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Fate/Zero(前編)◆h6KpN01cDg



森の中を進む、二つの影があった。
二人―――否、それを人と呼ぶには、彼らはいささかふさわしくない。
一人は、蛇のような姿を持つ、残虐非道のワルモンの指導者。
一人は、『人間を捨てた』――-零号ガイバー。
名簿にはそれぞれナーガとキョンとして乗っている彼らは、南に進路を取っていた。

共に行動している彼らは、協力関係にあるのだろうか?
普通、殺し合いの場で並んで歩いていれば、そう思うのも無理はないだろう。
しかし、それはすぐに違うとしれる。なぜなら―――
「ナーガ様、いつまで俺が持てばいいのでしょうか ……?」
「わざわざ俺の口から言わせるつもりか?」
「……はい、そのとおりです。このキョンめは、ナーガ様のために働かせていただきます!」
ガイバーの姿をした青年が、ナーガと呼ばれた異形の男の荷物を持っているから。
キョンはナーガの前に一歩も出ないように歩かされており、その立場が明らかに低いことは明白だった。

さて、ここで、その『彼』にスポットを当ててみるとしよう。
果たして彼は、これからどのような物語を作るのか……?

Side Kyon ~killer says……~

……畜生。
さっきから何度心の中で呟いたか分からない言葉だ。
……もう100回くらいは言ったかもしれないな。ほんと―――憂鬱、とハルヒを真似て言ってみるが、気分は元に戻るどころか更に落ち込む。
こんなの、ただのパシリじゃないか。
悔しい。悔しくて仕方ない。
でも、二度も敗北した俺に今できることは、ナーガに従うことだけなのだ。

「……お、おい…………あの……ナーガ様、向こうに誰かいたようですが、殺さなくてよいのですか?」
「……」
無視かよ。
さすがに空しくなってきた。
「……ナーガ様」
「黙れ、雑魚」
今度は黙れときた。……なあ、俺泣いていいかな。
まだ泣くなんて許されないが、さすがにこの扱いはあんまりすぎるだろう。

ナーガは、足を止めた。
まだ、歩いてそう時間は経っていない。
おっさんがいっていた『使えそうな奴』にもまだ会っていない。
何だ?びびっちまったのか?……まさか、なあ。
「……不自然だな」
おっさんが、呟く。
「……何がですか?」
「……」
やはりナーガは俺の言葉をガン無視し、再びまっすぐに歩きだす。
俺は心中で舌打ちしながらも、ナーガにただついていく。
「……あの、ナーガ様……役に立ちそうな人間と合流するのですよね?」
「二度も言わせるな、下僕の分際で」
「……」
はいはい、俺が悪うございましたすみませんでした。
どうして俺、今こんなに肩身の狭い思いをしているんだろう。
現実逃避をしている余裕はないが、うっかりそう思いたくもなる。
黙々と歩き続けるナーガ。
崖の方向……当初の予定と同じ方向に向かってはいるんだが、ナーガの様子が少し違う。
「……」
でも、どうせ声かけたら屑とかウジ虫とか言われるんだろう。
勝手にしろ。俺はただ付いていくだけだ。

「……何故だ?」
「……はい?」
だから、まさかナーガが口を開くとは思いもしなかったぜ。
ナーガが、相変わらずの声で俺に問う。
俺に聞いているというより、独り言なのかもしれないが。多分独り言だろうな。俺は屑だからな、はいはい。
「何故ここだけ植物が茂っていない?明らかに不自然なほどに、な」
確かに、そう言われればそうだ。
ナーガに言われるまで、気付かなかった。
ナーガの指した部分だけ、ぽっかりと巨大な穴があいている。
周囲には木がうっそうと茂っているのに、そこだけまるで宇宙船でも降臨したみたいだ。
……もしここにハルヒがいたら、ミステリーサークルだなんだと騒いだかもしれない。……ああ、分かってるさ、そんなハルヒを死なせたのは俺だ。頭痛がする。
分かって、いるさ。
「……お前はどう思う?」
「お、俺……ですか?」
まさか、俺に聞いてくるとは思わなかった。
ナーガはそもそも俺とまともなコミュニケーションをするつもりがないのだろうと決めつけていた。
思いつかない。咄嗟に言われて分かるか、そんなこと。
「……宇宙船でも降りた……とか……」
「……使えぬ奴め」
……一蹴された。自分でもアホな解答だとわかっちゃいたが、それ以外に思いつかなかったんだ、仕方ないだろう。
もはやナーガの態度が怒りを通り越して呆れになっている気がする。
「な、ナーガ様は、どう考えていらっしゃるので……?」
俺はやけっぱちになり、ナーガに尋ねた。
俺のことを馬鹿にしたんだから、ナーガはもっとまともな解答をしてくれるんだろうな?
「……」
ナーガはその問いすら無視し、その何も生えていない裸の大地に足を踏み入れる。
何か、ナーガは言いたげに思えた。
別に俺にはどうでもいいことだし、どうせ言ってもくれないだろうがな。
「……何か、あるな」
「……え?」
だから俺は、ナーガの言った言葉に一瞬反応が遅れた。
何だって?何があるって?
「……これほどあからさまとは……隠すつもりはないということか。……いいだろう、『試してやろう』」
ナーガは、何やら俺を無視して呟き、

―――そこの一か所だけ盛り上がった場所を、踏みつけた。

瞬間。
轟音が―――俺を襲った。
ごごごごごごご、という陳腐な、それでいて普段なかなか聞かないような巨大な音。

「な、何だ!?」
何だ、どうした、何があったって言うんだよ!
うろたえる俺とは反対に、ナーガの野郎は平然としている。
畜生、これが格の違いってやつか。
格なんて認めたくないが……悔しい、あまりにも悔しい。
「……成程……こういう仕組みか……興味深い」
「……何が、こういうことなんですか……?」
おっさんは、何が起こっているか分かってるってのか?
「口を開くな。……見ればお前のような愚図でも分かる」
ものすごく限界まで落とされた。
ナーガの中での俺は、やはり底辺の中の底辺らしい。……二度も負ければ自然とそうなるのも無理ないかもしれないが。
「……」
悔しい気持を呑みこみつつ、俺は言われたとおりにそちらを見て―――

「……な、……んだこれは?」
言葉を失った。

それは、巨大な施設だった。
それが―――地面の中から顔を出しているのだ。
アリーナ、スタジアム―――いや、違う。俺はもっと、これに近いものを知っているじゃないか。
「……リング……?」
それは。
テレビの中でしかお目にかかったことがない、ボクシングリングのそれだった。
ところどころ違うが、しかしよく似ている。
「……知っているのか?」
「はい」
ナーガはどうやらこれがどういうものか知らないらしい。まあ、明らかに現代世界の住人じゃなさそうだしそんなもんか。
そもそも人じゃないしな。
「説明しろ」
冷たい視線を向けられそんなことを言われて、俺に反抗できるはずもない。
俺は極めて簡潔に、リングについての説明をした。
……本当は厭味の一つでも混ぜてやりたかったが、そんなことをして殺されるのだけは勘弁したかったのでさすがにやめた。

「……成程、つまりこれは―――力を競い合う場だと、そういうことか。
これが殺し合いの場であるということはつまり、ここは―――『死戦(デス・マッチ)』をする施設だと、……そういうことだな」
ナーガは、俺の説明に対してそう言い、リングへと登っていく。
まるで、観察でもするかのように。
さすがのナーガもまだ見たことのない未知なる施設の前ではもっと好奇心をあらわにするかと思っていたがそんなことはなかったぜ。
「……ふん、主催者が何を考えてこんなものを作ったのかは知らんが―――」
何を考えて、か。
長門のことを思い出す。
なんで長門は、こんなリングを会場内に置いたりしたんだ?
いや、理由は分かる。殺し合いを『加速』させるためだ。
でもそれなら、どうして隠す必要がある?
初めから地図に書いておいたほうが、殺し合いに乗った奴らが集まるんじゃ―――
「……いずれにせよ、あの女と男はかなりの能力の持ち主のようだな……ますます気に入らない」
ナーガはそう憎々しげに漏らして、リングの周りを観察でもするように歩き始める。
俺も付いていかないと怒られそうだ。
そう思い、俺もナーガの後を追おうとして―――

「…………待ちなさい!」
声を聞いた。
俺は、その声を知っていた。
というより、つい一時間ほど前に聞いたばかりの声じゃねえか―――
ああ、この――ー死に損ないが。

そこにいたのは。
青い髪、白い服、そしてハチマキの―――俺とナーガが殺したはずの女だった。


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