【とあるラルヴァたち その1】


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とあるラルヴァたち


 都内某所のファミレス。
 一人の男がコーヒーをすすりながら新聞を読んでいると、そこへ別の男がやってきて話しかける。
「うぃーす」
「おそいよー」
「わりわりw」
 後からやってきた男が対面の席に座りつつ、タバコをくわえて火をつける。
「ツェッペリくん、それ好きなー」
 後からやってきた男――ツェッペリくんはボヘーと煙を吐きながら、
「けっこう美味いよ。マロンくんもやってみる?」
「いや、結構。つか、キミ人間に染まりすぎw」
 とマロンくんは断る。
「俺、マジミイラ取りw
 鬼沢君は?」
「仕事で遅れるって。先に頼んじゃう?」
「んだなー。活動資金調達要員は大変だなー」
 と言いつつ、ツェッペリくんはメニューを開く。
「んー、俺和風おろしハンバーグセット。
 ほい」
 と言いつつメニューをマロンくんに渡す。
「早いってw ちょっとは悩めってw」
「ハンバーグ超好き。えい」
 ピンポーンと電子ベルが鳴り、奥で「はーい、すぐ伺いマース」と声がする。
「ちょ、勝手に押すなって。まだ決めてねーよ」
 マロンくんがあせる。
 しかしウェイトレスは勤勉なことに本当にすぐに伺いに来た。
「ご注文は?」
「俺は和風おろしハンバーグ」
「和風おろしハンバーグですねー」
 ウェイトレスは手元の機械を操作する。「お次の方は?」
「お、俺はじんに、いや違った。えーと、カルボナーラで」
「? カルボナーラですね。以上でよろしいでしょうか?」
「あ、あとドリンクバーも」
「あ、俺も。ドリンクバー」
「ドリンクバー二つですね。以上でよろしいでしょうか?」
「よろしいです」
「よろしいです」
「かしこまりました。少々お待ちください。ドリンクバーはあちらになります」
「はーい」
 手元の機械を操作して注文を打ち込み、ウェイトレスは去っていく。
 それを見届けるとツェッペリくんは口を開く。
「人肉とか言いかけたしw ねーからw」
「うっせ、うっせ。
 おめーが勝手にピンポン押すから焦ったんだっつーの。
 罰としてドリンクバー俺のも取って来い」
「あいよ。何がいい?」
「オレジューで」
「オレジュー一丁」
 ツェッペリくんは席を立ち、ドリンクバーのコーナーに向かった。


 ツェッペリくんが片手に一つずつドリンクを持ち、席に戻ってくる。
「おまたー」
「乙。
 ってなんじゃこりゃ!」
 マロンくんの前におかれたグラスの中の飲み物は、オレンジジュースとはかけ離れた液体に見える。
「オレジュー」
「いや、オレジュー違うから、これ。みどりじゃん、これ」
「オレすぺしゃるブレンドジュース。略してオレジュー」
「ふざけんな。おめーのコーラと交換しやがれ」
「いや、飲んでみ。意外と美味いかもよ」
「かもよ、ってなんだよ。クソ」
 しかしそう言われて気になったのか、マロンくんはそのジュースを一口啜った。
「どうよ?」
「意外に普通。ミックスジュース風?」
「マジで?」
「つか何入れたの? これ」
「オレンジジュースとアップルジュースとメロンソーダを適当な配合で」
「ふーん。もっとえぐいのかと思った」
「いや、それはヤバいだろ。外道過ぎる」
 それを聴いた瞬間、マロンくんは何かに気付いたような表情を浮かべた。
「あ、そーだよ。
 今度の双葉学園へのテロ作戦だけどさ」
 と、物騒なことを口にする。
「あん?」
「双葉学園の食堂とかのドリンクバーの中身を入れ替えちゃうってのはどうよ」
 マロンくんは凄まじく残忍な顔でそう言った。
「――オレンジとアップルをすり替える、程度だよ、な?」
「いや、青汁をふんだんに用いる」
「!」
「いいだろ? すげーアイデアだろ?」
「あ、ああ……。
 なんて残酷なんだ。そんなこと、普通は思いつかねー」
「魚人族の俺らですら、そう思うんだ。やつらにとっちゃハンパねーダメージだろうぜ」
 ふふん、とマロンくんは得意げに鼻を鳴らした。
 ちなみに双葉学園の食堂がドリンクバーのサービスを行っているかは不明である。


 二人が作戦について語り合っていると、そこへもう一人、別の男がやってくる。
「うぃーす」
「お、鬼沢くん。おつかれー」
「乙〜」
 新たに現れた男は鬼沢くんというらしい。
「いやーマジつかれたわw 上司も部下もバカで困るっすわw」
 鬼沢くんは言った。
「お待たせいたしました」
 ウェイトレスが料理を運んできた。
「和風おろしハンバーグをご注文のお客様?」
「おれおれ。ウマソー」
「カルボナーラをご注文のお客様?」
「おれー。ウマソー」
「以上でご注文の品はお揃いでしょうか?」
「お揃いです」
「お揃いです」
「あ、俺もなんか頼んでいい?」
 と鬼沢くんが言う。
「お決まりでしたら、どうぞー」
 ウェイトレスが電卓のような機械を構える。
「んーとね、特盛りビーフカレー。
 あと、ビール。中ジョッキ」
「あ、俺も」
 とマロンくんが言うと、
「じゃあ、俺も」
 とツェッペリくんも言う。
「特盛りビーフカレー一つ、生中三つでよろしいでしょうか?」
「よろしいです」
「よろしいです」
「よろしいです」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
 ウェイトレスが去っていくと鬼沢くんが口を開く。
「ところで生中って生チューって書くとエロくね?」
「エロイね」
「超エロイ」
 三人はゲヘゲヘと嫌らしい笑みを浮かべた。


 4はないよ。不吉だから。
 さて、三人のテーブルにビールとカレーが運ばれた。
「じゃああれやっとく?」
 と、ツェッペリくん。
「お、いーねー」
「掛け声ダレー?」
「鬼沢くんでイインジャネ? お疲れさまってことで」
 マロンくんは言った。
「え、俺? いいの? いやー悪いなーw」
「おけw」
「おけw」
「よし、じゃあいくぞー」
「おー」
「おー」
「せんだ」
「みつお」
「なはなは」
「せんだ」
「みつお」
「なはなは」
「いえーい!」×3
 実に嬉しそうにハイタッチをする三人。
「じゃあ飲もうか」
 と鬼沢くんが言って、三人はジョッキグラスに口をつける。
「ウマー。ビール、ウマー」
「人間偉いよ。ビール作ったもん」
「偉いとかw 滅ぼすくせにw」
「滅ぼすけどw 食うけどw」
「そういやさー」
 とマロンくんが話を切り出す。
「うん?」
「さっき鬼沢くんのカレーがやたらと早く運ばれてきたじゃん」
「早かったな」
「ビールと一緒だったな」
「レトルトなんじゃね?」
「ボンカレーとかか」
「奥でチンしてるのかな」
「だとするとボリ過ぎじゃね? ボンカレーって150円くらいだろ?この店のカレーって600円くらいだぜ」
「人間えげつねーな」
「600円なら人肉入れてほしいよな」
「それでも、外で人間殺して、その肉をおうちでボンカレーに入れたほうが安くね?」
「まあ、今のところはやめとこーぜ」
 ツェッペリくんが言う。
「んなことやってたら、ハンターがすぐきちゃうし」
「ムカつくよなあいつら」
 マロンくんがはき捨てるように言う。
「俺らなんも悪いことしてねーのにさ」
「だよなー。
 あ、俺ちょっとウンコしてくるわ」
 ツェッペリくんが言った。
「おーい、ウンコ食ってるときにウンコいうなや」
 鬼沢くんが文句を言う。
「メンゴメンゴw」
 ツェッペリくんはそう言って席を立ち、トイレのある方へ消えていった。
「ところでさっき何の話してたの?」
 と、鬼沢くん。
「さっき?」
「俺が来る前」
「あー。
 あれだよ、今度の作戦。双葉学園襲うやつ」
「おー。あれか」
「ふた学のドリンクバーの中身を青汁にしちゃおうって」
「ちょw マジかよw」
「かなりヤバいべ」
「ヤバいっすわw それマジで外道入ってるわw」
 そんな話をしていると、トイレのある方からスゴイ音が聞こえてきた。
『ばふんッッ』
「すげえ音w」
「ツェッペリくんマジぱねえw」
 二人は笑い転げる。


 見知らぬ男がやって来て、ツェッペリくんが座っていた席につく。
「いやー、まいったまいった」
 見知らぬ男はそんなことを言う。
「お前誰?」
 マロンくんが訊く。
「おれおれ、ツェッペリ」
「うっわ、また体とっかえたのかよ」
 と鬼沢くん。
「いやーウンコあふれちゃって、すげえ汚れちゃったから」
「ちょw」
「どんだけーw」
「便所でびびってた男の体もらってきたわ」
「さっきの体は?」
「食った」
「食ったとかw」
「ウンコまみれ食ったw」
「ちげーよw ウンコついてたところは服だけだしw」
「じゃあ服だけとっかえればよかったんちゃう?」
「あ」
「あ、じゃねーよw」
「いけね☆」
「☆とかねーからw」
 三人は下品な声で笑い転げる。

 彼らは自分たち以外の客と店員がいなくなっていることに、今だ気付いていない。


 三人は楽しく語り合っている。
 ふと、鬼沢くんが何かに気づいたように笑顔を消して、
「おい、なんか静かすぎね?」
 と言う。
「あん?」
 ツェッペリくんは周囲を見渡した。
「あれ、誰もいねえ……。
 ? おまえら誰あばばばばばばばばば」
 銃声。突如現れた、いかにも特殊部隊という格好の男たち? に、短機関銃で蜂の巣状に全身をまんべんなく打ち抜かれるツェッペリくん。
 とたんに変身が解け、青い肌でのっぺりとした顔の本性、すなわち半漁人の姿をあらわにさせる。
「あ、やば」
 と、マロンくんが言いかけるが銃声。「ぐえええええええええええええ」着弾の衝撃で踊りながら変身が解かれていく。
 そこまで見れば流石に体が動かせるようになれたのか、鬼沢くんは四足獣のような姿勢で跳ね飛んで席を離れ、包囲を突破して窓ガラスに突撃をしようとする。
窓ガラスを破れば国道に面した歩道である。しかし……、
「ぎゃああああああああああああああああああああ」
 彼もまた、短機関銃のあぎとからは逃れられなかった。亜音速の弾丸のシャワーは鬼沢くんの肉体をぼろ雑巾のようにずたずたに引き裂いていく。
「アルファ1より報告。ラルヴァ1死亡確認。ラルヴァ2死亡確認。ラルヴァ3死亡確認。全目標の殲滅を確認。状況クリア」
 特殊部隊の部隊長が無線で報告する。
「ご苦労、アルファ1」無線からの返答だ。上官らしい。「消毒部隊はまもなく到着する。諸君はラルヴァの死体の回収し、ルートBで速やかに撤収しろ。以上」
「アルファ1了解」
 部隊長は無線を切ると、部下たちに素早く指示を出していく。すると特殊部隊はまるでそういう機能を持った機械のようになめらなか動きで、あっという間に撤収作業を完了させ、ファミリーレストランから去っていく。
ラルヴァたちの死体も彼らに運ばれていった。
 彼らの去った後のファミリーレストランは、血痕だらけで、嵐に巻き込まれたかのような姿をさらしている。
 冷め切ったコーヒーだけがラルヴァたちの血液すら浴びずに、まったく無事な姿でテーブルに残されていた。


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