【今日は楽しいエイプリルフール!】


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 今日は楽しいエイプリルフール!






 ああ、なんて気持ちのいい朝なんだろう。
 おれは久しぶりにぐっすり寝たようで、体の疲れはまったく残っていない。眩しい朝日を遮っているカーテンを開くと、爽やかな小鳥の鳴き声が聞こえてきた。
 なんだか気分がいい、わくわくする朝だ。きっと今日はなにかいいことがあるかもしれない。
 おれは布団から飛び起きて、カレンダーを勢いよくめくる。
 そこでおれはあることに気付いた。
 なんてこった。今日は四月一日じゃないか。
 そう、エイプリルフール。ご存じの通り今日は嘘をついても許される日だ。
 しめしめ、どんな嘘をついてやろうか。おれは胸が高鳴るのを覚える。こんな面白い習慣を見逃すことはないだろう。
 まだ春休みで学校が無いのが残念だが、街に出ればいくらでもからかいがいが有る奴がいるだろう。おれはさっそくパジャマから着替え、部屋を飛び出す。春の暖かな空気がおれを歓迎している。最高だ。





 商店街にやってくると、やはりそこには人がたくさんいた。
 おれは部屋から持ってきたメガホンを手に持ち、それを使って大声で街中に声を響かせる。
「おおーい! 大変だぞ! 大量のラルヴァが攻めてきた―! もう何人も死人が出てる、早くみんな逃げるんだー!!」
 おれがそう叫ぶと、商店街は大パニック。みな悲鳴を上げて、逃げ始める。
 ふははは、まるで人がゴミのようである。
 おれはそんなパニックを見つめて、大満足する。そろそろこれがエイプリルフールの嘘だと伝えてやろう。あまり大事になってもしょうがないだろう。
 しかし、それはもう遅かった。
「そのラルヴァとやらはどこにいるのだ。この私が相手してやるのだ!」
 そんな女の子の声が響いたのだ。
 逃げ惑う人々をものともせず、その女の子は人の濁流の中に堂々と佇んでいた。その女の子の頭の上には白い猫がのっかっている――いや、それは猫じゃない。虎だ。白い虎。びゃっこだ!
「この醒徒会長が相手をしてやろうぞ!」
 げげげげげっ、なんでこんなところに醒徒会長がいるんだよ。
 おれがやばいと思っていると、オバサン臭いブティックから着物の女が出てきた。
「あらあら。なんだか大事になってますね」
 そう言っているのは副会長の水分先輩だった。ミネラルウォーターの入ったペットボトルを袖口から取り出し、目はまるで殺し屋のような殺意に満ちているものだった。
 こええ。超こええよ水分先輩。
 なんだか大事になってきてしまって、ブルったおれは逃げ出そうとしたが、後ろのおもちゃ屋から出てきた女の子と盛大にぶつかってしまう。
「うわあ!」
「あた!」
 その女の子は玩具で買ったのであろう大量のモデルガンを手に抱えたまま尻もちをついてしまった。おれは慌ててその女の子の手を引っ張り、起そうとするが、彼女が誰なのかすぐに気付いた。
「いたたた。うーん。お尻が二つに割れちゃった。にゃはは!」
 そう朗らかに笑うその女の子は、醒徒会、その書記である加賀杜だった。彼女が持てばたとえモデルガンでも大砲のような威力になるに違いない。なんとも恐ろしい。
「紫隠ちゃん。その人捕まえて」
 そんな水分先輩の声が聞こえ、「りょーかいあねご!」と加賀杜はおれの手をシューズの紐でがっちりと拘束してしまった。
「さあお主、どこから敵が攻めてきておるのじゃ。案内せい!」
 会長にそう言いよられ、水分先輩に睨まれ、加賀杜に押さえられてしまったおれは、仕方なく観念することにした。
「い、いやあそんな怖い顔しないで下さいよ。敵が、ラルヴァが攻めてきてるなんて嘘ですよ」
「う、うそぉ~?」
 会長はあっけにとられたように茫然とした顔になった。おお、こんな会長の顔を見るのはレアだ。
「あなた。こんな大騒ぎを起こしておいて嘘で済むと思ってるの?」
 水分先輩はぎろりとおれを睨みつけた。怖い。超怖い。お母さんみたいだ。
 だが、おれには切り札がある。
「ふふふ。先輩は今日が何の日かご存じないと見える」
「え?」
「今日は四月一日なんです。エイプリルフールなんですよ! 嘘をついても許されるんです。だからおれは起こられる理由なんてないんです!」
 言った。
 言ってやった。
 実に気持ちいい。
 おれはしたり顔でそう言ったのに、なぜか三人ともぽかんとした表情で顔を見合わせ、呆れているようである。
「あのねぇ……きみ」
「にゃはは。今日は四月一日じゃなくてー」
「四月二日だぞ!」
 え?
 嘘。
 嘘?
「いや、ほんとですよ。携帯電話の日付を見てみなさい」
 水分先輩にそう言われ、おれは慌ててポケットから携帯電話を取り出した。そんな馬鹿な。昨日は確かに三月三十一日だった。だから今日は四月一日のはずだ。
 だが、携帯電話を開いて日付を見てみると、確かにそこにはこう書かれていた。
「し、四月二日……?」
 なんということだ。
 通りで快眠したと思ったわけだ。
 通りで清々しいわけだ。
 おれは丸一日寝過ごしてしまったのだ。
 春休みで学校が休みのせいもあってか、おれはそれに気付くことなく一日中眠ってしまっていたようだ。
「さあ、あなた。風紀委員の所に行きましょうか」
 にっこりと笑顔で水分先輩はそう言った。
 だが、後ろにはどす黒いオーラが見える。
 びゃっこは牙を見せ、加賀杜はモデルガンをおれのこめかみにあてている。
 絶体絶命。おれは地面に勢いよく頭をつけた。
「ご、ごめんなさ~~~~~~~~~~~~~い!!!」








 その後おれは無期限で学園の掃除を毎日のようにされるはめになった。
 みんなも嘘はやめようね!


 (了)






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