【danger zoneホワイトデー特別編 僕の忍者に白い花】前編


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 飯綱百は山口・デリンジャー・慧海から受け取った包みを胸に抱くと、そのまま慧海を抱きしめ地面に押し倒した。

「ちょ!ちょっとモモ…そんなあたし…心の準備が…」

 長身の百は小柄な慧海の上に乗っかり、Dカップのおっぱいを押し付ける。
 無防備な仰向けのまま溶け崩れるように押さえ込まれた慧海は百の体を跳ね除けようとするが、百の胸に顔を埋めているうちにその手は弱くなり、百の背中へと回っていく。

 たった今慧海と百の上半身があった空間を幾筋かの風が通過した。
 連続性の衝撃を受けた壁が土煙を弾き散らしながら振動する。

 複数の短機関銃による銃撃。
 慧海を床に引き倒しながら低く伏せてかわした百は、慧海の胸に手をついてうつ伏せの姿勢から跳ね上がる。
 壁に張り付きながら傍らに置いていたライフルタイプのクロスボウを掴み、散弾銃のクレー射撃に似た即時照準《スナップショット》で窓の外へと鋼の矢を撃った。
 少し顔を赤らめた慧海も一拍遅れて立ち上がり、外から発射炎を見られぬように窓から二歩下がってからデリンジャーを二連射する。

 二人はコンクリートが崩れかけた廃墟の一室で、銃器で武装した異能者とラルヴァの混成軍に取り囲まれていた。


 東京湾 千葉県富津岬沖
 第二海堡
 明治時代初期、大日本帝国が発案した東京湾要塞化計画
 帝都を水際で護る防衛線の構築と兵員駐留のため、当時の基準を超越した土木技術によって造成された三つの埋立て地の中で最大の島。
 このブーメランのような形をした人工島は大砲陣地を備えた首都防備の要として第二次大戦の終わりまで稼動していたが、旧日本軍の設備を接収した駐留軍や管理を引き継いだ日本国政府からは立地条件的な不便さゆえ無視され続けた。
 戦後に灯台が設置され近年になってGPS航法の進化と維持コストの高さから廃籍になったり、「宇宙刑事ギャバン」や「蘇る金狼」で敵のアジトとなったり、第二海堡は役に立たない場所としての役を果たしていた。
 現在は消防演習場として存置管理され、実際の演習や管理実務はほとんど行われていない。
 数日前、忘れられ朽ち果てつつある孤島の旧軍要塞を舞台に実弾による射撃をしている一団が居るという情報が不法侵入の釣り人によってもたらされた。
 国有地の海堡を無断占拠し、国にとってはあまり保存したくない戦時遺構を勝手に踏み荒らしている連中が異能者組織のひとつだと知った当局は、関東管区における異能者養成運用組織である双葉学園に解決を丸投げした。
 監視衛星と巡視船による調査結果によると、戦闘服を着こんで島に居座り撃ち合いに興じてる連中はどうやら戦闘ではなく訓練"のようなもの"をしているらしい。
 組織としての具体的な活動を示すものが他に無く、今イチ何がしたいのかわからない集団だったが、異能者といえど武器の不法所持や凶器準備集合罪は適用される。
 この件を表沙汰にすることなく処理したい政府から仕事を押し付けられた双葉学園は、その不可思議な戦闘集団の取り締まりに着手することを決定した。
 武器不正使用集団に対する偵察と身柄拘束、必要に応じた強制的な異能執行のため第二海堡への派遣が決定されたのは、双葉学園風紀委員会と風紀委員長の山口・デリンジャー・慧海。
 自分のことを棚に上げるとは、まさにこのこと。
 慧海は早速、自身の指揮下にある風紀委員の中で特に精強で不正規な実戦に慣れた班、第四班に出動を命令した。
 死斑の通称で呼ばれる四班のならず者連中に慧海はまず任務状況説明の中で最も重要な項目、この出動で得られる謝礼を提示する。
 四班の班長とその代理は揃ってどこかで異能絡みのアルバイト中、代理代理代理を務めている二年O組の風紀委員、耶麻華詞《やまかし》の返答は「行かね」
 元より相応の報酬が目当てで風紀委員会に入った人間は多く、条件が折り合わなければ平気で命令無視をする。
 慧海としても単価の安い仕事なんて受けたくなかったが、先月に自分専用寮の大規模リフォームで庭にバーベキューグリルとポーチを作り、クレジットカードの残高をほぼ使い切ってしまった慧海はとりあえずトッパライで貰える現金が必要だった。
 同じく最近愛車のカワサキ|GPZ900R《ナインアール》を獣化異能者を仕留める投擲武器の替わりに使って大破させ、新車三台分の修理費を稼ぐべく積極的に出動している飯綱百を誘った。

 山口・デリンジャー・慧海と飯綱百は第二海堡に陣取る鬼退治よろしく東京湾の鬼が島へと出陣した。

「せめて生徒課長《オバサン》があと二枚出してくれたらな~、そんだけの報酬額なら教導六班が動かせるのに」

「三枚なら機動七班が出動しますよ~、ウチの班長、今月は安い仕事をこまめに拾ってくって言ってましたから」

 晩冬の高い空が広がる三月の半ば、晴れ渡った空のどこかから正午の喇叭が聞こえてきそうな東京湾の海
 慧海と百は小さな手漕ぎ船に二人乗りし、忙しくオールを動かしていた。
 風紀委員会が擁する海上機動力である高速艇や強襲筏《ゾディアック》は風紀委員会の一班と二班で催されている釣り大会で出払ってたので、慧海と百はレンジャー五班が海上自衛隊から借りた短艇《カッター》を又借りし、二人で櫂を漕ぎながら島へと向かう。
 地図で見ると狭いが実際に舟を漕ぎ出すと広く海流も複雑な東京湾の海、富津岬や観音崎から目視できる第二海堡は手漕ぎ短艇ではイヤになるくらい遠かった。

 熱源となる内燃機関がないためレーダーに映りにくく、流木のように軽い木製の船体は機雷原に突っ込んでも触雷爆発しない、一種のステルス船である短艇《カッター》で第二海堡に接岸した二人は、上陸した途端に銃撃を受けた。
 疲れるボート漕ぎの仕事をした後で、もっと疲れる警告や投降勧告の手間が省けたのは二人にとって逆にありがたい。
 据付型の重機関銃を買う金が無いのか、銃撃戦で自分の位置を丸わかりにする銃口閃光をおったてながら携帯型の短機関銃を乱射してくる監視哨に向け、慧海と百は既に装填していたデリンジャーの弾丸とクロスボウの鋼矢をブチこんだ。

 東京湾第二海堡で、一九四五年の終戦以来七十五年ぶりの実戦が始まった。

 慧海と百は第二海堡の波打ち際から少し入った砂浜の上、半ば埋まり砲台として使われていた戦車の陰に潜んでいた。
 この島を占拠していた異能者とラルヴァの集団は、コントリビューターという組織名を称している。
 某オカルト雑誌の巻末投稿欄で、前世で剣士や魔法使いだったと称する仲間を募っていた投稿者《コントリビューター》達がオフラインで交流を持ち始めたことで出来た集団らしい。
 そして何の間違いかそれにスポンサーがついたことで、どうでもいい方向にばかり思い切りのいい連中は動き始める。
 意気通じ合う者が呼び合い新しい組織を興した集団、その中核は双葉学園等の異能者養成校を卒業した異能者とラルヴァ。
 異能関連学府卒業者によって非公認に作られたソーシャルネット、その中にあるオカルト雑誌投稿愛好家コミュから発生した閉鎖的な分派で組織設立を発起した異能者達。
 いい年してファンタジーの世界に生きる彼らは揃いも揃って国家や民間の異能機関や民間軍事会社の異能部門に採用されるには主にオツムの能力が足りなかった。
「君たちは正義のため悪を打ち砕く伝説の戦士になれる」という頭の湧いた勧誘文句に乗った奴が多かったのは信じがたい話だが、多分その辺に社会に従事する人間になれない原因があったんだろう。
 ニートから一転して起業者となった奴と同様に、人と人との間で揉まれた経験の乏しい人間の発想や才覚は最初だけ立派だがすぐに息切れする。
 エロゲのソフトハウスだってグラフィッカーやシナリオライターの募集要項には絵や文章のスキルに並び、社会人としてのコミュニケーション能力が挙げられている…らしい。
 無論、それらの表向きの要素だけでなくコネと事前の地ならし、何よりそれまでの実績で多勢が決まってしまうのはどの業種も変わらない。
 人と人が創り上げるビジネスは目の前の仕事だけでなく広く雑多な要素で出来ていて、それが見えている人間と見えない人間が居る。

 戦士になるべく集まった彼らは行動を決起するも何をすればいいのかわからず、とりあえずいかにも秘密基地という雰囲気以外に組織運営上の利点がない海堡にアジトを構え、戦士らしく戦闘の訓練を始めた。
 世界一の密集航路である東京湾に浮かぶ島は内緒事には非常に不向きだったらしく、異能者の隔離目的とはいえ同じような浅慮で島をおっ建てた双葉学園の連中に潰されることとなった。

「組織に潜入《ダイヴ》した諜報十班の話じゃ、寡兵や斡旋の計画も売りこみも無かったらしい、要するに小金のある異能者がバカ集めて実弾で戦争ゴッコだよ」

「わたしてっきり十班《テン》がみんな揃ってその組織に転職したのかと思ってました」

「最初は貂《テン》もその積もりだったんだってよ、契約金が人を馬鹿にしたような金額だってんで潜入捜査に切り替えたらしい」

 日本にも海外にもこのくらいのレベルの馬鹿は昔から居た、異能という人間にとってはまだ新しいテクノロジーが関っているだけに余計タチが悪い。
 湾とはいえ広い海を手漕ぎ短艇で渡り、オール漕ぎで重くなった両腕を抱えながら撃ち竦められている慧海と百もまた、コントリビューターとかいう戦闘ゴッコの甘ったれ連中と同じく物事の見えてない連中の一部なんだろう。

 廃戦車の影にしゃがみこみ、ダラダラと喋くってた慧海と百は同時に微かな風切り音を耳で捉え、二人で砂浜に伏せた。
 一拍遅れて大口径ライフルの弾丸が遮蔽物にしていた廃戦車の上部に被弾し、旧軍戦車は焼却炉をバットでひっぱたいたような音と共に破壊される。

「貴重な旧砲塔の九七式《チハ》をブッ壊しやがって、軍オタの風上にもおけねぇヤロー共だな」

「軍オタって時点でもうどーしようもない人間なんだと思いますよ~」

 にっこり笑って軍オタの慧海にひどい事を言う百、しかし慧海は心のどっかでもっと言って欲しいと思ってた。
 おっしゃる通りどうしようもない。
 超精度高延伸性の異能ライフルらしき火器を足場の悪い消波ブロックの上で立射するコントリビューターの異能者、撃って来た時点で正当防衛は成立する。
 慧海の俺様ルールでは撃つまでもなく相手が銃を抜いたら射殺《バン》する、百は銃を持ってメンチ切ってきた時点で赤い花を咲かせる。
 慧海はライフルの発射火炎から狙撃者の位置と姿勢を推測し、彼の足元近くにデリンジャーの弾丸を二発、リズミカルに撃ち込んだ。
 異能狙撃銃の間合いで短銃身拳銃のデリンジャーを撃っても一発必中の精度は出せなかったが、脅かしならラフな狙いで充分。
 狙撃に置いて銃の性能より遥かに重要な射撃位置選別と自分の身を隠す術については全くお粗末な戦士クンは足元のコンクリートが着弾で振動する感覚に恐れを成し、異能狙撃銃を大事に抱えながら走り出す。
 飯綱百は半ば砂に埋まった伏せ撃ち姿勢のまま微動だにせず、バーネット・クロスボウの光学スコープを覗き込みながら鋼の矢を撃った。
 気配さえ消す忍びの術、慧海には百が忽然と姿を消し、砂浜に打ち捨ててあった灰色のボロ布が矢を放ったように見えた。
 高価で立派な異能狙撃銃の出来の悪い付属品にしかなれかったスナイパーごっこの若者は、ヒグマを一射で殺せる鋼の鋸刃鏃《リッパー》を喉仏に食らい、銃弾より高質量の鋼矢がもたらす衝撃で首を千切り取られる。
 首無しの異能者は大事な異能狙撃銃を落っことし、地面を転がる頭部を追いかけるように数歩を歩いた後、ぱたりと倒れた。

 二名の相互支援《バディ》による攻撃は"原則的に"一斉射撃ではなく主攻撃と支援に分かれるのが基本。
 勢子が追い鉄砲で獲物をかく乱し、タツマが待ち伏せで仕留める古来の猪狩りと変わらない。
 発射で位置がバレたのはお互い様、慧海と百が潜む廃戦車に島のあちこちから銃撃が加えられた。
 機関銃弾を食らっただけで大破することで定評のある旧軍の中戦車は大量で種類豊富な弾丸を食らい、長過ぎた余命をようやく終えようとしている。
 既に島の内陸から死角となる退路を想定していた慧海と百の二人は、数秒前まで廃戦車だった鉄屑の陰から地面を這って逃げ出した。
 一撃したら必ず位置を変えるのが市街戦の鉄則。
 前大戦ではこのテクニックを事前の訓練で周知していたドイツ軍と経験則で知るしかなかったソ連軍の戦死者数はケタ一つほどの違いがあった。

「さて、二人っきりになったところで」

 海岸線に放置された廃戦車から少し内陸寄りに入った場所に散在する、旧軍の半地下壕に位置を移した二人。
 一息ついた慧海は向かいでクロスボウをいじくり、高精度ながらデリケートなマルイの光学スコープに文句を言いながら調整する百を上目遣いに見ながら、赤いリボンのかかった包みをポケットから取り出した。

「その…これ…百、こないだのバレンタイン…お台場まで行った帰りに…あたしにもチョコ買ってきてくれただろ…お返しっつ~か…」

 電動の弓引機《ウインチ》をクロスボウの弦にセットしている百は慧海を見て、慧海の持っている包みを見て、そして半地下壕の小さな窓の外を見た。
 プレゼントを差し出した慧海は、そのまま百に突き飛ばされ、地面に押し倒された。




 人間に備わった二つの目と無数の感覚器官によって目の前にあるものと周囲の状況を同時に見るのは生き残る者の資質。
 百の眠そうな半眼に映っていたのは慧海の差し出すプレゼント包みと、半地下壕の対面にあるコンクリート兵舎の窓に見えた一瞬の光。
 視力は慧海も百も同じくらいだったが、長身な百のほうがやや視線が高い。
 銃口の放つ閃光から少し遅れて届く高周波の風切り音と同時に部屋を襲う銃撃、一瞬置いて遠く低い銃声が聞こえる。
 短機関銃で即席の機銃陣地を作ったらしき連中が、慧海と百が隠れている半地下壕に向かって撃ちまくってくる。
 海岸線に散在し特定困難な半地下壕にうまく潜伏したと思ったら、どうやら探知能力の異能者かラルヴァに嗅ぎ出されたらしい。
 海風でコンクリが風化して強度の落ちた旧軍の壕、擲弾筒か土木用ダイナマイトでも使って壕ごとフッ飛ばせばいいようなものを、この集団《コントリビューター》は異能と火器を備えながら運用の能力がまるでない。
 どんだけ短機関銃が好きなんだか。

 慧海はコンクリの埃が降り注ぐ壕内に伏せながら、プレゼント包みを拾い上げて丁寧に埃を払い、匍匐で射撃位置を確保しようとする百に押し付けた。

「百、あたしマシュマロ買ってきたんだ…」

 頭上を弾丸と破片が飛び交う中、百は電動でドロウされたクロスボウを傍らに置き、忍び装束の腰に括りつけたケースの中から赤く塗られた矢を取り出すのに集中していた。
 矢の詰まったケースの外ポケットに入っていたプラスティックの箱から弾頭のような形の鏃《やじり》を出し、慎重な手つきで赤い矢にねじこむ。
 マグネシウム合金の中空矢柄にセムテックス高性能爆薬を詰め、起爆信管の鏃を装着した赤い矢。
 風紀委員会装備部別室によって特製された焼夷爆破矢はクロスボウにセットされ、コントラバスの低音弦を弾くような音と共に発射された。
 弓は心技体が求められる業、爆発物の扱いはいかなる外的要因があろうと指先を惑わせる事の許されない技術。
 百は周りの雑事を意識から閉め出すことができる精神を具えていた。

 赤い矢は敵陣が構築された向かいの一室に飛び込む、部屋全体がボっと炎の色となったのが見えた。
 映画「ランボー2」ではスタローンが似た構造の弓矢で兵員輸送車や攻撃ヘリを破壊していたが、三十余年で大幅に進歩した弓矢と爆発物は既にハリウッドムービーの誇張を追い抜いている。
 高性能爆薬と千数百度で燃えるマグネシウムの破片で部屋中の可燃物に火を点けられ、火達磨になった二人の戦闘員がバルコニーに出てきた。
 百のクロスボウでケツに火をつけられた獲物の頭を、既に装填し構えていた慧海のデリンジャーで吹ッ飛ばした。
 さっきとは逆に百が先発の勢子鉄砲を撃ち、抑えの慧海がタツマ撃ちをする。
 日ごろの相互支援訓練を重ねた二人に事前の打ち合わせなどいらないという事実が慧海の胸を少しキュンとさせた、百は当然のことといった顔。

 機動七班の飯綱百がこの仕事を受けたのは、つい数日前に専用装備として導入し、習熟訓練を重ねているバーネット・クロスボウのため。
 この強力な遠距離武器を自身の出動装備として正式に実戦投入するため、極めて実戦に近い状態でのテストが必要となった百にとって武装集団に対する威力偵察《サーチ&デストロイ》は文字通り渡りに舟だった。
 百は弓矢一本で炎上する兵舎の一室を眺めながら、ご機嫌な声で慧海に話しかける。

「いいんちょーのプレゼント、凄くいいです」

「だろ?機械科三班の奴らに高性能爆薬《セムテックス》を分けてもらったから、何かに使えないかと思ってたんだ」

 火器、重機班の風紀委員会第三班は大量の爆薬を所持している、建物の破壊だけでなく爆発物の処理解体も爆薬は必要となる。
 主に調達価格の高さが理由で厳格な管理をされていた高性能爆薬を慧海は先日、警視庁から三班に貸与されることが決まった対物狙撃銃を三班に届けたお駄賃替わりに一包み貰っていた。

「その…もうひとつのプレゼントは?」

 慧海は放り出されたマシュマロの袋をもういちど百に差し出したが、百はライフルスコープを覗き込みながら、残存の戦力が無いかを慎重に観察している。
 百が気づいてくれるのを期待して、しばらくプレゼントを掌に乗っけたまま両手を突き出すバカみたいなポーズで居た慧海は、結局すごすごと手を引っ込めた。
 遠くの敵とすぐ近くの危険要素を同時に見ることのできる戸隠流忍者の飯綱百、たしかに一瞬こっちを見たが、今絶対ワザと無視した。

「…もういい、つまんない、行こうぜモモ…」

 百が探った限り、さっきの一撃で敵方が混乱している今が移動の好機のようだった、いち早くそれを察したいいんちょーはさすがだと思った。
 もうひとつ自分に何か用があるようなことを言ってた気がするが、それは後回しでいいだろうと判断し、百は半地下壕からの撤退を開始する。

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