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囚われ人は嘘をつく ◆5xPP7aGpCE



『あと50メートル西を進んだ方が良いでしょう、安全の為にお願いします』
「わかったよレイジングハート、禁止エリアに近付いたら大変だからね。調子は大分良くなった?」
『はいスバル、完全な修復にはまだ時間がかかりますがナビゲーション機能は回復しました』
「キョン君、そういう訳だからもっと左を歩いて。ペースは体力に合わせてゆっくりでいいから」

わかったよ、と言いながら俺はガサガサと草を掻き分けて左に寄って歩いた。
邪魔な茂みはブレードを鉈代わりに切り開いて進む、後ろにはウォースマンにスバル、そしてリインとかいうちっこい妖精が付いてくる。
先頭を歩く、いや歩かされるって事は草刈りまでさせられるのかよ!
後から付いてくるお前らは楽でいいよな、ちくしょう!

あー、わからない奴の為に状況を説明するぞ。
俺達は山登りの最中だ。
試合という名のしごき……いやあれは『かわいがり』ってレベルだったぞ、思い出すだけで腕が痛くなる。

それでも命が助かっただけマシか、とにかく俺は逃げる事も出来ず捕まっちまった。
荷物も殆ど取り上げられ、今は連中の仲間が待つ神社目指してるって訳だ。

それにしても疲れてんのに山登りかよ……待ち合わせすんならもっと楽な場所を選べと言いたくなる。
いや、あいつら揃いも揃って体力馬鹿だから気にする筈無いか。
自分のペースで歩いていいってのがせめてもの救いだ、とはいっても後ろからプレッシャーが掛かるので好きに休むなんて事は出来ないけどな。

更にやっかいな事に最短距離に禁止エリアが出来ちまったので回り道する羽目になっちまってる。
確実に放送には間に合わないな、まあ俺が困る訳じゃないし問題無いだろう。

『データ交換終了ですぅ~、ふええ~スバルがこんなに苦労してたのに私はぼんやりとしてただけなんてぇ~』

後ろだから見えないがちっこい奴の涙声が聞こえて来た、俺の苦労もわからせてやりたいぞ。
ガイバーのお陰で後ろの話もよく聞こえる、俺は歩きながら連中の会話に聞き耳を立てた。
どうやら仲間が信用できるかどうかについて話してるらしい。



               ※



空曹長とレイジングハートのデータ交換がやっと終わった、こんなに時間が掛かったのはレイジングハートの状態もあるけど制限も大きいのかな。
今まで何もしていなかった私は軍人失格ですぅ、なんて言われても逆にあたしの方が困ってしまう。
泣きべそをかく空曹長をなだめて落ち着いてもらって改めて皆でこれからの事を話し合う。

「あの、空曹長達はギュオーさんを知っているんですよね? それならもっと詳しく聞かせてください!」

今頃は神社で待っている筈のギュオーさんとタママ二等兵、キョン君が話してくれた情報でギュオーさんが人を襲った可能性が浮かんできた。
人を疑うなんて嫌だけどはっきりさせなければいけない、結果乗っているとすればキョン君と同じく止めてみせる!
ギュオーさんに会ったのはウォーズマンさんと空曹長だけ、直接会う前にどんな人か聞いておきたかった。

『う~ん、確かにリインはギュオーって人に会いましたけどぉ、たった数分ですよぉ? 話もしないうちに別れてしまったのにどんな人かなんてわからないですぅ』
『私もデータを精査してみましたが彼に対する情報は皆無でした、申し訳ありません』

空曹長は困ってるけどしょうがないよ、誰だってそんな短時間で相手の事がわかる筈無いんだから。
キョン君も掲示板の情報以外は知らないみたいだし、だとすればウォーズマンさんの情報だけが頼りかな。

「お前達が解らないなら仕方ない。とにかく俺がギュオーを出会った時から話すとしよう、始めて会った時あいつは酷い怪我をしていた―――」

ウォーズマンさんはすぐに頷いてギュオーさんが倒れていた状況や会話の内容を丁寧にあたし達に話してくれた。
『リナ』という栗色の髪の女性と水色のケロン人に襲われたっていうのがギュオーさんの言い分、その二人が掲示板に書き込んだのは間違いないとあたしも思う。
でもお互い相手から襲われたと言い合っている状態ではどちらも疑えない、不幸な誤解って可能性もあるんだから。

『どちらにも心当たり無いですね~、ギュオーって人は他に何か言ってませんでしたかぁ?』
「そうだな……本来は黙っているべきなのだがお前達になら話してもいいだろう、あいつが言うには”クロノス”という闇の組織に狙われているそうだ」
『そのような名を持つ組織を私は知りません、別世界の存在とみるのが自然ですね』

また初めて聞く名前が出てきた、その組織は殺し合いに何か関わりが有るのかな?
ウォーズマンさんの言い方だといろいろ複雑な話みたいだけど。

「クロノスとゲームの関わりは俺にもわからん、とにかくギュオーは元々組織の一員だったが裏切って逃げていたところを連れてこられたらしい。
 名簿に載っている組織の構成員はネオ・ゼクトール、アプトム、深町晶だとあいつが言っていた、お前達は会ったか?」
『いえ、その誰にも会いませんでした』

その話が本当ならギュオーさんは正義感が強い人って事になるのかな?
三人については残念だけど会った事の無い人ばかりでわからない、そうだキョン君にも聞いてみよう。

「キョン君も聞こえてるんだよね、ウォーズマンさんが言った五人に心当たりは無いの?」
「……知らん、聞いた事もない」

キョン君は振り返りもしないでそんな返事を返してくる、本当に知らないのかわからないけれど土下座までしてくれたのに疑うのも悪いよね。
とにかくその人達も止めなければいけない、ギュオーさんにもクロノスの事を詳しく聞きたい。

「知らないなら話を続けるぞ、とにかくギュオーはその三人を倒す事が当面の目的らしい……おっともう一人を忘れていた、ノーヴェという女性がその一人と手を組んだと言っていたな」
「ノーヴェ! 彼女の事なら知ってます、コテージでお話ししたセインの妹で私の世界の人間です!」

正直わだかまりが無いわけじゃないけどミッドチルダでの事は終わった後で考えればいい、会えたらセインの事をちゃんと伝えてあげたい。
少なくとも三人のうち一人は無差別に人を殺すような性格じゃない事がわかっただけでも大きいと思う。

「知り合いだったとは驚きだな、悪いが彼女が何処に向かったのか聞いていない。確か開始直後の話だと言っていたから同じ方角に居るとは限らんだろうが会ったら聞くとしよう。
 その後からスバルに会うまでの経緯は既に話した通りだ。うーむ、こうしてみるとギュオーを疑うには証拠が少なすぎるな」
『話に出た誰か一人でも会っていれば良かったんですけどぉ、うまくいかないものですねぇ~』

二人の言う通りだ、はっきりした証拠も無しに悪人とは決め付けられない。
予定通り神社に向かって直接ギュオーさんとタママ二等兵に会ってみよう、いろいろ話をしてから改めて考えてみても遅くない。

『これ以上考えても答えは出ないので話題を変えるですぅ。キョン! 貴方にはまだキチンと話を聞いてなかったですねぇ』
「うっ、やっぱり聞くのかよ……」

そうだった! キョン君にはまだまだ聞きたい事が一杯有る。
殺した人の事、ヴィヴィオの事、市街地で見た事や出会った人の事、どれ一つとっても大事だ。


それに―――何故知り合いの子を殺したの、キョン君?



               ※



俺は後ろの連中の話を聞いて思わず心の中で笑っちまった。
間違いなくギュオーって奴は危険人物だ。そしてマヌケなウォーズマンを利用してるんだってハッキリ解ったんだからな。

ギュオーって奴が敵と言った深町晶、ガイバーショウに俺は会っている。あいつは一緒にクロノスと戦ってくれなんて俺を説得してきた。
おまけに小動物なんか助けようと荷物まで捨てた、あれで逆にクロノスの構成員だったのならガイバーショウはアカデミー賞目指せる名優って保証してやるぞ。

もちろん連中に教えるつもりなんてない、この状況を上手く利用すれば逃げられるかもしれないからな。
他の四人には本当に会ってないんだがガイバーショウ並みにお人好しなら儲け物だし名前はちゃんと覚えておこう。

そんな事を思ってるとあのちっこい妖精が俺に話を振ってきやがった。
まあいい、何か聞かれるには予想してたんだし三人殺したって事もとっくにバレてんだからな。
今更何を話したところでこれ以上状況が悪化しやしないだろう、もちろんガイバーショウの事は伏せるつもりだがな。

「キョン君……もう一度聞くけど君は反省してくれたんだよね?」

振り向きもしないで歩いていると後ろからスバルの声が聞こえていた、いかにも偽善者らしい心配そうな声だ。
何を聞かれるかと身構えたつもりだが最初にそんな質問とは恐れ入るな。
まぁ、ここは無難に答えておくか。

「そうです、俺は反省しました」
『まだ信用できないですぅ! 本当に反省している人はそんな軽々しく言えないですぅ!』

またちっこい奴が口を出してきた、人を信じるって事を知らんのかこの性悪妖精は。
まあ当たってはいるんだがな。

「それなら知ってる事を全部話して! 私達はどんな小さな情報でも欲しいの!」

いかにも必死そうな口ぶりでスバルの奴が聞いてきた、断ってどんな顔するか見てやりたいが反省したフリを続けなきゃならん。
面倒くさいなと思いつつ俺はわざと弱気な声を出してやった。

「すまん……歩き通しで疲れていて投げやりな口調になっちまった。とりあえずどんな事から話せばいいんだ?」
『それなら貴方のここまでの行動を全て白状するですぅ、おかしな部分があったら反省してないとみなしますよぉ!』

間髪入れずに性悪妖精の声が背中に飛んできた、疲れてると言ったのが聞こえなかったのかこいつは?
しかし愚痴をこぼす訳にもいかん、下手に嘘を付くとボロが出るかもしれんしここは正直に答えてやるか。

「俺がスタートしたのは小学校だ、このガイバーって鎧を手に入れてすぐ……既に言った通り中学生ぐらいの奴を殺した」

いろんな事が起こり過ぎたせいだろうか、一日も経ってないのにやけに昔の事に思えちまう。
まさか人殺しになるなんてハルヒに振り回されていた時ですら予想していなかったな。
しかもただの殺人犯じゃない、連続殺人鬼だ。最後は大量殺人鬼か?

「何故……そんなに早く人を殺す気になったの? キョン君はどうしてそんな道を選んだの?」
「フン、ナーガの時みたいに度が過ぎた力を手に入れて調子に乗ったのかもしれんな」

いきなり話の腰を折るな! しかし困った、ハルヒや長門の事を何て説明すりゃいいんだ。
統合情報思念体を満足させる為に殺し合いに乗ったなんて言ったら余計話がややこしくなる気がするし草壁のおっさん達を怒らせてしまうかもしれん。

正直に答えるつもりだったのは確かだがそれはあくまで行動の事だ、こんなやっかいな事を言わされるなんて思ってなかったぞ!
……いや、どうせこいつらには解らないんだ。長門に迷惑の掛からない範囲で済ませりゃ問題無いじゃないか。

『何を黙ってるですかぁ? 怪しいですぅ』
「う、うるさい! とにかく俺は早く元の日常に戻りたかったんだよ! その為なら何でもしてやるって思ったんだ!」

嘘は言ってないぞ! 身勝手な理由と思われようが今更気にしてられるかよ。
後ろの連中は見えないが視線が背中に突き刺さってやがる、まるで針のムシロに座らされてる気分だぞ。

「その為に……知っている人まで殺すつもりだったの? 一人だけで帰るなんて、それでいい訳がないよ」
「どうせ生き返るんなら問題無い、そう思っちまったんだよ。今じゃあ本当に馬鹿な事考えたと反省してる」

本当は大真面目に考え中なんだが当然口には出さない、視線が痛いが反省したふりを続けてとっとと話を進ませちまおう。
お前らだって俺なんかよりも俺の知ってる情報が欲しいんだろうからな。
決して考えてたらあいつを踏み潰した時の感触が蘇ったからじゃないぞ!

「とにかく俺が次に向かったのは遊園地だ、そこでヴィヴィオと同じぐらいの小僧と……女の子を襲った、けど逃げられちまった。
 すぐその後でナーガのおっさんに襲われて気絶したんでそいつらが何処に向かったのかは知らん、本当だぞ?」
『ん~、何途中で口ごもっているんですかぁ? 気になりますぅ』

事務的に手早く済ませるつもりだったのに性悪妖精の言う通りあいつの部分で止まっちまった。
あいつを、実の妹を―――初めて殴ったんだ。乗り気になった今だって思い出したい光景じゃない、どうしても胸クソが悪くなる。

「まさかとは思うけど……知ってる人だったの? キョン君より小さな女の子の知り合い―――”キョンの妹”と名簿に有る子だったとか」
「―――っ!!!」

この女超能力者かよ!
絶句していると肯定と受け取られたのかもしれない、背中に突き刺さる視線がいきなり強くなった。
ガイバーを着ている今は関係無い筈なのに喉がカラカラだ、罪悪感や居心地の悪さがミックスされてとてつもなく気持ち悪い。

「つ、続けるぞ! その後目を覚まして高校に行ったらハルヒとヴィヴィオに会ったんだ。後は言わなくても解るだろう?」
『ヴィヴィオを襲ってハルヒって女子高生を殺したって事ですね~、一応何が起こったのか説明してくれますかぁ?』

人が思い出したくない事を言わせるつもりかよ! 性悪なんてもんじゃない、こいつは極悪妖精だ。
あの時のハルヒの顔、腕に伝わった柔らかい感触―――それだけで本当に気が狂いそうになる。
口に出せない代わりに邪魔な潅木を大げさに切り開く、するとスバルの奴が察したのか知らんが助け舟を出してきやがった。

「空曹長……キョン君だってそんな事は言い辛いと思いますから簡単に話すだけで許してあげてください」
『む~、スバルがそう言うのなら仕方ないですねぇ。でも甘いと思いますよぉ?』

俺は聞こえない程小さくほっと息を吐いた。その代わり罪悪感が若干増した気がするが気にしたら負けだ。
あの時の光景を出来るだけ頭の隅に追いやって必要な事だけを早口で言う。

「ハルヒとヴィヴィオは一緒に行動してた、アスカとモッチーっていう仲間が後から来るとか言っていた。
 そういやヴィヴィオにはクロスミラージュとバルディッシュって喋る機械を持っていたぞ」
「ティアのデバイス! それにやっぱりと思っていたけどバルディッシュも在ったんだ……」

ひょっとして、こいつらの持ち物だったのか?
よく考えれば喋るペンダントなんてものがある時点でその可能性を考えとくべきだった。

「それから……ヴィヴィオを襲おうとして、ハルヒを……しちまった後は動揺して学校を飛び出した」
「………………」

極力無味乾燥に言おうとした、けどやっぱり無理だった。
何度も思い出しちまってる筈なのにどうして慣れないんだ……最後の方は変な声になっちまった。
極悪妖精のツッコミも偽善者の励ましもまっくろくろすけの怒鳴り声も何故かやって来やしない、ただ惨めにとぼとぼ歩き続ける。

呆れてんのか? それとも同情してんのか? 赤の他人に余計な気遣いされるのは却って腹立つんだよ。
とっとと話を終わらせちまおう、しかし気が動転しちまっていたからその後の記憶が定かじゃないんだよな。
高校を逃げ出したところで誰かを見た気がするかどんな奴だったのかまるで思い出せん、気が付いたら採掘場に居たんだよな。

放送前で時間を気にしてたから学校に居た時間は覚えている、何でワープしたみたいにあんなに遠くに行けたんだ?
超常現象といってもいい移動具合だ、ワープポイントでもあったのか? ひょっとしてハルヒの不思議パワーが関係してんのか?

―――馬鹿馬鹿しい、現実逃避もいい加減にしろよ俺。

変な事を考え出した俺を別の俺が冷めた目で見詰めていた。
確かにその通りだ、思い出すのが辛いからってそんな下らない事考えも仕方ないな。

「とにかく気が付いたら採掘場に居た、そこで最初の放送があった事は覚えている。
 で、その直後に古泉って奴と会った。こいつも元の世界の知り合いだ」

あの時俺は古泉に何て言ったっけな、罪を被るのは俺一人で十分だとか随分青臭い台詞を口にした覚えがある。
本気で言ったのか古泉に少しでも善人ぶりたくて無意識に飛び出した出任せなのか―――考えるまでもないよな。

結局数時間も続かなかったんだ、その古泉に罪を被せた以上後者って事になる。
……とことん下らない奴だったんだな、俺は。

「古泉一樹君だね、その人にも襲い掛かったの?」
「逆だ、古泉の方から協力を申し出て来た。俺は西、古泉と分担して参加者を減らしましょうってな。
 さっきは聞かれなかったから言わなかったんだが……ちょうど18時に採掘場で会う約束だ」
『何故そんな大事な事を言わなかったんですかぁ! 今からではとても間に合わないですよぉ!』

せっかくの機会だから約束の事を教えてやった。
これで俺達全員とはいかなくても一人でも採掘場に向かってくれれば俺が逃げられる可能性が高くなるって寸法だ。
古泉があの書き込みを見たか気付いてないかは関係ない、どっちにしろ連中との間で騒ぎが起こってくれればいいんだからな。

「仕方ないだろう? お前達が神社に行くって決めた以上立場の弱い俺が口を挟める道理もないじゃないか」
「く……俺だけなら間に合うかもしれんがお前達や待っている筈のギュオー達を放り出して行く訳にはいかん」
『私も現状での戦力の分散は得策ではないと進言します、ここは次の機会を待つべきかと』

俺の話を聞いて連中はガヤガヤ言い合っていたがどうやら失敗か、さすがに今の時間からじゃあ遅すぎるからな。
リングに居た時に言っておけばと思ったが今更だし仕方無い、まあこれで連中も古泉を危険人物と見なした筈だし良しとしよう。
騒ぐ連中を見ていたら少し気分が紛れてくれたしな。

「その後だが……博物館辺りからでかい爆発を聞いたな、レーザーみたいな光も見た。
 古泉が博物館にはアシュラマンって危険人物が居たと話してたからそいつと誰かが戦っていたのかもしれないぞ」
「その時戦っていたのはあたしだよ。そっか、あの時そんな近くに居たんだ……奇遇だね」

げっ! するとアシュラマンを殺したのはまさかこいつか!?
殺さないとは言ってるが力加減を間違えました……この女ならありそうだ。
とにかくこいつが当事者なら次に移ってもいいよな、ここからは嘘吐きタイムに突入だ。

「そんな訳で警戒して森の中を歩いてたんたが途中目玉お化けみたいな奴を見たぞ、遠くでチラッと見ただけだったが博物館の方に行っちまった」
「目玉の参加者だと? 超人にもそんな奴はいないな、スバルは出会わなかったのか?」
「はい、あたしはすぐ採掘場に向かったから会えなかったんだと思います」

誰にも出会わなかったと言っちまうと後で矛盾が出るかもしれんし知らない参加者と擦れ違ったとだけ言っておく、要はガイバーの事が知られなきゃいいんだ。
今頃あいつら何やってんだ? お人好しの奴らの事だ、ひょっとして古泉に騙されて採掘場で待ちぼうけしてるかもしれないな。

「次寄ったのはレストランだ。そこで顔を隠したおっさんに会った」
「顔を隠した男だと!? そいつは俺は探している奴かもしれん、奴と一体何を話した?」

おいおい、雨蜘蛛のおっさんはウォーズマンに追われてんのかよ! うーん、ここは何と答えようか。
雨蜘蛛のおっさんに痛い目に遭わされたのは確かだが今は手を組んでんだ、俺があれこれ喋ったと知れたら間違いなく裏切ったと思われるな。
再生した筈の指が疼く、あんな目に遭わされるには二度と御免だ。

「おっさんの名前は知らんし目的も解らん、銃を突きつけられて色々喋らされただけだ。なんとか隙を見て逃げ出すだけで精一杯だったんだぞ!」
「くっ、せっかく奴を追う有力な手掛かりを掴めたと思ったんだがな」

真っ赤な嘘だ、雨蜘蛛のおっさんからはいろいろ話が聞けたし逃げ出した訳じゃない、一緒に皆殺しの相談をして平和裏に別れたんだ。
妹と朝比奈さんを殺してくれと頼んだ事は―――本当に正しかったのか? 馬鹿な、決まってるじゃないか。
―――俺には無理なんだからな、傷付ける事を考えただけでも腕が震えちまう。

「じゃあレストランに落ちていた指は君のだったんだね、もう大丈夫なの?」

いきなりスバルが俺の手を取ってまじまじと見やがった、もう治ってるからほっとけ!
苛立って振り払おうとする前にパッとスバルが腕を離す、すっぽ抜けた腕はぶんと音を立てて立ち木にめり込んじまった。
そんな俺をスバルは笑って見てやがる、治って良かっただと? 普通いい気味だと思う所だろう?
……何だかくすぐったいな、次だ次!

「で、コテージにはナーガのおっさんが居て戦った結果手を組むことになりました。獲物を誘い出そうと適当に電話を掛けたらそこのスバルさんに繋がりました。後は知っている通りです」

喋り続けて疲れたせいもあるがロクな体験してこなかった所為で投げやり気味に説明を打ち切る。
お前を倒したその後におっさんに土下座させられてパシリをしてましたなんて言うだけ恥だ。
それに変な夢も見ちまった。俺、ハルヒと来て次寝たら誰が夢に出てくるんだ?

「キョン君が電話を掛けた相手はあたしだけ? それとも他にも誰かに同じ事言ったの?」
「掛けてません、そんな事したらダブルブッキングしちまうじゃないか。俺だってそこまでマヌケじゃないぞ」

全くしつこいな、こんな奴に繋がった事自体が不運としか言いようが無いぜ。
うまく呼び出せたと思ったら嘘は見破られていて、殺したと思ったら生きていて追いかけてきやがって。
……ストーカーかこいつは、こりゃよっぽど上手くやらないと逃げられそうないな。

『聞く限り行動に矛盾は無いみたいですね~、あくまで矛盾だけですけどぉ』
「隠し事をしてないとはいえんが一応は信じてやろう、但し嘘が混じっていた場合は相応の報いを受ける事になるがな」

物騒な事話してやがる、だがいくら疑ったところで証拠は何もないんだし当分はこのまま行ける筈だ。
連中も少し話し合っていたが結局は信じる事にしたらしい、何の突っ込みも来ないまま俺は先頭を歩く。
その方が気が楽だ、嘘付いた相手の顔を見ずに済むというのは現状で唯一マシな部分かもしれない。

―――疲れた

従うふりをしなければいけないとはいえ思い出したくもない事を延々と喋らされたんだ、気が滅入って当然だろう?
振り返ってみたらスタートしてから楽しい事なんて何一つ無かった、スプラッタと激痛の繰り返しばかりエンドレスで再生されてる気分だ。

ナーガや雨蜘蛛のおっさんは互いに利用するだけの関係でSOS団みたいに仲間なんて呼べる付き合いなんかしなかった。
そういう関係になれるかもしれなかった古泉は俺の方から裏切った。
善人と出会ったら殺しにかかり、悪人相手には惨めに負けたり殺しの相談を持ちかけた。

ガイバーじゃなきゃとっくに死んでいただろう。
いや、支給品がガイバーじゃなかったらもっと慎重に行動しててハルヒを殺すなんて事は無かったかもしれない。
―――一わかってるさ、たらればを考えても無意味だって事ぐらい。

ルーベンスの絵を見たがっていた少年じゃないが今の俺はちょっと弱気になっちまってるらしい。
ずっと走り続けてきたんだ、途中休みたくなっても自然かもしれん。
まずいな……ギュオーって奴を利用して逃げる為にもとっとと気力を回復させてこんな気分をオサラバしたいところだ。

俺は少しでも休息を取りたくて緊張を緩めた。
歩くペースも更に落とす。山頂が近づいて登りもきつくなってきたし不自然には思われないだろう。
このまま神社まで黙って歩かせてくれよ、と思っていたその時だった。

「キョン君、隣いいかな?」

突然スバルの奴が前に出てきて俺と横並びになった。
おい、返事した覚えは無いぞ!

『スバル、近付き過ぎると危ないですよ~!』

俺の抗議と同時に極悪妖精の人を動物扱いした警告が飛んできたがスバルの奴は全然気にしちゃいない。
平気な顔でジロジロと俺を眺めてやがる、何だか口元が笑ってるぞ?


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勝利か? 土下座か?(後編) キョン まずは相手を知る事から始めましょう
ウォーズマン
スバル・ナカジマ




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