【異能力研究室】


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異能力研究室


 2019年。
 東京湾の埋立地に作られた、怪異『ラルヴァ』を倒すことのできる『異能者』を育てるための教育機関『双葉学園』
その学園には能力、年代、分野ごとにさまざまな施設がある。
それらの施設の大半は1999年以降、急速に増えた『異能を持つ少年少女』に正しい知識、生きるための技術などを身につけさせるためのものである。

 ここ『異能力研究室』も、その目的は同じだ。

 この研究室は名前の通り、『異能者』の持つ能力を研究する場所だ。
その内容は、能力を分類、解析し、その応用方法を探ること。
 ここで行われる週一回の講義に参加する学生はそのほとんどが一般生徒、もしくは戦闘には直接使うことの出来ない『異能』持ちの生徒だ。
彼らは前線で戦う少年たちを後方でバックアップする役目を担う者たちで、場合によっては戦士たちの命運を左右しかねない立場の彼らには授業に対する高い関心が求められる。
だから自然とこの研究室には成績優秀な子供たちが集まるようになっていた。

「えー、今日の講義は異能の分類と発現条件についてだ」

 講師が教壇に設置されたPCを操作すると、各生徒の机に設置されているPCの画面に『異能の分類と発現条件について』と題されたページが表示される。

「異能は現在、大まかに4種の系統に分類され、それらは全て魂源力《アツィルト》と呼ばれる、異能者のみが持つと言われる、ある種の生体オーラをエネルギー源として発現する」

講師は慣れた様子で説明を始めた。

「異能は
 肉体を強化する『超人系』
 サイコキネシス、テレパシー、クレヤボヤンスなどのESPを行使する『超能力系』
 天啓により現代科学を超越した機械、兵器を作り出す『超科学系』
 前記3種を発現するに至らない者がその補助のため、もしくは特殊な効果を発揮するために儀式を用いる『魔術系』
この4種に分類されている。
 現在の醒徒会役員を例に挙げると、
龍河弾は典型的な肉体強化と、それに付随する肉体変化を得る『超人系』
 自身の触れた水を自在に操る水分理緒は『超能力系』、他者の金運の多寡を判断する成宮金太郎も特殊だが未来予知の一種と考えられることから『超能力系』だな。
エヌR・ルールも原子レベルでテレポートしていると考えればここに含まれる事になる。
 藤神門御鈴はおそらく何らかの儀式を用いて強力な式神を従属させているんだろう。
と考えると、これは『魔術系』ということになる。
 あー、残念ながら『超化学系』は例に挙げられる人物がいないな」

 教師の操作に従い、例に挙げた生徒たちの能力やその効果が次々とモニターに表示されていく。

「先生、質問が」
「なんだい?」

 ふと一人の生徒が手を上げ、それを受けて講師は手で彼に発言を促す。

「書記の人は物質を強化してますけど、これは何系なんですか?どの系統にも当てはまらない気がするんですが……」

 生徒の質問にあがった醒徒会書記『加賀杜紫穏』は物資の特性を強化するという能力を持っている。
確かにこの能力は4つの系統分類に当てはまらないように見える。

「いい質問だ。
 彼女の能力はいうなれば任意のモノを強化する、一種の効果付与《エンチャント》を行うものだが、その本質は強化するという一点において『超人系』と判断できる。
一見、どの系統にも当てはまらないように思えるのはその効果範囲に原因がある。
 つまり能力が肉体内部にとどまらず、魂源力を流し込んだモノにも及ぶ、ということだな。
同様に特定の物質を強化したり、他者に魂源力を分け与えたりするものも実は『超人系』ということになる。
効果が自分のみか、他のモノのみか、という違いだな。
以上のことから加賀杜紫穏の能力効果範囲は常軌を逸した、破格のものと評価できる。
 現状、『超人系』では究極ともいえる能力者の一人だろうな」

「それじゃあ、庶務の人の能力は効果範囲がすごく狭いということですか?」

 講師は軽く頷き、生徒の次の質問に答える。

「確かに自身の『速度』を強化する早瀬速人はとても狭い効果範囲の能力に見える。
が、彼の場合は強化する身体能力に偏りがあるだけで、実際には普通の『超人系』異能者と効果範囲は変わらないんだ。
 つまり、反射速度とそれに耐え、応えうる肉体強度、この二点のみにほとんどの能力強化を割り振っていると考えられる。
彼は亜音速での巡航が可能なようだが、この状態の彼の肉体は銃弾など軽くはじき返す強度を持っているだろう、と私は推測する。
まあ、そもそも弾丸に当たることなどないだろうから、真偽のほどは定かではないがね」

 講師の自嘲気味な一言に、研究室内に軽い笑いが起こる。

「ひとつ付け加えておくと、おそらく彼の能力にはまだ発展の余地があるだろう。
 彼の身に着けている衣服が高速巡航にも耐えるのは、強化が衣服にも及んでいるからだと考えられる。
だとすると彼が触れているものを『加速に耐えうる強度』にすることも可能だということで、これを他者の人体にも適用できるようになれば
『火災現場の炎を亜音速で吹き飛ばしつつ要救助者を助け肉体を強化、そのまま安全圏へ脱出』なんて離れ業も可能になるだろう。
まあ、全てを0コンマ数秒、まさにほんの一瞬でやり遂げるという条件がつくがね。
 他の応用としては両手を高速ですれ違わせて真空を作り出す、いわゆる『カマイタチ』や2~3mの範囲をぐるぐる回転することで小規模の竜巻さえ起こせるかもしれない。
あとは水の上を走ったり壁を駆け上ったり、まあ忍者みたいなことも可能だろうな」

 講師の説明にあわせ室内に感嘆のため息が漏れ、続いて大きな笑いに包まれた。
生徒たちがひとしきりざわつくのを満足げに眺め、講師は次の話に移る。

「さて、それでは次は異能の中でも目立って特殊だといわれる『召還』について話そう。
誰か『召還』がどの系統に分類されるかわかる者はいるかな?」

講師の言葉に一人の女子生徒が手を上げ答える。

「対象を別の場所から呼び寄せる能力だから限定的なテレポート、なので『超能力系』だと思います」
「お見事、正解だ。」

 講師は彼女の答えを肯定し、手をたたいて褒めた。
それにつられて他の生徒たちも手をたたく。

「だが実はそれだけではないんだ。それが『召還』が特殊な異能だといわれる原因にもなっている」

 その一言に生徒たちは一斉に静かになる。
少し間をおき、講師は話を続けた。

「彼女の答えの通り、基本的に『召還』は対象物を別の場所から術者の元に呼び寄せるものだ。
しかし、術者によってはそれだけでは説明できない場合がある。
 それは現実にはありえないモノを呼び寄せることが出来る者がいる、ということだ。
さて、この事を説明できる者は?」

 講師の言葉に再び室内がざわつく。
1、2分ほど答えるものがいないか待つ講師。
しかし今度は手を上げるものはいなかった。

「ちょっと難しかったかな……では説明しよう。
 現実にはありえないモノを『召還』する方法、その正体はサイコキネシスによる『物質再現』だ」
「えっ!?でもテレポートを使っているんだから他の能力は使えなくないですか?」

 講師の説明に先ほど回答した生徒が反論の声を上げた。
他の生徒も口々に「だよな」などと不可解だという意思をもらす。

「その通り。
 『異能』は知っての通り、『一人につき一つ』。
理由はわからないが、それが絶対のルールだとされている。
 ところが『召還』にはそれではどうしても説明できないことが起きているわけだ。
だが、これを説明するためにはテレポートとサイコキネシスとの複合だと考えるほかない」

 講師の説明は単純明快だったが、そういわれても納得できない生徒たちの騒ぎはまだ収まらない。
ありえない事があるというのだから当然の反応だ。

「まあ、そういう反応になるよなあ……じゃあ詳しく説明していこう。
 能力の複合についてだが、これは実はしばしばあることなんだ。
その例としては最初に『超人系』の例で挙げた龍河弾がそうだ。
彼の場合肉体を『強化』する能力なわけだが、よく考えてみるとそこに肉体を『変化』させる能力も加わっている」

 今度は生徒たちは別の意味でざわつき始める。
確かに講師の説明の通り、竜人に変身して大きく膂力を向上させる龍河弾は『強化』と『変化』を同時に行っていることになるからだ。

「これらの疑問を解決するためには『どんな能力を元に異能が発揮されるか』ではなく『異能を発揮するために使う能力は何か』を考える必要がある。
『召還』の話に戻るが……つまりテレポートで何かを『召還』する、ではなく『召還』するためにテレポート、もしくはサイコキネシスが働く、ということになる。
要するに異能の発現においては『結果』が全てで『過程』は問わない。ということだな。
 移動するのに車を使おうと、リニアを使おうと目的地には着く……屁理屈のようだが事実このようになっている。
わかったかな?」

 今度の説明で生徒たちはおおむね納得したようで、室内のざわめきも小さなものとなった。
と、一人の生徒が手を上げる。

「『召還』についてはわかりましたが、醒徒会長の『12種類の式神を召還、使役する』という能力はどうなるんですか?」
「ああ、あれか……実は私もちょっと頭を悩ませていてね。
憶測でしかないが聞きたいかね?」

質問した生徒は、講師の反応に頷く。

「よろしい。では私の推論はこうだ。
 まず一つ目『12種類の式神というのは実は一体の式神が持つ12種類の能力』であり、藤神門御鈴自身の能力は『式神を使役する』のみで、さらに『召還はあらかじめ他の異能者が行っておく』というもの。
これはかなり強引だが『式神』というものがラルヴァの一種と考えれば納得できなくもない。
 もう一つは『12体の式神を任意に使い分けている』というもの。
これは『召還』を行う異能者が別にいて、藤神門御鈴がその時使いたい『式神』を召還させ使役するということで、前述の解釈よりは無理がない。
 最後に『式神12体は実はハッタリで、白虎のみしか使役できない』というもの。
私自身はこの解釈が一番しっくりくる。実際ほかの式神を見たという者もいないしね」

 講師の説明に生徒たちは「うーん……」「ほー……」「ははは」と順番に反応を見せた。
そして和やかな雰囲気の中、終業のチャイムが鳴り響く。

「よし、今日の講義はここまで。
 最後に誰か、どうしても今聞いておきたいことがある者は?」

 講師の言葉に一人の男子生徒が力強く手を挙げ質問の言葉を発する。

「会長のパンツの色は実際何色なんですか?」
「それだけは私にもわからん。以上、解散」

 講師の回答は実にそっけなかった。


●このSSは筆者の勝手な解釈による創作であり、D設定の域を出るものではありません。


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