0号ガイバーの憂鬱 ◆4etfPW5xU6
ふと気が付くと、俺は何の変哲も無い教室に立ち尽くしていた。ついさっきまでは別の場所に居た筈、一体
どうやって? なんて考えるだけ無駄なのだろう。ハルヒに付き合っているうちに“普通じゃない事”は散々経験
してきたんだ。たかがワープ、驚くまでもないさ。……いや、多少びっくりしたがな。
重要なのはそんな事ではない。どうやって? ではなくどうするか、だ。
生憎とこんな馬鹿げた事に付き合うつもりはない。この年で人殺しの前科もちなんてまっぴら御免だ。だが、そんな事は可能なのか?
相手は得体の知れないおっさんに加え、“あの”長門だ。銀河を統括する情報統合思念体によって造られた
対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースとやらにしてSOS団が誇る不思議っ子宇宙人。どこかの超能力者よりも遥かに汎用性の高い力の数々。
そして、俺の首に巻かれたこの首輪。長門の力云々の前にこの首輪をどうにか解除しなくては話にならない。生殺与奪を相手に握られている以上、少し でも反抗すればあっという間に俺ジュースの完成する事は想像に難くない。
どうやって? なんて考えるだけ無駄なのだろう。ハルヒに付き合っているうちに“普通じゃない事”は散々経験
してきたんだ。たかがワープ、驚くまでもないさ。……いや、多少びっくりしたがな。
重要なのはそんな事ではない。どうやって? ではなくどうするか、だ。
生憎とこんな馬鹿げた事に付き合うつもりはない。この年で人殺しの前科もちなんてまっぴら御免だ。だが、そんな事は可能なのか?
相手は得体の知れないおっさんに加え、“あの”長門だ。銀河を統括する情報統合思念体によって造られた
対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースとやらにしてSOS団が誇る不思議っ子宇宙人。どこかの超能力者よりも遥かに汎用性の高い力の数々。
そして、俺の首に巻かれたこの首輪。長門の力云々の前にこの首輪をどうにか解除しなくては話にならない。生殺与奪を相手に握られている以上、少し でも反抗すればあっという間に俺ジュースの完成する事は想像に難くない。
「はぁ……一体何だってこんな事になっちまったんだよ」
弱音を吐きながらも、とりあえずデイバッグを漁ってみる事にした。昔の偉い人もこう言っている“百聞は一見に如かず”……何か間違っている気がしないでもない。
出てきたのは食料、ランタン、筆記用具に名簿や地図といった生活に必要なもの。
続いて、おっさんの言っていた支給品とやらを探してみる。どんな状況になるにしてもやはり武器は必要だ。例えば誰かに襲われた場合。超能力や
世界を思うままに改変する力など、当然俺は持っていない。運動部に所属しているわけでもないので、筋肉など平均並みにしか付いていない。そんな奴が
あの空間にいた怪物達に襲われている所を想像して欲しい。……言わなくてもわかる程結果は歴然としている。
つまり、だ。命運は支給品が握っていると言っても過言ではないっ! 多少の熱血オーラを出しながらデイバッグに手を突っ込み中から何かを引っ張り出す。
先ず出てきたのは金属バット。軽くスイングしてみるが多少重みを感じるだけで振り回すのに全く支障は無い。これならある程度は戦えるかもしれないが……長門の ような特殊な力を使える奴と渡り合えるかと聞かれれば、NOと答えざるをえない。
出来れば、銃が欲しいんだが。世の中はそんなに甘くは出来ていないらしい。
次に出てきたのは、直径30cmくらいの円盤状のもの。用途は不明だが、こんなもの戦闘に使えるとは思えん。
つまりまともな武器となるものは金属バットだけという事か……長門よ、どうせならもっとまともな物を支給してくれ。
金属バットをデイバッグにしまいながらふと思った。
参加しているのはSOS団で俺だけなのか? ……阿呆か俺はっ!!何の為の名簿なんだ? 猛烈にむず痒い衝動に駆られながら、デイバッグから名簿を取り出してパラパラと捲ってみる。
出てきたのは食料、ランタン、筆記用具に名簿や地図といった生活に必要なもの。
続いて、おっさんの言っていた支給品とやらを探してみる。どんな状況になるにしてもやはり武器は必要だ。例えば誰かに襲われた場合。超能力や
世界を思うままに改変する力など、当然俺は持っていない。運動部に所属しているわけでもないので、筋肉など平均並みにしか付いていない。そんな奴が
あの空間にいた怪物達に襲われている所を想像して欲しい。……言わなくてもわかる程結果は歴然としている。
つまり、だ。命運は支給品が握っていると言っても過言ではないっ! 多少の熱血オーラを出しながらデイバッグに手を突っ込み中から何かを引っ張り出す。
先ず出てきたのは金属バット。軽くスイングしてみるが多少重みを感じるだけで振り回すのに全く支障は無い。これならある程度は戦えるかもしれないが……長門の ような特殊な力を使える奴と渡り合えるかと聞かれれば、NOと答えざるをえない。
出来れば、銃が欲しいんだが。世の中はそんなに甘くは出来ていないらしい。
次に出てきたのは、直径30cmくらいの円盤状のもの。用途は不明だが、こんなもの戦闘に使えるとは思えん。
つまりまともな武器となるものは金属バットだけという事か……長門よ、どうせならもっとまともな物を支給してくれ。
金属バットをデイバッグにしまいながらふと思った。
参加しているのはSOS団で俺だけなのか? ……阿呆か俺はっ!!何の為の名簿なんだ? 猛烈にむず痒い衝動に駆られながら、デイバッグから名簿を取り出してパラパラと捲ってみる。
そこに並べられた名前に、俺は驚愕した。
○キョン/○涼宮ハルヒ/○朝倉涼子/○キョンの妹/○古泉一樹/○朝比奈みくる
何で朝倉が生きているのか、それも気にならなかったわけではない。だが何でっ、何で俺の妹が参加させられてるんだよ!? 確かにあいつも関係ないわけでは
ないのかもしれない。それだけでどうしてアイツが!? アイツはこんな非日常な事に巻き込まれてすんなり順応出来るほど“こっち側”に慣れているわけじゃない。
それにハルヒや朝比奈さんもだ。非日常の世界に足を突っ込んでいるとは言え、彼女達は無力な一般人だ。朝比奈さんなんか普段から危なっかしいってのに、こんな所
に連れて来られたら何をしでかすかわからない。……それはハルヒもか。アイツは自分から危ない事に首を突っ込んでいこうとする分だけ余計にタチが悪い。小泉だって、超能力者 とは言え閉鎖空間内じゃなければただの一般人だ。
こんな無力なメンバーを集めて一体長門はどうしたいんだ? 殺し合いを望むならそれ相応の奴らを呼べば良いではないか。大体アイツはハルヒを観測するのが役目で――
ないのかもしれない。それだけでどうしてアイツが!? アイツはこんな非日常な事に巻き込まれてすんなり順応出来るほど“こっち側”に慣れているわけじゃない。
それにハルヒや朝比奈さんもだ。非日常の世界に足を突っ込んでいるとは言え、彼女達は無力な一般人だ。朝比奈さんなんか普段から危なっかしいってのに、こんな所
に連れて来られたら何をしでかすかわからない。……それはハルヒもか。アイツは自分から危ない事に首を突っ込んでいこうとする分だけ余計にタチが悪い。小泉だって、超能力者 とは言え閉鎖空間内じゃなければただの一般人だ。
こんな無力なメンバーを集めて一体長門はどうしたいんだ? 殺し合いを望むならそれ相応の奴らを呼べば良いではないか。大体アイツはハルヒを観測するのが役目で――
いや、まさか、そういう事なのか?
以前朝倉が取った方法。俺を殺して、それに対するハルヒの反応を“観測”する。いくら長門に力があるとは言え、その親玉に勝てる道理は無い。
つまり、長門の親玉が朝倉のような急進派に意見が変わり、今までの仲間や新しく出来るであろう仲間を殺してハルヒがどうなるのかを観測するよう長門に命じて、こんな
事になっちまった。……三流SFドラマみたいなストーリーだが、有り得なくは無い。寧ろ、この状況からして当たらずとも遠からずって所か?
それなら、俺達が呼ばれた理由にもなるし、ハルヒが興味を持つであろう怪物達を参加させたのもすべて説明が付く。全てはハルヒを観測する為に。観測が終わり、仮に危険
だと判断すれば楽に殺すことも出来る。
観測以前にハルヒが殺される可能性もある。皆が皆殺し合いになるとは限らない。だが……イレギュラーがあってこそリアルな観測は出来る……筈。
正直、荒唐無稽な話だとは思う。だが、現実に俺達はここへ呼ばれ、殺し合いのゲームに巻き込まれている。ハルヒも、妹も、朝比奈さんも、小泉も。
俺は――SOS団の皆、そして妹と一緒に元の世界に帰りたい。
その為なら、何だって――
つまり、長門の親玉が朝倉のような急進派に意見が変わり、今までの仲間や新しく出来るであろう仲間を殺してハルヒがどうなるのかを観測するよう長門に命じて、こんな
事になっちまった。……三流SFドラマみたいなストーリーだが、有り得なくは無い。寧ろ、この状況からして当たらずとも遠からずって所か?
それなら、俺達が呼ばれた理由にもなるし、ハルヒが興味を持つであろう怪物達を参加させたのもすべて説明が付く。全てはハルヒを観測する為に。観測が終わり、仮に危険
だと判断すれば楽に殺すことも出来る。
観測以前にハルヒが殺される可能性もある。皆が皆殺し合いになるとは限らない。だが……イレギュラーがあってこそリアルな観測は出来る……筈。
正直、荒唐無稽な話だとは思う。だが、現実に俺達はここへ呼ばれ、殺し合いのゲームに巻き込まれている。ハルヒも、妹も、朝比奈さんも、小泉も。
俺は――SOS団の皆、そして妹と一緒に元の世界に帰りたい。
その為なら、何だって――
カサ
思考に没頭していた俺の足元にひらりと小さな紙が滑ってくる。気になって拾い上げてみる。
それは、支給品の説明書だった。どうやら先程探したときには見落としていたらしい。そこにはバットの説明、そしてユニットと呼ばれるものの説明
が記入されていた。詳しい事は良くわからんが、ともかくこれを使えば化け物じみた力が使えるらしい。いや、化け物になると言った方が正しいだろう。
これは諸刃の剣。人間を捨てる代わりに化け物になる、とんでもない代物だ。
それは、支給品の説明書だった。どうやら先程探したときには見落としていたらしい。そこにはバットの説明、そしてユニットと呼ばれるものの説明
が記入されていた。詳しい事は良くわからんが、ともかくこれを使えば化け物じみた力が使えるらしい。いや、化け物になると言った方が正しいだろう。
これは諸刃の剣。人間を捨てる代わりに化け物になる、とんでもない代物だ。
だが、そんなもん知ったことじゃない。
漫画のように楽して超パワーが手に入るなんて事は有り得ない。現実はそんなに甘くないって事もわかっている。
何より俺は、今までの暮らしが結構好きだったんだ。アホの谷口や国木田も、小泉や朝比奈さん――長門の事も。朝倉もそこに含めても良い。
何より俺は、今までの暮らしが結構好きだったんだ。アホの谷口や国木田も、小泉や朝比奈さん――長門の事も。朝倉もそこに含めても良い。
だから――ハルヒ、俺は人間をやめるぞ。
「殖装――っ!!!!!!!」
+ + +
日向冬樹は少し普通ではない少年だった。性格や容姿といった普遍的な性質ではなく、環境そのものが普通ではなかった。
ケロン軍と呼ばれる宇宙の存在。彼らが地球侵略の為に寄越した部隊であるケロロ小隊。侵略者と原住民、交わる筈の無い互いの存在が、あろう事か 共同生活を送っているのである。
故に日向冬樹は日常的に非日常の世界に足を踏み入れていた。しかし、それはあくまでも安全なもの。この殺し合いの舞台のように、人が人を殺し、化け物が化け物を殺す。
血で血を洗う明確な“死”がちらつく空気は全くの未経験者である。
そんな彼がこの場所――学校に来て行ったことは、最も信頼できる友達を探す事だった。
ケロロ軍曹と呼ばれる、地球侵略軍の隊長。だが、彼は地球侵略どころか自分の友達になりかけがえの無いものを沢山くれた。
軍曹に会えば、軍曹に会えば何とかしてくれる。そんな根拠の無い希望に、沈みそうになる心を、震える足を、泣き出しそうな表情を、無理矢理
奮い立たせて、大好きな友達を探すべく歩みを進める。
ケロン軍と呼ばれる宇宙の存在。彼らが地球侵略の為に寄越した部隊であるケロロ小隊。侵略者と原住民、交わる筈の無い互いの存在が、あろう事か 共同生活を送っているのである。
故に日向冬樹は日常的に非日常の世界に足を踏み入れていた。しかし、それはあくまでも安全なもの。この殺し合いの舞台のように、人が人を殺し、化け物が化け物を殺す。
血で血を洗う明確な“死”がちらつく空気は全くの未経験者である。
そんな彼がこの場所――学校に来て行ったことは、最も信頼できる友達を探す事だった。
ケロロ軍曹と呼ばれる、地球侵略軍の隊長。だが、彼は地球侵略どころか自分の友達になりかけがえの無いものを沢山くれた。
軍曹に会えば、軍曹に会えば何とかしてくれる。そんな根拠の無い希望に、沈みそうになる心を、震える足を、泣き出しそうな表情を、無理矢理
奮い立たせて、大好きな友達を探すべく歩みを進める。
「待っててね、軍そ――
だが、その言葉が最後まで紡がれる事はなかった。
冬樹が最後に見たのは、グレーの存在。とても人間とは思えないグロテスクな皮膚に全身を包まれた異形のもの。
お腹がやけに熱く感じる。激痛のショックで痛みも感じなくなっている。それでも冬樹は先へ進む。
大好きな友達に会うために。
腹に風穴を開けられ、大量の血を溢し、既に全身の感覚がなくなっていても。
冬樹が最後に見たのは、グレーの存在。とても人間とは思えないグロテスクな皮膚に全身を包まれた異形のもの。
お腹がやけに熱く感じる。激痛のショックで痛みも感じなくなっている。それでも冬樹は先へ進む。
大好きな友達に会うために。
腹に風穴を開けられ、大量の血を溢し、既に全身の感覚がなくなっていても。
ずり…ずり…ずり…ずり…
しかし、異形のものは容赦なく地を這う冬樹の足を、腹を、首を、腕を、頭を、全身を、満遍なく踏みつけていく。その度に骨は砕ける。肉が裂ける。頭が潰れる。ピンク色のものがドロリと溢れ出してきた。いたるところあ真っ赤に染まっていく。
まるで蟻んこを潰すような気軽さで、冬樹の体は潰されていった。
まるで蟻んこを潰すような気軽さで、冬樹の体は潰されていった。
「軍曹……姉ちゃ……………ま……ま……………」
やがて、冬樹の生命は闇に飲み込まれていく。
+ + +
もう、後戻りは出来ない。
俺の目の前には、名前も知らない少年がぐしゃぐしゃにひしゃげて死んでいる。全て俺がこの手でやった事だった。
腹に風穴を開け、何度も何度も何度も何度も何度も踏み潰した。
説明書に書いてあった通り、どうやら俺は化け物になってしまったようだ。
だが俺は決めた。あいつらとの日常へ戻るなら何でもすると。
考えてみればその方法は簡単な事だった。奴らはハルヒの親しい人を殺す事で観測を行おうとしている。なら、それはSOS団以外のメンバーでも
構わないのではないか? この舞台でハルヒと親しくなった奴を殺す。そうして得られた情報で長門の親玉を満足させる。
そうすれば俺達を殺す必要ない筈だ。だってそうだろ? もう既に観測し終えているんだから。
観測が終われば、SOS団を元の世界に帰すくらいなら長門に頼めば何とかなるだろうし。
だから、殺す。
関係の無い参加者には悪いが、何の手違いで朝比奈さん達に危害が及ぶかわからんからな。全員殺させてもらう。
俺の目の前には、名前も知らない少年がぐしゃぐしゃにひしゃげて死んでいる。全て俺がこの手でやった事だった。
腹に風穴を開け、何度も何度も何度も何度も何度も踏み潰した。
説明書に書いてあった通り、どうやら俺は化け物になってしまったようだ。
だが俺は決めた。あいつらとの日常へ戻るなら何でもすると。
考えてみればその方法は簡単な事だった。奴らはハルヒの親しい人を殺す事で観測を行おうとしている。なら、それはSOS団以外のメンバーでも
構わないのではないか? この舞台でハルヒと親しくなった奴を殺す。そうして得られた情報で長門の親玉を満足させる。
そうすれば俺達を殺す必要ない筈だ。だってそうだろ? もう既に観測し終えているんだから。
観測が終われば、SOS団を元の世界に帰すくらいなら長門に頼めば何とかなるだろうし。
だから、殺す。
関係の無い参加者には悪いが、何の手違いで朝比奈さん達に危害が及ぶかわからんからな。全員殺させてもらう。
あぁ……間違っている事は重々承知しているさ。それでも俺は、皆と戻りたいんだ――あの日常に。
【B-2 学校/一日目・未明】
【名前】キョン@涼宮ハルヒの憂鬱
【状態】健康、0号ガイバー状態、返り血に塗れている
【持ち物】金属バット@現実、ディパック(支給品一式×2、不明支給品1~2)
【思考】
1:すまんが皆殺させてもらう。
2:ハルヒと親しくなった奴は殺す。
3:皆で元の世界に帰りたい。
【名前】キョン@涼宮ハルヒの憂鬱
【状態】健康、0号ガイバー状態、返り血に塗れている
【持ち物】金属バット@現実、ディパック(支給品一式×2、不明支給品1~2)
【思考】
1:すまんが皆殺させてもらう。
2:ハルヒと親しくなった奴は殺す。
3:皆で元の世界に帰りたい。
【日向冬樹@ケロロ軍曹 死亡確認】
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