【ミッドナイト・パニック 中編】


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 ※ ※ ※

 瀬賀は病院が嫌いだった。
 彼は病院の待合室で白衣を脱ぎ、学園の教員とは思えぬ派手な柄のシャツのまま、ぼんやりとソファーにごろりと寝ころんでいた。他に患者はおらず、一人でそのソファーを占領している。顔が青く、酷く疲れているようだった。瀬賀はごろりと狭いソファーで寝がえりをうち、白い天井を見上げる。
(なんつーか、この白い空間も変に清潔な臭いも嫌なんだよな。糞親父を思い出すんだよ……)
 瀬賀家はもともと医者の家系で、彼の父も、祖父も、そのまた祖父もみな医者であった。
 父親は大学病院の教授をしており、瀬賀自身にも医者になるように幼いころから言い続けてきた。しかし瀬賀はそれに反発し、裕福な家を飛び出て、悪友のつてでサンフランシスコに飛んだのであった。
 遠い異国の地で異能を目覚めさせた瀬賀は、それを生きる糧にしていたのだがそれは闇医者と呼ばれる仕事で、結局自分はどこまで堕ちてもこの瀬賀の血から逃れることはできないのだと悟る。
 サンフランシスコの裏社会の住人達は、彼が死人すらも肉体を繋ぎ合わせ、蘇らせてしまうのではないかと恐れを抱いている。そうして瀬賀についたあだ名は“|ツギハギ博士《ドクター・フランケンシュタイン》”などという滑稽なものだった。もっとも、独学で医術を学んでいた彼がそこまでの実力を伴っているのは異能のおかげであることを瀬賀は理解しているようである。
(しかしこんな双葉学園なんつー意味のわかんねーとこで保健医やることになるとはな……。人生わかんねーもんだぜ)
 物思いにふけりながら瀬賀は火をつけていない煙草をくわえていた。重度のヘビースモーカーである彼にとって禁煙であるこの病院の待合室は苦痛でしかないようだ。
 今彼がいるこの病院は双葉区で一番大きな総合病院だ。学園都市の事情上怪我人が多いので、この病院にはいつも多くのけが人や病人が運ばれてくる。そしてあの例の少女もまた、救急車でここまで運ばれてきたのであった。
 瀬賀も付き添いで一緒に病院まで来たのだが、医者ではない彼に出来ることはもうなく、こうして手術が終わるのを待っているのだった。
 瀬賀がぼんやりとしていると、突然視界に缶ジュースが入ってきた。しかしそのパッケージには『おしるこジュース。モチ入り!』と書かれていて、甘い物が苦手な瀬賀はその名前だけで胸やけがした。
「瀬賀先生、大丈夫ですか? これどうぞ。糖分取ったほうがいいですよ」
 そのおしるこジュースを差し出したのは練井だった。泣きはらしたように目が赤く、酷く疲れている顔をしていた。きっと自分もそんな顔をしているのだろうと瀬賀は苦笑する。
「ああ、ありがとうございます……。でも俺は甘い物――」
「このおしるこおいしいんですよ。今日寒いですからきっと温まります。疲れた時は甘い物飲むのが一番ですよ」
「いや、俺そっちの缶コーヒーのが――」
「どうぞ遠慮なさらずに。おしるこジュース二百円円もするんですけど、瀬賀先生のために奮発したんですよ。でも他は百二十円なのにぼったくりですよね。でもおいしいんですよ。あれ、迷惑でしたか。もしかして私また空気読めてませんでした? 私みたいなおばさんが買ってきたジュースなんて飲めないですよね。ごめんなさい……ううっ」
 突然またも練井は泣きだし、瀬賀は慌てて「あ、ありがとうございます。いただきます」と言って彼女の手からおしるこジュースを受け取り、一気に飲み干した。どろどろとした液体が口に侵入し、地獄のような甘さが染み込んでくる。
(うげぇ……)
 口の中がぐちゃぐちゃと甘ったるい。それでも瀬賀は底に溜まっているモチも食べて、練井に笑いかけた。
「い、いやあーとてもおいしかったですよ」
 すると練井もぱあっと笑顔になり、
「ほんとですか。よかった気にいってくれて。いっぱい買ってきたんですよ。ほら」
 自販機で買ってきたであろう何本ものおしるこジュースを瀬賀に渡していた。
(な、なんだこの苦行は……! 神が俺に試練を与えているのか!!)
 うんざりしながらも期待の眼差しで見つめてくる練井につっ返すわけにもいかず「あ、あとで飲みますよ……」と、一先ずは誤魔化した。
 暴力的で口の悪い瀬賀も、なぜか練井には頭が上がらず、すぐに泣きだして愚痴を言い始める彼女に気を使っている。
(なんとなくママンに似てるからかな……。まあどうでもいいけど)
 普段尖っている瀬賀が、彼女の前では丸くなっていることに自分自身は気付いていないようだった。
「そういえば練井先生。有葉と春部はどうしました」
 目の前のおしるこジュースから話題を変えるために瀬賀は練井にそう尋ねる。あの後瀬賀はあの少女と救急車に乗ってきたから二人がどうしたかは知らない。練井はその後歩いて病院まで来たようだが。
「二人ともちゃんと帰しましたよ。春部さんは自分もついて行くってずっと言ってたんで説得するのに時間かかりましたよ。いつも春部さんってば私の言うこと聞いてくれないんですよ。やっぱり私教師に向いてないんですかね……。私なんかいつもこうで、私のクラスのカストロビッチくんもいつも私に迷惑かけるし、自信失くしちゃう……ううっ」
 またもほろほろと泣き始め、瀬賀は慌ててフォローに入った。
「いやあ、あいつらをまとめられる教師なんてあんまりいないですよ。それになんだかんだいって練井先生はH組の生徒たちから慕われてると思いますよ。俺なんか今日も生徒に金属バットで襲われたんですから。まあこの間はナイフ、その前は火炎瓶で襲われましたからまだマシですけど」
 瀬賀はそう大きくため息をつく。すると練井はくすりと笑い、泣くのをやめていた。
「瀬賀先生も大変なんですね」
「まあ俺は受け持ちのクラスが無いからまだ楽ですけね。保健室にサボりにくる生徒を追いだすのも疲れますよ」
 瀬賀は練井と談笑しながらふっと時計に視線を向ける。あれから一時間経つ。窓の外を見るともう空が金色に染まっている。あれほどの大怪我だ、もしかしたら夜まで手術は続くのかもしれない。
 瀬賀がそう思っていると、廊下から緑の手術着を着ている医者が歩いてくるのが見えた。その人物に瀬賀は見覚えがあり、ややっと手を上げた。
「よお針村《はりむら》。やけに早いじゃないか。お前が担当したのか、御苦労なこった」
 針村と呼ばれたその医者は、帽子を脱ぎ、ポケットから棒付きキャンディを取り出し、子供のように舐め始めた。
「ふん。僕はお前と違ってちゃんとした医者だからな。毎日手術で慣れてるからどうってことないよ」
 神経質そうな顔立ちで、銀縁のメガネをかけている。その棒付きキャンディを舐めている彼は針村《はりむら》邦人《ほうど》。この総合病院の医師である。瀬賀のように異能者ではないごく普通の医師であるが、その腕前はこの病院でも一、二を争うものである。異能を抜いた純粋な医療技術ならば瀬賀よりも針村の方が上だろう。
「しかし瀬賀。またお前は女性をたぶらかしているのか。病院でナンパを始めるとは不謹慎な奴だ」
「ちげーよ。この人は双葉学園の練井先生だよ。例のあの子を発見したのも彼女だ」
「はじめまして。練井です……。実際に最初に発見したのは中庭でお昼食べてたうちの生徒ですけど……。瀬賀先生、お医者さんとお知合いなんですか?」
「まぁ同業のよしみですよ。何度か倒れた生徒を付き添ってこの病院に来たことありますからね」
「お前の雑な応急手当を引き継ぐ僕たちの身にもなってもらいたいね」
「ふざけんな。お前たちの救急車がくるのおせーから、俺がいなきゃ何人も死んでるぜ」
 瀬賀と針村はお互いに砕けた調子で喋っていた。三つ四つほど針村のほうが年上のようだが、友達というよりは口悪くも仲のいい兄弟のような雰囲気である。
「それで針村。あの女の子の様子はどうなんだ」
 瀬賀が真剣な顔つきでそう尋ねると、針村は棒付きキャンディを舐めるのを止め、しばらく間を置いて答えた。
「怪我のことなら心配は無い。命に別条は無いだろう」
「そうか。やっぱり俺のおかげだろ」
 瀬賀は得意そうに鼻を鳴らしたが、針村はなんだか釈然としないと言った顔をしている。
「なんだよ。俺の処置に文句あるのか?」
「いや、確かにお前の止血は完璧だった。だが彼女が生きているのはそれだけが理由じゃない……」
「はぁ? どういうことだ」
「傷がな、無いんだよ。まるで最初から怪我なんてしていないかのように完全に傷が消えている。僕はお前が塗った糸を抜いただけだ」
「なんだって……?」
 瀬賀は一体針村が何を言っているのか理解できなかった。練井もぽかんとした表情で彼を見つめている。
「そんな顔するなよ。僕だって混乱してるんだ。でも確かに救急車に乗っている時には怪我をしていた。だが手術台に上げられた頃にはもう、完全に傷は癒えてたんだ」
「……そんなことあるものなのか? 他の医師が治癒《ヒーリング》の異能を使ったとかは?」
「いや、救急隊員にあそこまでの傷をわずか数分で完治させる能力を持つ者はいない。治癒能力者は希少だ。お前みたいな大人の異能者はさらに希少だ。この病院にも数人しか治癒能力者はいないさ」
「じゃあなぜ?」
 瀬賀の問いに、困り切った針村はため息交じりに椅子に腰を下ろし、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「あの子は……人間じゃないかもしれない」
「!」
 人間ではない。
 それはつまり――
「あの女の子が|人外の存在《ラルヴァ》ってことか?」
 ラルヴァ。人類の敵。
 ひとえにラルヴァといってもその種類は様々だ、中には生徒として学園に通っているものや、無害なものは人間と共存している種もいる。
 特に知能があり、人型をしているラルヴァは、いったい人間とどこが違うと言うのだろう。瀬賀はそれに日々疑問を感じていた。
「わからない。だが輸血しようと血液検査をしたが、人間の血液のどの型にも当てはまらないものだったんだよ。だから輸血は出来なかった……」
 瀬賀はばっと顔を上げる。あの状態で輸血ができないということはかなり危険な状態だ。いつ死んでもおかしくない。
「そう睨むなよ瀬賀。輸血は出来なかった。だが安定はしている。油断は出来ないが危険な状態は脱しているようだ」
「それはどういうことだ?」
「恐らくだが、あの女の子は生命力が異常に高いんだ。人間なんかとは比べ物にならないほどにね。そう、人間でたとえるなら今彼女は、せいぜい貧血《・・》程度と言ったところだろう。命にかかわるほど容体が悪いわけではないようだ」
「フムン。なるほど。脅威の生命力か……。確かにあの傷なら、普通の人間なら即死ものだろう。俺も少しおかしいと思ったんだ。たとえ即死を免れても長時間あのままで倒れていたなら普通は死んでいただろうな」
「瀬賀、お前の能力は人体構造を把握できるんだろう。彼女の治療をしている時に何か気付かなかったのか」
「さあな。だが人体構造自体は人間とまったく同じだったはずだ。なんてことはない。ごく普通の女の子だ」
「……だとすると、異常なのは血液か」
 ふっと瀬賀は彼女の人体構造を思い出していた。何か人と違うところがなかっただろうか。
「……そういえば、犬歯が異様に伸びていたな」
「犬歯?」
「そうだ、多分、関係ないとは思うが、普通の人より若干犬歯が尖っていた。だからなんだと言われると困るが」
 瀬賀と針村は険しい顔をしていた。そんな二人の会話についていけなかった練井は、なんとか会話に混ざろうと思いつきをおずおずと口にする。
「も、もしかしてあの女の子、“吸血鬼《バンパイヤ》”……とか?」
 その練井の言葉に、はっと二人は顔を見合わせる。場を和まそうとそう言っただけなのだが、なにかまずいことを言ってしまったのかと練井は不安になってしまい、涙目になる。
「いや、えへへ。そ、そんなわけないですよね。ごめんなさい私……バカで……ううっ。ちょっと話に混ざりたかっただけなんです……。忘れてください……。どうせ私なんか――」
 そう俯く練井の手を、瀬賀はばっと掴んだ。突然のことに練井は驚いてしまう。
「だ、駄目ですよ瀬賀先生、こ、こんなところで――」
「その通りかもしれません練井先生。おい針村、語来《かたらい》の奴に電話して吸血鬼の資料を送ってもらえ」
「ああ、わかった。ちょっと待ってろ」
 瀬賀はそう急かし、針村はそのまま事務室へと向かっていった。
「……なるほど、吸血鬼か。ありえるな」
 ぽかんとする練井をよそに、瀬賀は自分の世界に入り込むようにぶつぶつと呟いていた。
「あの大怪我で生きていた理由も、止血したことにより傷口が再生した理由も、おおよそそれで説明がつく。それにあの容姿……。ならあの子に必要なのは単純な輸血じゃなくて、吸血鬼としての“食事”か――」
「あのぉ、瀬賀先生?」
 ただの冗談のつもりで言っただけなのに、瀬賀は真に受けた様子で練井は困ってしまった。だが、早歩きで戻ってきた針村によって、それがやはり正しいことが証明されることになった。
 針村はファックスの紙を二人に見せ、瀬賀はやはり、と言った風に顔をしかめた。
「語来くんに頼んだらすぐ資料を送ってきてくれたよ。間違いない、彼女の血液はこの吸血鬼の研究データと一致する。あの女の子は人間じゃない、正真正銘の吸血鬼だ」
「完全に一致ってやつか。ブラボーだ」







 それから針村は学園上層部へと連絡し、ラルヴァ研究者や警察が大勢来てあわただしかったのだが、ようやく落ち着いたようだった。
 それまで瀬賀も練井も帰らず、もう時刻は十二時を過ぎようとしていた。
「練井先生。もう遅いですし帰った方がいいですよ。俺はただの興味本位であの子に会いたかっただけですから、練井先生が義務に感じることは無いですよ」
 待合室でうっつらうっつらと舟を漕いでいる練井に瀬賀はそう話しかけた。眠そうな目をこすりながら、練井は首を横に振る。
「いいえ、私も彼女に会ってみたいです。なんというか、ここまで来たなら折角ですし見たいじゃないですか。吸血鬼なんて滅多に会えないですよ。それとも私の肌荒れを気にして? 確かに寝不足はお肌の大敵ですけど、瀬賀先生に気にされるほど私の肌って荒れてますか? そんな、折角通販で新しい化粧水買ったのに……」
「いやいや、練井先生は十分綺麗ですって。いや、そうじゃなくて明日も学校ありますし、辛いでしょう」
「大丈夫です。むしろこのままじゃ眠れませんから」
「いや、今すごく寝むそうでしたよ……。まあいいや、ともかく一段落ついたみたいですね」
 瀬賀は帰っていく研究者や警察関係者、学園上層部の人間を見送り、疲れたように戻ってきた針村に同情した。
「御苦労なこった。お偉いさんの相手は疲れるだろ」
「まあな。どうも僕もお前と同じであの手の人たちが苦手なんだよ」
 針村は白衣に着替えなおしており、胸ポケットからまたもや棒付きキャンディを取り出して舐め始めている。禁煙中の彼にとってそれがストレスの発散法なのだろう。
「それで、俺たちも“彼女”に会っていいのか?」
「ああ、一応お前たちも関係者だからな。数分ならと、学園側から面会の許可を貰ったよ。こんな時間に子供の患者と会わせるのは本来なら論外なんだが、彼女は吸血鬼だ。夜の方が元気だろうよ」
 そうして瀬賀と練井は針村に連れられ、三人は例の少女が寝ている病室の前に立った。
「開けてもいいかい?」
 針村は数回ノックしてそう聞いたが、返事は無かった。困った様子で彼は瀬賀たちのほうを振り向く。
「ずっとこの調子なんだ。学園の連中が何を聞いても一言も喋らないんだよ。完全に無視を決め込んでる。体力が落ちてるから長時間の取り調べは遠慮してもらったけどね。もっとも、日本語がわかるのかどうかもそもそも不明なんだがな」
「そうか、俺たちが来ても無駄かもな」
「どうかね。顔ぐらい見ていったほうがお前も練井先生も安心できるだろう。とにかく入ろう」
 針村はゆっくりと扉を開いた。
 病室はごく普通の個室だ。そのベッドの中で、少女は上半身を起こして、虚ろな瞳で天井を見上げている。
「…………」
 その少女を改めて見た瀬賀は思わずほうっと息をこぼしてしまう。
 灯りがついていない真っ暗な部屋の中、その少女の姿は月明かりに照らされ、その美しい輪郭を浮き出させている。
 幼くも儚いその横顔は、長い年月を生きてきたかのようなほどに憂いに満ちている。蝋のように白い肌、金色の髪、宝石のような青い瞳がこの世ならざる美しさを体現している。
 吸血鬼。
 人の生き血を吸う、不死の存在。
 七,八歳ほどに見えるが、もしこの少女が吸血鬼なのだとしたら、恐らく容姿で彼女の人格や実年齢を判断することは無意味だろうと瀬賀は考えた。
 彼らが入ってきたことにより、その少女はふっと横目で瀬賀たちを見つめた。血が失われているためか、生気がなく、なんだかぼーっとしている。ラルヴァと言えど特に害がなさそうならば拘束はしていないようだ。
「よお、お嬢ちゃん。調子はどうだい」
 瀬賀は勤めておどけた様に手を振る。
 すると、その少女の瞳は少しだけ大きく開いた。そうして、ゆっくりとその小さな口を開き始める。血のように赤い唇を動かし、その口の隙間から鋭い犬歯が覗いているのを瀬賀は見逃さなかった。
「お主……お主がわたしの命を救った者のようじゃの。あの時わたしは意識を失っていたようじゃが、お主の気配は覚えておるぞ」
 彼女が日本語を流暢に話しているのにも驚いたが、その年寄りのような喋り方が見た目とのギャップを覚え、瀬賀は苦笑し、肩をすくめる。
「それは光栄だねお嬢ちゃん。それで身体の調子は――」
「余計なことをしおったな馬鹿者め。わしは人間の手なんて借りたくはなかったんじゃ!」
 少女はシーツを力強く握りしめ、吐き捨てるようにそう言った。その瞳には屈辱が浮かんでおり、嫌悪の表情を瀬賀に向けている。命を救った少女にそんな目で見られることになるとは予想もしておらず、瀬賀の顔には少なからず動揺の色が見えた。
「助けない方が、よかったってか?」
「そうじゃ。こんな風に人間の病院で、人間に身体をいじられ、不様に保護を受けてベッドで眠るなんて耐えられない恥辱じゃ。誇り高きロックベルト一族の歴史に泥を塗ってしまったではないか! あの程度の傷、わしならばどうにか出来たはずじゃ」
 怒りをぶちまけるように幼い容姿のまま喰ってかかる彼女を、瀬賀はどうしたものかと頭を掻き、なんとか言葉を紡ぐ。
「お言葉だがなお嬢ちゃん。あのまま俺が止血しなかったら手遅れだったぜ。理由は知らんがお前の吸血鬼としての再生能力が低下してたからあのままじゃずっと傷は塞がらないままだったはずだ。俺が傷を縫い合わせたおかげで失血が抑えられて、再生能力が戻っていったと俺は思ってる」
 瀬賀は落ちついた様子でそう諭した。少女はふんっと鼻を鳴らし、そっぽを向いてしまった。練井もかける言葉が見つからず、あうあうと唸っていた。
「じゃあ何か。助けなきゃよかったのかよ」
「そうじゃ、人間なんかに助けられるくらいなら死んだ方がましじゃ!」
 少女がそう叫んだ瞬間、

 ごちん。

 という軽快な音が部屋に響いた。
「せ、瀬賀!」
 針村は思わずそう叫ぶ。それも無理は無い、瀬賀はその少女の頭を、拳でごつんと叩いたのであった。
 一瞬何が起きたのか解らずに、少女はぽかんとしていたが、すぐに瞳に涙を浮かべて、ぼろぼろと大泣ききを始めた。
「う、うわ~ん。ぶった! ぶったな人間の分際で! なにをするんじゃ~!!」
 頭をさすりながら真珠のような涙をシーツの上に垂らしていく。針村は瀬賀を押さえつけ、「お前何してんだよ。落ちつけ」と言い聞かせる。だが瀬賀はキッと少女を睨み、怒ったような口調になっている。
「二度とそんなこと言うんじゃねえ! 死にたいだとか、死んだ方がましだなんて言葉二度と使うな!」
 少女は怒鳴る瀬賀に驚き、容姿通りに子供らしい表情をしていた。
「な、何じゃと! お主に何がわかる! わしらの一族は人間なんかに借りを作ってはならんのじゃ! それが気高きわしらの――」
「お前が何者かなんて知ったことか! 俺は視界に入る奴らは全員救う。例え殺人鬼だろうが、化物だろうが、吸血鬼だろうが、俺の目の前に死にそうな奴がいたら全員無理矢理生かしてやる! おこがましい? ファック。俺はそのためにいる。命より重いものなんてねーんだよ! 死ななきゃいけない誇りなんてドブに捨てちまえよクソガキ!!」
「く、クソガキじゃと! このショコラーデ・ロコ・ロックベルトをクソガキじゃと! たかだか二十年そこらしか生きていない小僧が百年生きているわしをクソガキ扱いか! 片腹痛いわ!」
「うるせえ! 二十五年しか生きてない俺でも命の重さは解る。それだけ長く生きてるならもっと命について考えろバカ!」
 針村が押さえているのを振り払い、瀬賀と少女はまるで子供同士の喧嘩のようにとっくみあっていた。少女も元気を取り戻したのか、その爪で彼の顔を何度も引っ掻いたりしていた。
 やがて二人とも疲れ切ったのか、ぜいぜいと肩を揺らして、にらみ合ったままベッドに腰をぺたりと落とす。
「せ、瀬賀先生……何してるんですか……」
「このバカ。患者となにしてんだよ……」
 練井と針村は呆れかえっている。瀬賀もバツが悪そうに頭をぽりぽりと掻いていた。少女も瞳に涙を浮かべながら、いまさら恥じるように俯いている。
「悪かったよ……。でも、まあ、お前の名前を聞けてよかったけどな」
 ふんっと瀬賀得意そうに少女見た。少女はしまったとばかりに顔を背けた。
「あー、なんだっけ。チョコラータだっけ? 角砂糖食べる?」
「違う! ショコラーデ・ロコ・ロックベルトじゃ!」
「長いからショコラでいいだろ。いいか、二度と死んだ方がましなんて言うな。俺はお前が何度死にそうになろうが何度でも助けてやる。百回でも、千回でも、一万回でも、一億回でも助けてやるよ。地獄の底に落ちようとも引き上げてやる」
 そう瀬賀は言うが、少女――ショコラはむうっと眉を寄せ、瀬賀に背を向けて膝を抱えてしまった。それを見て瀬賀も、練井も針村も苦笑交じりの溜息をついた。だがその表情はどこか和やかである。
「瀬賀、そろそろ時間だ。彼女はまだ貧血状態だからあまり長い時間起こしていても身体に障る。出よう」
「ああ、わかったよ」
 瀬賀はベッドから腰を上げ、背を向けているショコラに「じゃあな、大人しく療養しろよ」と言って部屋の扉へ向かって歩いていく。ショコラは黙ったままだ。
 扉を閉め、練井と針村と一緒に廊下へ出る。
「ロックベルト――か。聞いたことあるか針村。ショコラの言い分じゃそこそこ名の知れた一族みたいだけど」
 瀬賀に言われ、針村は語来から送られてきた資料を取り出した。
「まったくたいしたもんだよお前は。学園上層部や警察が尋ねても一言も口を開かなかったあの子が名前まで聞き出すなんてな。ロックベルト、ロックベルト――あった」
 針村は吸血鬼の血族の一覧が乗っている紙を瀬賀に渡す。練井もそれを覗き込んで見ていた。
「なんですかこれ、吸血鬼ってこんなに種類がいるんですか?」
 大量に名前が書かれているその資料を見て練井は驚いたようにそう尋ねる。
「俺もそれほど詳しいわけじゃないですけど、種類というよりは“家系”ですね。吸血鬼は家系によって特色がかなり違うようです」
 瀬賀は『ロックベルト』と書かれている項目の詳細に眼を通す。
「『ロックベルト――。八百年前から続く吸血鬼の中でも有数の生命力を持つ吸血鬼の貴族。戦闘能力はほとんど無いが、その反面他の吸血鬼よりも弱点が少なく、日光は苦手程度で、銀以外ではロックベルトの吸血鬼を死に至らしめることは不可能。ロックベルトの吸血鬼の心臓を食べることで永遠の命が手に入るという説があるが、未だ真偽は不明である』――だってよ」
 針村はそれを聞いて顎に手を置き考えた。
「その資料の通りなら、血を好むことと生命力以外はほとんど人間と変わらないということか。ならあのまま特に拘束したりする必要はないようだな。学園側もラルヴァの“人権”について考えているだろうし、何より彼女はあの傷を見る限り被害者《・・・》なんだろう。僕たちは彼女を保護する義務がある」
 その話を聞いていた練井は不安そうに顔を曇らせる。
「被害者……。そうですよ、あの子が怪我してたってことは……その、誰かに襲われたってことですよね……?」
「そうでしょう。しかも傷が塞がって無かったってことは弱点である銀の武器で攻撃されたってこと。つまりショコラを襲ったのはあいつを吸血鬼だと知っている奴ってことになりますね」
 瀬賀は真剣な表情でそう言った。ショコラを襲った人間が誰なのか、それはまだ聞き出すことは出来ていない。
 人間の手を借りることを拒む彼女は、やはり保護を受けることに不満を持っているようである。そんなショコラを不憫に思っているのか、練井はまた泣き顔になっている。そんな練井を安心させるために、針村はキャンディを舐めながら言った。
「大丈夫ですよ。ある意味この双葉区はラルヴァにとっても安全地域ですからね。ほら、警備の連中が来ました。多分数日の間はあの子には護衛がつくでしょうし大丈夫でしょう。近くには戦闘系異能者だって多くいるし、怪しい奴が入ってきても返り討ちにあうだけでしょう」
「そうですよね。きっと大丈夫ですよね……」
 屈強な警備員がショコラの部屋の前に立ち、瀬賀もそれを見届けて「そろそろ帰りましょう」と練井を促し、帰る支度を始めた。
「針村。お前はまだ帰れないのか?」
「僕は今日夜勤なんだよ。ここでお別れだ」
「そうか、そりゃご苦労なこった」
「いいな公務員は。僕はここ最近まともに寝てないぞ」
 針村は大げさに肩を揺らし、出口へと向かう瀬賀と練井を見送った。キャンディを舐めるその顔からは疲れが見える。
 階段を降り、瀬賀たちは正面玄関に向かって歩いていく。そろそろ瀬賀も眠くなってきて、大きく欠伸をしていた。
「今日はなんだか大変な一日でしたね」
 寝むそうな瀬賀に気を使ってか、練井はそう話しかけた。だが練井のほうがよっぽど寝むそうじゃないか、と瀬賀は苦笑する。
「まあ俺は保健室で寝れますけどね。寝込み襲われるかもしれないから鍵掛けておかないと駄目ですけど」
「もう、そんなのバレたら理事に怒られちゃいますよ」
「それは困りますね。医師免許も教員免許もないのに働けるところはここぐらいしかないですから。でもH組は毎日が大変じゃないですか。変な生徒ばっかだし。毎日春部みたいなやつと顔合わせてたらうんざりするでしょう」
「そうですね。私も疲れちゃいます……。親戚のおばさんは教師なんてやめて結婚して家庭に入るのが女の幸せだ――なんて言うんですよ」
「そりゃまた古い考えですね」
「でしょう? でも言ってることはわかるんですけど、やっぱり、なんだかんだ言って私はこの仕事が好きなんですよ。何度も向いてない、辞めようって思ったことはありますけど……」
 そう言う練井は恥ずかしそうにしながらも微笑んでいた。寮の手の指を合わせもじもじとしている。普段泣いてばかりいても、彼女も教師なのだと瀬賀は実感する。
 そうこう話しているうちに瀬賀と練井はロビーにつき、そのまままっすぐ正面玄関に向かっていく。
 だが、二人が扉に手をかけた瞬間、突然静まり返った夜中の院内に激しい破壊音が響いた。
 それはガラスが割れた音だ。
 その音を聞いた瀬賀と練井ははっと後ろを振り返る。
「瀬賀先生、今のは――」
「わかりません、だけどどうやら上の階から聞こえてきたようですね」
 不安そうに二人は顔を見合わせる。きっとなんでもないことだろう、そう思いたかったが、続いて怒声と悲鳴が聞こえ、耳をつんざく金属の回転音が響き渡った。その総てが異常事態を知らせている。
「――――ファック。これ以上まだややこしいことが起きるのかよ!」



 ※ ※ ※


 “|少女地獄《ステーシーズ》”。
 それがセーラー服姿の彼女、フラニー・ステーシーが所属する傭兵チームの名だ。
 |少女地獄《ステーシーズ》は十二人の姉妹と“お兄様”と呼ばれるリーダーによって構成されている。彼女たちはその“兄様”から受けた任務を淡々とこなす暗殺者であり兵隊である。
 異能を持ち“お兄様”によって殺人技能を極限まで高められた彼女たちは、裏の世界でも有名な存在として恐れられていた。
 その末妹であるフラニーは、“お兄様”の命令で双葉学園に逃げ込んだ彼女《・・》を追いかけてきていた。
「見つけたですぅ。こんなところに逃げ込んでたんですの。糞ったれ吸血鬼のショコラーデ・ロコ・ロックベルト。今度こそ、その心臓《・・》をいただくですの。“お兄様”のために……」
 彼女は夜の空に浮かぶ月を背景に、ビルの屋上から目の前にそびえたつ総合病院を睨みつけた。
「しかし不様なものですの。不老不死が売りのロックベルト一族の末裔が人間の病院で世話になるなんて」
 フラニーはその病院の窓から、ベッドで横になっているショコラを見つけ、嘲笑っていた。ひとしきりその不様な姿を笑い終わると、ふっと表情を固め、幼い少女の顔から、冷徹な殺し屋の顔に変わった。
「さあ、いくですの」
 フラニーは少しだけ後ろに下がり、そのまま助走をつけてビルの屋上を全速力で走り始め、彼女は淵のあたりで大きく跳躍した。そのままフラニーは落ちていく――のではなく、その勢いのまま向かいの病院のショコラのいる部屋の窓に飛び込もうとしていた。
 だが窓は強化ガラスで、このままでは窓にぶつかり間抜けに地面へと落ちていくだけだろう。
「変形《トランス》――モデル、ビッグハンマー」
 しかし、フラニーが右手を前に突き出しそう呟くと不思議なことが起きた。突然彼女の肘から指の先までが光り輝き始めたのだ。そしてその光は一度分解され、まるで蛍のように空中に舞う。
 だがその光の粒子は再び彼女の腕に収束されていく。だが再構成された彼女の右腕は人間のものではなくなっている。
 彼女の右腕は巨大なハンマーと化していた。黒々と輝き、まるで最初から腕から生えていくかのように違和感が無い。
 フラニーはそのハンマーを窓のガラスに向かって思い切り叩きつけた。
 ガラスは粉々に砕け、ガラスの割れた音が病院中に響く。フラニーはそれを気にも留めず自分の身体を部屋の中へと侵入させることに成功した。
 飛び込んだ勢いのまま着地してごろごろと床を転がり、さっと顔を上げそのベッドから身体を跳ね起きさせているショコラを睨んだ。
 暗闇の病室で、少女の姿をした吸血鬼と殺し屋が睨みあっている。それはとても奇妙な光景であった。
「お、お主。わしを襲ったあの時の――」
 ショコラは白い顔を青くさせ、フラニーを睨む。その顔は驚きと恐怖の色に染まっているようだった。当然だろう。不死の存在であるショコラを瀕死に追いやったのは彼女であったからだ。
「襲ったなんて失礼ですぅ。あなたがオメガサークルの連中に拉致されているのを助けてやっただけですの。だからちょっとお礼にあなたの心臓をいただきに参りましたのよ」
 ふふっとフラニーは左手の人差し指を自分の唇に当て不敵に笑った。
「じょ、冗談じゃないのじゃ。誰がお主に心臓など渡すものか!」
「没落貴族のロックベルト。哀れなロックベルト。もうあなた以外は全員死んでしまったですの。あなたも、もうその無意味な生を終わらせる時が来たですの。寿命と思って諦めた方がいいですぅ」
「い、嫌じゃ……。高貴なるロックベルトの血を、ここで絶やすわけにはいかんのじゃ」
 ショコラの小さな身体を押し潰すほどの殺意が向けられているにも関わらず、ショコラは必死にフラニーにのまれまいと彼女を睨み続ける。
 そんなショコラの思いすらもフラニーにとっては滑稽でしかなかった。彼女はハンマーの腕を頭上に掲げ、
「変形《トランス》――モデル、チェーンソー」
 再びそう呟いた。
 するとまたもフラニーの右腕は光り輝き、粒子となり分解され、今度はチェーンソーの形へと再構成されていく。
 これがフラニーの異能である。右手をいかなる武器に変化させることができ、彼女はこの能力を“右腕兵器《ライダーマン》”と呼んでいる。
 容赦なく鋭利な刃が回転し、闇を切り裂くような音が辺りに響く。ショコラはその音を聞いてがたがたと震え始めた。
 無理もない。そのチェーンソーこそが、ショコラに瀕死の重傷を負わせた凶器だからである。そのチェーンソーの刃は銀で出来ており、それはショコラたちロックベルト一族の唯一の弱点であった。
「さあ、切り刻んでバラバラにして心臓を取り出してやるですの」
 フラニーがショコラの元へ駆け寄ろうとした瞬間、突然その病室の扉ががらりと開かれた。
「何かあったのか!」
 入ってきたのはショコラの警備をしている警備員たちであった。彼らは割れたガラスと、チェーンソーを轟かせているフラニーを見て唖然とする。
「な、何をしているお前!」
 警備員たちは警棒を取り出し、身構える。だがフラニーはこれも予想の範囲だと言わんばかりにニヤニヤと笑っている。
「き、きみ。こっちに来なさい!」
 警備員がショコラに手招きをし、はっと我に返った彼女は彼らのもとへ駆けていった。それを追いかけようとフラニーも身をひるがえし扉の方へ向かうが、警備員たちはショコラを部屋の外に出し、フラニーの前へと立ちふさがる。
「ちっ、邪魔なんだよおっさんども――ですの!」
 双葉学園の警備員たちは護衛のプロだ。
 だが、彼らは本物の殺し屋と対峙したことはなかった。容赦のかけらもない研ぎ澄まされた殺意が彼らに向けられる。
 フラニーはチェーンソーを彼らに向かって振り下ろした。高速で回転する刃が彼らの肉をえぐり、切り裂いていく。
 警備員たちは悲鳴と共に鮮血を飛び散らし、倒れ、静かだった病室が惨状へと変わっていく。だが警備員たちはやはりプロだった。即死を免れるようにギリギリで避け、重傷を負っているものの息はしているようだった。
「うぐっ――」
 倒れながら呻いている警備員を見てフラニーは彼らがまだ生きていることに気付いたが、止めを刺している余裕は無かった。
扉を出て廊下を覗き込むと、ショコラが小さな足を動かして必死に逃げている。
「逃がすわけにはいかないですぅ!」
 フラニーはチェーンソーをけたたましく轟かせながら彼女を追いかけ始めた。だがこの騒ぎを聞きつけて出てきた病院内の患者や、看護士たちが次々とフラニーの視界に入り込んでくる。
 彼らは血塗れでチェーンソーを振り回すフラニーに狂気を感じ、悲鳴を上げて逃げ出し始めた。
「邪魔、邪魔、邪魔!!」
 フラニーは自分の進路を塞ぐ人間全員に斬りかかった。誰も彼も血を噴き出し、ばたばたと倒れていく。
 やがて当然のごとく警報が鳴り響き、病院内がパニックに陥った。恐らく五分以内に機動隊が到着するだろうとフラニーは踏んだ。
「五分もあればじゅーぶんですの」
 ここにいるのは無力な医師や看護士に患者たち。五分もあればショコラを追い詰め、目的を達成し、逃走を図る事は容易い。フラニーは振り向きもせず、ただひたすら逃げ去るショコラを追いかけていく。
「や、やめろ!」
 フラニーが逃げ出す人々を切り裂いて走っていると、彼女の前に白衣の男が立ちふさがった。どうやらここの医者のようだ。
「みんな、今のうちに逃げろ。あいつは僕が引きつける!」
「で、でも針村先生!」
 針村と呼ばれた医者に逃げろと促された看護士たちは悲痛な叫びを上げている。その医者はフラニーの意識を自分に向け、同僚たちを逃がしているようだ。
 だが、フラニーはその医者にも容赦なく斬りかかる。








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