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統ばるーただ一人を助けるその為に ◆MADuPlCzP6



走る、走る、走る。
薄闇色に染まった樹々の間を縫って獣が走る。
聞こえるのは彼らが風を切る音と、一等空尉と空曹長、魔導師の杖の語るそれぞれのこれまで。
彼らが青い髪の少女を連れ帰った時、普段は温かな癒しを提供する温泉は救命の戦場となった。

「高町殿ーっ!布団、布団を持ってきたでありますっ!!!」
「ケロロ!ありがとう!」
「敷いたであります!さぁスバル殿をこっちへ…」
「仰向けに寝かせてはいかん!吐いた血が気道に入らないように横向きにして……」
「がうっ!」
「スバル!スバルッ!しっかりするです~!!」

部屋の中に響く声。室内が焦りの色に満ちていく。
ケガの状態を見るためになのはがスバルの上衣をはぎ取る。
外気に晒されてふるりと震える青の戦乙女の裸身、その肌には傷のないところの方が少なかった。
打撲の赤紫と青紫、擦過傷・裂傷の血色に火傷の赤色、健康な人間の体にはない色がスバルの肌にはあふれていた。

「高町殿!早く治療を……」
ナイフで刺された自分を治したなのはならスバルもきっと治せる
そう思いながら視線を移したケロロが見たものはきわめて険しい表情をするなのはとリインフォースの姿であった。

「……どうしよう」
ーーー傷が…ない。そう言ってなのはが言葉を失う。
スバルの体幹には大きな裂傷は見当たらなかった。あるのは無数のひどい打撲痕だけ。
つまり口から吐き出される血液はどこか内臓にダメージを負ったことが原因であるということ。
けれどそれではーーーーー
「これじゃあどこから出血してるのかわからないです!」

うつむいたリインはちいさな声でこう続ける。
「どこに手をつけていいかわからない状態では治癒魔法は……かけられません。」

なのはもリインフォースⅡも治療魔法の専門家ではない。
どちらかと言うと戦闘や指揮といった荒事のほうを得意とする管理局局員である。
手探りで治療して、うっかり腹の内部にたまった血液がそのままになってしまえばより重篤な状態に陥ることになりかねない。
災害救助などの時に重傷者に緊急措置として治癒魔法をかけることもあるが、
それは後方に医療スタッフや治癒魔法に長けた魔導師が待機していることが前提の措置なのだ。

もともと彼女らの使う魔法にどんな大怪我からもあっさり快復というような万能の治癒魔法というものは存在しない。
さらに制限下で、治癒魔法の効力がせいぜい大人の手の平程度の二人がこのまま内臓のどの部分が損傷しているのかわからずに治療を続ければ、肝心なダメージの大きい臓器にたどり着くまでにスバルが力つきてしまう可能性がある。
故に、今魔導の力を持つ二人はスバルの治療を開始することができない。

流れ出た血のにおいが鼻をつく。
ひゅうひゅうとスバルの苦しそうな呼吸音が部屋の中に落ちる。

なにがエースオブエースだ!肝心な時になんの役にも立たないくせに……………!
なのはが唇をかみしめてスバルをみつめる。
その愛らしい桜色の唇にぷつりと血の玉が浮かんだ。
「ゲロゲロリ…」
万事休すか、そんな考えがケロロの頭の中を支配し始めた時、静かな老人の声が部屋を切り裂いた。



「彼女の内臓は我々と同じかね?」

その部屋にいる者すべての視線が一人の老年男性に集まる。

「彼女の内臓の機能や構成は普通の人間のものと同じだろうか?」
冬月はスバルの腕の傷からのぞくケーブルや金属の基礎フレームを見ながら再度問う。

「スバルは…機械と生体を融合させた戦闘機人です。
…でも飲食は私たちと同じようにしていたので、内臓はたぶん私たちと同じだと思います」
なのはの返答を聞くと冬月はスバルと行動をしていたリインに視線を移して質問を続けていく。
「彼女が血を吐いたときに咳は一緒に出ていたかね?」

涙を溜めた目をぱちくりとさせてリインが口を開く。
「はい!最初は咳き込んだと思ったら口から血が出ていました!そのあとしばらく移動して大声を出した後も…です」
「そんな状態で行動を続けたというのか…しかし…ふむ、彼女がどういった攻撃を受けたのかわかるかね?」
少し考えるようにつぶやいてから冬月は次の質問をリインに投げかける。

「えっと、リインはスバルが戦闘中に気絶しちゃってましたので…」
『スバルは身体の前面部に衝撃波のような攻撃を受けました。その少し前に背中から木に叩き付けられるダメージも受けています。』
言い淀むリインに変わってレイジングハートがその質問に答えた。

「冬月…さん?」
大きく目を見開いたなのはがぽろりと冬月の名を口にする。
それに気づいた冬月は懐かしむような目をして言葉を紡ぐ。
「昔、医者のまねごとをしていた時期があってな。あまり高度な技術は持ち合わせていないが…少しならわかることもある。
 もっとも検査機械も治療器具もないここではそんなに役には立てないがね。
 それでも、君たちの口ぶりからすると…ある程度の損傷位置がわかれば何とかなる可能性はあるのだろう?」

「はい…はい!!!」
なのははぱっと明るくなった顔をぶんぶんと縦に振る。幼くなったつぶらなその目の端にはうっすらと涙が浮かんでいた。
ふっと微笑んでから冬月はまた厳しい顔で負傷の様子を聞き始める。
スバルが倒れた時の体勢や攻撃の強さ、吐き出した血の様子など過不足無くスバルのケガについて質問を重ねる。



ひとつ、ため息をついて老紳士は審判をくだした。
「おそらく…彼女の負傷箇所は呼吸器官だろう。消化器官からの吐血の場合は咳は出ない。
打撲痕の位置とあわせるとおそらく気管支か肺、ここからこの範囲の可能性が高い…絶対とは言い切れないがね」
損傷があるであろう臓器の場所を指し示した冬月は、スバルを見ていた顔をなのはとリインに向ける。
「これで彼女を治すことはできるか?」
その声になのはとリインが大きくうなずく。
静かに、決意を込めたまなざしで。

リインとレイジングハートを構えたなのはがスバルの体へ手を伸ばす。
そこにもう一対すっと差し出された手があった。
その手を視線で辿るとそこにいたのは妖精型のモンスター・ピクシーだった。
「えっと、あなたも治療ができるの?」
ピクシーはにこりと笑顔で答えた。

「冬月殿!何か我が輩にもできることはないでありますか!?」
三人がスバルを救おうとする姿に突き動かされるようにケロロが冬月に問う
「そうだな、ケロロ君にはお湯を張ってもらおうか。彼女は血を失って体温が下がっている。室温を上げた方がいいだろう」
「了解であります!冬月殿!」
湯を求め温泉へと駆け出すケロロ。その後にトトロと獣達が続く。
ケロロを見送った冬月は自らの力で事足りそうな手足に応急処置を施す準備を始めた。

統ばる(すばる)ーそれは一つに集まっているという意味。
その響きと同じ名を持つ彼女にここにいるすべての力と意思が集う。
それはきっと、偶然ではない。

なのはが、リインが、ピクシーが、改めてスバルの体に手をかざす

『Physical Heal』
ほわりと三対の手から光が溢れた
それは、思いと祈りを込めた癒しの光ーーーーーー



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揺るぎない力と意志貫くように(後編) スバル・ナカジマ 祝福の風 I reinforce you with my power.
高町なのは
トトロ
冬月コウゾウ
ケロロ軍曹






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