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止マラナイ! ◆NIKUcB1AGw



『全員聞こえているかな? まずは君達におめでとうと言ってあげるよ』

午後6時ちょうど。一秒のずれもなく予定時間ぴったりに、放送は始まった。
マイクを通した主催者の声は、当然湖のリングにいる四人の参加者にも届く。
悪魔超人・悪魔将軍。完璧超人・オメガマン。戦闘機人・ノーヴェ。そして「元」人間の超能力者・古泉一樹。
四人はそれぞれ胸中に異なる思いを抱きつつ、放送に耳を傾けていた。
ちなみに、メモを取る用意をしているのはノーヴェだけだ。古泉の右腕はあらかた再生したとはいえ、まだ指先が揃っていない。ペンを握るのには不都合だ。
悪魔将軍とオメガマンは、端からメモを取ろうという意志が感じられない。
共にノーヴェがメモを取っているのに、なぜわざわざ自分まで、と思っているのが傍目からもよくわかる。

(なんか理不尽だ……)

心の内に不満を抱くノーヴェだったが、そんなことはお構いなしで放送は進行していく。
まず告げられる重要項目は、禁止エリア。だがこれは、彼らの現在地である湖の近くが指定されることはなかった。
長期的に見た場合はともかく、今すぐ脅威になることはない。
とりあえずの安堵を抱くノーヴェだったが、それもほんのわずかな間のこと。
放送はすぐさま次の重要項目、死者の発表に移る。

『朝比奈みくる』

最初に呼ばれたのは、この場の参加者のうちオメガマン以外の三人がその死に大きく関わった女性の名前。
その名を聞かされて特に大きな反応を見せたのは、やはり古泉だった。
すでに死んでいるのはわかっているからといって、衝撃が小さくなることはない。
むしろ彼女の死に様が脳裏に蘇り、古泉の心にどす黒い何かが溜まっていく。
対照的に彼女を殺害した張本人である悪魔将軍は、もとより無表情であることを差し引いても涼しい顔である。

『加持リョウジ
 草壁サツキ
 小泉太湖
 佐倉ゲンキ』

そこから数名、彼らとは縁の無かった名前が並ぶ。
強いて挙げるなら、主催者との接点になるかと思われていた草壁サツキの名前が呼ばれた程度だ。

『碇シンジ』

二人目の知った名前は、悪魔将軍が与えた恐怖に心を蹂躙された少年。
彼の死を告げられたノーヴェは顔をしかめ、悪魔将軍は「ふん」とつまらなさそうに鼻を鳴らす。

『ラドック=ランザード
 ナーガ
 惣流・アスカ・ラングレー』

続く三人は、やはり一同が関わらなかった参加者たちの名前。

『キョンの妹』

(彼女も……亡くなられてしまいましたか……)

十人目に名を連ねたのは、古泉の知る少女だった。知っているとはいっても、古泉から見た彼女は単なる「友人の妹」。
合宿などである程度長い時間は共有しているが、たいして深い関係ではない。
それでも、知り合いが死ぬというのは堪えるものだ。

(せめて兄が変わり果ててしまったことを知らずにいられたのが、幸いといえば幸いでしょうか……)

そんなことを考えながら、郷愁に浸る古泉。だが彼のそんな思考は、次の瞬間木っ端微塵に砕け散る。

『以上十名だ』

「え?」

古泉は、思わず声に出して叫んでいた。死者の発表がこれで終わりなはずがない。
まだ一人、あと一人呼ばれていない男がいるではないか。

(なぜ……キン肉万太郎の名前が呼ばれないのですか!)

自分が殺したはずの男が、死者として発表されない。その現実に、古泉は大いに混乱する。
そこへ、さらに追い打ちをかけるような情報が主催者から告げられた。

『ただ―――残念なお知らせというか、改めて君達全員肝に銘じてほしい事があるんだ。
 最初の説明で言ったよね? 僕達に逆らっちゃいけないってさ。』

草壁タツオの声は言う。自分たちは何度か会場に出向いていると。
そのことは悪魔将軍たちもよく知っている。何せ、ついさっき会場へ降り立った長門有希と接触したばかりなのだから。
だが、彼らの興味をひいたのはその次の発言だ。何でも今回の死者には、主催者に反抗したことによって死亡した者が含まれているらしい。

(我々はあの小動物を拷問しようとしたが、制裁と呼べるほどのものは受けなかった。
 となると、主催者に殺されたという奴はそれ以上のことをしたのだろうな。
 そうだな……。主催者に問答無用で襲いかかるぐらいのことはしたか)

悪魔将軍が思考を巡らしている間に、放送は終わりを告げる。それに合わせて、将軍はいったん思考を打ち切った。
考えるべきことはいくらでもある。だが、それは後回しでもいい。今は、それよりも優先すべきことがある。
将軍は巨体をゆっくりと進め、古泉の眼前に移動した。

「古泉、私の言いたいことはわかっているな」
「ええ。キン肉万太郎の件、ですね」
「そのとおりだ。今回の放送で、奴の名前は呼ばれなかった。私は、主催者の連中の監視はかなりの高レベルだと考えている。
 先程の我々に対する素早い行動を見ても、それが裏付けられよう。つまり、キン肉万太郎が死んでいないことは確実。
 古泉、お前はしくじったのだ」

将軍の重厚な声を聞きながら、古泉は焦りを募らせる。敗北という失態を万太郎を殺すことで帳消しにしたはずが、それができていなかったのだ。
悪魔将軍の性格を考えれば、どんな罰が与えられてもおかしくない。それこそ、命を奪われることすら十分に考えられる。

(まずいですね……。ここで死ぬわけにはいきません。かといって、口先でごまかせるような状況でもありませんし……)

必死に頭脳をフル回転させる古泉だが、そう都合よく妙案は浮かばない。
ガイバーという鎧の上からでもうかがえるほどに、古泉は狼狽していた。
だが悪魔将軍が次に放った言葉は、古泉が予想だにしないものだった。

「そう不安がるな、古泉よ。何も取って喰おうというわけではない。
 今回は奴の死亡を疑わず、確認を怠った私にも責任がある」
「え?」

将軍から放たれた思いも寄らぬ言葉に、古泉の緊張は一瞬緩む。
だがそれは、本当に一瞬のことだった。

「だから……一撃で勘弁してやろう!」
「なっ!」

悪魔将軍は再生したての古泉の右腕をつかみ、砲丸投げの如く回転をつけて彼の体を宙に放り投げる。
わずかに気を抜いた瞬間を突かれ、古泉は混乱していた。ガイバーの能力を使って飛行するという考えにもいたらない。
だがたとえ古泉がそれに気づいていたとしても、この技を防げたかどうか。
それほどまでに、将軍の行動は迅速だった。
古泉の体を空中へ放り投げた将軍は、自らもそれを追うように跳躍する。
そして、落下する古泉の体に飛び乗るという離れ業を見せた。
さらに将軍は、古泉の頭部と足を掴む。
そして162㎏の体重を古泉の胴体に集中させ、キャンバスへと落下した。

「地獄の九所封じNo.1! 大雪山落とし!」
「うあああああ!!」

将軍の宣告と、古泉の悲鳴がほぼ同時に湖に響く。

「古泉! うわ、なんだよこれ!」

すぐさま古泉に駆け寄ったノーヴェは、古泉の状態を目の当たりにして驚愕する。
もともと黒いガイバーⅢの装甲だが、その背中の部分がさらにどす黒く変色していたのである。

「将軍! 古泉に何をしたんだよ!」
「地獄の九所封じ……。九つの急所を順に破壊していく、私のとっておきだ。
 何、心配するな。ガイバーである古泉なら、その内回復する」

将軍に詰め寄るノーヴェだが、将軍はまるで相手にしない。
事実、彼の言うとおりに古泉の背中は徐々に再生を始めていた。
だがそれは、彼に新たな苦痛をもたらすことになる。

「う……うあああああ!!」

古泉の口から、再び苦悶の声が漏れる。
地獄の九所封じとは、攻撃した部位を完璧に破壊する技だ。
破壊された部位は完全に感覚を失い、何も感じ取ることができなくなる。
では、その破壊された部位が再生されればどうなるか。当然、感覚も戻ってくる。
そしてその感覚には、「痛覚」も含まれているのだ。

「が……あああああ……!!」

古泉とて、このバトルロワイアルに参加させられてからというもの様々な痛みを味わわされてきた。
だが、「回復することによって生じる痛み」など異常なことこの上ない。
未知の感覚に古泉は苦しみ、恥も外聞もなくわめき散らす。

「ひどいじゃないか、将軍! たしかに今回のことは古泉のミスかもしれないけど、あそこまですることは……!」
「ひどい? 笑わせるな、ノーヴェよ。悪魔がひどいことをして、何の問題があるというのだ?」
「なっ……!」
「将軍の言うとおりだな。それとも、優しい言葉で慰めてでも欲しかったのか?
 グオッフォッフォッフォ!」

将軍の言葉に、反論できないノーヴェ。そこにオメガマンの嘲笑が追い打ちをかける。

「ちっ……!」

ノーヴェはただ舌打ちをし、奇妙な痛みに苦しみ続ける古泉を見つめることしかできなかった。


◇ ◇ ◇


数分後。一同は回復したノーヴェのウイングロードで橋を作り、湖の南・F-9の岸に移動していた。
古泉は自力で歩ける程度には回復したものの、まだ苦しいらしく断続的に肩を上下させていた。

「さて、古泉にノーヴェよ。貴様らに新たな指令を与える」

二人の配下の前に仁王立ちしながら、悪魔将軍は言う。

「水の流れから考えて、キン肉万太郎が生きているならばここから東の川岸に流れ着いた可能性が高い。
 貴様らにはこれよりそこへ赴き、今度こそ確実に奴を殺してきてもらう」
「ちょっと待ってくれよ、将軍」

将軍から下された指令に、ノーヴェはすぐさま異を唱えた。
「湖からそのまま川に流されたら、禁止エリアになってるE-10に突っ込む可能性があるだろ?
 もしあいつがそうなってたらどうするんだよ」
「少しは頭を使え、ノーヴェ。その可能性はないに等しい」
「なんでそう言えるんだよ?」
「だから頭を使えといっているだろう。主催者どもは最初のルール説明の時、首輪が発動する条件として禁止エリアへの侵入を挙げていた。
 つまり禁止エリアに入っていたのなら、キン肉万太郎は死亡しているはずなのだ」
「いや、だからさ。もう死んでたらあたしたちが殺すなんてできないじゃないか」
「やれやれ、ここまで言われてまだわからんとはな」

まだ頭上に疑問符を浮かべているノーヴェに対し、オメガマンが失笑を漏らす。

「うるさいな! お前は黙ってろ!」

思わず怒鳴りつけるノーヴェだったが、それでオメガマンが黙るはずもない。

「いいか、今は放送直後なんだぜ? あいつが湖に落ちた時間を考えると、順調に川を流された場合放送前に禁止エリアに到達しているはずなんだ。
 そうしたらどうなる? さっきの放送で名前を呼ばれるはずだろう」
「あっ!」
「ようやくわかったか。あいつの名前が放送で呼ばれなかったってことは、イコールどこかで陸に上がったってことなんだよ」
「そうか、そうだよなあ。あー、なんでこんな簡単なことがすぐに理解できなかったんだ!」
「まったくだ」
「うるさい! 自分で言うのはいいけど、他人に言われると腹立つんだよ!」
「さて、そろそろいいか?」

問答を続けるノーヴェとオメガマンの間に、将軍の声が割って入る。

「貴様らに与える時間は、次の放送までだ。次の放送でもキン肉万太郎の名前が呼ばれなかった場合……私の我慢もそれまでだ。
 貴様らには、役立たずとして死んでもらう」
「そ、そんな! いくらなんでもそりゃないだろう!」
「黙れ!!」

たまらず抗議の声をあげるノーヴェ。だが将軍は、それを一喝する。

「少し目をかけてやったぐらいで調子に乗るな。悪魔超人にとっては実力こそが全て。
 役立たずの部下など、この悪魔将軍には必要ないのだ! すでに貴様らには、十分に情けをかけてやった。
 それでも結果が出せぬと言うのなら、命で償うのが当然のこと。
 人間界には『仏の顔も三度まで』という言葉があるそうだが、悪魔に仏と同じレベルの慈悲を期待されてもらっても困るのだ」
「ぐっ……!」

将軍の放つ、圧倒的な威圧感。それを目の当たりにして、ノーヴェは一切の反論ができなくなってしまう。
一方それとは対照的に、これまで沈黙していた古泉がここで口を開く。

「任務の件は了承しました、将軍。ですが、俺からも一つ質問させてください」
「なんだ?」
「俺たちがキン肉万太郎討伐に言っている間、将軍たちはどうなさるおつもりですか?」
「そのことか。ちょうど今から説明しようと思っていたところよ」

そう言うと、将軍は自分の荷物から地図を取り出す。

「私とオメガマンは、ここに向かうつもりだ」

悪魔将軍が指さした地点。そこは、G-7の採掘場だった。

「採掘場、ですか。そこは……」
「うむ、貴様とキョンとやらが待ち合わせをしていた場所だ。すでに待ち合わせの時刻は過ぎているが、この環境では予定通り行動できる可能性は低い。
 現にこうして、貴様は待ち合わせの時間になっても指定した場所に行けていないのだからな」
「つまり、彼も遅れてやって来る可能性がある……ということですね」
「そういうことだ。奴が来たのなら、私の部下として使えるかどうか見極めさせてもらう。
 来ないようなら、そのまま周辺の探索に移る」
「んー、でも……。古泉との待ち合わせなのに将軍たちが行ったら、そのキョンって奴は警戒するんじゃないのか?」
「別に問題はない。目的は奴を仲間にすることではなく、配下に置くことだ。
 抵抗するようなら、力ずくで言うことを聞かせてやればいい」
「だな」

悪魔将軍の発言に、さも当然とばかりにうなずくオメガマン。そのやりとりに、ノーヴェは額にうっすらと汗を浮かべてしまう。

「何か異論はあるか、古泉」
「いえ、ありません」

その返答は、偽らざる古泉の本心だった。
もはや「彼」は、自分にとって敵なのだ。悪魔将軍にどのような扱いをされようと、良心が痛むことはない。
むしろ、将軍に逆らって腕の一本でも潰してくれれば万々歳だ。
とはいっても、自分同様ガイバーとはいえ本来ただの高校生である「彼」がそこまで出来る可能性は低いが。
宝くじで一等が当たる確率といい勝負だろうか。

「それでは……そうだな、集合場所は博物館としておくか。時間は放送ギリギリまでは待つが、出来れば一時間前には来られるようにしておけ。
 時間が余るようであれば、貴様らで判断してするべきことを決めろ。私の指示がなければ動けないわけではないだろうからな」
「了解しました」

将軍の指示に、古泉は素直にうなずいてみせる。

「では、これより別行動に移る。吉報を期待しているぞ」

古泉とノーヴェは東へ。悪魔将軍とオメガマンは西へ。それぞれ歩き始める。
だが、将軍はふいにその足を止めた。

「おお、そうだ。私としたことが忘れるところだった。ノーヴェ、こちらへ来い」
「ん? なんだよ」

いざ出発と気合いを入れたところで呼び止められ、ノーヴェはいかにも不満そうな顔で将軍に駆け寄る。

「とっておきのアドバイスを、貴様にくれてやろう。耳を貸せ」
「本当か!」

一転、明るい表情に切り替わるノーヴェ。

「いいか、よく聞け」


◇ ◇ ◇


夜の闇に包まれた森の中、二人の超人が無言で進んでゆく。

(全く、悪魔将軍と二人きりとはな……。今のコンディションでは1対1で戦っても勝てん。
 あっちもそれがわかっているから、平気で俺に背中を見せていやがる。くそっ、忌々しいったらないぜーっ!)

苛立ちをそらそうと、オメガマンは意味もなく夜空を見上げた。すると彼の視界に、空を突き進む何かが映る。

「将軍殿、何かが飛んで来るみたいだぜ。すぐ近くってわけじゃあないが、それなりに近い場所には落ちそうだ。
 どうする、見に行くか?」
「放っておけ。ここは戦場だぞ? 飛び道具が外れて、あさっての方向に飛んでいくことも十分にあり得る。
 そんなものをいちいち気にしていたらきりがないわ」
「それもそうだな」

オメガマンの提案を、悪魔書軍は一蹴。オメガマンの方も将軍の言い分に納得したらしく、それ以上話を広げることはなかった。

「それよりもオメガマンよ、貴様には聞きたいことがあったのだった。いい機会だ、道すがら聞かせてもらうぞ」
「聞きたいこと? 俺が持っている情報は、さっき全部まとめて話したぜ? 今更何を……」
「いや、まだ聞かせてもらっていないことがある」

それは、オメガマンにとって話すまでもない些細なこと。だが悪魔将軍にとっては、おのれの世界観すら揺るがす重大なこと。

「貴様、なぜ悪魔騎士の亡骸をその身に宿しているのだ?」


【F-8 森/一日目・夜】

【悪魔将軍@キン肉マン】
【状態】健康
【持ち物】 ユニット・リムーバー@強殖装甲ガイバー、ワルサーWA2000(6/6)、ワルサーWA2000用箱型弾倉×3、
     ディパック(支給品一式、食料ゼロ)、朝比奈みくるの死体(一部)入りデイパック
【思考】
0.他の「マップに記載されていない施設・特設リング・仕掛け」を探しに、主に島の南側を中心に回ってみる。
1.古泉とノーヴェを立派な悪魔超人にする。
2.強い奴は利用、弱い奴は殺害、正義超人は自分の手で殺す(キン肉マンは特に念入りに殺す)、但し主催者に迫る者は殺すとは限らない。
3.殺し合いに主催者達も混ぜ、更に発展させる。
4.強者であるなのはに興味
5.採掘場に向かい、キョンとの接触を試みる。


【ジ・オメガマン@キン肉マンシリーズ】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、アシュラマンの顔を指に蒐集
【持ち物】デイパック(支給品一式入り)×3、不明支給品1~3、5.56mm NATO弾x60、マシンガンの予備弾倉×3、夏子のメモ
【思考】
1:皆殺し。
2:今は悪魔将軍に従う。だが、いつか機を見つけて殺す。
3:完璧超人としての誇りを取り戻す。
4:スエゾーは必ず殺す。
5:スバルナカジマンにも雪辱する。
※バトルロワイアルを、自分にきた依頼と勘違いしています。 皆殺しをした後は報酬をもらうつもりでいます。
※Ωメタモルフォーゼは首輪の制限により参加者には効きません。


◇ ◇ ◇


悪魔将軍とオメガマンが言葉を交わし始めたのと、ほぼ同時刻。
古泉一樹とノーヴェは、湖の畔を北上していた。

「古泉、本当に大丈夫か? なんなら肩貸すぞ?」
「いえ、お気遣いなく。本当に大丈夫ですので」

後ろを歩く古泉のことを、心配そうに見つめるノーヴェ。だが古泉は、彼女の手助けを丁重に断る。

「そうか。無理はするなよ」
「ええ。お気遣いは素直に受け取っていきます」

なおも古泉に声をかけるノーヴェの顔は、いかに夜といえども妙に暗い。
それは決して、古泉の体調に対する不安だけが原因というわけではなかった。
もっとも、もう一つの不安も古泉に関するものではあるのだが。

「…………」
「どうかしましたか、ノーヴェさん」
「いや、なんでもない」

今度は逆に、古泉がノーヴェを心配する。しかし、ノーヴェは素っ気ない言葉でそれをはねのける。
今、彼女の頭の中には、別れる直前に将軍に言われた言葉が渦巻いていた。


◇ ◇ ◇


「古泉に対して、警戒を怠るな」

耳元で将軍がささやいたその言葉は、刃物の如くノーヴェの心を深く切り裂いた。

「い、いや、ちょっと待ってくれよ。なんだよそれ。なんで古泉のことを……」
「奴はお前と違い、積極的に私の元についたわけではない。今のところは恐怖でつなぎ止めてはいるが……。
 いつか反旗を翻すかもしれぬ。警戒しておくに越したことはない」
「……考え過ぎじゃないのか? 今更あいつがあたしたちを裏切るわけ……」
「他人を信じるな、ノーヴェよ」

納得がいかない様子を隠そうともしないノーヴェに、将軍はきっぱりと言い放つ。

「悪魔とは孤独なもの。仲間を作るなとは言わぬが、信じすぎてはならん。
 他人などというものは、いつ裏切るかわからぬからな。最後に信じられるのは、自分だけよ」
「……いくら将軍でも、今度ばかりは言うこと聞けないよ。あたしは古泉を信じる!」

いやなものから目を背ける子供のように、ノーヴェはがむしゃらな走りで将軍の前から立ち去る。
将軍はその後ろ姿に、苦々しい視線を送っていた。

「愚か者が……。足をすくわれても知らぬぞ……!」


◇ ◇ ◇


(たしかに古泉は、あたしと違って強さを求めて将軍の下についてるわけじゃない。
 目の前で友達を殺されたり、ひどいこともされてる。けど……将軍はともかく、あたしを古泉が裏切るとはどうしても考えられない。
 あたしたちはもう、仲間なんだから。ああもう、こんなぐちぐち悩むなんてあたしらしくないな……。
 そうだよ、悩むくらいなら直接本人に確かめればいいんだよ! きっと古泉なら、あたしの望む答えを返してくれる!)

考え抜いた末に、ノーヴェは一つの結論にたどり着いた。そしてそれを、即座に実行に移す。

「古泉!」
「ノーヴェさん」

だが、発言のタイミングが古泉とかぶってしまう。数秒の気まずい沈黙のあと、改めて古泉が口を開いた。

「お先にどうぞ、ノーヴェさん」
「い、いや、いいよ。先に古泉が話してくれ」
「ですが、俺の話は少々伺いづらいことについてなので……。そちらの話を先に済ませてしまった方がいいと思うのですが」
「いや、それはこっちも同じなんだ。だから先に話していいぞ、古泉」
「わかりました、では失礼して……」

咳払いを一つ挟むと、古泉は単刀直入に話題を切り出した。

「ノーヴェさん。あなたはこのまま、悪魔将軍の下にいるつもりですか?」
「!!」

古泉のその言葉に、ノーヴェは金槌で殴られたかのような衝撃を受けていた。
それでも極力冷静を装い、ノーヴェは言葉を返す。

「どういう意味だよ」
「どうもこうも、そのままの意味ですが」
「……なあ、古泉」

じわじわとこみ上げてくるいやな予感を抑え込みつつ、ノーヴェは古泉に語りかける。

「お前が将軍を気に入らないってのは、わからないでもない。ひどいこともたくさんされたしな。
 だけど、それはあたしたちに力がなかったからだ。もっと強くなれば、将軍を見返してやることも出来る。
 だから今は変なことを考えずに……」
「俺はあなたのことについて聞いたんです、ノーヴェさん。俺の話は聞いていない」

冷徹さが入り交じった声が、ノーヴェの言葉を遮る。
ノーヴェは、周囲の気温が急に下がったかのような錯覚さえ感じていた。

「あたしは強くなりたい。これ以上大切なものを失わないために。これ以上悔しい想いをしないために。
 だから強くなるために、今は将軍に従う。それだけだ」
「そうですか……」

古泉が、一歩距離を詰める。

「本当に、残念です」

その刹那、古泉は迷うことなくノーヴェに回し蹴りを叩き込んだ。

「ぐっ!」

回し蹴りを、腕でガードするノーヴェ。だが直撃を避けた代わりに、大きくバランスを崩してしまう。

「古泉、てめえ……。まさか本気で裏切るかよ!」
「……」

吠えるノーヴェだが、古泉はそれに応えない。ただ、黙々とノーヴェに対する攻撃を続ける。

「ふざけるなよ! あたしとお前は仲間だろう! なんで戦わなきゃいけないんだよ!」

なおもノーヴェは、古泉に訴えかける。だが、やはり古泉は応えない。
そしてその直後、ガードをかいくぐり古泉のアッパーカットがノーヴェの顎を捉えた。

「……っ!」

ノーヴェの体が、わずかに宙を舞う。そのまま、彼女は地面に叩きつけられた。

「殺すべき敵に従うことを選んだ人間を、仲間と認めるわけにはいきません」

薄れゆく意識の中で、ノーヴェは古泉のそんな言葉をたしかに聞いていた。


◇ ◇ ◇


古泉一樹は、苦しんでいた。
心臓が痛いほどの頻度で脈動している。
ガイバーになって消滅しているはずの消化器系が、嘔吐感を訴えてくる。
頭がインフルエンザにでもかかったかのように熱い。

「ぐ……あ……あ……」

古泉の口からは、意味のない言葉が漏れる。本当に何の意味もない行為だが、それでも何らかの行動をしなければ気が狂ってしまいそうなのだ。

自分を仲間と呼び、信頼してくれた相手を裏切った。そして、気絶するまで痛めつけた。
その事実は、古泉の心に多大なストレスをもたらしていた。

こうするのがベストだった。今後また、悪魔将軍が自分に別行動を許してくれるとは限らない。
彼の監視下から逃れるには、今やるしかなかったのだ。
ましてやこれは、一度は死んだと思ったキン肉万太郎と改めて接触できるチャンス。
是が非でも、彼と接触して協力を取り付けたい。
そのためには、ノーヴェの存在は邪魔にしかならない。だから倒した。
だがいくら理屈で納得しようとしても、罪悪感は消えてくれない。

ノーヴェは、自分が襲われても本気で戦おうとはしなかった。
もし彼女が本気だったのなら、こんなに早く決着はついていなかっただろう。
それ以前に、古泉が勝てていたかどうかも怪しい。
ノーヴェは、心の底から古泉を仲間と認めていたのだ。だから、仲間と戦うことをよしとしなかった。
そこまで自分を信頼してくれた相手を裏切った。説得に耳を貸さず、一方的に叩きのめした。

なぜだ。なぜこんなことになってしまった。

「悪魔……将軍……!!」

やり場のない感情を憎悪に変え、古泉は絞り出すように憎き男の名を口にする。
悪魔という言葉すら生ぬるい、他者に害しかもたらさない邪悪の権化。
あの男との接触が、自分の全てを狂わせた。あいつさえいなければ、自分がこんなに苦しむことはなかった。
あふれ出す憎しみに全身を焼かれ、古泉は関節がきしむほどに拳を握る。

(後悔させてあげますよ、今一度俺を自分の目の届かぬところに置いたことをね……。
 必ずや、いずれあなたを地獄に送ってさしあげます……)

激しく燃えさかる憎悪の炎を胸に、古泉はゆっくりと歩き出した。
当面の目的は、キン肉万太郎を見つけ出すこと。
殺すためではない。悪魔将軍に立ち向かう同志として手を組むためだ。
ノーヴェは、そのまま放置しておく。
彼女を生かしておけば、いずれ悪魔将軍に自分の裏切りが伝えられてしまうだろう。
それを考えれば、本来はここで彼女を殺していくのがベストだ。
だが、出来ない。今の古泉には、これ以上彼女を傷つけられない。
可能ならば自分の叛意を悟られぬまま、不意打ちの一撃で気絶させたかった。
だがノーヴェも、わずかながら古泉の裏切りを予想していたらしい。それ故に、不意打ちというわけにはいかなかった。
彼女の古泉に対する信頼を考えると、悪魔将軍の入れ知恵だろうか。
後悔は残るが、すでにやってしまったことをどうこう言ってもどうしようもない。

(出来ればもう、あなたと会わないことを祈りますよ。特に、敵同士としてはね)

袂を分かった少女への複雑な思いを胸に、ガイバーⅢの漆黒の体は夜の闇に溶けていった。


古泉は気づいていない。
悪魔将軍への憎しみを募らせるほど、自分の心が憎き相手に近づいていっていることに。
自分の行為が仲間の信頼を裏切るという点で、自分を激怒させたキョンの行動と同質であることに。

古泉は知らない。
皮肉にも彼が捜す相手である万太郎は、ちょうど同じ頃に憎しみへのこだわりを捨てたことを。
今の彼と万太郎の精神が、相容れないものとなっていることを。


だが彼には、もう後退も停止も許されてない。
もはや古泉一樹は――





止マラナイ

【E-09 湖畔/一日目・夜】

【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】疲労(中)、ダメージ(中)、悪魔の精神、キョンに対する激しい怒り
【装備】 ガイバーユニットⅢ
【持ち物】ロビンマスクの仮面(歪んでいる)@キン肉マン、ロビンマスクの鎧@キン肉マン、デジタルカメラ@涼宮ハルヒの憂鬱(壊れている?)、
     ケーブル10本セット@現実、 ハルヒのギター@涼宮ハルヒの憂鬱、デイパック、基本セット一式、考察を書き記したメモ用紙
     基本セット(食料を三人分消費) 、スタームルガー レッドホーク(4/6)@砂ぼうず、.44マグナム弾30発、
     コンバットナイフ@涼宮ハルヒの憂鬱、七色煙玉セット@砂ぼうず(赤・黄・青消費、残り四個)
     高性能指向性マイク@現実、みくるの首輪、ノートパソコン@現実?
【思考】
0.復讐のために、生きる。
1.悪魔将軍と長門を殺す。手段は選ばない。目的を妨げるなら、他の人物を殺すことも厭わない。
2.キン肉万太郎を見つけ、仲間になってもらう
3.時が来るまで悪魔将軍に叛意を悟られなくないが……。
4.使える仲間を増やす。特にキン肉スグル、朝倉涼子を優先。
5.地図中央部分に主催につながる「何か」があるのではないかと推測。機を見て探索したい。
6.デジタルカメラの中身をよく確かめたい。


【ノーヴェ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】 気絶、疲労(小)、ダメージ(中)
【持ち物】 ディパック(支給品一式)、小説『k君とs君のkみそテクニック』、不明支給品0~2
【思考】
0.もっともっと強くなって脱出方法を探し、主催者を蹴っ飛ばしに行く。
1.悪魔将軍の命令に従い、キン肉万太郎を殺す?
2.ヴィヴィオは見つけたら捕まえる。
3.親友を裏切り、妹を殺そうとしたキョンを蹴り飛ばしたい。
4.タイプゼロセカンドと会ったら蹴っ飛ばす。
5.強くなったらゼクトール、悪魔将軍も蹴っ飛ばす?
6.ジェットエッジが欲しい。


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憎らしさと切なさと心細さと 悪魔将軍 将軍様へのGE・KO・KU・ZYO
ジ・オメガマン
ノーヴェ Grazie mio sorella.
古泉一樹 I returned






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