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怪奇! 格闘カエル男の恐怖◆2XEqsKa.CM



冬月コウゾウは呆けていた。
彼がその半生を掛けた人類補完計画は失敗に終わったのだ、無理もないだろう。
この下らない余興は自分と碇ゲンドウの計画を看破したゼーレの老人達の悪ふざけか?
いや、この特異な状況こそが、使徒、或いはアダムやリリスによって補完された世界の結果なのか?
いくら悩み、脳と心を絞っても、一向に答えは出ない。
何が起こったのか思いだそうにも、ゲームの開始宣言を聞いた空間に来る以前の冬月の持つ最後の記憶は、
水の入ったタライに足を突っ込んでいたというものだ。

どれだけ時間が経っただろうか、長考していた冬月はデイパックから回収した時計に目をやる。
00:46。 冬月がこの時計と同じようにディパックから入手した地図で現在地を確認したのは00:04。
ゲーム開始直後、いつの間にか目の前に広がっていた、寂れた街の一角のベンチに座り、無防備に思考を貪っていた。
案外時間が経っていなかった事に安堵したのか落胆したのか、冬月は溜息を付いて出しっぱなしにしていた地図を仕舞う。

「……寒いな」

ぼそりと呟いて、冬月は腰を上げる。
長考の末、使徒の襲撃を迎えていた自分が知らぬ間にネルフ本部から引き離されている、という状況から最終的に冬月が出した結論は、
やはり使徒とアダム、あるいはリリスの接触により碇ゲンドウやゼーレの望まぬ形で補完が成功してしまった、というものであった。
それならば、この荒唐無稽なルールに支配された世界にも説明は付く。自らの記憶も、補完の際に壊れてしまったのかもしれない。
これが、この世界こそが、ヒトが望み達成した最後のセカイなのだろう。
自分やゲンドウの望んだ物とは大分違うが、結果が出ている以上、それは受け入れなくてはならない。
あの少年――――第拾七使徒タブリスがあのような形で処分されたのも、補完された人類の望みなのだろうか?
『自由意志』を司るゼーレの用意した使徒が首輪で繋がれ、あげくゲームのルール説明の一環として屠殺されたのだ。

「使徒すらも生命のスープに変え、自らと同じ地平に堕としたか。ヒトが補完されても、そのエゴは補完されなかったらしいな」

冬月は一歩一歩、ベンチの周辺をふらつきながら、物憂げに言を吐く。
己を捨て、長い時を碇ゲンドウとともに同じ夢を追い続けた。
教え子であり、特別な感情を少なからず抱いていた碇ユイの息子を手駒……いや、道具のように扱い、酷使した。
その結果が、この血と憎しみと暴虐が渦巻く世界だ。
ヒトは、補完による同一化ではなく、互いの拒絶と敵愾こそを望んでいた。





――――――碇ゲンドウと冬月コウゾウの人類補完計画は、失敗したのだ。

もはや、冬月には何の希望も残されていなかった。
最後の一人まで生き残った際に叶えられる願いとやらにも興味は無かった。
彼が叶えたかった物は、碇ゲンドウの望みだ。
そして、碇ゲンドウは自分の望みを他人に叶えられる事を好む人間ではない。
だからこそ、冬月はゲンドウのサポートに徹する事を選んだ。
それはユイの為であり、冬月自身のユイに対する想いを、ベクトルを曲げて発散する為でもあった。

夢は破れ、希望もない。
ならばこの男、冬月はどのような行動に出るのか?

「老兵は死せず、ただ去り行くのみ、か……」

冬月は踵を返し、海に向かって歩き始めた。
LCLのプールとなり、ゲンドウやユイと一つになるのも、悪くは――――。




否。




諦念が推し進める足を、閃きが押し留める。
冬月は目を見開き、ベンチに置き捨てかけたディパックを漁りに戻る。
取り出したのは、一度確認した名簿。
知らない名前ばかりだったが、いくつか覚えのあるものもあったはずだ。
名簿を見渡すと、やはり見知った名前があった。

碇シンジ。
惣流・アスカ・ラングレー。
加持リョウジ。

エヴァンゲリオンパイロット二名と、真実を追い続けた男。
使いようによってはセカイを補完できる力を揮う者たちと、セカイの真実を追う強い意志を持った者。

先ほどの長考の中で、頭の片隅で燻っていた疑問があった。
そもそも、冬月たちだけが仮初の肉の器を与えられたのは何故か?
互いに否定し合い、際限なく拒絶しあうのがヒトの望みなら、何故たった48人で殺し合いをしているのか?
本来なら、それこそ無数と言ってもいいほどの意志が、地獄のような殺戮空間を形成していてもおかしくはない。

「あるいは、我々だけが互いを拒絶し、補完からあぶれたのか? ……いや、違うな」

冬月が、再び思考を始める。
今度は長考になることもなく、冬月は即時結論を得た。

「ヒトは……迷っているのか」

補完され、一度一つになったヒトがその後どうなるかは冬月にもゲンドウにも、そしてゼーレでさえ完全には予想できなかった。
一つの意志に統合され、それを遂行しようとするのか、あるいは、コアとなった者の意志によってその全てが決定されるのか。
今の状況は、自身が想定していたその二つのどちらでもない、中途半端な物なのだ。
言わば、この状況は試練なのだろう。
ヒトの本質がお互いを拒絶し、傷つけあう物なのか、互いを許容し、手を取り合える物なのか。
補完されたヒトの集合体に生じた迷いという"揺らぎ"が、バトル・ロワイアルという試練の形で発現したのだ。
もし参加者が殺し合いを行い、最後の一人にまで残れば、セカイはそれこそ拒絶しあう意志の戦場となるだろう。
争いを止め、主催者として用意された草壁達に意趣返しを行えば、人類は補完されるか、あるいは補完される前の形に戻るかもしれない。
そう、これは、セカイのあり方を決める、まさに最後の審判だ。

だからこそ、エヴァという多大な力を持ち、それを行使したチルドレンと、
真実を知るため、拒絶と許容を綱渡りしていた加持が、試練の使徒に選ばれたのだ。
彼らは人間の二極面のどちらにでも転べる、不安定な存在だ。
特に碇ゲンドウの息子、碇シンジは、ネルフに関わってから精神に多大な負荷を掛けられ、よりその振れ幅を広げられている。
自分の知らない44人の人間もまた、そのような不安定な背景を持っている可能性が高い。
なにやら怪物のような者もいた気がしたが、あれはヒトの恐怖や怒りの感情が生み出したものなのだろう。
もっとも、ああいった怪物が実在しないと言い切れる確信も、冬月には持てなかったが。

「碇の息子、セカンド・チルドレン、加持……何故、私は選ばれた?」

冬月が自問する。
答えを既に出している問を口頭で、自問する。

「彼等を導き、補完計画を再び遂行しなくてはならないから、だ。そうだろう、碇……?」

このゲームを止め、草壁らを倒して試練に打ち勝ったとしても、ヒトが補完される前、振り出しに戻るとは限らない。
だが、このまま試練を放棄して諦念のまま死んでいくよりは幾分有意義だと、冬月は考えた。

(長いこと、諦観に支配されて碇の横で生きてきたのだ。そろそろ……自分から、動いてもいい)

冬月は、覚悟を決める。
碇シンジを、惣流・アスカ・ラングレーを、加持リョウジを。
この殺戮の螺旋から保護し、共に補完の運命に打ち勝つ、と。
既に暗記した名簿を投げ捨て、口元を吊り上げ、眼光を研ぎ澄ます。
無明の街灯の下で、老兵が始動した。

(……なんかこのおっさん、自分の世界に入りっぱなしでキモいですぅ)

ベンチの前で漢の顔になっている冬月を、街の一角、八百屋の店内から覗き見ている影が一つ。
その姿は直立し、豊かな感情を表現できる顔を持った、犬や猫ほどのサイズのカエルであった。
種族名はケロン人、固体名はタママ、職業軍人、階級・二等兵。
タママは冬月を監視しながら、陰々とした表情で、このゲームにおける自らの行動方針を検討していた。

(クク……この状況、まさに渡りに船ですぅ……)

拳を突き出し、ウォーム・アップを行うタママ。
その矮躯が醸しだす闘気と殺気は、一流の戦士のそれと遜色ない。

(この戦場の空気、これこそ軍曹さんとのミリタリー・ラブロマンスを演じるに相応しい)

悪辣に顔を歪めながら、妄想を深める。
タママはこのゲームに参加させられたことに対し、一切の恐怖も疑念も抱いていなかった。
ただ自分の欲望を満たすことだけを考え、愉悦に浸っていた。

(軍曹さんと合流するのが最優先だけど、日頃の鍛錬の成果も発揮したいですぅ。
 このおっさんじゃ準備運動にもなりゃあしないでしょうがぁ……)

タママが頭部の帽子の若葉マークに手をやり、軽く回す。
八百屋から出て、右腕に力を込める。
戦士としての本能か、その挙動は素手で可及的速やかに標的を殺害できる『締め』と『折り』を意識したものだ。
相手に気取られることなど全く想定していない大胆な動きで冬月に近寄るタママ。
ベンチの目前までたどり着き、一足飛びに冬月に飛びかかろうと脚を地面に踏み込んだ瞬間―――。

落ちていた紙(冬月が投げうった名簿である)に足をとられ、派手な音を立てて転倒した。

「ん?」

「なっ!?」

冬月が振り返り、目を細めてタママの方を向く。
暗闇の中とはいえ、標的が自分の影形を明らかに認識している事に驚愕するタママ。

「バ、バカな……アンチ・バリアは正常に起動しているはずですぅ!」

「なんだね、君は?」

冬月はディパックの中からランプを取り出し、灯りを付ける。
その光に照らされ、タママの全貌を視る。
一瞬驚きの表情を浮かべるが、すぐに平常を取り戻し、驚愕したまま立ち上がらないタママを抱き上げ、ベンチに置く。

「何をする離せぇー!」

「喋るカエルとは……世も末とはこのことだな」

じたばたしているタママの体をあちこち弄り回す冬月。
その目は好奇心に満ちていた。元は学者である、当然であろう。

(そ、そうか……アンチバリアは強い好奇心を持つ者には通じない仕様……なんだか今後も誰にも通じない予感がするですぅ)

「ふむ、実体があることは確かなようだ。君はどういう出自の生物かね?」

「ボクはケロン星の誇り高き軍人ですぅ! 地球人め、うったるぞぉ!」

冬月を振りほどき、ベンチから飛び降りて体勢を立て直すタママ。
すぐさま攻撃を仕掛けようとするが、その動きは冬月の咳払いによって押しとどめられる。
冬月はベンチに座ってタママに目線を合わせ、話しかける。

「いや失礼、君のような……こういえばいいのかも分からんが、宇宙人と遭遇するのは初めてだったものでね。
 非礼を詫びよう、すまなかった。……君の名前を教えてくれんかな?」

「ボ、ボクは……まあいいや、タママ二等兵ですぅ」

侵略対象惑星の現地民に名前を教えていいのか一瞬迷うが、タママは返答した。
冬月はなんとも言えない表情で頷き、さらに問いかける。

「ここで出会ったのも何かの縁だ、タママ君、私と行動しないかね?」

「えー? でも、ボクは人を探す予定もあるしぃ~。おじさんを仕留めてからですけど~」

「人? ……ケロロ軍曹やドロロ兵長、ガルル中尉かね?」

「な、何でボクの同僚の事を知ってるんですぅ!?」


目を見開くタママ。
冬月は我が意を得たり、とばかりに微笑み、軽く返す。

「何、ただの推測……いや当てずっぽうだよ。
 名前の感じが似ている上に君と同じく階級が名簿に載っていたので、君と同じ星の軍人ではないか、とね」

(こいつ、なかなかキレるですぅ……利用価値があるかも……)

タママは顎に手を置いて考える。
冬月はそんなタママに畳み掛けるように、懐柔策を打ち出した。

「ところでこの支給品を見てくれ、どう思う?」

「すごく……バナナですぅ……」

冬月がディパックから取り出した物―――彼の支給品は、どこか不思議な雰囲気を持つ果実・バナナだった。
タママは冬月からバナナを受け取り、頬張る。

「うほっうほっ! めっちゃうまいですぅ~!」

「気に入ってもらえて何よりだよ。……私も君と同じに人を探していてね。どうかね、力を合わせようではないか」

「うまっうまっ! オーケイですぅ! 足手まといになったら容赦なく置いて行くから覚悟しといてですぅ!」

(単純だな……それゆえに恐ろしい、のかも知れんが。とはいえ仲間を探している以上、ゲームに反逆する目もあるだろう。
 気長に、慎重に付き合っていく必要がありそうだ、な……)

バナナに夢中のタママは冬月の目論見どおり、彼と行動を共にすることを承諾した。
一本分のバナナを食い尽くしたタママは皮を放り捨て、冬月に向き合う。

「そういや、おじさんの名前を聞いてなかったですぅ」

「私は冬月コウゾウという」

「ふ~ん……じゃあ、フッキーⅡって呼ぶことにするですぅ、フッキーⅡ、よろしくっすぅ~」

「……」

沈痛な面持ちで沈黙する冬月を尻目に、歩き出すタママ。
冬月はその後ろ姿に問いかけた。

「日が昇らんうちに移動するのは危険だと思うが……」

「だぁいじょーぶだぁいじょーぶ、ボクは前線豚だぜ?ですぅ! 悪条件下でも問題なく戦闘可能ですぅ! 」

「君はそうかも知れんがね……まあ、ここでじっとしている方が危険か……」

先ほどのタママとの遭遇の際に周囲に響いたであろう(主にタママの)大声に、危険な参加者が集まってくるかも知れない。
そう判断し、冬月はタママの後ろをゆっくりと歩み始めた。


純粋ゆえに残酷な若きソルジャーと、絶望に沈み、それでも足掻くことを選んだ老獪な。
彼等の歪なタッグがどうなるのか、それはまだ誰も知らない。

【B-8 街/一日目・未明】

【冬月コウゾウ@新世紀エヴァンゲリオン】

【持ち物】
ソンナ・バナナ一房(残4本)@モンスターファーム~円盤石の秘密~、不明支給品1~2
ディパック(支給品一式入り、名簿破棄)
【思考】
1.ゲームを止め、草壁達を打ち倒して補完を止める。
2.シンジ、アスカ、加持を保護し、導く。
3.タママを善い方向に向けたい。
【備考】
※現状況を補完後の世界だと考えています。
※参戦時期は第拾壱話「静止した闇の中で」。


【タママ二等兵@ケロロ軍曹】

【持ち物】
不明支給品1~3、ディパック(支給品一式入り)
【思考】
1.ケロロとラブロマンスる(他の知り合いは大して気に掛けていない)。
2.日々の鍛錬の成果を見るため、出会った相手はとりあえず攻撃する。
3.冬月を利用する。


※支給品解説
【ソンナ・バナナ@モンスターファーム】
食べると寿命が延びちゃうとか延びちゃわないとか。
そもそもアニメに出ていたかどうか記憶が曖昧である。
特に戦闘には役立たないだろう。



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