※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

Contacting ファイティング・コンピューターVS対コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス ◆LQxnEUL7WA



 丸みを帯びた形状に、数々の傷や窪み。往年の兵器を思わせる、古めかしい装甲。
 漆黒のヘルメット、ショルダーパッド、ニーパッド、レスリングパンツ、それらが包む浅黒い筋肉。
 目には映らぬ肉体内部には、人類未踏の技術により組まれた超人界至高のメカニズムが躍動を続けている。
 時折聞こえてくるコーホー、コーホーという機械的な呼吸音は、深夜の凍てついた空気に響きそして消えた。

「……」

 無言。呼吸音以外は無駄な言葉を発さず、漆黒の男はただ考え事をしていた。
 慌てず騒がず、自らが立つ境遇、舞台、環境を判断材料に、物事の取捨選択と優先順位の組み立てを進める。
 これが過去の、約三十年前の若かりし頃の彼であったならば、こうはいかない。
 未曾有の自体に頭がパニックを起こし、この催しの趣旨どおり、監視者たちの掌で躍らせて仕舞いとなっただろう。
 年月は人に落ち着きを与える。それは人間にも、超人にも言える道理だ。

 だからこそ――21世紀の時を生き、伝説超人(レジェンド)の一人として称えられた彼は慌てない。
 冷静沈着な精密機械のように、ロボ超人であるウォーズマン――通称『ファイティング・コンピューター』は揺るがない。

「フッ……超人オリンピック・ザ・レザレクション決勝、ケビンマスク対キン肉万太郎の対決を目前に控え、こんなところに連れてこられるとは」

 21世紀、前世紀に名を馳せたキン肉マンやテリーマン、ロビンマスクといった強豪超人たちは、衰え一線を退いた。
 若き超人たちの指導者となる者、老体を構わず研磨する者、あてもなく人間の世を放浪する者、歩んだ道はそれぞれだ。
 その中で、歳を取らず肉体の衰えもないロボ超人ウォーズマンは、とある一人の若き超人に着目し、専属の指導者となった。
 祖国ロシアを捨て、西方のイギリスに愛国心を移してまで熱情を注いだのは……かつての師、ロビンマスクの一人息子たるケビンマスクだった。
 ウォーズマンの体内時計によれば、明日は超人オリンピック・ザ・レザレクション決勝当日、ケビンマスクがチャンピオンとなる吉日のはずだった。
 もちろん、コーチたるウォーズマンがこんなところで油を売っているわけにはいかない。早々に日本へと舞い戻らなければ。

「俺だけならば、それでよかった。しかしここには、キン肉マンの息子であるキン肉万太郎までいるではないか」

 殺し合いの参加者がピックアップされたリスト、その中には、ケビンマスクの対戦者たる日本代表超人、キン肉万太郎の名もあった。
 対戦者不在では、決勝戦は成り立たない。不戦勝により勝ち得たチャンピオンベルトに価値はなく、ロビン王朝の復活には繋がらない。
 己の身だけではなく、キン肉万太郎もどうにかして連れ出し、帰還を果たさなければならなかった。

「いや、問題はそれだけじゃない。万太郎の父にしてかつての英雄超人、しかし今は老いぼれ大王のキン肉マン。
 俺たちの時代にその悪名を轟かせ、超人界に多大なる爪痕を残していった悪魔将軍にジ・オメガマン。
 元悪魔超人だが正義超人に鞍替えを果たし、祖国たる魔界での生活を送っていたかと思われたアシュラマン。
 なんともおかしな人選だ。特に悪魔将軍とオメガマンの名が気にかかる。キン肉マンに倒されたはずの二人がなぜ……」

 名簿に名を連ねる有名・強豪超人たち。死んだ者や一線を退いた者まで含まれるその面子を見て、ウォーズマンは訝しんだ。
 そして連想するのは、この面子を選び拉致した殺し合いの首謀者……草壁タツオと長門有希の顔だ。
 超人でもない、単なる人間であるはずの二人が、いかにしてこのような催しを実行できたのか、謎が残る。

「他の参加者も……殺し合いをするメンバーには、正義超人が守護すべき人間たちが多く含められている。
 人間・超人が混在する輪の中で、クロエの仮面を剥ぎ取られた俺に、神はなにを望む?
 ケビンマスクよ……おまえならどうした? そしてケビンの父であるロビンマスク、あんたなら……」

 ウォーズマンの悲願。それは、自身を超人レスリング界に引きずり込んだ張本人たるロビンマスクへの恩返し。
 ひいては、彼の息子たるケビンマスクをこの手で鍛え上げ、結果としてのチャンピオンベルト姿を拝むことにある。
 一方で、ウォーズマンは人間を尊び守る、地球の平和を死守する正義超人軍の一端だ。

 前者がクロエとしての顔であるとするなら、後者はウォーズマンとしての顔。
 そして、この地で呼ばれたのが『クロエ』ではなく『ウォーズマン』だとするなら……。

「戦えというのか~? ケビンマスクのコーチ超人クロエとしての悲願ではなく、
 ファイティングコンピューター・ウォーズマンとしての捲土重来を成せというのかぁ~?」

 仮面の外側に汗をかきながら、ウォーズマンは頭を抱えて狼狽する。
 若かりし頃のウォーズマンであったならば、このまま懊悩の海に沈み溺れただろう。
 だが、

「……おもしれぇじゃねぇかぁ~」

 ニィ……っと、ウォーズマンが口元を歪曲させて、笑う。
 残忍さを主張する不気味な笑みは、彼がファイトの際に時折見せる――通称『ウォーズマンスマイル』。
 若き超人時代の衝動と、アイドル超人軍としての使命感が沸々と甦り、ウォーズマンは歓喜に震えたのだった。

「やってやるぜー! 一人でも多くの人間を守り、悪行超人に類する輩はこの俺が沈めてやるー!」

 猛々しく叫び、ウォーズマンは立ち上がった。

「さて、そうと決まればいつまでも燻ってはいられねぇ。まずは各地を回ってみるか……」

 確固たる指針を胸に、行き先を求めるウォーズマン。
 現在地である暗がりからの脱出を目指し、歩を向けた矢先、

 幼い少女の泣き声が聞こえた。


 ◇ ◇ ◇


 なにもかもがわからなくなって、しっちゃかめっちゃかだった。
 おかあさんの退院の日は、そろそろだと聞かされていた。
 おとうさんが、大勢の人たちの前でなにかを喋っていた。
 おねえちゃんと繋いでいたはずの手の感触が、消えていた。
 全身を不安と焦燥が駆け巡り、足は加速し、走った。
 見知らぬ土地を、がむしゃらに駆けた。

 草壁メイには、それしかできなかった。

 四歳児の体には余る大きなデイパックを背負いながら、首輪の感触に怯えながら。
 知らない男の人がスープになる光景を覚えながら、それを眺めるおとうさんに怯えながら。

「わあああああああああああああああああんっ!!」

 顔面は既に涙でぐしょぐしょになり、目は赤くなっていた。
 それでも走りをやめられないのは、安心が訪れないからだ。
 いつもメイに安心を分け与えてくれていた姉や祖母は、側にいない。
 歯止めが利かず暴走する童心は、やがてその身を一軒の廃屋へと導いた。

 照明皆無の暗闇と、呼吸器官に詰まるような埃混じりの空気は、引っ越して来たばかりの我が家に似ていた。
 割れた窓ガラスや腐った床など、掃除だけでは住まいにはし難い雰囲気すら漂っていたが、メイは構わず突き進む。
 ひょっとしたら、ここにおねえちゃんがいるかもしれない。おばあちゃんがいるかもしれない。いないかもしれない。
 どこに行けばいいのかもわからなかった。普段ならとっくに寝ている時間、メイは疲れ果てるまで疾走を続けた。
 暗黒が満たす廃屋の中に足を踏み入れ、しかしその度合いがあまりにも濃すぎたがために、メイは二の足を踏む。
 幽霊でも出そうなべとついた空気に当てられて、幼女の恐怖心はさらに駆り立てられた。
 あのときは、おねえちゃんと一緒だったからまだ平気だった。あんな風に、大声で叫ぶこともできた。
 今は夜で、ひとりぼっちで、家に帰る手段もわからなくて、これからどうなってしまうかも全然わからない。
 不安が満たす矮小な心は、それでも懸命に救いを求め、少女の喉を刺激する。
 元気を取り戻せば、きっと――と。

「まっくろくろすけでておいでー!」

 メイは暗闇に向かって、泣きながらそう叫んだ。
 すると、

「コーホー」

 返ってきたのは、機械的な呼吸音。そして黒い人だった。


 ◇ ◇ ◇


「わああああああん! おねええええええちゃああああああああん!!」

 叫びの音量は増し、メイは脱兎の如く廃屋から逃げ出した。
 田舎で慣らした健脚がなければ転んでいただろう速さで、とにかくあの黒くて大きな人から逃れるために、走った。
 そんな、殺し合いの渦中に身を置かれた哀れな子供に目をつけたのは、一人だけではなかった。

 メイの足が向かう先、待ち構えるように立つ一人の少女の影があった。
 抜群のプロポーションをオーソドックスなセーラー服に包み、艶やかな長髪を可愛らしく揺らす。
 喜色に富む朗らかな笑顔は、泣き叫ぶ少女の姿をしっかりと捉え、またニコッと笑う。
 手には大型のボウイナイフが握られており、血痕の付着していない刃は今、この地で初めて人に向けられる。

 朝倉涼子はボウイナイフを得物とし、草壁メイを最初の獲物に選んだ。

 朝倉の持つギラギラとした刃に気づいたメイは、疾駆していた足を緊急停止。
 泣き顔をそのままに、声だけは止めて、にこやかに立つ朝倉と相対する。
 笑顔から発せられる、あまりの威圧感。耐え難い恐怖に、メイは竦んでしまった。
 既に狂気を垣間見た直後、四歳児のメイに耐えられるものではなく、当に限界は超えてしまっていた。

「おねえ、ちゃ、た、たすけ」

 どうにかして搾り出した声を、人間ならざる聴覚を持つ朝倉が拾い、返答としてこのような言葉を突きつける。

「うん、それ無理」

 残酷無比なキラースマイル。
 朝倉が一歩前に出て、メイは尻餅をついた。
 朝倉がもう一歩前に出て、メイは失神してしまった。
 朝倉は構わず、進撃を進めた。メイの意識はもはや朝倉には干渉できない。

 当然の結果が見えた、刹那。
 メイの後方に位置する廃屋から、黒い影が飛び出した。

「うおおおおお! スクリュードライバー!!」

 両腕を頭の上にピンと伸ばし、自身を矢のように鋭く尖らせ、回転。
 弾丸の性質を持った弩弓として、廃屋の壁をぶち破り標的の朝倉涼子に一目散。
 ベアークロー未装着でのこの技は、21世紀では『超人削岩機(マッハパルバライザー)』とも呼ばれる。

 飛来する黒の超人弩弓を前に、朝倉涼子は驚き瞠目する。
 身の硬直も一瞬に済ませ、すぐさま跳躍。人間離れした身体能力を持ってスクリュードライバーの射程から逃れた。
 朝倉が回避したことにより、弩弓は回転を停止。自身にブレーキをかけ、気絶した少女の壁となるように立つ。

 決意して早速、ウォーズマンは正義超人としての務めを果たしたのだった。
 が、守護はとりあえずだ。安逸は、悪行超人に類する外敵を倒して初めて訪れる。

「邪魔する気?」

 こっくりと首を傾げ、可愛らしく尋ねる朝倉。
 ウォーズマンは、そんな彼女に不敵な笑みを零しつつ返した。

「フッ、今さら人間面するのはやめてもらおうか。このウォーズマンの精巧なセンサーが告げている……貴様、人間ではないな?」
「あら、そういうあなたも人間じゃないみたい。でも、そっか。うん。ひょっとしたら、そういうことなのかもしれないね」

 ロボ超人であるウォーズマンの観察眼は、目の前の少女をただの人間ではないと踏んだ。
 首謀者のあの二人、草壁タツオの側にいた長門有希なる少女。どこか彼女に近しい雰囲気を感じる。
 ゆえにウォーズマンは脇を固め、悪行超人を前にしたときと同様の心構えで対決に臨んだ。
 しかし、朝倉涼子の次なるアクションは、ウォーズマンとしても想定外なものだった。

「今回の一件については、私は特になにも説明されていないの。情報統合思念体とのコンタクトも不可。
 けれどあの場にいた長門さんは紛れもなく本物だろうし、そもそも粛清されたはずの私がこうしてここに立っているのも不自然な話。
 でね、いろいろ考えてみて、とりあえず趣旨に則ってみようと思ったんだけど、あ、もちろん涼宮ハルヒは保護対象として確保する前提でね」

 スマイリー・マーダーは急にナイフを皮製の鞘に収め、饒舌に事情を語りだす。
 展開の唐突さに疑問を覚えるウォーズマンは、ファイティングポーズを解かぬまま問うた。

「なんのつもりだ?」

 朝倉はニコッと返し、直接の返答ではない身の上話を続ける。

「けど、そうなのよね。ここには私の知っている人間だけじゃなくて、あなたみたいな非人間もいるみたい。
 情報統合思念体とのコンタクトが取れないから、あなたがどういった存在なのかも私は知ることができないし。
 これはあれかな、人間みたいに情報は自分の足で得ろっていうお告げなのかな。おかしな話よね、誰に命令されたわけでもないのに。
 だってそうでしょう? 私は単なるバックアップかもしれないけど、長門さんの部下というわけじゃないし、草壁タツオなんて人間は知らない。
 私は対コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスであって、人殺しの道具ではないわけだし、そもそも殺す意味が不明瞭だもの。
 もしこの舞台が私の知らない情報で構成されていて、あなたのようなイレギュラーが他にも存在するというのなら、私はまず知ってみたい。
 この感覚はあれね。キョンくんを殺して涼宮ハルヒがどう出るか探求した、急進派の意向に沿って行動した私とは別種とはいえ同じものなのかも」

 ……タクティクスに長けたウォーズマンの精巧なコンピューターといえど、朝倉の真意はまるで読み取れなかった。
 本人どう対処したものかと立ち往生する傍ら、朝倉は無防備に歩み寄ってくる。

「安心して。とりあえず、その子とあなたに危害を加える気はなくなったから」

 変わらぬ笑顔で、まったく信用できないセリフを吐く朝倉に、ウォーズマンは結局構えを解けぬまま、

「ね? だから――少しあなたの話を聞かせて」

 親交の証として、向こう側からの強制的な握手を許してしまった。




【E-05/廃屋前/一日目・未明】

【名前】ウォーズマン @キン肉マンシリーズ
【状態】健康
【持ち物】デイパック(支給品一式、不明支給品1~3)
【思考】
1:幼女(草壁メイ)を保護、少女(朝倉涼子)に対応。
2:正義超人ウォーズマンとして、一人でも多くの人間守り、悪行超人とそれに類する輩を打倒する。
3:最終的には殺し合いの首謀者たちも打倒、日本に帰りケビンマスク対キン肉万太郎の試合を見届ける。
【備考】
※「キン肉マンII世 ULTIMATE MUSCLE2」超人オリンピック・ザ・レザレクション決勝直前から参加。


【名前】朝倉涼子@涼宮ハルヒの憂鬱
【状態】健康
【持ち物】ボウイナイフ、デイパック(支給品一式、不明支給品1~2)
【思考】
1:自身の知らぬ未知の情報を吸収、分析し、今後の方針を練る。そのためにもまずウォーズマンと対話したい。
2:今のところ誰かに危害を加えるつもりはない。


【名前】草壁メイ@となりのトトロ
【状態】気絶、精神疲労、軽い錯乱状態
【持ち物】デイパック(支給品一式、不明支給品1~3)
【思考】
1:失神及び錯乱状態。
2:おねえちゃんやおばあちゃんに会いたい。


時系列順で読む


投下順で読む


GAME START ウォーズマン 対有機生命体コンタクト用インターフェースは電気娘の夢を見るか?
GAME START 朝倉涼子
GAME START 草壁メイ






| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー