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トゲトゲハート 嫉妬のしるし ◆YsjGn8smIk



「おや、あれは……」

ゼロスは焦げた町の一角でその人影を見かけて思わずそう呟いてしまった。
その呟きが聞こえたわけでもないだろうが、向こうもタイミングよくこちらに気付いたようだった。

「ゼロス君! なんでこんな所にいるんじゃ?」

驚いたようにそう叫びながら、何か大きな物を背負ったスグルがガレキの山を掻き分けながら駆け寄ってくる。
ゼロスが頬を掻きながら事情を説明しようと口を開いた瞬間――。

「えー、実はですね……」
「あーーー! お前はボクの邪魔をしたブタ男、略してブタオー!!」

隣のタママが急に絶叫をあげた。

「ぶ、ブタオーじゃと!?」
「というか略す意味あるんですか、それ……」

つっこむスグルとゼロスを無視して、まるでチンピラのように瓦礫を蹴飛ばしながらタママはスグルへとにじり寄った。

「ブタオー、あの時は世話になったぜェ! 礼は百万倍にして返してやるですぅ!」
「礼? なあに正義超人として当然の事をしたまでだ、別に礼などいらんが……どうしてもと言うのなら牛丼でも奢って――」

「そっちの礼じゃねえェェェ!!」
「あ、ダメ? グム~、牛丼は高すぎたという事か」
「おいィ! ボクをあまりなめるんじゃねーですよブタオー!!」

フシュルルと、攻撃態勢をとるタママを見て慌ててスグルは手を振った。

「お、怒ったのか? か、軽い冗談ではないかーーーっ!」
「ボクをバカにしたことを地獄で後悔するがいい~~ッ! タママインパ――」
「はい、そこまでです」

ゼロスは口から怪光線を発射しようとしたタママの頭を上から強制的に閉じた。

「ぷごぼっ!!!」

当然、怪光線はタママの口の中で炸裂し、タママは口から黒い煙を噴きながらのた打ち回る。
それを綺麗に無視してゼロスはいつもの笑みを浮かべながら遮られた説明を再開した。

「まあ、ご覧のようにタママさんが目を覚ましちゃいましてね。とりあえず一緒にケロロ軍曹を探すことになったんですが
…………どうしましょう、コレ」

のた打ち回るタママをちらりと見ながらゼロスは聞いてみた。
スグルもそれをちらりと見て冷や汗を流して頭を抱える。

「うーむ……どうしようと言われても……ゼロス君、どうしよう?」
「僕としてはさっさと始末しちゃったほうが世のため人のためだと思うんですけどね」
「待て待てーい! そうじゃ、ケ、ケロロ軍曹と合流すればきっとタママだって落ち着いてくれるはず……あーそうそう!
 それにケロロ軍曹の情報も手に入ったんだ!」
「ごぶう……ごふう……なんだってぇ!?」

その瞬間、地面を転がっていたタママがシュタっと跳ね起きてスグルに掴みかかった。

「ブタオー! 軍曹さんをどこで見やがったですぅ!?」
「わ、わたしは見とらん。見たのは――ハム、すまんが説明してやってくれ!」
「む、ムハー……そこで我輩に振るんですかぁ」

スグルに背負われていたウサギのような獣人が嫌そうな声をあげた。

「スグルさん、その方は?」
「おお、紹介が遅れたな。こやつはハム、わたしたちと一緒に主催者に立ち向かってくれるそうじゃ!」
「ああども、よろしく。……まあその、我輩は確かに良い情報をもってますが」
「情報……というとケロロ軍曹のですか?」
「え、ええ、まあ」

食い入るように見つめる――というか睨んでいる――タママに怯えたように、ぽつりぽつりとハムはそう答えた。
そして次の瞬間、タママが動いた。
躊躇なくハムへと飛び掛ると、下から睨みあがるように脅し始めた。

「さっさと説明しやがれェェ! さもないとこんがりと焼いて食っちまうぜェェ!?」
「なんですとー!?」
「ウラァーー! 食われたくなかったらさっさと愛しの軍曹さんの情報を――」
「タママさん……少しはしゃぎ過ぎじゃありませんか?」

タママの言葉を遮ってゼロスはその頭の上にポンと手のひらを乗せた。笑顔で。

「う”…………ま、まあ少し急ぎすぎたかもしれないですねぇ」

それで診療所で見せた火炎球(ファイアーボール)の威力を思い出してくれたのか、タママもそう同意してくれた。
今度はゼロスを睨み始めたが。

「おお、ゼロスくんは随分タママと仲良くなったんじゃな」
「そう見えますか? ……まあそれはさておきハムさん、話を聞かせてください」
「ムハ、分かりました。ではまずはこの火災の原因となった事件の事をお話しましょうか」

先を促すとそういってハムは話し始めた。

強力な爆撃を行った者たち。
逃げるケロロ軍曹たち。
そしてスグルと出会ったことを。

ハムが一通りの事を簡潔に説明し終えたのを確認してから、ゼロスはふむ……と一息ついてから結論付けた。

「なるほど……ハムさんの情報が確かなら時間的に見てケロロ軍曹はすでに近くにはいないでしょうね」

その言葉にハムも頷いて同意した。

「同感ですな。瓦礫に埋まったりしてたらあの環境です、火災に巻き込まれて既に死んでいるでしょう。
 ですが彼らは放送では呼ばれなかった。そこから推察すると――」
「無事逃げ延びた公算が高い、という事ですか」
「ムハ、その通りです」

それを聞いてタママがぱあっと表情を明るくした。

「じゃあ軍曹さんたちは無事だっていうんですかぁ!」

ケロロ軍曹の無事を知ったせいか、妙に可愛らしい表情でそう聞いてきた。
やはりその変わり様にも怯えたのか、ハムが幾分及び腰になりながらも答えた。

「ま、まあその可能性が高いでしょうな」
「よかったですぅ……心配でボク、胸が張り裂けるかと思ったですぅ」

ほっと安心したようなタママを見て、その肩をスグルがぽんと叩いた。

「よかったのう、タママ」
「ブタオー……ボク勘違いしてました! ブタオーは意外といい奴だったんですねぇ!」
「おお、わかってくれたのか! みろゼロスくん、話せば分かるんじゃ!」

その能天気な言葉にゼロスは嘆息する。

「……だといいんですけどねぇ」
「あのぉ、お話中、申し訳ないんですが……とりあえず移動しませんか? 
 ここは長話するには環境が良くなくって……我輩、先ほどから煙いわ熱いわで少々辛いんですが」

恐る恐るといった感じのハムの提案を聞いてスグルが大きく頷いた。

「むう……そういえばそうじゃな。よし、とりあえずもう少し広い所へ行こうではないか!」
「おーですぅ!」
「ムハ、そうしてくれると助かります」

そういって歩き始めた三人を見て、ゼロスは再度嘆息した。

「……やれやれ」

どうもタママを禁止エリアに放り込める雰囲気ではなかった。
ホリィの時といい、誰かを禁止エリアに放り込もうとすると邪魔が入るのだから運が悪いとしかいえない。

(まあ、他にも手はありますし……今回の所は諦めましょうか。……今回は、ね)

そして静かに笑うとゼロスは三人のあとを追って早足で歩き始めた。


★ ★ ★


近くにあった公園のような広場まで避難してきたボクたち。
一息ついたあとに最初に自己紹介を始めたのはブタオーでした。
ボクは燃え尽きた芝生だった場所に座ってそれを聞いてたんですが、ヤツの話はなんとも奇妙な話だった。
超人とかキン肉星王位争奪戦とか……これも異世界ってヤツなんですかねぇ。
そんな意味不明の自己紹介が終わって、ボクが自己紹介をし終えるとブタオーが失礼な事を呟いたんですぅ。

「ケロン人? うーむ、そんな超人は聞いたことがないがのう」
「超人じゃなくってボク達は軍人ですよぉ。それにそういうこと言うならペコポン――じゃなくって地球で宇宙人がレスリングしてるなんて話のほうこそ聞いたことないですよぉ」

そう答えてやるとショックを受けたようにブタオーは飛び上がった。

「あれだけテレビでやってるのにキン肉星王位争奪戦を知らんのかー!?」
「しらないですねぇ、そんなローカル放送」
「ろ、ローカル? はっ! ま、まさか全国放送しているってのは嘘だったのかっーー!?」

ブタオーは頭を抱えたり飛び跳ねたりと忙しい奴でした。
そこに、でかウサギも口を挟んできたです。

「そもそも我輩にはそのテレビとかいう物自体が判りませんけどね」
「な、なんだってー!?」
「テレビを知らないって……ムハッチはいったいどんな田舎に住んでるんですぅ?」
「田舎とは失敬な! というか我輩の名前はハムですよ!」
「ムハッチでいいじゃないですか。ね、ムハッチ!」
「お断りです!」

そして最後の一人のおかっぱはおかっぱで――

「酷似した世界だというのに微妙に違う……ふむ、もしかしてこれは時間ですかねぇ」

なんて、一人で訳のわからねー事を呟いていたですぅ。
大体こいつは自己紹介でも「謎のプリーストです」としか言いやがらねーですし、怪しすぎ~。

(というか本当にこいつらを信じていいんですかねぇ)

おかっぱは元から怪しさをとったら何も残らないぐらい怪しいから、これっぽっちも信じちゃいませんが
――ブタオーとムハッチはどうなんだろう。

んん~、よく考えたら姿からして怪しいかもですぅ。
そもそもブタとウサギがなんで喋ってるんですかねぇ?
軍曹さんを一緒に探そうとしているのは確かみたいなんですけど、こんな奴らを連れて軍曹さんに会っていいんでしょうか?

(答えはNOォォォ!)

特におかっぱ、こいつはぜってえ殺し合いに乗ってやがる。
とてつもねえ腹黒オーラをビンビンに感じるぜェェェ!!

よく考えたら……絶対に軍曹さんやフッキーⅡには近付けちゃダメな奴ですぅ。
でも、近付けない為にはどうしたらいいんですかねぇ。
こいつらから逃げる?
でもこいつらは軍曹さんを探す気満々だし、ボクがいなくても探し出してしまうかもしれない。

(あ、そっか。なら殺せばいいんだ)

突然、天恵のようにそんな考えが閃いた。
そうだ、これだけあやしかったらそう判断したボクを誰も責める事はできないはず。
軍曹さんたちが生きてるらしいって事は判ったんだし、こいつらはもう用済み。
ブタオーは良い奴のような気もするけど……完全におかっぱに騙されてるみたいだし説得はめんどそう。
ま、いいや……どうせ根暗カレーの発明品で生き返るんだし、全員まとめてぱあっとやっちゃうです。

「ん、どうしたんじゃタママ?」

黙り込んだボクを見てブタオーが訝しげに尋ねてきた。
だけどそれには答えないでボクはそおっとおかっぱの様子を窺った。

チャーーーンスゥ!

おかっぱは何も知らずにムハッチと何やら話しこんでいた……今なら奴を殺れる。
そう悟った瞬間ボクは気を高めて口に力を集中した。
――さらばおかっぱ!

「タママ・インパクトーーーッ!!」
「ひょいっと」

だけどおかっぱは馬鹿にしたような台詞を吐きながらタママインパクトをあっさりとかわしやがったァ!
チィィ、おかっぱめェェェ――ボクの攻撃をよんでやがったなァァア!?

「やれやれ……あなたも懲りない人ですねぇ。この人数を相手に戦うつもりですか?」
「ったりめーですぅ! こうなったらまとめてかかってこいやァー!!」

うしろに飛び退きながらおかっぱ達をそう挑発すると、意外にもムハッチが前に出てきたです。

「ほううう、ムハッチ~! 臆病者かと思ってたけど意外と勇敢ですねぇ~?」
「ちょ、ちょっと待ってください、我輩に戦う気はないですよ!
 大体さっき和解したばかりじゃないですか、いったい攻撃の理由はなんですか?」
「簡単な事ですぅ。てめーらはきっと何か企んでるに違いねえですぅ! だから――タママインパクトォォォ!!」

台詞の途中で攻撃という相手の不意をついた華麗な一撃はさすがボクって自分を褒めてあげたかったですぅ。
って――かわされた!?
くうう、ムハッチのくせしてなんて華麗なフットワーク……くそう。

「あっぶな……無茶苦茶ですな。何も企んでなかったらどう責任をとるつもりですか!」
「なあに、もし間違ってても後で根暗カレーに頼んで生き返らせてやるから安心するですぅ!」

安心させてやろうとそう教えてやったのに、ムハッチは目と口をまん丸にして硬直した後、怒鳴ってきた。

「しょ、正気ですか!? 生きかえらせるとか……あなた頭がおかしいのでは?」
「んだどゴルゥルァラアアア! ケロンの科学力は宇宙一ィィィなんですよォ!!」

地団太を踏みながらそう説明してやると後ろのブタオーとおかっぱは納得したみたいだった。

「むう……ケロン星の科学力とやらはすごいのう」
「ええ、恐らくそのネクラカレーという方はかなり高位の存在なんでしょうね」
「な、なんですとー!? お、お二人とも……そんな与太話を信じちゃうんですか!?」
「いや、だってのう」
「だってじゃないでしょう!」

一人理解できなかったらしいムハッチがブタオーと言い争ってる間に今度はおかっぱがボクに話しかけてきた。

「それで僕たちが何も企んでなかった場合はそのネクラカレーという方に頼んで生き返らせてくれるんですね。
 ところでそんな事を頼めるほどあなたはその方と親しいんですか?」
「まかせろですぅ! この島にはいないけど奴とは小隊の先輩・後輩関係、 
 そんな心配してないでとっとと――今度こそタママインパクトォォォォ!!!」

再度おかっぱを狙ったボクの攻撃は遠くのビルを破壊しただけで、またまたあっさりと避けられた。
お、おかしい……なぜ当たらない!?
戦士としての自信にヒビが入っているボクを尻目におかっぱが鼻を掻きながら呟いた。

「やれやれ……これはもう、とりあえず殺しておきますか」
「おわー! ちょっと待ったあ、ゼロスくん!」

ムハッチと言い争っていたブタオーがそれを聞いて慌ててオカッパの腕を引っつかんだ。

「ちょ、スグルさん……まさかまた殺すなとかいう気ですか?」
「ムッハー! スグルさん、流石にそんな事を言ってられる状況じゃないですぞ!」
「グ、グム~。ならばわたしが説得する。だからここはわたしにまかせてくれ!」

こいつら――ボクを舐めてやがるゥゥゥ!
と、いう怒りを込めて放ったタママインパクトもブタオーにあっさりと避けられた……。

「はぁ……はぁ……な、なんで当たらない! こ、こんな筈じゃあ……」
「聞くんじゃ、タママー! お前は疲れている、だから攻撃が見え見えで当たらないんだー!」
「な、なんだってー!?」
「ここは一つ、休憩にしようではないかー!
 そうだ、一緒に牛丼でも食いにいかんかー? あ、牛丼一筋~300年♪」

なんて妙なうたを歌いながらながらブタオーが間抜けな踊りをはじめやがった。
ぷっち~ん……っと、その瞬間ボクの中の何かがキレた。

「…………」
「ん? いまなんて言ったんじゃ?」
「うるさいうるさいうるさいですぅ!! 
 優しいサッキーが死んじゃったのになんでお前らみたいなのが生きてるんですかぁ!!!」
「オワーーーーッ!!」

吹き出た嫉妬に押されるようにブタオーがうしろに転がっていく。

「妬ましい……羨ましい……腹立たしい! 
 ギュギュッチ……カジオー……その他の死んだり生きたりしている腹黒のみんな!
 ボクに嫉妬をちょっとずつ分けてくれですぅ!!」

その瞬間――闇が蠢いた。
黒い怨念が黒い後悔が黒い憧れが黒い滅びが黒い領域が黒いナニかが――
呼びかけに応えてありとあらゆる不の感情が空から地面から何かから涌き出てきた。
それはあまりに多く、大きく、そして重かった。
気が付くとボクの頭上には直径5mを超える超巨大な嫉妬玉が出来上がっていた。

「ゲーーーーッ!! ま、前に見たのより遥かにでかいぞーーーっ!?」

その嫉妬玉を見て、転がっていたブタオーが怯えたように叫ぶ。
遠くからはムハッチの情けない悲鳴も聞こえた。
おかっぱも恐怖でちびっている――はず。
これならおかっぱどもを一網打尽に出来るはず。
……だというのに。

ボクはそれを支えるだけで精一杯で、ぶつける事ができなかった。

(動けぇ……動くですぅボクの腕ぇ……いま動かないでどうするんですかぁ!)

身体に残ったリキを振り絞った……だけど巨大な嫉妬玉を撃ち出す事はどうしても出来なかった。
タママインパクトの連打でもうリキがほとんど残ってないせいだ。

だけどその時――ふと脳裏にギュギュッチやカジオーの腹黒い笑顔が浮かんだ。

その瞬間、ボクの身体に不思議と力がみなぎった。
疲れたボクの身体を嫉妬が――みんなが支えてくれていた。それが直感で理解できた。
これなら――殺れる!

「くらえおかっぱぁぁぁ! これがみんなの――腹黒の――ボクの嫉妬玉だァァァァァァァ!!!」

黒く巨大な、まるで闇の太陽のような怨念がおかっぱに――ついでにブタオーとムハッチを巻き込んで――炸裂した。

「おわ~~~っ!!」
「うわーーーー!?」

地面が吹き飛び、悲鳴が爆ぜる。
焦げた地面が舞い散り、黒い土煙が辺りを覆った。

「はっはっはー! ザマアミロですぅ、おかっぱーーー!!」

勝利を確信して盛大に笑ってやったです。
ボクはやったんです。
おかっぱが死ねば世界の半分ぐらいは幸せになるはず……そんな確信がボクにはあった。
世界を平和にしたボクを軍曹さんはきっと褒めくれるはず。

そして――ゆっくりと土煙が収まっていく。

ボクは目を細めて無残に抉れた地面の上でボロ雑巾のようになっているおかっぱ達を探した。
と。

「いやあ、結構なお手前で」

おかっぱが居た。
巻き込まれただけのブタオーとムハッチがゴミの様に吹っ飛んでいるのにおかっぱは――肝心のおかっぱだけは平然と
まるで何も無かったかのようにその場に立っていた。

「な、なにィィィ! なんで平然としてやがるゥゥゥ――はっ!?」

思わずやられ役のザコのような台詞を叫んでしまい、慌てて口を塞ぐ。
で、でもなんでよりによっておかっぱだけが平然としてやがるんですかぁ。
一番死んで欲しい奴が一番平然としているなんて……何故だ、ドウシテダ!

「――ま、まさか、お前も闇属性!? ってあれ?」

そんな事を考える間にいつのまにかおかっぱは消えていた。
ボクの目の前から影も形もなく、跡形もなく、かんっぺきに消失してたんですぅ。

「いったいどこへ――ふがぁっ!?」

突然うしろから首を引っ張られて息が詰まった。
うしろを見ると――そこにはおかっぱがいた。
おかっぱは腹黒い笑顔を浮かべたままボクの首を……いや、首輪を引っ掴んでいやがった!

「ぐ……このお!」

このままじゃ首をへし折られると悟ったボクは、足を踏ん張って引っ張る力に全力で反逆した。
でも。

(あ……れ?)

そんな綱引きは急に終わった。
なぜか急に首にかかっていた圧力がなくなったんですぅ。

そして身体が急に――、なって――
――ええ――ボクはど――な――ですぅ――目の前に――い――――?


「サッ……キー」


★ ★ ★


水を抜いた水筒のなかに回収できるだけのスープを入れながらゼロスはため息をついた。

「なるほど……これは中々やっかいですねぇ」

あの時、ゼロスは確かにそれを目撃した。
肉――いや、あれは植物だろうか。
とにかく首輪の金属を消失させた瞬間、突然首輪から触手のようなものが出現してタママの肉体に潜り込んでいったのだ。
そして数瞬後、タママは液状化した。

シンジの死体から剥ぎ取った首輪の魔力波動がおかしい事には気付いていた。
スグルの首にある『生きている』首輪からは鼓動のような特徴的な波動を感じたというのに
『死んだ』シンジの首輪はまるで無機物のような単調な波動だったのだ。
この違いはどこから来るのか……それが判らなかったのだが

その答が――アレなのだろう。

『生きている』首輪の中にはあの触手のようなものが存在しているのだ。
そして恐らくアレこそが人を液状化させている原因で間違いないだろう。

それが判ったのは収穫だが、同時に頭の痛い問題も浮上していた。
もしもあれが意志を持っているのならば――今のゼロスでは首輪を消失させる事が出来ないという事になる。

今回ゼロスがやった事はいたって簡単。
首輪を構成する金属の一部を消失させた、ただそれだけだった。
ゼロスには無機物なら一瞬でその成分を抽出して、望む形に変換できる力がある。
とはいえ制限されているせいで現状では直接の接触と十秒近くの時が必要。
対象が意志を持つ生物だった場合は分解に更に数十倍以上の時間が掛かってしまうだろう。
それでは首輪を全て消失させる前にゼロスのほうがスープになってしまう。
つまり――

「ゼロスーーーーっ! お前……お前はなんと言う事をーーーーっ!!」

と、そこでゼロスの思索は遮られた。
倒れていたスグルがいつのまにかゼロスの胸倉を掴もうと腕を伸ばしてきていたのだ。

「おや? スグルさん、どうされましたか?」

伸びてきた腕をひょいっと避けながらいつもの笑顔で聞き返す。
スグルは先ほどの爆発で怪我をしたのか、額から血を流したまま怒鳴りつけてきた。

「どうされた……じゃなーい! なんで、なんでタママを殺したーーー!」
「そのことですか」

そうため息をつきながら、スープの入った水筒と一部溶解した首輪をしまい、ゼロスはあっさりと告げた。

「ああするしかなかったんですよ」
「違う! お前なら先ほどのようにタママを気絶させることも出来たはずじゃ!」

確かに無力化も可能だったが、まさか正直に首輪の実験の為に殺したともいえない。
数秒ほどスグルと睨みあっていると、傷つき倒れていたハムがよろよろと起き上がってきた。

「ま……待って下さいスグルさん。あ、あの場合は仕方がない事だと我輩も思いますぞ」

スグルが傷ついたような顔でハムへと振り向く。

「ハ、ハム……! お前までそんな事を言うのか……?」
「タママさんの死は確かに哀しい事出来事です。
 ですが! ゼロスさんが殺さなければ我輩たちはやられていたんですぞ!」
「……わ、分かっている。それは分かっているんだ。
 だ、だが納得できんのだ! タママはあんなに誰かが死を嘆いていたんだぞ。
 わたしにはあいつがそれほど悪い存在には見えなかった。
 もう一度ちゃんと話し合えばきっと分かり合えたはずなのに――っ!」

そう言いながらスグルは悔しげにドスンと地面を叩いた。
その肩にゼロスはそっと手を置いて、囁いた。

「スグルさん……僕たちは死ぬわけにはいかなんですよ。例え誰かを殺してでも、ね」
「その考えは間違っている……! 正義超人としてお前がそんな考えならば見過ごせんぞ!」

スグルはゼロスの手を払ってファイティングポーズをとった。

「おや、間違ってましたか。でも、これからあなたもやらなければならない事ですよ?」
「なんじゃとぉ!?」
「そう――シンジさんの為にも、ね」
「え…………?」

シンジの名前を聞いた瞬間、拳を振り上げていたスグルの動きがぴたりと止まった。
硬直して動きを止めたスグルを見て、ハムがそっと小声で質問をしてきた。

「ちょっと待ってください。シンジさんて……まさかあなた達はシンジさんと会ったんですか?」
「お知り合いだったんですか。それはお悔やみ申し上げます」
「スグルさんのこの様子……いったい何があったっていうんですか!」
「……スグルさんも、殺すつもりじゃなかったんですよ」

その言葉が聞こえたのか――びくっと、スグルが震える。

「ま、まさか……スグルさんがシンジさんを!?」
「事故のようなものでしたけどね。錯乱していた彼を殺してしまったんですよ……スグルさんは」
「う……ううう!」

耐え切れないかのようにスグルが脂汗を滲ませながらうずくまった。
それを上から見下ろしながらゼロスは更に言葉を放つ。

「彼の為にもスグルさん、あなたはタママさんのような危険人物を殺していかなければいけないんですよ」
「…………し、シンジくんの……事とお前の言ってる残虐行為との間に……な、何の関係があるんじゃ!」

その質問にゼロスは指を軽く振って答えてみせた。

「あなたたちも聞いてたでしょう――ネクラカレーの事を」

「「根暗カレー?」」

言葉がきれいにハモった。
ゼロスはそれに頷き、二人に突きつけるように指を向けて続けた。

「タママさんが言ってた事を覚えていませんか?」
「え、えーと、確か根暗カレーというと……『根暗カレーに頼んで生き返らせてやる』とかいってたアレですかな?」
「ええ、そのアレです」
「それとお前の言った残虐行為が何の関係があるんじゃ?」

不思議そうに尋ねてくるスグルに言い含めるようにゼロスは言った。

「ですから後でネクラカレーに生き返らせてくれってお願いすればいいじゃないですか。シンジさんもタママさんもね。
 スグルさん、それまであなたは死ぬわけにはいかないんですよ……他人を殺してでも、ね」

「ムッハーーー!?」
「い、生き返る? あ……あの子が、か?」

今度の言葉はハモらなかった。
フラフラとよろめきながら呟くスグルをハムが驚愕したような顔で振り仰いだ。

「す、スグルさん! 納得するとか……正気ですか!?」
「だ、だって……タママもそういっとったし……もしかしたら」
「あんなの錯乱していただけですぞーーー!?」

興奮して大声をあげるハムをゼロスはそっと手で制した。

「まあまあ、ハムさん落ち着いて。
 ……スグルさん、あなたは人が生き返るような奇跡に心当たりがあるんじゃないですか?」

その問いにスグルは神妙な顔で頷く。

「あ、ああ。バッファローマンやウォーズマン……他にも甦った奴は多い」
「やっぱりそうでしたか。……ハムさんそういう世界もあるんですよ。死者が生き返るような世界が、ね」
「…………」

ハムは呆然としたようにそれを聞いていた。
そしてゼロスはくるりとスグルへと視線を移す。

「さて、そういう事ですからスグルさんもこれからは安心して危険人物を殺していけるでしょう?」
「そ、それは……だが」
「もうスグルさんが迷ったり後悔する必要はなくなったんですよ。
 大丈夫、殺してしまった彼らの事はあとでネクラカレーに頼めばいいんですよ」

それはまさしく悪魔の誘惑だった。
だが――。

「だめだそんな事は――できん!」

正義超人は頭を振ってそれを拒絶した。
その頑強さに僅かに驚きゼロスは目を見開いた。

「な、なんでですか?」
「たとえ後で生き返ろうと――そのような残虐行為、わたしにはできん!」
「待って下さいスグルさん! 別にこちらからその残虐行為をする必要はないんですよ?」
「な、なんじゃって?」
「正義超人であるあなたは弱い人を守らなければないんでしょう?」
「ああ、そのとおりだ!」
「思い出してください、弱かったシンジさんは悪魔将軍に襲われて錯乱した。そしてその結果が――アレです」
「う、ぐぐぐ……」

あの光景を思い出したのかスグルが再度呻き始める。
そこに畳み掛けるようにゼロスは言葉を続ける。

「考えてもみてください。今回タママさんに出会ったのが僕たちじゃなくってシンジさんみたいな弱い人だったら
 ……きっとその人は悪魔将軍に襲われたシンジさんのように怯えて死んでしまうでしょうね」
「た、確かに……そう、かもしれんが」
「シンジさんみたいに弱い人を守るためには殺し合いに乗った危険人物は殺すべきなんです」
「…………う、ううう」
「それともあなたは、僕やハムさん、それにヴィヴィオちゃんやリョーコさんが殺されてもいいと思ってるんですか?」
「そ、それは……そんなことは……」
「だったら簡単ですよ。守るべき人を殺しかねない危険人物は殺してしまいましょう。
 そして全てが終わった後にネクラカレーにお願いすればいいんです。
 そうですね、殺すという言葉に抵抗があるのなら、一時的に気絶してもらうと解釈してはどうです?」

スグルは迷ったように数分ほど硬直した。
そしてぽつりぽつりと言葉を搾り出すように言った。

「ほ、本当に……そ……それで……いいんじゃろうか?」

それを聞いてゼロスはにやりと笑って答えた。

「ええ――それでいいと思いますよ、僕は」
「だ、だが……わたしが知っている蘇った奴らはみんな超人じゃった……かならず生き返るとは……」
「僕の知っている方で、死滅したサイラーグという町と一緒に住民全員を甦らせたような方もいます」

それは残留思念を実体化させただけの儚い仮初の命。
肝心なその説明を伏せたままゼロスは続ける。笑顔のままで。

「ですから大量の人間を一度に蘇らせる事が出来る存在がいても不思議じゃありませんよ」
「そ、そうか? な、ならみんな……あとで生き返るんじゃな?」
「そうだと信じてみてもいいんじゃないでしょうか」

僕はあまり信じてませんけどね。
と、その内心もまたゼロスは語らない。
それでスグルは信じたのか……大きく息を吐き、ゆっくりと言った。

「あ、頭のいいゼロスくんのいう事だ……そ、それが正しいのかも……しれん」
「では危険人物には一度死んでもらう。スグルさんもそれでいいですね?」
「……う、うむ」

ぎこちなく頷くと、スグルはタママが死んだあたりで手を合わせて黙祷をはじめた。
そして目を開けると誰に言うでもなく、一人空に向かって宣言した。

「シンジ君、そしてタママよ。
 後できっと根暗カレーに頼んで生き返らせてやるから……それまで待っていてくれ……」

それを満足そうに眺めながらゼロスはゆっくりとスグルに近づいた。

「それではスグルさん、そろそろ行きましょうか」
「…………ああ」

ゆっくりと、だがしっかりと頷いたスグルに向かってタママの首輪を掲げながら言う。

「それで……コレの詳細もだいぶ判明してきたことですし、僕は一度落ち着いて研究してみたいんです。
 出来れば一旦学校へ行ってリョーコさんと合流しようと思ってるんですが……スグルさんはどうします?
 別行動って選択もあると思いますけど」
「……悪魔将軍がまだ湖にいるなら今からでも行きたいが、だいぶ時間も経ったしな。
 それに確かにヴィヴィオやリョーコちゃんたちも心配じゃし……ハムも安全なところへ送ってやらねばな」
「ああ、そういえば! それでハムさん……あなたはどうしますか?」

にこりといつも通りの笑みを浮かべながら魔族はそう尋ねた。


【タママ二等兵@ケロロ軍曹 死亡確認】
【残り24人】



【B-08 市街地北部/一日目・夜】

【ゼロス@スレイヤーズREVOLUTION】
【状態】絶好調
【持ち物】デイパック(支給品一式(地図一枚紛失、ペットボトルの一本には水の代わりにタママのLCLが入っている))×3
     草壁タツオの原稿@となりのトトロ、ケロボール@ケロロ軍曹、グロック26(残弾0/11)と予備マガジン二つ@現実、一部破損したタママの首輪(起動済み)

【思考】
0:首輪を手に入れ解析するとともに、解除に役立つ人材を探す
1:首輪内部の触手のような物を詳しく研究するために学校へ向かい朝倉と合流したい
2:A.T.フィールドやLCLなどの言葉に詳しい人を見つけたい。
3:主催者が興味を抱きそうな『戦場』に赴き、彼等と接触を図りたい。
4:ヴィヴィオとスグルの力に興味。
5:セイギノミカタを増やす。 

【備考】
※首輪の金属の解析を終えました。触れれば十秒程度で金属を分解できます。
※首輪内部に触手のようなものが生息しており、それがLCL化の原因だと考察しました。


【キン肉スグル@キン肉マン】
【状態】ダメージ(中)、強い罪悪感と精神的ショック
【持ち物】ディパック(支給品一式)×4、タリスマン@スレイヤーズREVOLUTION、 首輪(碇シンジ)
     ホリィの短剣@モンスターファーム~円盤石の秘密~、金属バット@現実、100円玉@現実
     アスカのディパック[基本セット一式、予備カートリッジ×12@リリカルなのはStrikerS、基本セット、モッチーの首輪、モッチーの円盤石
               砂ぼうずの特殊ショットシェル用ポーチ(煙幕弾(2/3)、閃光弾(3/3)、ガス弾(1/3))@砂ぼうず、ホテル外壁のメモ用紙]

【思考】
0:悪を倒して一般人を守る
1:ゼロスと協力する。 危険人物は一時的に死んでもらう。
2:ひとまずハムを安全な場所まで送り届ける。
3:湖のリングに向かい、何としてでも悪魔将軍を倒して碇シンジの仇を取る。
4:学校へ行って朝倉とヴィヴィオと合流する。
5:ウォーズマンと再会したい
6:キン肉万太郎を探し出してとっちめる
7:シンジのことは忘れない
8:主催者を倒したあと、根暗カレーに頼んで死んだ人たちを生き返らせてもらう

※砂ぼうずの名前をまだ知りません。
※アスカのディパックの中身をまだ確認していません。
※自分の手助けの所為でシンジが無残に死んでしまった事で、助けを求める人間を助ける事にトラウマを感じています。


【ハム@モンスターファーム~円盤石の秘密~】
【状態】ダメージ(中)、顔にダメージ 、軽い火傷
【持ち物】基本セット(ペットボトル一本、食料半分消費)、
     ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、チャットに関するハムのメモ、大量のシーツと毛布類
     キョンの妹のディパック[『人類補完計画』計画書、地球人専用専守防衛型強化服(機能停止)@ケロロ軍曹
                    基本セット一式×2(ペットボトルの一本には水の代わりにキョンの妹のLCLが入っている)
                    佐倉ゲンキの首輪(起動済み)、キョンの妹の首輪(起動済み)、佐倉ゲンキの衣服(LCLが僅かに染み込んでいる)]  

【思考】
0、頼りになる仲間をスカウトしたい。
1、ムハー……なんですかこの展開!?
2、『SOS団の正式名称』を何としても知って、もう一度診療所のパソコンを調べたい。
4、19時半を目安にゴルフ場で夏子と合流。20時までにこなければ単独行動。
5、B-1に何が転移したのかが気になる。
6、自分が手に入れたパソコンの情報、首輪などを使って大集団などに取り入りたい。
7、謎の書類(『人類補完計画』計画書)を解読できる人間を探す。とりあえずは夏子に頼む。
8、万太郎と合流したいが難しいと思っている。
9、ウォーズマン、深町晶、キョン、朝倉涼子を探してみる。
10、殺し合いについては乗るという選択肢も排除しない。
11、機会があれば主催者と接触したい。

【備考】
※ゲンキたちと会う前の時代から来たようです。
※アシュラマンをキン肉万太郎と同じ時代から来ていたと勘違いしています。
※悪魔将軍、古泉、ノーヴェ、ゼロス、オメガマン、ギュオー、0号ガイバー、怪物(ゼクトール、アプトム)を危険人物と認識しています。
※トトロ(名前は知らない)は主催と繋がりがあるかもしれないと疑いを持っています。
※深町晶を味方になりうる人物と認識しました。
※故障かエネルギー切れの可能性もありますが、現在のところ地球人専用専守防衛型強化服は完全に沈黙しています。


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contradiction キン肉スグル 魑魅魍魎~つどうファクター・トゥ・ダイ~
ハム
かくて黒は笑いき ゼロス
タママ二等兵 GAME OVER






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