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他人の話はちゃんと最後まで聞きましょう ◆qYuVhwC7l.



それから、しばらくの時間が経った後。
地図上で示すならばC-7に当たる地点、山の裾野付近を東に向かい駆ける二つの人影があった。
一人は、正義に燃える正義超人、キン肉マンことキン肉スグル。
もう一人は、笑顔の奥にドス黒い心を隠す魔族、謎の神官ことゼロス。

「ゼロスくん!! 悪魔将軍が湖のリングにいるというのは確かな情報なのかー!?」
「ええ。彼はシンジさんにウォーズマン殺害を命令した後、『第三放送まではリングの中で待つ』と言っていたそうです。
先の放送でシンジさんの名前が呼ばれたのでそろそろ移動している頃とは思いますが、それでもそう遠くには行っていないでしょう」

簡単な確認を行いながら、二人はより一層足を速めて東へ向かう。
もともと彼等がいたE-4から一直線に湖に向かうのではなく、遠回りのルートを選んだのはゼロスの説得によるものだ。
スグル自身良く分かっている事だが、悪魔将軍は強敵だ。
彼に勝とうというのであれば、そのコンディションは少しでもいい状態に保っておきたい。
そのために、体力の消耗が激しい山道を登るよりは、とこちらのルートを選択したのだ。

(と言っても、それも無駄だったような気もしてきましたが…)

スグルに体力の温存をしてもらいたい、というのは間違う事なきゼロスの本音である。
かの悪魔将軍によって、結果的にLCLやATフィールドなどの首輪解除に役立つと思える情報を持っていた碇シンジの死がもたらされてしまったのは、正直痛かった。
どうにかして彼を止める為にも、セイギノミカタであるキン肉マンにはしっかりと頑張ってもらわなくては困る。
もちろん、キン肉マンの言動から見て、この男が悪魔将軍に敗北する可能性もしっかりと予測はしている。
が、負けて死ぬにしてもせめて悪魔将軍の持つ能力を把握できるぐらいには戦ってほしいところだ。
そのために、ヘトヘトに疲れていたので一発でKOされてしまった、という惨めすぎる最期だけは避けたかった。

しかし、目の前のセイギノミカタは碇シンジの仇打ちに燃え、全速力でその足を動かしている。
遠回りルートを選んだ事もあって、気が急いているのもその理由の一つだろう。
これでは、体力の消耗度は山を越えた時と変わらないかもしれない。

「スグルさん、そんなに急がなくても大丈夫だと思いますよー? 僕としては今は少しでも体力を温存してほしい所なのですが…」
「ええい、そんな悠長な事をいっとる場合じゃないじゃろうがー! 今こうしている間にも、悪魔将軍はシンジくんのような犠牲者を生みだしているかもしれん!」

相変わらずの微笑みを浮かべながら、それとなく提案してみても返ってくるのは芳しくない反応ばかり。
まぁやる気になってくれている事ですし、ここはこれで妥協しますかねぇ…とやれやれと溜息を付きながらふと視線を北の方向へと向ける。
自分達が北上したことにより、島の北部、灰色の街部分の惨状が徐々に明らかになってきていた。
一番最初にゼロスが煙を確認してから、もう二時間程経っている事もあってか多少は火勢も弱まっている部分もあるようだが、あちこちに垣間見える黒焦げの建物から感じられる災害の爪痕は深い。
中でも、ひと際目を引くのが、周辺の物に比べてやや高い灰色の建物…スグルの話と地図によれば『デパート』というらしいその場所が、長い体のすべてを赤く染めあげている事。
あの場所でいかなる惨劇が起きたのか、そしてそこに主催者の介入があったのかどうかをゼロス達は知る由もないが、それらがすべて『終わった事』であるのはそれとなく予測が付いた。
前を行くセイギノミカタも、考えは同じらしい。時折ちらりと心配そうな視線を炎の街へと向けているが、その度に頭を振ってより一層足に力を込めている。
今もあるかどうかも分からない惨劇よりは、確実に目の前にいる悪を叩き潰すという合理的な思考が出来るぐらいには頭が回るらしい。ゼロスはそんな評価を下す。
最も、それをさせているのは未だに彼の中に巣くっている、『碇シンジへの罪悪感』という悪魔なのかもしれないが。
閑話休題、ともかく今自分達がするべきは湖のリングに巣くう、本当の『悪魔』の対処をする事。
ゼロス自身はそれほど深入りするつもりはないが、それでも参加者の情報を得られるチャンスを不意にするつもりもない。
山沿いの道も徐々に右に逸れはじめている。禁止エリアの都合上、島の東部にある街道は使えないので、そろそろ進路を北から南東に変えて直接湖の岸を目指すべき頃合いか。
そして相変わらず前を行くスグルにそう声をかけようとした時、それは起きた。

北の方からの、鈍い爆発音。
ほんの僅かな地面の揺れと共にやってきたそれに、思わず二人は足を止めた。
先ほどまで火の手が上がっていた町の方を見てみれば、そこで何らかの破壊があった事を示す土煙りが上がっている。

「ば、爆発じゃと……!? いや、ガス爆発という可能性もあるが……!?」
「ガス、ですか? それは一体―――」

スグルが呟いた聞き慣れぬ単語に反応したゼロスの言葉を遮るように、再び爆発音が二人の間を駆け抜けた。
立ち上っていた煙はもう一つ増え、それに連鎖するように爆発音も幾重にも増殖し始める。
間違いないだろう。あの炎の海の中で、再び何らかの『争い』が起きている。
これはどうした物でしょうか、と相談しようとした瞬間にはもうセイギノミカタは走り出していた。

「スマン、ゼロスくん!! 確かに悪魔将軍の事も大事だが、それでも私の目の前で誰かが誰かの命を奪おうとしているのは見逃せん!!
 もちろん奴の所に行くのをやめる気はないが、その前に少しだけ寄り道をさせてくれーっ!!」

そう叫びながら、キン肉マンはゼロスの返事も聞かずに灼熱の街へと全速力で駆けて行った。
あまつさえ、スピードを挙げるのに邪魔だとでも言わんばかりに背負っていたディパックを投げ捨てるオマケ付きだ。
しばらくの間は呆然と、それでも相変わらずの微笑みのままでそれを見守っていたゼロスだが、やがてやれやれと肩をすくめた。

「本当に、弱者を守るセイギノミカタの鑑のような人ですねぇスグルさんは…扱いやすいような、扱いにくいような」

そんな事を零しながら、ゼロスもまた街へ向かって足を進める。
悪魔将軍は気になるが、かと言って目の前の争いを見逃せないのは彼も同じ事だ。
と言っても、そこに燃えるような正義感などあろう筈もない。彼にとって見逃せないのは、主催者が興味を示すかもしれない『戦場』だけである。

「それにしても、貴重な荷物を投げ捨てる事はないですよねー? 僕が勝手に持っていってしまったらどうする気だったんでしょうあの人」

ま、そこまで考えてなかったというのが正解でしょうか――心の中だけで毒舌を飛ばしつつ、魔族の神官は地面に落ちたディパックへと近づく。
乱暴に打ち捨てられた所為だろう、その口が中途半端に開き、今にも中の食糧などがこぼれ落ちそうになっている。
やれやれと今度は口に出して呟きながら、もう一度荷物を簡単に詰め直そうと手を伸ばした所で、ゼロスの動きが止まった。

「……………これは?」




「軍曹さー……ゲホッ…んっ! フッキ……ガホッ…ーⅡ…!! どこで…ゲホガホッ……あ~~~ウッゼぇんだよぉモクモクモクモクとぉぉぉぉぉ!!!」

街の北東部、B-8。中心部に比べれば大分火の手が弱まっているこの場所で、それでもしぶとく燃え盛っている炎の中に向かって叫んでいる黒く小さい人影があった。
その影、タママ二等兵は、仲間の所在を知ろうと叫ぶ自分の喉を攻撃する煙に怒りを爆発させ、地面に拳を叩きつける。
あまりに多くの煙を吸いすぎる事で一酸化炭素中毒になり、最終的に死を迎えてしまう事ぐらいは仮にも軍人であるタママも理解していた。
だが、だからと言って悠長に鎮火を待っていられるほど、彼に精神の余裕と言う物は存在していない。
放送で名前が呼ばれていなかったとは言え、彼ら二人が無傷である証拠など無いのだ。
むしろ同行者である草壁サツキが死んでしまった事を思えば、彼等も何らかの怪我を負っていると考えるのも自然。
幾ら『もし死んでしまっても蘇らせる事が出来る』方法を思いついたとはいえ、二人が死ななければ死なないに越した事は無い。
だからこそ早く合流したいとは考えているものの、この煙の海の中では思うように身動きを取る事が出来ない。
かと言って、ちょっとでも弱い炎の裂け目を見つけてそこを進もうとしても、

「うぅぅぅぅあっちゃぁぁぁぁ~~!? ボクの軍曹さんに対する愛並に熱いですぅぅぅ~~~!?」

ただでさえ乾燥に弱いケロン人の体では、その熱気に耐える事が出来ない。
それでなくともタママの体色は、その腹の内と同じぐらいの黒。カエル一倍熱を吸収しやすいその体色もまた、彼の道のりを阻む一因となっていた。
炎の海からゴロゴロと転がりながら生還したタママは、幽鬼のような表情で目の前の赤い悪魔を睨みつける。


「くぅぅぅ~~こんの赤くて憎いあんちくしょうめぇぇ~~……ああ、なんだか頭もぼうっとしてきたですぅ……」

なぜか一瞬だけ脳裏をかすめた赤ダルマをスルーしつつ、タママはぐりぐりと自分の頭を撫でつける。
島の中央部から全力でここまで駆け抜けてきたことによる体力の消耗、加えて炎の熱による体表の乾燥など、あらゆる要素がタママの体を苛んでいた。
ともすればこのまま気絶してしまいそうな意識を、自分で自分の頬を打つ事でどうにかしゃんとさせようとするが、それも上手くいかない。

「あ~、なんか耳鳴りまでしてきたです……」

ゴゴゴゴゴゴ、と重い何かが突き進んでくるような音がタママの耳を打つ。

「それに加えて、なんだか足元までフラついてるですぅ~…」

ズズズズズズ、と重い何かが突き進んでくるような振動がタママの足を襲う。

「オマケにぼんやりとした幻覚まで……うう、お菓子の食べすぎですかねぇ~…?」

ドドドドドド、と大きい何かが煙の向こうからやってくるようなシルエットまでがタママの目に入る。

「………………………?」

しばし、思考。状況、整理。結果、発表。

「って本当に何か向こうから突っ込んでくるですー!?」

あわあわあわとその場で大混乱に陥るタママの前で、巨大な物体は猛然とスピードを上げながら煙と炎の中を突っ切り、その姿を現す。

意外ッ! それは救急車ッ!!

「ふぉぉぉぉぉぉぉぉーー!?」

丁度道路の真ん中に突っ立っていたタママは、カエル由来の跳躍力で歩道へと飛び込んだ。
緊急回避行動に出た軍人カエルに目もくれず、謎の救急車は南へ向かって一直線に進んでいく。

「てぇんめぇぇ~~!! どこ見て運転してやがる!! 僕を轢いてたらどうする気だったてんだゴラァァァ!!!」

煙による喉のイガイガしさも忘れて、事故と言う形で自分の命を奪いかけた鋼鉄の箱に向かって叫ぶ。
が、対する救急車はブレーキをかける様子を見せずに、むしろスピードアップしながらタママから逃げるように去っていく。
距離から行って、全く聞こえていないという事は無いはずだ。幾ら救急車とはいえ運転席まで防音設備が整っている訳はないだろう。

「くぅぅぅ~~~間違いねぇ!! あの車僕を轢き殺そうとしてやがったですぅ!! つまり殺し合いに乗ってる奴が運転しているという事!!
 次見かけた時はただじゃおかっ―――――熱ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

どんどん小さくなっていく救急車に向かって強烈な『Fuck You』ポーズを取っていたタママだったが、やがてその尻尾に強烈な熱さと痛みを覚えてごろごろと地面を転がる。
いつの間にか自分の真後ろまで来ていた火の手が、タママのトレードマークとも言える尻尾の先を炙ったのだ。
しばらくそのまま地面を転がる事で痛みに耐えていたタママだったが、やがてその動きをピタリと止めるとゆっくりと起き上がる。

「…………………………」

無言で目の前の火の海を睨みつけているその顔は、それこそ火を見るよりも明らかに、ブチ切れていた。
直前まで高揚しきっていった精神がそのまま熱い怒りへと変換され、大量のそれは余すところなく一つの対象へとぶつけられる。
すなわち、目の前の火事へと。

「てめぇぇ~~…あんまり調子ブッこいてんじゃねぇぞぉぉぉぉーーーー!!」

恨みつらみの籠った絶叫とともに、その口から巨大な衝撃波が放たれる。
タママの得意技・タママインパクト。
今さっきのムカツク救急車からもらったストレスすら八つ当たり気味に込められた(それでなくとも既に八つ当たりだが)その黄色い光線が、周辺の建造物やコンクリートの地面ごと炎をなぎ払う。

「ターマタマタマタマタマ!! ざまぁみやがれですぅ! 思い知ったかよこの赤ダルマがぁ!! アンタの時代はもう終わったんだよぉ!!」

やや錯乱しているのか、途中から罵倒している人物がこのバトルロワイヤルには関係ないまったく別の存在にシフトしている気もするが、それを突っ込んでやれる存在はこの場にはいない。
ともかく、思う存分自分を弄んでくれた憎たらしい炎に一矢報いた事に高笑いしていたタママは、やがてある事に気づいた。

「ターマタマタマタマタマタマ……タマ? ……もしかして、こうやって周りの建物ごと炎を吹っ飛ばしてやれば簡単に軍曹さん達を探せるんじゃないですか?」

事実、先ほどのタママインパクトの影響で炎が寄生している対象であった建造物等は砕け散り、周辺の火事は僅かにその勢いを弱めていた。
かなり強引な方法ではあるが、一定以上の効果が見られるのは間違いない。
その答えにたどり着いたタママは、ニマァという効果音が似合う顔で笑う。

「丁度いいですぅ!! 火事も消えるし、軍曹さん達も探せるし、何より僕のストレス解消にもなるです!! サイッコーじゃないですかぁ!!」

ひとしきり嬉しそうに叫んだ後で、早速タママはあらゆる感情を込めながらあちこちの炎に向かって攻撃をしかけ始める。
『自分の攻撃によって、まだこの周辺にいるかもしれないケロロ達が負傷するかもしれない』という考えには至らない。
ただでさえブチキレモードのタママには、正常な判断を下せるほどの思考能力は残っていなかった。
ただただ、その黒く煮えたぎるストレスを解消させようと、宇宙二重人格者は破壊光線をを恨みの言葉と共に吐き散らす。

「メラメラメラメラうるっせぇんだよぉ~~~~!!」

タママインパクト!

「メイちゃんを殺した変態黒マントォ!! お前は僕がぶっ殺してやるですぅ!!」

タママインパクト!

「カジオー!! お前はもう一度甦らして僕が引導を渡してやるですよぉ!!」

タママインパクト!

「カーカッカッカッカ! 今の僕は阿修羅すら凌駕する存在ですぅ!!」

タママインパクト!

「ターマタマタマタマ! 薙ぎ払えぇぇーーーーー!!」

タママインパク――――――――

「待てぇーい!! そこのオタマの超人よ!! これ以上の悪行はこのキン肉マンが許さーん!!」
「タマ?」

しゅうしゅうと口から煙を吐きながら、タママがゆっくりと声のした背後を振り向く。
何十回とタママインパクトを発射していく内に大分気分がノッてきたというのに、それに水を差すのは誰だ……そんな思いを込めながら後ろを見てみれば、
そこにいたのは、ブタのような顔をしたブッサイクな筋肉男だった。
何故かその顔を怒りにゆがめたブタ男は、ファイティングポーズを取りながらタママへとゆっくり近づいてくる。

「なんだぁテメェは~…? 今僕はいろいろあって気が立ってるし忙しいんですぅ~…邪魔するんならタダじゃおかねぇぞゴラァ!?」

対するタママもまた、怒りの形相を浮かべたままで謎のブタ男を睨みつける。
が、そこに込められている怒りは『軍曹さんを探すのを邪魔された事』よりも『せっかくストレス解消をしていたのにそれを邪魔された事』を原因とした物の割合の方が高かった。
恨みつらみが籠った真黒な醜い表情を前にしても、その男、キン肉スグルは一歩も引こうとしない。

「ええい、忙しいのは私も一緒じゃい!! それよりもオタマ超人よ、お前はなぜこんな事をしているのだ!? 誰かの命を奪おうとしているのかーっ!?」
「あぁ!? 僕がぶっ殺すのは怪しい奴だけですぅ!! いいから軍曹さん達を探す邪魔するんじゃね~ぞこのブタ野郎!!」
「ブ、ブタだとぉ~~!? …ま、まぁそれはどうでもいい! それで、なぜその軍曹とやらを探すのに街を焼き払う必要があるんだーっ!?」
「あ~~~~~~次から次へとごちゃごちゃうっせぇ奴ですぅ~~~!!」

(仕方のない事だが)自分が解説しても一向に理解する様子を見せないスグルに対して、タママが抱くストレスが加速度的に上昇していく。
それでなくても、久々のストレス解消タイムに水を差された事でこの筋肉ブタに対しての心証は最悪に近いのだ。
そんな相手に対して落ち着いて会話ができるほど、タママの今の精神は落ち着いていない。

(こいつ、僕に軍曹さんを捜させまいとしてるんですかぁ…? だとしたら、こいつもやっぱり怪しい奴ですぅ……ま、もしそうじゃなくてもあの根暗カレーに蘇らせりゃいい事ですぅ!)

遂に我慢の限界を迎えたタママは、勝手極まりない思考の末に『目の前のブタ男=怪しい奴』と認定し、殺し合いに乗っている参加者だと決めつける。
ここまで簡単に相手が殺人者だと決めつけるのも、先ほどの考察によりタママにとっての死のイメージが大分軽い物となっているからだ。
もし間違っていたとしても、すべてが終わった後にあの性悪メガネに蘇らせてもらえば無・問・題。
心の中でそう結論づけたタママは、謎のブタ男に向かって躊躇なくその牙をむく。

「これ以上僕の邪魔するってんなら!! お前もただじゃ置かねぇですぅ!! 喰らえ、タママインパクトォォォーーーーーー!!」
「ぐおぉーっ!?」

突然問答無用で放たれた衝撃波を、間一髪で回避するスグル。
意味も分からないままに襲い掛かってきた所を見るに、やはりこのオタマの超人も殺し合いに乗っていると見ていいのか…しばしの苦悩の後、スグルは体勢を立て直すと再度タママへと向き直る。

「お前にどんな考えがあってこんな行動をしているのかはわからんが、かと言って見過ごす訳にもいかん! 何があっても、そのバカなマネを止めてやろうーっ!」
「てめぇにバカなんざ言われたかねぇですぅ~!! こっちは止められる訳にはいかねぇ~んですよ、てめぇはやっぱり僕の敵ですぅ!!」

余りにも言葉足らずの会話の結果、二人の認識は修復不可能なまでに食い違う。
互いが、互いをこのデスゲームに乗った愚かな参加者であると認識した上で、二人の格闘士は無駄な争いを繰り広げようとしていた。

「悪いけど、お前みたいなブタ男にグダグダ構ってるヒマはないんですぅ! 一発で沈めてやるぜぇぇ~~~……!!」

そう言うや否や、タママはその両手を上空に掲げて一つの『感情』を集め出す。
続々とタママの手に集まりつつある物、それは『嫉妬』という闇よりも暗くねっとりとした負の感情だ。
そして、人が人の命を奪いあうこの会場の中では、『嫉妬』をはじめとするあらゆるネガティブな感情は掃いて捨てるほどに漂っている。
タママが『僕に嫉妬を分けてくれぇ~』とお決まりのセリフを言う必要すらないほどに負の感情が彼の手元へと集まり、ドス黒いエネルギー球が形成されていく。
そこにさらに、タママ自身の『嫉妬』…なぜ優しいサッキーが死んでお前のようなブタ男が生きているのか、という薄暗く燃える情念までもを籠める。
より高密度に、より重い質量へと変化していく黒い玉はますます成長していき、もはや1.5m程の大きさと成っていた。
自分が知るなかでも最高の出来栄えとなった必殺技、『嫉妬玉』を目の当たりにして、タママは激しく狂笑する。

「こ、こいつはすげぇ~…! 最高にネガティブって奴だぜぇぇ~~~!! ターマタマタマタマタマ!!」

一しきり笑い終わったところで、再び目の前の憎むべき敵、ブタ男を睨みつけるタママ。
哀れブタ男は、突然の強力な必殺技の発現に脂汗をかきながらその顔を強張らせている。
が、それでも尚ファイティングポーズを解かず一歩も引こうともしていないのは敵ながら天晴れと言った所か。
しかし、それを目の当たりにしてもタママは殺意を弱めようともしない。

「逃げねぇのは見上げた根性ですが、だからって見逃してやる気はさらさらねぇですよぉ~…!! これで終わりですぅ~!!」

その顔に狂った笑顔を張り付けたまま、タママはカエルの跳躍力でスグルの頭上高くへと飛ぶ。
スグルはそこまで来てもなお一歩も引く様子を見せない。見上げた根性ではあるが、勇気と無謀を履き違えてもいるですぅ…もしかしてビビって腰が抜けたんですかぁ、とタママはより一層嘲笑を深くした。

「『嫉妬玉』だぁ!! ぶっ潰れよおぉぉぉぉ~~~~!!」
「ぐ、グムーッ……!!」

キン肉マンは、深く歯噛みしながらも正面からタママの姿を受け止めた。
彼が逃げたり回避行動を取ろうとしない理由はただ一つ。それは、タママが予測したように恐怖という感情からでは無い。
今自分の目の前に迫っている『嫉妬玉』なる必殺技は、確かにまともに食らえば大ダメージを受けるのは必至だろう。
だが、それは悪魔将軍の最強の必殺技、地獄の断頭台には遠く及ばない物だとキン肉スグルは予測する。

「この一撃に耐えられずに、悪魔将軍とまともに戦える物か……!! 来るなら来てみるがいい!! 正義超人キン肉マンの名に懸けて、見事耐えきってみせるぜーっ!!」

体に強い力を込めて、誰よりも正義を愛する男は来るべき大ダメージに耐えようとする。
その眼が見ているのは、自分に襲い来る謎のオタマ超人ではなく、その先にいる存在……自分の最強の宿敵である、悪魔の名を冠する男。

そして、二人の男の意地と意地がぶつかり合うバトルの行方は―――――――


「えい♪」

ポチッ。

ズバシャァ!!

「ほげらぁぁぁ~~~~!?」

ドサッ。


突如としてタママを襲った謎の怪光線によって、あっさりと中断された。

「……………………」

黒い小悪魔はあっさりとその意識を手放し、それと同時に集められていた『嫉妬玉』も風によって散り散りとなる。
それを目をパチクリとしながら眺めていたスグルが意識を取り戻すのには、それなりの時間がかかった。

「………はっ! な、なんだーっ!? 今一体何が起こったんだーっ!? 新手の悪魔超人の攻撃かーっ!?」

ようやく現状を認識したスグルが慌てた様子で、光線が放たれた方向を確認してみれば。

「はぁ~…まさかこんなに便利な物だとは。凄い支給品もあったものですね~♪」

いつも以上に上機嫌そうな笑顔を浮かべて、奇妙な触覚の生えた黒いボールを手に持った謎の神官が、そこに立っていた。




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炎のキン肉マン キン肉スグル 類は友を呼…びすぎてませんかちょっと?
ゼロス
鬼になるあいつは二等兵 タママ二等兵






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