R-9


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第9話 「れいめいより生まれるあかつきの願い(アージ)」


れいめい:黎明/霊名
あかつき:暁/赤月
urge(アージ):衝動・欲望
■ 解釈 ■
「暗い夜が明けない黎明の時に朝が来て欲しいという願い」
「新しい名前を受けることで生まれた赤い月が願う事」

(2012.08.05 GM悠香)
とりあえず一部だけ。鉄は熱い内に打て。
結局GMが楽しい思いをしてしまった気はします。もっとアドリブ力が欲しい。
(2012.08.11 GM悠香)
今回はPLにあらすじを書かせるのは酷かな~と思うので全部を書く勢いで書く事に。
取りあえず、5分の4は書きましたかね。あとはゼラキエルさんの場面だけ~。
皆さま内容をご確認いただき、修正箇所がありましたら修正願います。
(2013.08.19 GM悠香)
ゼラキエルの場面をかなりの部分補足を入れて追記しました。

  ◆  ◆

青白い月光の下、照らし出された台座に刻まれた3つの四行詩。
その解釈に考えをめぐらす4人だったが、一先ず休息を取ろうとかつては美しい中庭だった場所に出た。
色とりどりの花を咲かせていた庭も、今は雑草がすっかりと覆い尽くしてしまっている。
その向こう、渡り廊下を走って逃げようとしていたらしい石化した人間がいる。

庭を手入れ等をしていた老人アルでイシュタルも知っており、アル爺と呼んでいた。
イシュタルが石化を聖眼術で解いてやると、数歩よろけて立ち止った。
目の前に立つ現在のイシュタルを見て、かつての面影を見いだしつつも誰かわからず戸惑う。
イシュタルは自分の事を名乗り、今の状況を説明した。

里は、イシュタルが襲われた2年前、その日のままに荒れ果てていっていたのだった。

寂寥感に包まれつつ一夜を過ごし、翌日はイシュタルとラバーカの協力により(ラバーカは2回ほど自分で作り出してしまった水しぶきを浴びてしまい、その旅に一人封居に1時間ほど閉じこもっていた)、村人の殆どを石化から解く事が出来た。
といっても、石化されていたのは28名のみで、以前の住民の数からすれば1割程度である。

石化を解く作業は、老人の次に石化を解かれた少年、巫女の護衛騎士の息子であり騎士見習いでもあったアインの協力で里の安全を確かめつつ、水や食糧の確保等復興に向けての下調べも行われた。
井戸の水は今も清く澄んでおり、井戸水を汲むためのつるは脆くなっていたものの、持ち合わせていたロープと取り換えてやり仕えるようにした。食糧は穀物庫にあった小麦やトウモロコシ、豆等の保存の効くものがそのままにあった。
ソルーシュはふと思い出し、森でリンゴを一つ採ると里の一角で樹芸を用いて見る間に1本の木へと成長させて見せると、果実をたわわに実らせ数回にわたって収穫するにいたった。

PL「ちょw樹芸実は使えるんじゃね!?」
PL「樹芸あれば、ゲヘナの均衡って……」
GM「うふふww(ようやく気が付きましたかw)」

その次の日には、残りの石化された里の人も術が解かれ、生き残っていたすべての人が解放された。
そこで、アル爺よりイシュタルに話があると告げられた。
神妙な面持ちで集まる里の人々に囲まれる中、告げられた内容は里の守護者たる太陽の天使シャムスが12日後に降臨するというものだった。

その日は、真昼の最中に急激に光帯が光を失い、里が薄闇に包まれるのだ。
(アル爺が言うには、20年ほど前?には光帯はなく、その頃は空全体が光っていたのものが暗くなっていたそうだ)

まちゃん&Birne「そーだっけ?」
GM「無印読んだら光帯なんてなかったっぽい。空が全体的に光ってるんだとか」
まちゃん「あー。そういえば、そうだったかも?」

里で伝え聞いている事によれば、それは地上では日食が起きている時なのだそうだ。
空に浮かぶ太陽が日食により消え、その太陽の光を纏った天使シャムスが宮の奥にある神殿に現れる。
その降臨の儀式を行う巫女は、代々シャムスに仕えてきた巫女の末裔であるイシュタルにその役目があるのだ。

イシュタルは降臨したシャムスがもたらす神託がどんな内容なのか不安に感じつつも、里の人々の願いにこたえる事にした。

4人は一先ず里で確認しておきたかった、イシュタルとソルーシュが日時計の部品を拾ったという廃墟となった神殿に向かった。
もう10年も前の事で、行き方を覚えているかどうか不安であったが、思いのほか記憶は鮮明で迷うことなく数時間ほどでたどり着く事が出来た。
神殿は記憶の中の姿と変わっておらず、時を止めているかのようだった。

中に入ると、2人が太陽の話をした壁画の他、沢山の壁画や神語のような古代の文字が刻まれていた。
内容はどうやらラウ教に伝わるラウが世界創造をしてからの話らしい。
いまにも伝わっているその物語をもとに解読して行くと、概要は以下のようなものである。
唯一絶対の神ラウは混沌より光と闇を分け、天地を創造した。
光より天使を作り、天に住まわせた。炎と風より妖霊を作り、地上に住まわせた。
(↑子供の頃にイシュタルとソルーシュが会話した壁画)
妖霊は神の戒めを破って地上を荒廃させた。
それに嫌気がさした一人の妖霊が、天使とともに天上に住みラウに仕えたいとラウに乞い、叶えられた。
その妖霊以外の妖霊は砂漠に封印された。
神は次に、水と土より人間を作り、地上の主とした。
神が天使とかの妖霊に「人間に跪拝(きはい)せよ」と言うと、全ての天使は従ったがその妖霊だけは立ったまま従わなかった。
「何故、私がこのようなものに跪拝しなければならないのでしょうか」「それは、人間が○ーカ○○……を知っているからだ」
(↑天使たちがひれ伏している中、ラウとその妖霊と一人の人間が立っており、人間の後ろには何かの果樹が生えている壁画)
「ならば私は――」と、身をひるがえし、その妖霊は神の前を去っていった……。
  ※だいぶ補強しましたが肝心な部分は変わってません。

ほどなく遺跡をめぐり終え、肝心の最上部の塔へと上がっていった。
まだ光帯は燦々と4人を照りつけていた。
しかし、あの日と違っていたのはそれくらいで、期待していたような発見は何もなかった。


それからは瞬く間に過ぎた。
村人総出で儀式の準備を行いつつその傍らで村の復興のための作業が行われた。
イシュタルはもちろん4人は積極的に村の復興を手伝い、たまたま石化されていた家畜の石化が解かれたり、田畑を耕したり、果樹林を作ったり、水路を修復し水を里まで引いたりと見る間に里は人々が何とか暮らせるようになっていった。

当日――
イシュタルは朝から体を清め、衣装を整え宮の普段使う礼拝堂で祈りをささげていた。
その姿を見てソルーシュが顔を赤らめたりしたことがあったような。そういえば、一緒に封居で寝ている時にもなんだかドギマギしてました。
因みに、説明されていた儀式の内容は特に難しいものは無く、魔術的な儀式でもなく、ただただ所作を正されて儀式に臨まされることとなっていた。定刻になれば、シャムスが輪郭のみの光の姿で神殿の壁に現れるとの事。

そろそろ時刻か、と思っているとアインがアル爺に言われてイシュタルに移動するよう告げた。
奥の神殿へと移動しようとしていると、既に光帯が徐々に光を失いつつあった。
神殿の門の前につくとアル爺が目をしばたたかせて言う、「イシュタル様?先ほど既に入られたのでは……?」
その言葉に4人は一つの可能性に気づく。

――エレキシュガルが、イシュタルに扮し中に入っていった。

※シナリオ中では明かされてませんでしたが、エレキシュガルの邪眼術のサジェスチョンでアル爺にアインへの伝言を「“10分たったら”イシュタル様をここに案内なさい」と言わせたのでした。

慌てて、イシュタルはすぐさま装備できそうなものだけ身につけ、中へと4人は入っていった。
中には幻鏡術と思しきトランスポーターのようなものが浮いていた。
神殿の中には人の気配はなく、4人はエレキシュガルがトランスポーターを通って行ったのだと解釈し、自らも入っていく。

通り抜けた先、出たところは巨大な神殿だった。
直径40メートルほどの半円状のテラスに4人はいた。半円の外側は何もなく、下を覗き込むと遥かかなたにジャハンナムの大地が見え、目線を水平方向に向けると黒沙に満ちた闇と絶望の砂漠が取り囲んでいるのが見えた。
普通に空を飛んだのではたどり着けない程に上空にこの天使の神殿はあった。

中へ入って行こうとすると、逆に中から出てくる人影が見えた。
果たしてそれは、エレキシュガルであった。その横には、以前ネルガルと名乗った異形の姿の者も立っていた。
顔がみえるほどに近づいてくると、その表情が暗く沈んでいるのが分かる。
「ここにいたのは太陽じゃなかった……」
茫然自失といった態の彼女は、4人にようやく気が付くと暗く薄く笑って言った。
「イシュタル……。貴女は、そう。私にとって“太陽”と言えるわよね……?
 ねぇ、イシュタル。ソルーシュの為に、死んでくれない?」
「!?」
「な、何を言ってるの!?」

PL「やべぇっマジでこの子の目的が分からん」

「戦う理由が無いわ……っ。どうして戦わないといけないの!?」
「理由……? そう、じゃあこれなら?」
そう言って、彼女が胸元から取り出したのは、ソルーシュとイシュタルの約束の証である日時計の部品だった。
「それはっ!! 何故、貴女が持ってるの!?」
エレキシュガルはにこりと笑い、
「どうやら戦う気になったみたいね。これを持っていれば、私は貴女にとって“太陽”と言えるかしら?」
「それを返してーっ!!」
イシュタルは掴みかかるかのような勢いで、エレキシュガルへと駆けて行く。

PL「何なの、コレ?」
PL「たぶん四行詩を無理くり読み替えてしまおうって事じゃないかな?」
GM「まぁそゆこと。
  今までのエレキシュガルの行動は、第1話では四行詩が詠われる事そのものを阻止しようとしたけど失敗して、今度は読まれている四行詩を別の解釈でもって達成させて捻じ曲げようとしてる感じかね」

イシュタルへと邪視が向けられるのをソルーシュがさえぎり、エレキシュガルを殴りつける。
「お前の目的は一体何なんだっ!?」
しかし、フォース・アンド・ショックがソルーシュの体を襲う。
「貴方に……理解される必要なんて、ないっ!!」
その瞳が濡れていたことに、ソルーシュは気付かなかった。

しかし、多勢に無勢。
数度の攻防の後、エレキシュガルはラザックの棍により、意識を失って倒れる。
その隙にイシュタルは彼女の胸元より日時計のリングを奪い返す。
すると、音もなく近づいていたネルガルがエレキシュガルを抱き上げると、
「奥に行くがいい。貴様らの望むものがいるかどうかは知らんがな」
と言い残し、何の魔術なのかその姿をくらませた。

神殿の中に4人が進んで行くと、巨大な列柱の間を神殿の中心へと延びる鎖が幾本も見えた。壁には魔術的な赤黒い紋様が刻まれ、物々しい雰囲気を醸し出している。

  ◆  ◆
(2013.8.19追記)
奥へと進むと、幾本もの鎖の先に1人の天使がいた。
その周囲には赤と青の球体がいくつも浮遊している。鎖の先についた巨大な杭で体を何か所も刺されて地面に繋ぎとめられ、杭による傷からは今も血が滴り落ちる。6枚(だったっけ?取りあえず複数枚だったはず)の翼は元の色が白だったのかも分からないほど傷つき血で汚れ、振り乱した髪から除いた瞳は――瞳があった場所に瞳は無かった。

周囲の球体が、入ってきた4人に注目するかのように動く。
天使が口を開く。
「貴女を、待っていました……」
イシュタルを見てその天使は言った。
「あなたがシャムスなの?」
「そう。貴女達の村ではそう呼ばれています。しかし、私の本当の名はゼラキエル。“月の天使”ゼラキエル」

PL「ちょっ!!ゼラキエル!?何でこんなところにーーっ!!!!」

「どうしてこんなところに……」
「私はイブリスに騙されたのだ……。奴の甘言にまんまと三界を繋ぐ月の扉を閉じてしまい……。おのれイブリス、こんな事をして神がお許しになるはずがないのだ。扉さえ、扉さえ開けば」

PL「おぉぉ、ここのゼラキエルは何だか良い人っぽい?」

ゼラキエルは憤然と語っていたが、息を吐いて自分を落ち着かせ再び話す。
「だが、私はこの通り両眼を奪われ、多くの力を失った。扉を操る力も私には残されていない。自ら力を取り戻す事も出来そうにない」
ゼラキエルはひたとイシュタルを見る。
「そこで、私は自分の力を人間に宿らせる事を考えたのです」

ゼラキエルが語った概要は以下。
自分の力を人間に宿らせようと考えたが、無理に行えば人間の体が耐えられない。また、古の天使が巨人ネフィリムたちを作りだしてしまったような方法は、堕天してしまうのでその意味でも行い得ない。
故に、幾つもの世代をかけて徐々に天使の光に耐えられるようにしていった。
それが、里の巫女だった。
全くの普通の人間であったのが、徐々に慣れてきた頃に聖眼術を教えた。
イシュタルはその集大成であった。イシュタルが成人した時、ゼラキエルと邂逅する儀式の日に、ゼラキエルが持つ全ての光を渡して力に目覚めさせ、地上へと繋がる扉を開かせようと考えていたのです。

「私を殺して下さい。今は完全とは言えない状態のようですが、そうすれば貴女に地上への扉を開ける力が手に入ります。イシュタル、貴女は地上へと行きたいのでしょう。」
古の大天使が何百年という歳月をかけて願う事、それは自身の死であった。
地上へと行ける、しかし、神話に出てくるような天使を殺して。
俄かには信じられない話に4人は息をのむ。
「躊躇う必要はありません。私を殺すことは私が望む事、この頸木から解放されるということなのだから」


  ◆  ◆

「駄目だよ。そんなことをやっちゃぁ」
軽い足音が聞こえてくる。
入口から近づいてくる人影。その背丈は低い。

やってきたのは、ラーフとイシュタルに依然名乗った少年であった。
「久しぶりだね、イシュタル」
「ど、どうしてここに……?」
「イシュタル、知り合いなのか?」
「メモリアル・ヒート(か、もしくはこの上位魔術)で君の事はずっと追跡してたんだ」

PL一同「ストーカーかよっ!!」
GM「ははは。私のメモにもそう書いている」

「それなのに、びっくりしたよ。いきなり君の位置がこんなところに移動しちゃうんだもん。慌てちゃったよ」
 ね。ゼラキエル。
 君のアイディアは面白いけど、話していない事があるよね」
ゼラキエルは憎々しげにラーフを睨む。
「君を倒せば、月の門を操作する力は確かにイシュタルに宿るかもしれない。
 だけど、全てじゃない。開けることぐらいしかできないんじゃないの?
 そうなったら、地上に邪霊たちが溢れかえってしまう。それは僕が望むところではないんだよ」
「本当なのか、ゼラキエルっ!?」
ソルーシュの言葉に目線をそらす月の天使。
「そんな……」
「地上までこの地底世界が広がってしまう、そんなの良くないよねぇ?」

話し続けている少年の姿を見たラバーカは、その正体に気が付き絶句する。
――あれは、恐らく……――
「そんな、何故……あれはジルジャリスとノトルファリの代行分体……っ(以下略。説明はNPC紹介に掲載予定)」

GM「今話しているのはジルジャリスだよ☆」
PL「首領級邪霊のバーゲンセールかよっ!!GM出し過ぎじゃね!?」

「嘘よっ!!ラーフが……、私を助けてくれた人が邪霊だなんてっ!!!!
 ラーフはこんな人じゃないっ。きっとラーフの顔をした別の……」
「あぁ、勘違いしてもらっちゃ困るねぇ。君を助けたのはノトルファリの方さ~」
「……????」
「分かりにくいかな。あぁ、何だかノトルファリも少し御立腹してるから、分かれるね」
そう少年が言うと、黒髪の少年の背後から現れるかのように銀髪の同じような姿をした少年が姿を現す。
「これでいいかな?」と、銀髪の少年が黒髪の少年の方を向いて笑いかける。
寡黙そうな黒髪の少年は少々憮然とし、目をつむる。
その姿は、その表情はイシュタルが知っているあのラーフそのもので、イシュタルは混乱して行く頭の中、銀髪の少年の愉快そうな声が響く。

「イシュタル、君に興味を持ったのは僕が最初ってわけじゃないんだ。
 ゼーハーンが最初に里に目を付けたんだよ。
 当然だよね。ゼラキエルが何だかこそこそしているのくらいはわかるもの。
 でも、何をやっているのかが分からない。
 重要そうな女二人をさらってみたけども、普通の人間の女。聖眼術使える事と天使臭いって事だけを除いて」

「それ以上しゃべらないでっ!!!」
話し続ける少年の声に泣き叫びながら【邪を射抜く眼】を打つが、当たっているのをより楽しむかのように言葉を続ける。

「僕が興味を持ったのは、ホンの偶然。何となく僕の役に立ってくれそうだなって。
 どういう役かだって?ふふふ。それはまたあとでね。
 ゼーハーンも殺してしまうか迷ってね。
 だって聖眼術しか使えないのなら、ゼラキエルの力にすらなりそうにないんだもの。
 とりあえず拷問やら何やらしてみることにしたみたいだよ。
 それで邪眼術が目覚めるかもしれないってね。馬鹿だよねー。
 僕は見ていただけだったんだ。だって本当に君が何たり得るか、見極め難かったからね」

「止めてよっ!!そんな事聞きたくないーっ!!!」
当たろうとも痛がるそぶりも全くなく、平然と立ち続ける少年になおも魔術を放ち続けるイシュタル。
銀髪の少年は話を続けてもよいかと目線で傍らの少年に問いかけた後、再び話し始める。

「でもそしたら意外な事にノトルファリが興味を持っちゃってさ!
 あそこで君に声をかけたのはノトルファリだよ。すごく興味を持っていた。
 普通の人間ならとっくに精神が歪んでしまっているであろう状況なのに、君はたった一つのペンダントと一度きりの約束だけで耐え続けていたんだからね。
 ある意味狂気だよ。そうは思わない?」

「話すのを止めなさいっ!!」「それ以上、喋るなぁぁッ!!」
ソルーシュが愧拳術(何か忘れた)を、ラバーカがフレイム・パイソンを同時に少年たちへと向かって放つ。
黒髪の少年は何処からともなく小型ナイフを取り出し、無造作に一線すると向かってきた必殺の一撃を霧散させてしまった。幾体もの蛇の姿をした炎術も、少年の下にたどり着く前に何かの障壁にさえぎられるかのように一瞬でかき消されてしまった。
「そ、そんなっこんなにあっさりと……」

「ま、いっか。
 で、ノトルファリは思ったんだ。
 もしも、君の目の前でお母さんが死んじゃったら、君はどうなるかなって。
 それでも正気でいられるのか、と。
 だから試したんだ」

神殿にイシュタルの叫び声が響く。
「イシュタル……っ!!くそぉっ!」
ソルーシュは袋の中の宝石を取りだす。

「君のお母さん、シンはもう半年ぐらいたったところからずっと死にたがってばかりだったから。
 殺さないようにするのは大変だったなぁー。ふふっ」

「みんな、ごめん!」
そういうと、ソルーシュの手の中の宝石にピシリとひびが入り、見る間もなく砕け散る。
「…なんだよ、人の話を最後まで聞かないなんて、失礼な人たちだなぁ~――」
なおも明るい口調で話し続けるジルジャリスの声が遠のき、一瞬の光の後、4人が立っていたのは6畳1間の一室だった。

PL「なんでここだけ昭和なんだよ!?」
PL「チャルメラの音が聞こえてきそうだ……」

父であるはずの太陽の天使シャムスの言葉により打ちのめされた、月の天使ゼラキエルの子イシュタル。
父に会えると思っていた筈が、こんな結果になるとは……と沈む気持ちとともに、これが四行詩にうたわれていた事なのかと考える。
鬱々とした気分を余所に四行詩の奇跡が四人を包み、生命力と気力を回復して行った。そこへ--

「何だなんだ!? 何の音だ?」
ドタドタと階段を駆け上がって部屋に入ってきたのは、白い前掛けをして片手に菜箸、片手にはラーメンの湯切りのざるを手にした凌渦のウァス支部長ヌンさんだった。

取りあえず食え、とばかりに4人にはラーメンが振る舞われた後、書き入れ時のヌンさんは階下に降りて行った。
黙々と食べた後、イシュタルがぽつりと言った。
「全部……邪霊たちに惑わされてきた事なのかな……?私がここにいる事も……っ」
「……っ。僕たちはこのまま地上を目指してもいいんだろうか?」
旅を続けることで、地上を目指す事が邪霊たちに協力するような事になってしまっているのではないだろうか。
そのような不安が4人に渦巻き暗澹たる気持ちになって行く。

そこへ、食器を下げにきたヌンさんがやってくる。
ベラベラと事情を打ち明けるソルーシュ。
「何を迷う必要がある。お前たちは地上へ行きたい。なら行けばいいじゃないか」
爽やかに暑苦しくキラリと笑って見せるヌンさんに励まされ、
「そうだな!そうだよ!!僕たちは地上を目指す!それでいいんだ!!」

ゼラキエルが話していた内容がもしかしたらその一助となるかもしれないが、エレキシュガルがいない今、当面は保留すべき話であろうと判断された。(PL達によって)
どうしたものかと云々と言いあっていると、ヌンさんが言った。
「なら、このウァスに地上に行くための方法を研究している学者がいるぜ。そいつを訪ねてみたらどうだい?」

新たな希望を胸に、4人は地上を目指す旅を続ける事を決意した。


  ◆  ◆

※補足:里周辺は元々太陽と月を信仰する人々が住まう場所でした。その名残が、かつては廃墟の神殿で、太陽を祀っていた神殿でした(豊穣を讃える壁画や太陽が描かれた壁画があったという説明はしました)。その対が、ゼラキエルが儀式を行っていた神殿――月の神殿でしたが、あまりに古すぎてどちらも本来の信仰の対象が忘れ去られていました。
日食の日は、太陽の力を月がさえぎってしまえるほど月の力が満ち、ゼラキエルの力も極大となります。その時を利用して、ゼラキエルは、自分が動いている事を簡単に邪霊たちに見つかってしまわぬように、自分に縁があるが秘された場所にあるこの神殿を利用することにしたのです。里のあった場所は、元々天使が遥か昔に作った場所だったのかもしれません。それが、中継点である泉がジャハンナムに落とされてしまい、どこにあるのかよくわからないような里となってしまった……のかも。
空が翳る時――日食の現象とかろうじて伝えられていた事を利用して、自身の影を「あの空が翳るのは、太陽の化身たる私がここに現れたから」と説明し、里で信仰されていたシャムスと名乗り、儀式を行っていました。

※補足2:ゼラキエルの目的は、今は閉じられている地上と展開へ続く月の扉を開く事です。
扉さえ開いてしまえば、神が天使の軍団を遣わして邪霊たちを一掃し、イブリスの企みも全て崩されると考えているのです。地上へゲヘナが広がってしまうようなことは起きない、と。
確かにそうなるかもしれません。しかし、もしも天使と邪霊が争った時には、恐らく創世時代の天使と妖霊の戦争のように地底世界はジャハンナムもろとも荒廃した大地へとなってしまうでしょう。少なくとも、人間たちは生きていられない程に。