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それはきっと未来へと繋がる行動 ◆5xPP7aGpCE



燃え続ける大火は既にデパートをその勢力図に治め尚も先を目指していた。
焼け落ちるのを待つばかりのその屋上、沈み行く夕日を眺めながらゼクトールは思う。


―――終わった


悲願を果たした男の胸に在ったのはそれだけだった。
滾っていた情熱の炎は今や湖水の様に穏やかになっている。
支えてきたものを失った肉体は立つ事さえ許してくれなかった、先の傷も相当な深手だったが来るべき時が少しだけ早まったに過ぎない。
間も無くこのデパートは全焼するだろう、だが苦しむ事は無い。
―――その前に彼は死んでいるだろうから。

僅かな猶予の中で考える、悪魔将軍は果たして待ち人に会えたのだろうかと。
かって同行していた少女の顔も思い出す、再戦を望まれていたが果たせそうも無い。

(フッ……俺の名が放送で呼ばれたら腹を立てるだろうな)

このまま朽ち果てた所で悔いは無いと思ったがそうでもないらしい。
アプトムを討ち果たせたのは将軍の情報があったからこそ、借り一つ返さずに逝くというのは男として不本意だ。
そんな事を思っていると突然語りかける声が聞こえた。

『気は済んだかね? ネオ・ゼクトール君』

驚いたゼクトールが首を動かして見た物は黒い餅を思わせる闇の住民ネブラだった。
一瞬アプトムの分体かと警戒するが首輪を破壊した事を思い出す。

「何者だ……?」
『初めましてと言うべきだな、私はネブラ。アプトム君の支給品だったものだ』

自己紹介しながらもネブラは目を出しただけで全く動かなかった。
他人の頭に乗せられて初めて本領を発揮できるものだという事をゼクトールに説明する。
爆発と電撃のダメージからようやく立ち直りかけたので口を開いたとの事だ。

『君は生きたいと思わないのかね? 飛べんというなら私が力を貸そう、ここで消し炭になりたくないのでね』

それは新たなる主人への誘いであった。
小砂、ズーマ、アプトム……以前の主人は皆死んだ、そして今度はゼクトールに使われたいとネブラは望んでいるのだ。

「蝙蝠め」

ゼクトールは唾棄同然に言い放つ。
彼は忘れてはいない、ネブラがどれ程障害になったのかを。
アプトムだけならば喫茶店で終わっていた、ここまで手間取ったのはこの支給品が邪魔をしたからなのだ。
なのにアプトムが死んだ直後にぬけぬけと協力を申し出る変わり身の早さ、一つの組織に忠誠を誓っていた彼には不愉快でしかない。

『私は君達と違って恥を感じないのでね。第一動けない私にはそうするしか無いのだ、どんな手を使っても娘の元へと帰らねばならん』
「利用したあげく俺が死ねば次の主に取り入るつもりか? 生憎お前の様な死神はここで焼け死ねとしか言いようが無いな」

血塗れの拳を黒い塊に叩きつける。
飛び散りはしなかったが餅の様に粘るそれは潰れて大きく変形した。

『う……止めてくれたまえ、せめて話ぐらいはさせてくれんかね?』
「いいだろう、最後に話すのが貴様の様な蝙蝠とは残念だがな!」

助けを求める気は更々無いし助かるとも思っていない、かといって死を待つ状態で他にする事も無い。
一方のネブラにとっては会話を繋ぐことが生存の鍵、冷静な口調だが内心薄氷を踏む思いであった。
屋上は既に煙と炎に包まれて灼熱地獄と化している。
ガス爆発に始まって、ブラスター・テンペストと屋上の水素爆発と続いた災厄はいつ建物が倒壊してもおかしくない程のダメージを与えていた。
何としてもゼクトールを変心させ、生存の糸口を掴まねばならなかった。

『では聞くが君は何故あれ程までにアプトム君を狙ったのだね? 手を組んでいれば今の状態は無かっただろうに』

ネブラもそこが気になっていた、誘いに乗らなかった気持ちはわからぬでも無い。
しかし死さえ恐れずに追ってくるのは理解できなかった、結果相打ち同然になろうとも満足げな彼を見て疑問は更に膨らんだ。
その質問はゼクトールの気分を悪くした、あの時の苛立ちを思い出したらしい。

「奴は俺の大切な仲間を殺した、最後に残された俺は復讐を誓って全てを捨てた。手を組むなど考えられるか!」
『それは本当かね? アプトム君は君と顔を合わせた事も無いと言っていたが』
「間違いなどあるか! 奴は笑いながら俺の脚を奪ったのだぞ!」

声を荒げるゼクトールに嘘の気配など感じられなかった。
ネブラは信じざるを得ない、それなら交渉が決裂したのも当然だ。
この街の有様もただアプトム一人を追い詰める為、ここに到って助かろうとしない理由をネブラは察した。

しかし―――この話には明らかに矛盾がある。
アプトムの言っていた事も恐らくは正しい、彼によれば何一つ心当たりが無い筈なのだ。
どう考えるべきかと困惑するネブラは似た事があったのを思い出す、接触が無い筈の黒い蛙は恥をかかされたと襲ってきた。
あの時の自分とアプトム、考えれば考える程酷似している。

『一つ訊ねるが……君はアプトム君に何かおかしな点を感じなかったのかね? どんな違和感でも構わない』
「奴は弱かった、俺を襲った時の奴とは比べ物にならん程弱体化していた。だがそれがどうした!? 奴は間違いなく本物のアプトムだった」

ゼクトールは素直に違和感を述べた、悪魔将軍から話を聞いた時から感じていた疑問。
しかし目的は謎解きではなく殺す事、だから本物と確信した以上考える事はしなかった。
―――奴は確かに仲間を殺したのだ!

『話を聞いて欲しい、私もこの島でとある参加者に身に覚えの無い恨みをぶつけられた。知ってはいるが会ってない相手にだよ。
 実に奇妙だ、君に私にアプトム君、皆が同じ違和感を抱いていた。原因は解らんがまるで記憶を抜き取られたようなものではないか』
「つまり奴は俺の記憶を失っていたとでも言うのか? 何の為にそんな事を……」

ネブラも同じ体験をしたと聞いてゼクトールも話に興味が湧いた。
馬鹿馬鹿しいと切り捨てないのは彼もまた納得出来ないものがあったからだろう。
妥当な仮説かどうか考えてすぐ、ゼクトールはそれが成り立たず更に不可解な事実が在った事を思い出す。

「いや待て、記憶がどうのこうのでは違和感の全てを説明できん。俺は開始直後にギュオーという男に会っているが奴は確かに死んだ筈。それに何故かゾアクリスタルを持っていた」
『ほう……? 是非とも詳しい話を聞かせてくれ』

裏切り者の事を教えるのに躊躇う理由は無かった、簡単にギュオーが失脚した顛末を伝えるとネブラは再び考え込む。
ギュオーについてはアプトムから合流を目指す相手として聞いていたがそんな話は初耳である。
死んだと思われた人間が生きていた事はありえなくも無いが、ゾアクリスタルは非常に希少でクロノス以外の者が持っている事は在り得ないという。

全ての矛盾を解決できる仮説―――やがてネブラはそこに辿り着いた。
しかし確証は無い、あくまで矛盾が無いというだけで材料一つで覆るかもしれない。

『ゼクトール君、残酷な質問かもしれないが聞こう。君は……アプトム君が本当に君の仲間を殺してないとしたらどう思うかね?』

ネブラは仮説そのものを口にする事は避けた、代わりに仮定の質問という形でゼクトールにそれを告げる。
ゼクトールもエリートとしての教養がある男、ネブラの言いたい事を直ぐに察した。

「満足だ。俺の考え通りならここでアプトムを殺した事で未来は変わる、犠牲になる筈だった奴は生きられる」

その声は晴れやかだった、復讐という後ろ向きの行いでは無く未来に繋がる行いなら素晴らしいとゼクトールは思った。
ネブラも考えが一致した事に満足する、間違い無いとは言い聞けないが可能性は高い。
二人共疑問が解けた所で話は続く、ゼクトールも仮説を誰にも伝えないまま終わるのは惜しいという気持ちが生まれていた。

「俺からも聞こう、放送でキン肉マン、ウォーズマン、高町なのはという名は呼ばれたか?」

今度は俺の方が気になっていた事を質問した。
探し人が既に死んでいたのではこれからの話が無意味になる。
ネブラそのものは好きになれんが利用する価値はあると割り切ろう。

『呼ばれてはいないな、今回の死者は次の十人だ。それに気になる事を言っていたな』

ネブラが上げた名前はいずれも知らぬ人間だった、悪魔将軍やその探し人が一人も呼ばれなかった事に安堵する。
どうやら俺はまだ役に立てそうだった。
そしてもう一つ、放送で彼等自身が言っていた事によると『主催者は時々会場に姿を見せている』
心当たりが有ると告げるとネブラは目を丸くした。

「巨大カナブンを追っていた俺は草壁を見た、奴は裏切り者がカナブンをバックに入れたと言っていたぞ」

俺はその時の光景や草壁の言動を出来るだけ思い出してネブラに話す。
”情報統合思念体の科学の結晶”、”島全体を監視するのは流石に無理だから”、気になるキーワードはいくつか有る。
奴が裏切り者候補として挙げていた名前については最後の一人がよく聞こえなかったのは残念だ。
この情報が悪魔将軍に伝われば恩を返せた事になるやもしれん、蝙蝠が生存を目指すのなら確立を高められる。

「教えてやろう、俺の見たところ優勝にも脱出にも一番近いのが悪魔将軍だ。娘の元へ帰りたいのなら将軍に取り入るのだな」

そして俺は悪魔将軍とノーヴェの特徴、二人が湖でキン肉マン達三人を待っていた事を伝える。
聡い蝙蝠の事だ、情報とその三人を手土産にすれば将軍が喜ぶと気付いただろう。

『期待に沿えるかはわからんが会えば必ず伝えると約束しよう、早く私を頭に乗せてくれたまえ』

奴が急かす、俺が生きていなければ頭に乗っても力を発揮できないらしい。
ここでのんびり死ぬのも悪くないと思ったが手間を掛ける奴だ、止む無く掴んで頭に乗せる。
だが出来た翼は歪なうえに羽ばたきも弱弱しい。

「どうした、まるで飛び立つ気配が無いぞ?」
『まだダメージが抜け切れていない……それに君の体重は重過ぎる』

一言多いな、ここで獣化を解除した時点で焼死するだろうが。
俺は蝙蝠を頭から降ろすと焼け焦げたバックに詰めた。

「俺に考えがある、お前は次に開けられるまで中で待ってるがいい」

本当に世話が焼ける奴だ、俺は入っていたピアノ線の一方をバックに結ぶ。
片方はこっちだ、生体ミサイルを炸薬無しの長射程モードに調整して結びつける。
湖まで飛ぶか解らんが火災の範囲からは逃れられるだろう。

もはや使う事の無い残りのミサイルはバックに入れる、アプトムの首輪も将軍への土産になるだろう。
俺の残したものが後で役に立ってくれれば気分良く眠れるというものだ。
時間は残されてなかった、足元に立て続けに伝わる揺れは建物の崩落が始まった事を伝えている。
それに次第に目の前が薄れてきた、体力の限界も近いか。

「将軍に会ったらゼクトールはアプトムを討ち満足して死んだと伝えろ! ノーヴェが怒ったら悪かったとでも言っておけ!」

最後にそう告げてバックを閉める。
直ちに推力と射程の調整が終わったミサイルを南に向けて発射した。
やや遅れてピアノ線に曳航されたバックがその後を追っていく。
高度良し、方向良し、速度良し、これで思い残す事は何も無い。

熱さは既に感じなくなっていた、ゆっくりとその場に横たわる。
殆ど煙が埋める視界だったが風が吹く度に星か見えた。

(フッ、星を眺めるなど何年ぶりの事だろうな)

サバイバル訓練で方向を知る手掛かりにした時以来か、何もかも懐かしいものだ。
地鳴りの様に建物全体が震え始めた、そろそろ眠らせてもらうとしよう。
俺は睡魔に抵抗する事を止めた、こんなにも気持ちの良い眠りにつけるのは久しぶりだった。


エレゲン、ダーゼルブ、ザンクルス、ガスター、今そちらにゆくぞ……







【アプトム@強殖装甲ガイバー 死亡確認】
【ネオ・ゼクトール@強殖装甲ガイバー 死亡確認】
【残り26人】



※バックには以下の荷物が入っています。
ネブラ=サザンクロス@ケロロ軍曹、 光の剣(レプリカ、刀身折損)@スレイヤーズREVORUSION、金貨一万枚@スレイヤーズREVORUSION
ヴィヴィオのデイパック、デイパック×3(支給品一式入り、水・食糧が増量)、、ウィンチェスターM1897(1/5)@砂ぼうず
ナイフ×12、包丁×3、大型テレビ液晶の破片が多数入ったビニール袋、スーツ(下着同梱)×3、高校で集めた消火器、砲丸投げの砲丸、喫茶店に書かれていた文面のメモ
黄金のマスク型ブロジェクター@キン肉マン、ストラーダ(修復中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ゼクトールの生体ミサイル(10/10)、首輪の残骸(アプトムのもの)



【拘束具@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
管理局員が用いる物理拘束具。対象の動作と魔力発動を阻害して行動を封じる。
普段は薄いボックス状で、使用の際に金具とベルトに展開させる。
第12話でルーテシアとアギトの拘束に使用したものと同型。


※B-7のデパートは全焼しました。
※碇指令のサングラス@新世紀エヴァンゲリオンは失われました。
※拘束具@魔法少女リリカルなのはStrikerSは失われました。
※ミサイルは南方向に向かいました。どこに着弾するのかは次の方にお任せします。






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決着! 復讐の終わり ネオ・ゼクトール GAME OVER






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