【召屋正行の日常はこうして戻っていく そのよんの残り】


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 突入組はまたもや困難に陥っていた。侵入に成功したはいいが、内部構造が全く把握できないのだ。当然と言えば当然である。突入組に研究所の内部を知るものは一人もおらず、編成した笹島も侵入後のことは殆ど考えていなかったためだ。
 詰め所で捕縛した警備員は有葉のことどころか、ここで行われている研究の細かなことさえ知らなかった。そのため、全く情報が得られず、有葉がどこに捕らえられているかの目星さえつかない。研究所内をうろつくも深夜ということもあってか人影は全くなく、所員とっ捕まえて詰問するということさえできてない。
 結局、居そうなところをしらみつぶしに探すという、実に効率の悪い結果になっていた。
「これで何枚目の扉かしら……」
 有葉救出という使命感に駆られる春部もうんざりしてきた様子で、隣にいるカストロビッチに質問する。
「さあねえ」
 これまた、疲れきった様子で生返事をする。
「ここはやはり手分けした方がいいんじゃないでしょうか?」
「それは賛成できないわ。外で騒ぎを起こして注意を惹き付けると言っても中の警備が空になるなんてありえないし」
 そう言いながら、春部がカードを読み込み機に差し込み、暗証番号を打ち込む。扉が自動的に開く。中は暗く、よく見えない。
「離れて!」
 夜目の利く春部が、周りに注意を促す。室内に何かがいるのに気が付いたのだろう。壁に手を這わせながらスイッチを探す。蛍光灯独特の瞬きをみせながら、室内が明るくなる。
 春部が感じた通り、室内の奥には人が横たわっていた。彼女たちがよく見知った人物だったが、目的の人物ではない。
「よ、よう……遅かったな」
 手足を縛られた実に間抜けな状態で、さらにその間抜けさを増幅させるような情けない微笑みを振りまきながら召屋正行は春部たちに挨拶をする。
「さあ、ここには何もないわね。みんな、次の部屋よ」
 とりあえず、春部は部屋を出て、扉を閉めることにした。
「ちょっと待てって――――っ!」


 笹島に散々『教室には持ってきちゃ駄目』と言われた竹刀を肩にかけた六谷が、無駄に大きな胸を偉そうに強調し、自慢げに仁王立ちしていた。街灯の光りがまるでスポットライトのように彼女を輝かせている。
「どうよ、このみんなの窮地を救うようなタイミング、この威力、この命中精度。これなら、委員長も私のことを見直したで……え!?」
「――おい」
 いつの間にか、笹島が六谷の目の前に立っていた。それにわずかに驚きながらも、彼女は自分の行為の正当性というか、自分の存在意義を強く説明しようとする。
「あのさ、今のファランクスの威力どうだったかな? 私がいて助かったで……しょ…」
「ええ、そうねぇ……」
 笹島は、一部がアフロになった髪を指差しながら、殺人も厭わない真摯な眼差しで彼女を凝視していた。その表情に微笑などが混じる余裕はまるでない。
「え、あの、えーと……その……そういう気は全くなくてえ……、ゴ、ゴメンなさい~」
 半泣きになりながら六谷は笹島に謝ろうとする。
 だが、そんなことを笹島が許すはずもなく。
「泣く暇あったら、援護しなさいっ!!」
 そう言って、輝く右手で地面を殴りつけると、一気に拍手たちのいる方向へと跳んでいく。彼女の能力を使ったのであろう。それでもなお、笹島の右手が煌々と輝いている。気力も能力も十分に充電されている様子だった。
「さあ、相手の過半数は六谷さんのおかげで殲滅できたわ。このままぶっ潰すわよっ!!」
『おーっ!!』
 力強い援軍(?)のおかげもあって、二年C組チームはにわかに活気を取り戻しつつあった。
 ただ、本当にこれでいけるのかは未だに不安ではあるのだが……。


「な~んだ。これじゃあ、せっかく手伝おうと思ったのに私の出番がないじゃない」
 これまでの展開を眺めながら、研究所の近場にいた謎の女性が呟く。別段、闇夜で独り言を呟くだけなら、それほどおかしくはないし謎ではない。
 だが、彼女は、パーティなどで目元を隠すマスクにウェイトレスの服装という実にちぐはぐな格好であったし、電柱のてっぺんに立っていたりするのだから、おかしいというか異様過ぎた。
「しょうがない。じゃあ、今回は無しかあ。せっかく、かーくんから色々聞き出したのになあ……」
 そう呟くと、彼女はラジカセを足元に浮かんだトレーの上に置いて、ゆっくりと電柱を降りることにする。ちらほら見受けられるこの事件の野次馬にパンツが丸見えだったが、特に気にする様子もない。
 ちなみに、彼女と一緒に降りていくトレーに置かれたラジカセに入っているテープのラベルには“タ○シード仮面のテーマ”と書かれていた。
「決め台詞も考えてたのになあ……」
 電柱を降りながら、残念そうに彼女は嘆いていた。


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