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新兵装」(2009/07/29 (水) 05:08:42) の最新版変更点

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・イメージSS「新兵装」(小説形式)    やけに太陽がぴかぴかと地面を照りつけるある日、  シムハの提案で俺たちの軍は川べりで休憩することになった。  歩きづめだったし、丁度いいといえば丁度いい。  皆は思い思いにしばし憩いの時間を楽しんでいる。  かくいう俺もブーツを脱いで、川に足を浸して涼むことにした。  すると、隣に妙な様子で会話している二人組を見つける。 「お主、見てくれ。こいつをどう思う?」 「すごく――着せたいですね」  シムハと古和泉が、妙な布切れを持って不敵な笑みを浮かべていた。  何か不吉な影が見える気もするけど、気のせいだろう。  彼らがニヤニヤしていると、そこへ訝しげな顔で寂零がやってくる。 「ヌシら何をしておるのじゃ。休憩中とはいえ  その弛み切ったツラは情けないぞ」 「これはこれは寂零殿――実はこのシムハ、新しい衣服を開発致しました」 「ほう。その面積が少なさそうな布切れのことではあるまいな」 「何をおっしゃる。この照りつける日差しの中、  重装備では熱中症を起こしてばたんきゅーですぞ!」  凄い勢いでシムハは布切れの有用性を力説していた。  なんかもう必死すぎて、遠目に見ている俺は少し引いている。  彼は暑さのせいで頭がやられてしまったんだろうか。  そんなことを考えていた矢先、寂零が悩む様な素振りを見せた。 「じゃが――戦人たるもの、このような軟弱な服装では防御が――」  むう、と難しい顔をする寂零に古和泉が隣から声をかけた。 「寂零様。疑われるならば、自ら着用して審査して頂ければと存じます」  何故だかそんな搦め手で考え込む寂零。  驚くべきことに、彼女はややあって古和泉の意見に頷いた。 「――ふむ、そうじゃな。しかしこれを着てどうなるというのじゃ」 「これを着れば水中での摩擦が減り、早く泳ぐことが出来ましょう。  水中戦での救世主、すなわち救水(すくみず)。  それがこの兵装の名前でありまする」 「すくみず――か。まあよい、とりあえず貸りるぞ」  そう言うと寂零は近くの岩影へと姿を消す。  小説で英国紳士からマナーを学んだ俺は覗こうなどとは考えない。  それに、覗いたりしようものなら、影を残して現世とおさらばだ。  シムハもそういった生々しい欲求はないらしい。  古和泉に至っては彼女の様子を気にするどころか、  俺の視線に気がついてこちらへやってきた。 「どうです辰巳君。彼女の水着姿は気になるでしょう」 「俺を誰だと思ってるんだ。そんな趣味はない」 「――そうですか、こっちの趣味でしたか」  にこにこ微笑みながら、ひそひそ話すような様子で手を口元に当てる。  要するに古和泉は俺を同性愛者だといいたいわけだ。 「冗談だろ、それはお前の方じゃないのか?」 「あ、着替えが終わったようですよ」  否定しないのかよ。何故、否定しないんだよ。  そう思いつつ寂零の方を見ると、彼女はすくみずを着て立っていた。  眩い。何か解らないが、光を放っている。  童女などに興味はないはずなのだが、寂零の姿に目を奪われる自分がいた。  救水とやらの手触りはざらついていて、ぴたっと身体にくっついている。  スレンダーな寂零の身体に食い込む勢いだ。 「どうじゃ辰巳、儂に似合っているかのう」  似合いすぎていて怖いくらいだが、なんとなくそれを言うのは憚られた。  どう考えても服としては露出が激しくて目のやり場に困る。  水着という兵装は、まるで下着じゃないか。  だが不思議といやらしさはあまりなくて、健康的ですらある。 「こら辰巳――何をじっと見ている」 「いや、なんでも――ちょっと、見とれ――見てただけだ」 「辰巳さん、何を見てるんですか?」 「うぉうっ」  すっと隣から声をかけてきたのは咲耶さんだ。  気配を感じさせずに、俺の隣までやってきたらしい。  いつもどおりの笑顔なのに、少しむくれているようにも見える。 「あら寂零さん、随分涼しそうな格好ですね」 「咲耶さんか。どうやらこれは泳ぐための兵装らしいぞ」 「兵装、ですか。でしたら泳がれてみては?」 「うむ」  頷くと寂零は歩いて川へと足を下ろす。  娘を愛でるような顔でシムハはそれを見ていた。  しばし彼女が川で泳ぐ様を見ていると、隣りの咲耶さんに声をかける。 「この際です、咲耶殿も試されてみてはどうかな?」 「えっ? 私もですか? でも――」  ちらりと咲耶さんは俺の方を見てきた。  こっちを見られても困る。いいわけの防壁にはなれそうにない。  何しろ俺は鼻の下が伸びている最中なのだから。  咲耶さんが水着を着たら、違うものまで伸びる事態になりかねない。 「辰巳さんはどうですか? 私、似合うと思いますか?」 「あ、うん。似合うと思う」  主に胸的な意味で似合うと思う。  それから数分後。  俺は目の前に繰り広げられるパライソを堪能することになった。  なんだかんだで寂零だけでなく、咲耶さんとメアリも参加している。  最初は恥ずかしがっていたが、今では水をかけあって遊んでいた。 「この兵装、吸いつくような質感で凄くいいですね」 「そうじゃな。質感は悪くない」  咲耶さんと寂零は意外と水着を気に入っているらしい。  二人とは少し違うが、メアリもなかなか気に入っている様子だ。  なんだかうずくまって右腕を押さえているが、気に入ってるんだろう。 「くっ――この締め付けられるような感覚、これは奴の――」  また始まったと思った俺だが、そこへ寂零が食いついていく。 「奴とはなんじゃ? まさか天津どもか!」  その食いつき加減は空腹のピラニア並みの勢いだ。  これは流石にメアリも誤魔化すかと思いきや、全く逆だった。 「大丈夫です。この程度、私の右腕が押さえてくれる」 「そうはいかんっ。詳しく儂に教えるんじゃ」 「近づかないでください。右腕の瘴気に呑まれてしまう」 「な、なに? どういうことだっ」  うはーとため息が出てしまう。  必死に食い下がる寂零がもはや微笑ましい。  メアリは解っていて遊んでいるんじゃないだろうな。  彼女の表情からは、何処まで本気なのかはさっぱり解らなかった。  二人が問答しているのを見ていると、咲耶さんがこちらへやってくる。 「あの――どうでしょうか、私も似合ってますか?」  ちょっと照れくさそうな顔で、彼女は俺の隣に座るとそう言った。  満面の笑みで答えそうになって、俺はにへら笑いをぐっと堪える。  ここは紳士らしく、優しそうな顔で答えるべきだ。 「すごく似合ってるよ咲耶さん」 「――よかった」  安心した表情で彼女は微笑む。  咲耶さんは、はにかみながらメアリたちのほうへと歩いていった。  うん、この兵装は素晴らしいものだ。  ぴっちりしていて、頻繁に食い込みを直すところが実に素晴らしい。  着ている彼女らが一人を除き豊満な方々ということもまた然り。  これが実戦投入されれば、味方の士気は激しく向上すること間違いなしだ。  そう一人で納得していると、シムハが俺の肩をぽん、と叩く。 「――これが、我輩の求める平和の形。解ってくれたかね」 「爺さん、あんた本物の漢だよ。自分がちっぽけに見えてくるくらいにな」 「謙遜することはない。漢はどこまでも豪胆であれ」  その時だった――。目の前に奇妙な光景が映し出される。  彼女たちの水着の上に、小さなぽっちが浮かび上がっているのだ。  さくらんぼのような綺麗な桜色だ。  あれって、まさか。  俺が何かを理解するより早く、寂零以外は身体を抱きすくめてうずくまる。 「おお、こりゃいかん。何かミスがあったか」  パットを縫い付けてなかった故らしいのだが、  そんなことは俺に解るはずもなくただうろたえるしかない。  寂零は手で胸部を隠しながらシムハに近寄っていく。 「これはなるほど――面白い兵装じゃな」 「いやいや寂零殿、発明には失敗と成功があるのでありまして」 「ほお――次は紙で出来た服でも作るか?」 「む! それは妙案にござりまげひゅっ」  首元に鋭い手刀が入ってシムハの言葉が途中で切れる。  続いて寂零の回し蹴りが彼の横っ面に直撃した。  10mくらい飛距離が出て、彼は水面を跳ねながら遠くへ飛んでいく。  まあ当然なのだが、このときを持って救水と言う兵装は却下された。 .
・イメージSS「新兵装」(小説形式)    やけに太陽がぴかぴかと地面を照りつけるある日、  シムハの提案で俺たちの軍は川べりで休憩することになった。  歩きづめだったし、丁度いいといえば丁度いい。  皆は思い思いにしばし憩いの時間を楽しんでいる。  かくいう俺もブーツを脱いで、川に足を浸して涼むことにした。  すると、隣に妙な様子で会話している二人組を見つける。 「お主、見てくれ。こいつをどう思う?」 「すごく――着せたいですね」  シムハと古和泉が、妙な布切れを持って不敵な笑みを浮かべていた。  何か不吉な影が見える気もするけど、気のせいだろう。  彼らがニヤニヤしていると、そこへ訝しげな顔で寂零がやってくる。 「ヌシら何をしておるのじゃ。休憩中とはいえ  その弛み切ったツラは情けないぞ」 「これはこれは寂零殿――実はこのシムハ、新しい衣服を開発致しました」 「ほう。その面積が少なさそうな布切れのことではあるまいな」 「何をおっしゃる。この照りつける日差しの中、  重装備では熱中症を起こしてばたんきゅーですぞ!」  凄い勢いでシムハは布切れの有用性を力説していた。  なんかもう必死すぎて、遠目に見ている俺は少し引いている。  彼は暑さのせいで頭がやられてしまったんだろうか。  そんなことを考えていた矢先、寂零が悩む様な素振りを見せた。 「じゃが――戦人たるもの、このような軟弱な服装では防御が――」  むう、と難しい顔をする寂零に古和泉が隣から声をかけた。 「寂零様。疑われるならば、自ら着用して審査して頂ければと存じます」  何故だかそんな搦め手で考え込む寂零。  驚くべきことに、彼女はややあって古和泉の意見に頷いた。 「――ふむ、そうじゃな。しかしこれを着てどうなるというのじゃ」 「これを着れば水中での摩擦が減り、早く泳ぐことが出来ましょう。  水中戦での救世主、すなわち救水(すくみず)。  それがこの兵装の名前でありまする」 「すくみず――か。まあよい、とりあえず貸りるぞ」  そう言うと寂零は近くの岩影へと姿を消す。  小説で英国紳士からマナーを学んだ俺は覗こうなどとは考えない。  それに、覗いたりしようものなら、影を残して現世とおさらばだ。  シムハもそういった生々しい欲求はないらしい。  古和泉に至っては彼女の様子を気にするどころか、  俺の視線に気がついてこちらへやってきた。 「どうです辰巳君。彼女の水着姿は気になるでしょう」 「俺を誰だと思ってるんだ。そんな趣味はない」 「――そうですか、こっちの趣味でしたか」  にこにこ微笑みながら、ひそひそ話すような様子で手を口元に当てる。  要するに古和泉は俺を同性愛者だといいたいわけだ。 「冗談だろ、それはお前の方じゃないのか?」 「あ、着替えが終わったようですよ」  否定しないのかよ。何故、否定しないんだよ。  そう思いつつ寂零の方を見ると、彼女はすくみずを着て立っていた。  眩い。何か解らないが、光を放っている。  童女などに興味はないはずなのだが、寂零の姿に目を奪われる自分がいた。  救水とやらの手触りはざらついていて、ぴたっと身体にくっついている。  スレンダーな寂零の身体に食い込む勢いだ。 「どうじゃ辰巳、儂に似合っているかのう」  似合いすぎていて怖いくらいだが、なんとなくそれを言うのは憚られた。  どう考えても服としては露出が激しくて目のやり場に困る。  水着という兵装は、まるで下着じゃないか。  だが不思議といやらしさはあまりなくて、健康的ですらある。 「こら辰巳――何をじっと見ている」 「いや、なんでも――ちょっと、見とれ――見てただけだ」 「辰巳さん、何を見てるんですか?」 「うぉうっ」  すっと隣から声をかけてきたのは咲耶さんだ。  気配を感じさせずに、俺の隣までやってきたらしい。  いつもどおりの笑顔なのに、少しむくれているようにも見える。 「あら寂零さん、随分涼しそうな格好ですね」 「咲耶か。どうやらこれは泳ぐための兵装らしいぞ」 「兵装、ですか。でしたら泳がれてみては?」 「うむ」  頷くと寂零は歩いて川へと足を下ろす。  娘を愛でるような顔でシムハはそれを見ていた。  しばし彼女が川で泳ぐ様を見ていると、隣りの咲耶さんに声をかける。 「この際です、咲耶殿も試されてみてはどうかな?」 「えっ? 私もですか? でも――」  ちらりと咲耶さんは俺の方を見てきた。  こっちを見られても困る。いいわけの防壁にはなれそうにない。  何しろ俺は鼻の下が伸びている最中なのだから。  咲耶さんが水着を着たら、違うものまで伸びる事態になりかねない。 「辰巳さんはどうですか? 私、似合うと思いますか?」 「あ、うん。似合うと思う」  主に胸的な意味で似合うと思う。  それから数分後。  俺は目の前に繰り広げられるパライソを堪能することになった。  なんだかんだで寂零だけでなく、咲耶さんとメアリも参加している。  最初は恥ずかしがっていたが、今では水をかけあって遊んでいた。 「この兵装、吸いつくような質感で凄くいいですね」 「そうじゃな。質感は悪くない」  咲耶さんと寂零は意外と水着を気に入っているらしい。  二人とは少し違うが、メアリもなかなか気に入っている様子だ。  なんだかうずくまって右腕を押さえているが、気に入ってるんだろう。 「くっ――この締め付けられるような感覚、これは奴の――」  また始まったと思った俺だが、そこへ寂零が食いついていく。 「奴とはなんじゃ? まさか天津どもか!」  その食いつき加減は空腹のピラニア並みの勢いだ。  これは流石にメアリも誤魔化すかと思いきや、全く逆だった。 「大丈夫です。この程度、私の右腕が押さえてくれる」 「そうはいかんっ。詳しく儂に教えるんじゃ」 「近づかないでください。右腕の瘴気に呑まれてしまう」 「な、なに? どういうことだっ」  うはーとため息が出てしまう。  必死に食い下がる寂零がもはや微笑ましい。  メアリは解っていて遊んでいるんじゃないだろうな。  彼女の表情からは、何処まで本気なのかはさっぱり解らなかった。  二人が問答しているのを見ていると、咲耶さんがこちらへやってくる。 「あの――どうでしょうか、私も似合ってますか?」  ちょっと照れくさそうな顔で、彼女は俺の隣に座るとそう言った。  満面の笑みで答えそうになって、俺はにへら笑いをぐっと堪える。  ここは紳士らしく、優しそうな顔で答えるべきだ。 「すごく似合ってるよ咲耶さん」 「――よかった」  安心した表情で彼女は微笑む。  咲耶さんは、はにかみながらメアリたちのほうへと歩いていった。  うん、この兵装は素晴らしいものだ。  ぴっちりしていて、頻繁に食い込みを直すところが実に素晴らしい。  着ている彼女らが一人を除き豊満な方々ということもまた然り。  これが実戦投入されれば、味方の士気は激しく向上すること間違いなしだ。  そう一人で納得していると、シムハが俺の肩をぽん、と叩く。 「――これが、我輩の求める平和の形。解ってくれたかね」 「爺さん、あんた本物の漢だよ。自分がちっぽけに見えてくるくらいにな」 「謙遜することはない。漢はどこまでも豪胆であれ」  その時だった――。目の前に奇妙な光景が映し出される。  彼女たちの水着の上に、小さなぽっちが浮かび上がっているのだ。  さくらんぼのような綺麗な桜色だ。  あれって、まさか。  俺が何かを理解するより早く、寂零以外は身体を抱きすくめてうずくまる。 「おお、こりゃいかん。何かミスがあったか」  パットを縫い付けてなかった故らしいのだが、  そんなことは俺に解るはずもなくただうろたえるしかない。  寂零は手で胸部を隠しながらシムハに近寄っていく。 「これはなるほど――面白い兵装じゃな」 「いやいや寂零殿、発明には失敗と成功があるのでありまして」 「ほお――次は紙で出来た服でも作るか?」 「む! それは妙案にござりまげひゅっ」  首元に鋭い手刀が入ってシムハの言葉が途中で切れる。  続いて寂零の回し蹴りが彼の横っ面に直撃した。  10mくらい飛距離が出て、彼は水面を跳ねながら遠くへ飛んでいく。  まあ当然なのだが、このときを持って救水と言う兵装は却下された。 .

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