【爆突! セイバーギア! VS魔王】

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爆突! セイバーギア! VS魔王  近頃、『セイバーギア』が巷でブームだ。  それは小学生のあいだで大人気な遊戯のことで、セイバーと呼ばれる特殊なハイテクを駆使したフィギュアを動かしてバトルする新世紀ホビー。プレイヤーはバトルの勝敗に誇りのすべてを賭ける。  おもちゃ好きな双葉学園初等部の生徒たちの間でもこの『セイバーギア』ブームは熱く静かに広がっていた。  双葉学園初等部内――第三校庭。 「そこだ! いっけえぇっ! 『メガロドラグーン』!!」  晴れた空の下、高く空にむかって腕章のようにネクタイを巻きつけた腕を突き上げる。天上院 佑斗(てんじょういん ゆうと)も『セイバーギア』に夢中になっている初等部3年生だ。佑斗の相棒はメカニカルな恐竜のフォルムをしたセイバー『メガロドラグーン』  メカ恐竜『メガロドラグーン』はまるで生き物のように滑らかに動くと、力を溜めて鋭いツメを振り上げ、瞬時にして恐竜のツメは紅蓮色の炎を宿す。空間が燃えて炎の紅で周囲が染まり、輝きがほとばしる。それは異能の炎だ。  おもちゃの機能ではない。  そう、双葉学園の『セイバーギア』は他の地区のものとは性能が異なり、使用者の異能に反応するように造られた特製品だ。まだ能力が不安定な初等部生徒たちに向けた特注品として開発されていて、その未成熟な異能を補助し、同時に制限するためのデバイスとしてこれら改造セイバーを利用することが学園から認められているのだった。  そのままツメを振り下ろした『メガロドラグーン』の攻撃はメタリックな腕の破壊力だけにとどまらず、あたり一帯を炎の力でなぎ払い、凝縮したエネルギーの津波となって一直線に敵へと伸びていく。  対戦していたセイバーギアはその炎を、佑斗の生み出した紅蓮のエネルギー砲をまともに食らった。すさまじいエネルギーにより爆風と土煙で覆われる視界。  勝った、と思われた佑斗だが、さらに矢継ぎ早に指示を下す。 「まだだ! 反転して真後ろにもう一度攻撃いく!」  佑斗の指示に呼応して『メガロドラグーン』はすばやく180度反転し、再び紅蓮のツメを放つ。炎がエネルギーが爆風を撒き散らすかと思われたそのとき、紅蓮のエネルギー波がきれいに真ん中から引き裂かれる。いや、「切断された」というべきか。対戦セイバーが『メガロドラグーン』の攻撃を断ち切ったのだ。  異能で生み出された風の力で。 「今日も背中から吹き飛ばしてやろうと思ったのに……ちぇっ」 「そう何度も同じ戦法、食らうわけ! ないだろ!」  メカ恐竜は簡抜いれず突進した。  霧散した爆炎と土煙のなかから現れたのは、うっすらとした銀色の体毛に包まれた勇壮な狼の姿。佑斗のクラスメート、辻 宗司狼(つじ そうじろう)が操る風のセイバー『レイウインディア』は音もなく前脚を一歩踏み出す。 「残念だね……でも今日もふっとばす」  宗司狼が目を細めた瞬間、突然二体のセイバーの間に何者かが割り込んでくる。  黒い羽織ったマントをまるで魔王のようになびかせて、男は唐突に切り出した。 「待て待て待てぇい! 少年達よ! この勝負は蛇蝎 兇次郎(だかつ きょうじろう)が預かった!」  黒いマントの中からなぞの男がとりだしたのは、邪悪なセイバーギア――。  漆黒の蛇と蝎の混ざりあうキメラのセイバーだ。 「な、な、何だあの黒いセイバー! コモドドラゴンくらいの大きさがあるよ!?」 「我輩のセイバーギア『へビィースコルピオン』が貴様らをまとめて粉砕してくれる。ギアバトルに敗れたら我輩の下僕として忠誠を誓うのだ」  唐突な乱入者に3年生のちびっこふたりは面食らっている。 「ふはははは! やさしく説明してやろう! 我輩の野望は双葉学園の征服である。学園を征服するならば、いっそのこと若い次世代の生徒すべてを忠実な下僕として制覇してしまえばよい。あとは我輩がずっと留年するだけで双葉学園そのものがまるごと我が掌中に落ちるという――どうだ、簡単であろう? 未来を握る者は世界を制する。パーフェクトな深慮遠謀である! 先の先までこの長い時間の遥か彼方を見通しているのだ!」 「双葉学園……を、征服だって……!?」 「若き新世代、すなわち貴様ら初等部を支配することが我輩の大望の第一歩となる。故にまずはその手始めとして初等部で流行っているこのセイバーギアとやらで初等部生徒を叩きのめし、徹底的に屈服させ、我輩の偉大さを知らしめる。しかるのちに蛇蝎王国の軍門に下らせて初等部から徐々に双葉学園を牛耳っていくのだ。貴様ら二人はこの栄誉ある双葉征服の第一歩として我輩の下僕第1号2号となり、輝かしい未来で我が蛇蝎王国の歴史にその名を刻まれることになるのである! さあ、その幸運を神に感謝するがよい!」  魔王のごとき蛇蝎の放つ強烈な負のオーラにあてられ、佑斗と宗次狼は身構えて体を腕でかばい、邪悪な気に吹き飛ばされまいと抵抗する。気を弛めると蛇蝎世界に取り込まれてしまいそうだ。 「つまりお前って悪者だよな! セイバーギアで挑むなら負けるわけないぜ!」 「ぼくも右の意見に同じ……だね」  事態を飲み込んだ佑斗と宗次狼がそれぞれのセイバーを構えた。魔王は不敵な表情から一転、爆発したような哄笑で応じる。 「征《ゆ》け! 我が僕『へビィースコルピオン』よ! 貴様の暴虐な牙でこの愚かな子供たちなど完膚なきまでに蹂躙し、絶望させ、大声で泣かせ、その生意気な鼻っ柱を粉みじんに砕いて我輩の前に完全平伏させるのだ!」 「受けてたつぜ! いっけぇ! 『メガロドラグー……」  はたと叫びを止めて、佑斗が宗次狼に振り返る。 「宗ちゃんあのな、これって一人ずつ順番に戦うのかな……?」 「さあ。どうだろ」  宗次狼は肩をすくめる。 「ふははははは! 貴様らなどいくらいようと雑兵同然、関係ないわ! ふたりまとめて相手してやろう!! さあ、手を取り携えて無謀にもこの魔王に挑んでくるがよい!! そしておのれの惰弱さを心底思い知るのである!!」  魔王・蛇蝎はゆらぁりと不気味な構えを取り、意識を漆黒のセイバー『へビィースコルピオン』に集中させると、カッと眼《まなこ》を見開いた。 「|ワールドコントロール・ディストネーション《世界掌握時空》!!!」  蛇蝎の脳内で膨大な量の未来演算が超高速の駆け巡り、黒いセイバーに向かってくる二体のセイバー、真っ直ぐ突っ込んでくるメカ恐竜と回り込むように複雑な曲線を描く銀狼の予測軌道をくっきりと精密な精度で浮き上がらせた。 「はははは!! 見える、見えるぞォ!!! 貴様らの攻撃のすべてが!!!! その運命はすでに我が掌中なり!!!!」  そしてきりっとカメラ目線で。 「ちなみのこの必殺技名はセイバーギア用に未来予測能力の別の呼び方を勝手に付けただけのものであり、いわば気分の問題にすぎないのである」  魔王はきっちりと二体のセイバーを読みきっていた。メカ恐竜と銀狼、二体は蛇蝎が予測した通りの軌道を描きながら、予測どおりに移動して。 「|メガロバスターバースト《超・極炎爆発》!!!」 「|スラッシャー・オブ・ハリケーン《大竜巻無限刃》!!!」  至近距離から超火炎と超竜巻の合体必殺技が炸裂していた。  炎と風の融合エネルギーは互いに相乗効果を及ぼすことでさらに超高温化。炎、風、炎、風、炎、風、炎、風、炎、風、炎、風、炎、風、炎、風……。  巻き起こす嵐は『へビィースコルピオン』を徐々に引き込みながら、破壊の渦のなかに取り込んでいく。それはさながら迫りくる風炎の形をした滅びそのもの。  なお、巨大なセイバー『へビィースコルピオン』は名前通りの重量級セイバーであり、移動力が低い仕様だったためまったくどこにも逃げられなかった。  ガキッ、と高密度エネルギーにより圧壊したような破壊音は巨大なキメラ型のセイバーが臨界点を超えた証しだ。 「――私は不滅の会長、蛇蝎兇次郎なり――!」  特撮でよくある「ちゅどーん!」という爆発音がした。  漆黒の巨大セイバーは少年達の合体必殺技に耐え切れず、ついに爆散して、空高くどこまでも舞い上がっていく。  やがて青空の彼方でキラーンと星となった。  美しいかがやきを残して。  戦いは、終わった。 「あ、あれ?」」  あっという間の勝利に、勝った少年たちのほうがぽかーんと空を見上げている。これはさすがに予想外の早期決着だったようだ。  呆然として動けないところへ高らかな笑い声が学園一帯に轟きわたる。 「ふはははは!!! 貴様たちの力しかとこの眼《まなこ》で見せてもらったぞ!! 実に、そう、実にすばらしいな少年!! ククク……そうである。これくらいなくてはな……我輩の下僕になる価値などビタ一文ありはしないのである。少年達よ、慶びたまえ」  蛇蝎は天をつかむかのように手を伸ばした。 「貴様たちはたったいま――合格した!!」 「えっ?」 「……合、格」 「うむ、その通りだ。おめでとう。これより二名には栄《は》えある蛇蝎配下の一員として、双葉学園初等部を征圧するという名誉の任を与えよう。以後、我輩に忠誠を近い、日々大望達成の為に弛まぬ努力を心がけるがよいぞ。ふはははは!!」  魔王のような男は颯爽と黒マントを翻しながら、力強く背中を向けて、高笑いとともに砂煙の彼方へと消えていった。  まだ男の言葉を理解できずにきょとんとする少年たちを残して。 「……なんだったんだろうあのひとは……」  宗次狼のつぶやきに佑斗は首をかしげる。 「でも、名誉ある任務って、それじゃまるでおれらが手下になったみたいだよな……」 「手下みたいっていうか、あの人の中では手下で決定事項というか……」  ハッ! と顔を見合わせた二人は、とんでもない事態にやっと気がつく。  慌てて消えた魔王を追いかけながら。 「俺たちは手下なんかにならないからなああああああ!!!!!!」  と少年達は叫ぶ。  叫び声は学園中に木霊した。  ボーイソプラノは重なり、遠く溶けあっていく。  いつまでも。  いつまでも。 おしまい ■ ・天上院 佑斗(てんじょういん ゆうと)  双葉学園初等部3年生。セイバーギアが大好きな熱血少年。  『メガロドラグーン』(メカ恐竜タイプ/炎属性)を操る。 ・辻 宗司狼(つじ そうじろう)  双葉学園初等部3年生。沈着冷静を信条とする佑斗の親友。  『レイウインディア』(銀狼タイプ/風属性)を操る。 ・黒き魔王  蛇蝎 兇次郎(だかつ きょうじろう)を名乗るなぞの男。双葉学園支配の野望をいだく。  『へビィースコルピオン』(蛇と蝎の巨大キメラタイプ/時属性)を操る。 ---- [[トップに戻る>トップページ]] [[作品保管庫に戻る>投稿作品のまとめ]]
爆突! セイバーギア! VS魔王  近頃、『セイバーギア』が巷でブームだ。  それは小学生のあいだで大人気な遊戯のことで、セイバーと呼ばれる特殊なハイテクを駆使したフィギュアを動かしてバトルする新世紀ホビー。プレイヤーはバトルの勝敗に誇りのすべてを賭ける。  おもちゃ好きな双葉学園初等部の生徒たちの間でもこの『セイバーギア』ブームは熱く静かに広がっていた。  双葉学園初等部内――第三校庭。 「そこだ! いっけえぇっ! 『メガロドラグーン』!!」  晴れた空の下、高く空にむかって腕章のようにネクタイを巻きつけた腕を突き上げる。天上院 佑斗(てんじょういん ゆうと)も『セイバーギア』に夢中になっている初等部3年生だ。佑斗の相棒はメカニカルな恐竜のフォルムをしたセイバー『メガロドラグーン』  メカ恐竜『メガロドラグーン』はまるで生き物のように滑らかに動くと、力を溜めて鋭いツメを振り上げ、瞬時にして恐竜のツメは紅蓮色の炎を宿す。空間が燃えて炎の紅で周囲が染まり、輝きがほとばしる。それは異能の炎だ。  おもちゃの機能ではない。  そう、双葉学園の『セイバーギア』は他の地区のものとは性能が異なり、使用者の異能に反応するように造られた特製品だ。まだ能力が不安定な初等部生徒たちに向けた特注品として開発されていて、その未成熟な異能を補助し、同時に制限するためのデバイスとしてこれら改造セイバーを利用することが学園から認められているのだった。  そのままツメを振り下ろした『メガロドラグーン』の攻撃はメタリックな腕の破壊力だけにとどまらず、あたり一帯を炎の力でなぎ払い、凝縮したエネルギーの津波となって一直線に敵へと伸びていく。  対戦していたセイバーギアはその炎を、佑斗の生み出した紅蓮のエネルギー砲をまともに食らった。すさまじいエネルギーにより爆風と土煙で覆われる視界。  勝った、と思われた佑斗だが、さらに矢継ぎ早に指示を下す。 「まだだ! 反転して真後ろにもう一度攻撃いく!」  佑斗の指示に呼応して『メガロドラグーン』はすばやく180度反転し、再び紅蓮のツメを放つ。炎がエネルギーが爆風を撒き散らすかと思われたそのとき、紅蓮のエネルギー波がきれいに真ん中から引き裂かれる。いや、「切断された」というべきか。対戦セイバーが『メガロドラグーン』の攻撃を断ち切ったのだ。  異能で生み出された風の力で。 「今日も背中から吹き飛ばしてやろうと思ったのに……ちぇっ」 「そう何度も同じ戦法、食らうわけ! ないだろ!」  メカ恐竜は簡抜いれず突進した。  霧散した爆炎と土煙のなかから現れたのは、うっすらとした銀色の体毛に包まれた勇壮な狼の姿。佑斗のクラスメート、辻 宗司狼(つじ そうじろう)が操る風のセイバー『レイウインディア』は音もなく前脚を一歩踏み出す。 「残念だね……でも今日もふっとばす」  宗司狼が目を細めた瞬間、突然二体のセイバーの間に何者かが割り込んでくる。  黒い羽織ったマントをまるで魔王のようになびかせて、男は唐突に切り出した。 「待て待て待てぇい! 少年達よ! この勝負は蛇蝎 兇次郎(だかつ きょうじろう)が預かった!」  黒いマントの中からなぞの男がとりだしたのは、邪悪なセイバーギア――。  漆黒の蛇と蝎の混ざりあうキメラのセイバーだ。 「な、な、何だあの黒いセイバー! コモドドラゴンくらいの大きさがあるよ!?」 「我輩のセイバーギア『へビィースコルピオン』が貴様らをまとめて粉砕してくれる。ギアバトルに敗れたら我輩の下僕として忠誠を誓うのだ」  唐突な乱入者に3年生のちびっこふたりは面食らっている。 「ふはははは! やさしく説明してやろう! 我輩の野望は双葉学園の征服である。学園を征服するならば、いっそのこと若い次世代の生徒すべてを忠実な下僕として制覇してしまえばよい。あとは我輩がずっと留年するだけで双葉学園そのものがまるごと我が掌中に落ちるという――どうだ、簡単であろう? 未来を握る者は世界を制する。パーフェクトな深慮遠謀である! 先の先までこの長い時間の遥か彼方を見通しているのだ!」 「双葉学園……を、征服だって……!?」 「若き新世代、すなわち貴様ら初等部を支配することが我輩の大望の第一歩となる。故にまずはその手始めとして初等部で流行っているこのセイバーギアとやらで初等部生徒を叩きのめし、徹底的に屈服させ、我輩の偉大さを知らしめる。しかるのちに蛇蝎王国の軍門に下らせて初等部から徐々に双葉学園を牛耳っていくのだ。貴様ら二人はこの栄誉ある双葉征服の第一歩として我輩の下僕第1号2号となり、輝かしい未来で我が蛇蝎王国の歴史にその名を刻まれることになるのである! さあ、その幸運を神に感謝するがよい!」  魔王のごとき蛇蝎の放つ強烈な負のオーラにあてられ、佑斗と宗次狼は身構えて体を腕でかばい、邪悪な気に吹き飛ばされまいと抵抗する。気を弛めると蛇蝎世界に取り込まれてしまいそうだ。 「つまりお前って悪者だよな! セイバーギアで挑むなら負けるわけないぜ!」 「ぼくも右の意見に同じ……だね」  事態を飲み込んだ佑斗と宗次狼がそれぞれのセイバーを構えた。魔王は不敵な表情から一転、爆発したような哄笑で応じる。 「征(ゆ)け! 我が僕『へビィースコルピオン』よ! 貴様の暴虐な牙でこの愚かな子供たちなど完膚なきまでに蹂躙し、絶望させ、大声で泣かせ、その生意気な鼻っ柱を粉みじんに砕いて我輩の前に完全平伏させるのだ!」 「受けてたつぜ! いっけぇ! 『メガロドラグー……」  はたと叫びを止めて、佑斗が宗次狼に振り返る。 「宗ちゃんあのな、これって一人ずつ順番に戦うのかな……?」 「さあ。どうだろ」  宗次狼は肩をすくめる。 「ふははははは! 貴様らなどいくらいようと雑兵同然、関係ないわ! ふたりまとめて相手してやろう!! さあ、手を取り携えて無謀にもこの魔王に挑んでくるがよい!! そしておのれの惰弱さを心底思い知るのである!!」  魔王・蛇蝎はゆらぁりと不気味な構えを取り、意識を漆黒のセイバー『へビィースコルピオン』に集中させると、カッと眼(まなこ)を見開いた。 「ワールドコントロール・ディストネーション(世界掌握時空)!!!」  蛇蝎の脳内で膨大な量の未来演算が超高速の駆け巡り、黒いセイバーに向かってくる二体のセイバー、真っ直ぐ突っ込んでくるメカ恐竜と回り込むように複雑な曲線を描く銀狼の予測軌道をくっきりと精密な精度で浮き上がらせた。 「はははは!! 見える、見えるぞォ!!! 貴様らの攻撃のすべてが!!!! その運命はすでに我が掌中なり!!!!」  そしてきりっとカメラ目線で。 「ちなみのこの必殺技名はセイバーギア用に未来予測能力の別の呼び方を勝手に付けただけのものであり、いわば気分の問題にすぎないのである」  魔王はきっちりと二体のセイバーを読みきっていた。メカ恐竜と銀狼、二体は蛇蝎が予測した通りの軌道を描きながら、予測どおりに移動して。 「メガロバスターバースト(超・極炎爆発)!!!」 「スラッシャー・オブ・ハリケーン(大竜巻無限刃)!!!」  至近距離から超火炎と超竜巻の合体必殺技が炸裂していた。  炎と風の融合エネルギーは互いに相乗効果を及ぼすことでさらに超高温化。炎、風、炎、風、炎、風、炎、風、炎、風、炎、風、炎、風、炎、風……。  巻き起こす嵐は『へビィースコルピオン』を徐々に引き込みながら、破壊の渦のなかに取り込んでいく。それはさながら迫りくる風炎の形をした滅びそのもの。  なお、巨大なセイバー『へビィースコルピオン』は名前通りの重量級セイバーであり、移動力が低い仕様だったためまったくどこにも逃げられなかった。  ガキッ、と高密度エネルギーにより圧壊したような破壊音は巨大なキメラ型のセイバーが臨界点を超えた証しだ。 「――私は不滅の会長、蛇蝎兇次郎なり――!」  特撮でよくある「ちゅどーん!」という爆発音がした。  漆黒の巨大セイバーは少年達の合体必殺技に耐え切れず、ついに爆散して、空高くどこまでも舞い上がっていく。  やがて青空の彼方でキラーンと星となった。  美しいかがやきを残して。  戦いは、終わった。 「あ、あれ?」  あっという間の勝利に、勝った少年たちのほうがぽかーんと空を見上げている。これはさすがに予想外の早期決着だったようだ。  呆然として動けないところへ高らかな笑い声が学園一帯に轟きわたる。 「ふはははは!!! 貴様たちの力しかとこの眼(まなこ)で見せてもらったぞ!! 実に、そう、実にすばらしいな少年!! ククク……そうである。これくらいなくてはな……我輩の下僕になる価値などビタ一文ありはしないのである。少年達よ、慶びたまえ」  蛇蝎は天をつかむかのように手を伸ばした。 「貴様たちはたったいま――合格した!!」 「えっ?」 「……合、格」 「うむ、その通りだ。おめでとう。これより二名には栄(は)えある蛇蝎配下の一員として、双葉学園初等部を征圧するという名誉の任を与えよう。以後、我輩に忠誠を近い、日々大望達成の為に弛まぬ努力を心がけるがよいぞ。ふはははは!!」  魔王のような男は颯爽と黒マントを翻しながら、力強く背中を向けて、高笑いとともに砂煙の彼方へと消えていった。  まだ男の言葉を理解できずにきょとんとする少年たちを残して。 「……なんだったんだろうあのひとは……」  宗次狼のつぶやきに佑斗は首をかしげる。 「でも、名誉ある任務って、それじゃまるでおれらが手下になったみたいだよな……」 「手下みたいっていうか、あの人の中では手下で決定事項というか……」  ハッ! と顔を見合わせた二人は、とんでもない事態にやっと気がつく。  慌てて消えた魔王を追いかけながら。 「俺たちは手下なんかにならないからなああああああ!!!!!!」  少年達は叫んだ。  声が学園中に木霊する。  ボーイソプラノは重なり、遠く溶けあっていた。  いつまでも。  いつまでも。 おしまい ■ ・天上院 佑斗(てんじょういん ゆうと)  双葉学園初等部3年生。セイバーギアが大好きな熱血少年。  『メガロドラグーン』(メカ恐竜タイプ/炎属性)を操る。 ・辻 宗司狼(つじ そうじろう)  双葉学園初等部3年生。沈着冷静を信条とする佑斗の親友。  『レイウインディア』(銀狼タイプ/風属性)を操る。 ・黒き魔王  蛇蝎 兇次郎(だかつ きょうじろう)を名乗るなぞの男。双葉学園支配の野望をいだく。  『へビィースコルピオン』(蛇と蝎の巨大キメラタイプ/時属性)を操る。 ---- [[トップに戻る>トップページ]] [[作品保管庫に戻る>投稿作品のまとめ]]

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