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寮の部屋の天井が見える。
八魔見眼夜(やがみまや)は、学園生活初日の朝を迎えた。
起きて鏡を見る。地味な顔だった。八魔見眼夜は起きた早々憂鬱になった。
教室に行ったら、きっと黒板に名前を書かされるんだろうな。
だって私は転校生だから。
きっとすごい名前だと思われるんだろうな。
だって実際にすごい名前だから。
きっと名前の割に顔が地味だって思われるんだろうな。
だって本当に顔が地味だから。
これから起きる出来事を一秒でシミュレートし終えて、八魔見眼夜は再び憂鬱になった。
バスに揺られる間、八魔見眼夜はずっと憂鬱だった。降りてからも憂鬱だった。校舎へと向かう道を歩きながらも、八魔見眼夜どんどんどんどん憂鬱になっていた。
「こんなに大きな学園なんだから、私より変な名前の人が少しは居ると思うけど……。でも居たからってねぇ……」
そんな憂鬱が頂点に達し、転校初日から学校をさぼってしまおうかと思ったその時、
「八魔見、眼夜ね?」
彼女のその凄惨な名前を呼ぶ人がいた。
振り返ると、そこにいたのは八魔見眼夜と同じ制服に身を包んだ、綺麗な茶髪の女子であった。
「そう……ですけど」
「地味ね」
八魔見眼夜は死にたくなった。
「名簿の名前を見て、どんな強烈な能力者が来るのかと思ったけど。今見る限りは単なる田舎娘じゃない。でも先に言っておきます。私は、容姿で貴方の能力を計ったりはしない。名は全ての根源。存在を司るもの。察するに、貴方はきっと予知、いいえそれどころか、因果を見るレベルの魔眼の持ち主、ってところかしら。違う?」
何を言っているのか解らなかった。
八魔見眼夜はとりあえず困った顔をした。
「………私もなめられた……ものねっ!」
そう叫んだ女子の左腕が赤く光ったかと思うと、八魔見眼夜の足下に丸い影が出現した。
影の正体は上空から落下する巨大な岩石。隕石だった。
「さぁ! 見せてご覧なさい! 貴方の力を! 魔眼の本性を!」
慌てた八魔見眼夜は足を滑らせた。半端なく滑らせて、尻餅を付いて、その勢いで後ろに転がった。隕石は転がった彼女の目前に落下した。
「メテオドソレイルをかわしたというの……ッ! 予知……いいえ、因果の操作ッ!」
八魔見眼夜はとりあえず転校を考えた。
黒板に名前を書いた時、教室はざわめいた。
千呪唱姫・竹林院数深霊(ちくりんいんすみれ)のメテオドソレイルを初見で看破した、学園史上最強の魔眼の持ち主、八魔見眼夜の逸話はもうクラス中に知れ渡っていたのだ。
八魔見眼夜の鬱は、そろそろカウンセリングが必要な時期に来ていた。