーの指3本
     空のビール缶(大量・全て水入り)@新世紀エヴァンゲリオン、ネルフの制服@新世紀エヴァンゲリオン、北高の男子制服@涼宮ハルヒの憂鬱、クロノス戦闘員の制服@強殖装甲ガイバー
     毒入りカプセル×4@現実、博物館のパンフ
【思考】
1:優勝し、別の世界に行く。そのさい、主催者も殺す。
2:タママと一緒に神社に向かい、仲間を待つ。
3:自分で戦闘する際は油断なしで全力で全て殺す。
4:首輪を解除できる参加者を探す。
5:ある程度大人数のチームに紛れ込み、食事時に毒を使って皆殺しにする。
6:タママを気に入っているが、時が来れば殺す。


※詳細名簿の「リヒャルト・ギュオー」「深町晶」「アプトム」「ネオ・ゼクトール」「ノーヴェ」「リナ・インバース」「ドロロ兵長」に関する記述部分が破棄されました。
※首輪の内側に彫られた『Mei』『Ryouji』の文字には気付いていません。
※擬似ブラックホールは、力の制限下では制御する自信がないので撃つつもりはないようです。
※ガイバーユニットが多数支給されている可能性に思い至りました
※名簿の裏側に博物館で調べた事がメモされています。




【タママ二等兵@ケロロ軍曹】
【状態】 疲労(中)、全身裂傷(処置済み)、肩に引っ掻き傷、頬に擦り傷
【持ち物】ディパック、基本セット、グロック26(残弾0/11)と予備マガジン2つ@現実
【思考】
0.草壁メイの仇を探し出し、殺す。
1.ギュオーと神社に戻ってウォーズマンと合流。
2.軍曹さん、サッキーを守り、ゲームを止める。妨害者は排除。
3.次にアスカに会ったら絶対に逃がさない。
4.サツキ、ケロロ、冬月が心配。
5.ウォーズマン、ギュオーに一目置く。
6.ギュオーを気に入っているが、警戒は怠らない



※色々あってドロロの存在をすっかり忘れています(色々なくても忘れたかもしれません)。
※加持がサツキから盗んだものをグロック26だと思っています。




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巨人と、小人 リヒャルト・ギュオー 走る二等兵・待つ獣神将
タママ二等兵




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