【メアリー・スー】


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※この話は夢オチです※


 ある日のこと、おれは醒徒会の呼び出しを受けた。
 醒徒会じきじきに呼び出しなんて初めてのことで、自分が何か悪いことでもしたんじゃないかとビクビクした気持ちで醒徒会室の扉を開けると、ちっちゃな醒徒会長がおれを出迎えた。
「お主を醒徒会専属特殊任務係に任命するのだ!」
 ぴょこんぴょこんと椅子の上で跳ねながら醒徒会長の藤御門《ふじみかど》はとんでもないことを言いだした。おれは「はぁ?」と間抜けな返事をすることしかできない。
「あなたは異能力、それに人格や戦闘センスが見込まれて八人目の醒徒会員として選ばれたのです」
 おれが茫然としていると藤御門の隣に立っている副会長の水分《みくまり》さんがそう補足する。だけどそれを聞いてもいまいちピンと来なかった。
「おれが……醒徒会ですか?」
「そうなのだ。お主のラルヴァ戦の戦果を見て驚いたぞ。たった一人で巨大な怪獣を打倒したり、百万匹のラルヴァを一掃したりと大活躍ではないか」
「それで私たちが学園側に申請して、新しい役員としてあなたを迎え入れよう、という話になったのです。どうですか、私たちの仲間になってくださいますか」
 水分さんはおれの手を取り、上目使いでそう言った。
 こんな美人にこんなことされて断るやつなんていないだろう。勿論おれもそうだ。
「おれやります! 醒徒会の新メンバーに選ばれるなんて光栄ですよ!」
 その日からおれの学園生活は激変したのであった。





「いっけー、やったー! かっこいい!」
 おれは醒徒会書記である紫隠《しおん》とタッグを組み、双葉区で暴れるラルヴァや異能犯罪者を相手取って戦った。
 おれの魂源力《アツィルト》を増幅させるために、紫穏はおれに抱きついた。会長と同じくぺったんこの胸だが、女の子独特の暖かな体温が伝ってきて、気持ちいい。
「ああ、危ない!」
 紫穏の二の腕の柔らかさにうかれていたら、いつの間にか敵が目の前に迫っていた。敵は竜と虎とライオンと蛇と馬とカバを融合させたような巨大な怪物である。奴は何万人という人間を食料にしてきた絶対に許されない怪物だ。
 だけどおれと紫穏が手を合わせれば倒せない敵はいない。
「必殺! エターナル・ルシフィック・デッドエンド!!」
 無数の光弾がおれの手から飛び交い、怪物を一瞬にして蒸発させる。だが敵は死ぬ間際に最後のすかしっぺをかましてくる。
 怪物は口からビームを発射したのだ。
 おれは「危ない!」と紫穏を突き飛ばした。爆風がおれを吹き飛ばしたが、なんやかんやで生き延びた。
「だ、大丈夫か!?」
 紫穏はおれが死んだと思ったのか、目に涙を浮かべて駆け寄ってくる。おれは指で彼女の涙をすくってやる。
「ああ、平気だ。だから泣くなよ、お前に涙は似合わねえぜ。おれはお前の笑顔が好きなんだ」
「バカバカ! 心配したんだよ!」
 紫穏はぽかぽかとおれの胸を叩いてきたが、そこからは彼女の気持ちが痛いほど伝わってくる。
「悪かったよ。あんな無茶はもう――って痛っ!」
「もう喋らない方がいいってば、口切ってるみたいだから」
 そう言って紫隠はおれの唇に、自分の唇を重ねた。
 唖然としたおれは、まるで凍ったように固まってしまう。だけどおれとは対照的に紫穏は照れ臭そうに笑い、八重歯を覗かせる。
「あはは。あたしはちょっとだけだけど相手に触れることで治癒能力も促進できるんだ。でも、唇に触れたのは初めてだよ」
 顔を赤らめているその笑顔はとてつもなく可愛くて、おれは一瞬にして恋に落ちてしまったのだ。
 そうしておれは紫穏と付き合い始めた。




 紫穏とラブラブな恋人生活を送っているある日、一通のラブレターが下駄箱に入っていた。
「誰からだろう」
 封筒を見ても差出人の名前は書かれていない。
 誰かの悪戯だろうか。おれはラブレターを貰うようなモテモテな人間じゃない。
 手紙には「放課後体育倉庫で待ってます」と随分大人っぽい字で書かれていた。
 おれには紫穏という恋人がいるのに参ったな……。
 とりあえず丁重に断るつもりでおれは指定の場所へと向かっていった。
 重苦しい体育倉庫の扉を開くと、意外にもそこには水分さんがおれを待っていたのだ。
 しかも、なぜか体操服姿(ブルマ)で!
「み、みみみ水分さん! なんでここに!」
 おれが驚き慌てふためる様子を見て、水分さんはわずかに微笑んだ。水分さんは日本的な美人で紫隠とはまた違う可愛らしさがある。
「手紙、読んでくれました?」
 水分さんはふっと真顔になりそう尋ねた。おれはゆっくりと頷く。
「あなたが来てから私、変なんです。あなたが紫穏ちゃんと仲良くしているのを見ると、ここがチクチクして」
 そう言って水分さんは自分の胸に手を置いた。ピチピチの体操服のせいで二つの膨らみははちきれんばかりに強調されていて、もしかしてノーブラじゃないのかって思うほどに揺れている。
 見てはいけないと思っていても、ついつい視線が胸にいってドギマギしてしまう。
「こういうことを殿方に言うのは初めてなので上手く言えないのですが、私はあなたに恋をしてしまったようです」
 ぽっと頬を赤くして水分さんは告白した。
「水分さん。気持ちは嬉しいですけど、おれには紫穏が――」
 と言い終わる前に、水分さんはおれの胸に顔をうずめてきた。ふんわりとした彼女の黒髪の香りが鼻を刺激し、彼女のたゆんっとした胸がおしつけられる。
「ああ、ダメです水分さん!」
「いいの。わかってます。でもね、私はあなたの愛人でもいいから……紫穏ちゃんの次でいいから私を好きになってほしいんです」
 そんな風につつましげに言う水分さんがとっても愛おしく、おれは思わず水分さんを抱きしめた。水分さんは何匹ものラルヴァを倒してきた最強の異能者の一人だが、こうして触れてみると彼女の肉体は細く、肩は小さくて普通の高校生の女の子だということがわかる。
「ああ、あなたにこうして抱きしめてもらうことを、夜毎いつも考えていました。もう一人で寂しい夜を迎えるのは嫌なんです」
「水分さん……」
 おれは水分さんの濡れた唇を奪い、そのまま体育倉庫のマットに沈んでいった。





 水分さんにたっぷり搾り取られた後、おれは忘れ物を取りに醒徒会室へと向かった。部屋にはほかの役員はいなかったが、会長だけが椅子に腰かけていた。
 会長はおれを見るなりぴょんっと椅子から飛び上がった。その拍子にスカートがめくれ、黒いガーターのパンツが目に入ったのは内緒だ。
 だがそんなパンチラのインパクトを吹き飛ばすようなことを、突然会長は言いだした。
「おい、お前は私と結婚することになったのだ」
「…………」
 あまりにあまりなことで、おれは正直ただのたちの悪い冗談だと思った。どこかにどっきりカメラでもあるのかと辺りをうかがう。
「何を黙っておる、返事をするのだ。藤御門財閥はお前のような優秀な人材を内部に取り込みたいらしくてな、私にお前と婚約するようにと言われたのだ」
「はあああ?」
「なんだお前、私じゃ不満か?」
「え? いや、その」
 正直なところ、おれはロリコンじゃない。
 いくら会長が可愛いと言っても、それは子供的な(中一だけど)可愛さでしかない。パンツが見えても全然興奮しない。
 悪いけどここはきっぱりと断るべき……
「もし私の婿になるなら、藤御門財閥の資金を自由に使えるぞ」
「おれと結婚しましょう会長!」
 そうしておれは会長と婚約し、会長が十六歳になったら結婚するという話になった。
 いまはちんちくりんでも、いずれは会長も美人でグラマーになるに違いない。成長度という意味では紫穏や水分さん以上だろう。
 そして何より藤御門の傘下に入るということは将来が約束されるということだ。この就職難で嫁と職が一緒に手に入るなんて感動的だ。
 そうしておれは恋人の紫穏と、愛人の水分さんと、婚約者の会長と楽しく双葉学園での学園生活を満喫していった。



 醒徒会に入ってからは男の友達もできた。
 同じ醒徒会役員だが、かっこよくて頼りがいのある龍河《たつかわ》先輩にはよくしてもらい、無口だけど案外いい人のルール先輩からはイジメっこから助けてもらい、金ちゃんには金策の仕方を教えてもらった。早なんとかくんはいつもおれの昼飯を買ってきてくれたり、ごみを捨てに行って来てくれる。
 おれは醒徒会に入ってから幸せになった。
 それからもおれはラルヴァとの戦闘で大活躍し、みんなから信頼され、愛される存在になっていった。
「ばんざーい! ばんざーい!」
 醒徒会のみんなはおれを褒め称え、胴上げをしていたのだった。



 ○ ● ○ ● ○




「はっ!」
 っとその場にいる|七人全員《、、、、》が同時に目を覚ました。
 珍しいことに、醒徒会役員の七人は、みんな醒徒会室で居眠りしてしまっていたようだった。昨晩徹夜で作業を続けていたせいだろう。
 だが起きたばかりだと言う彼ら七人の顔色は悪く、青ざめている。
 七人はお互いの顔を見て、ぽつりと呟いた。
「最低な夢だった……」


 完



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