【シャイニング!3】


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 入学式こそ騒動に見舞われて出席できなかったが、敏明は翌日からは普通に授業を受けることが出来た。
 といっても、最初の一週間ほどはこの特殊な学園についての説明ばかりが続いた。
 異能関連の予備講習、選択授業の確認やクラブ活動に向けたイベントなど。
 通常のカリキュラムは二週間目から始まることになっていた。
 その特別編成の一週間のうちに、敏明は一つ理解したことがある。
 この双葉区という埋立地には、というより、双葉学園にはラルヴァと呼ばれる化け物が非常に多く出現する。
 連中が何のためにどこから来るのかはよくわかっていないが、とにかく日に数度はラルヴァと、それを退治する学生の姿を目撃することが出来た。
 言ってみれば、それは双葉学園における日常の風景なのだ。
 恐ろしい化け物との戦いだというのに、中には人だかりが出来てやんやの喝采が起きていることさえある。
「キャー水分さーん!」「ルールくんやっちゃえー!」「全裸! 全裸!」「会長サイコー!」などが主な歓声の内容であった。
 一度、人の少ない場所ででかいラルヴァに遭遇してしまい、命の危機すら覚えたが、なぜかそのラルヴァはいきなり大砲にでも撃たれたように吹っ飛んで爆散してしまった。
 そのとき、赤い布のようなものが素早く視界を過ぎったようにも見えたが、おそらく気のせいだ。

 敏明はまだ日も高いうちから家路を急いでいた。
 今日は彼が暮らす祖父宅に、自分の護衛を引き受けてくれた明日羽が荷物をまもめてやってくることになっていた。
 学園では、今日から部活やサークルの勧誘が解禁になった。
 たくさんの校舎を持ち、正門までかなり距離のある学園の敷地内で、果敢にアタックしてくる在校生とそれにもみくちゃにされる新入生とに阻まれて、微妙に放課後の時間をロスしてしまっていた。
 彼女は一応、剣道部に所属しているらしかったが、最近は幽霊気味らしく、勧誘には加わらずにすぐ家に来るという話だった。
 さして長くない距離を全力疾走し、敏明が家に着いたときには玄関先に二人の少女の姿があった。
 巡理と明日羽だ。
 二人はそれぞれにカートを押していて、小さな棚や布にくるまれた荷物が載っている。
「すいません、お待たせしました」
「いや、私も今来たところだ」
「メグもセンパイの荷物運ぶの手伝ってたんだな」
「ううん、手伝ってないよ?」
「でもその荷物って」
「これはボクの」
「……は?」
「ボクも今日からこっちに住むことにしたからネ」
「したからって……」
「若い男女が一つ屋根の下に二人きりってまずいっしょ?」
「確かにそれはそうだが、お前んち、そこじゃん」
 敏明はすぐ真隣に建つアパートを指差す。
 それに対して巡理はチッチッチと欧米人みたいに指を振ってみせる。
「トッシーはスケベさんだし。これだけの距離をボクが駆けつけるまでにセンパイを『にんっしんっ』させちゃうでしょ」
「さらっとセンパイを引かせる発言をするな!」
 問題の焦点が一段ぶっとんでいたが、やはり二人で暮らすということには問題があるのも理解しているため、敏明も強くは否定できない。
「まあ……メグがいてくれたほうがいいか。色んな意味で」
 彼女いない暦=年齢の敏明にとって、家族でも幼馴染でもない女性が同じ家に住んでいるという状況はかなり緊張を強いられるものだ。
 そこに巡理がいるというだけで、かなり精神的に変わってくるだろう。
 加えて、彼女の家事スキルも心強い。
「ちなみに、すぐに対応できる人員は少ないが、今後も護衛は増やされるかもしれないということだよ」
「なんか大仰ですね……俺を守るためにって」
「それだけ大変な異能ということだろう。詳しくは知らされていないが『暴走』の可能性すらあるらしい」
「なんだそのありがちな……いえ、なんでもありません。とりあえず荷物運んじゃいましょう」
 双葉管理の邸宅は、それなりの大きさで十分な部屋数を備えた二階家だ。
 敏明の自室とは別に、まだ使っていない部屋が残っていた。一つは祖父の部屋だったが、当人がなかなかこの家に帰ってこない上、ろくに家具も置かれていない。
 物置代わりになっていた空き部屋から、敏明がダンボールを祖父の部屋に移し、その間に女子二人は自分の荷物を持って入ってくる。
 明日羽は和室、巡理は小さめの洋室に入ることになった。巡理のアパートの部屋はまだ契約が続いているので、彼女は荷物などは大半そちらに残している。
 一通り荷物を運び終えると、三人はリビングで一服する事にした。
「緑茶しかないですけど、いいですか?」
「ああ、構わないよ。コーヒーなどは飲めるけど好きではないし」
「和風好き……鉄板剣道キャラで攻めてくるね」
「鉄板? なんのことだ?」
 親指立てた巡理に首をかしげる明日羽。
 苦笑しつつ、敏明は湯を火にかけ、買い置きの煎餅をテーブルに出していった。
 それから三人でお茶を飲みつつ、放課後の予定や家事の分担などを取り決め、それぞれの荷解きを再開した。
 敏明も未だにすべての荷物を開けていなかったので、ついでに自分のダンボールをあけていくことにした。


 その晩、何の因果か(というかもちろん敏明の手のせいで)お約束イベントは早速発生した。

 脱衣所のドアを開けた瞬間、目の前に見えた肌色に硬直する敏明。
 だが、
「あぁ、悪いなメグ」
 相手が下着姿の幼馴染であることに気付くと落ち着いた様子でドアを閉めた。
 実は中一まで一緒に風呂に入っていた相手である巡理には、敏明からしてみると異性という感覚がほとんどない。
「もー、トッシーのエッチ」
 巡理のほうにもあまり恥らうアクションがないのも問題であった。

 三十分後、メグがリビングで涼んでいることを確認した敏明は再び脱衣所のドアを開け、
「シッ」
 パシン、という小気味良い音と共に顔面を何かに強打された。
「目が! 目がぁ!」
 それはタオルだった。微妙な湿気を帯びて重みを増した布が、鞭のようにスナップを利かせて叩き付けられたのだ。目だけでなく顔面全体が痛む。
「あぁ、すまない。ついとっさにやってしまった。実家の道場生に風呂を覗かれるうちに癖になってな」
「なんてうらや……いや、けしからん連中だ」
「君も似たような真似をしたわけだけどな?」
「いや、なんというか不可抗力です。ええ。ちっとも見えなかったし」
 顔を抑えてうずくまったままの敏明を見下ろして、下着姿の明日羽は何事かを考えるように顎に手を当てて唸る。
「ふ……む。敏明クン」
「はい?」
「これから同じ家に暮すわけだし、敬語は無しにしないか」
「は、ああ……いいんですか?」
「堅苦しいのは道場だけで十分だ。歳だって一つしか違わないしな」
「じゃあ……これからは、そういうことで。あ、呼び方はセンパイでいいんで・・・いいのかな?」
「それは君に任せるよ。私は敏明クンと呼ばせてもらう」
「わかりまし……わかったよ、センパイ」

 さらに三十分後、明日羽がなにやら客間で座禅をしているのを確認した敏明は脱衣所のドアを開け、
「ごめんなさ……って誰だ!?」
 見知らぬ人間が全裸で立っていたのに気付いて思わず声を上げた。
 同世代くらいの女子が下着もつけていないということ以上に、赤の他人が風呂に入ろうとしているという状況が気になってしまった。
 彼女の明るい金髪とつぶらな瞳にはまったく心当たりが無い。ついでに言えば胸元のボリュームもなかなかのものだ。
「あ、やっほー、君がとっしー?」
「とっしー言うな」
 少女のほうも、恥らうどころか隠す素振りすらなく敏明を振り返り、気軽に手をあげて挨拶をする。
 そんな態度に、敏明の方が恥ずかしくなって目を逸らした。
「今日からアタシもキミの護衛だからよろしくねー」
「護衛……なのか?」
「そ。聞いてない?」
 追加の護衛がやってくるとは言われていたので、まったく聞いていないわけではなかったが、
「今日来るとは聞いてないな……」
「いやね、本当は来週から来る予定だったんだけど、アパートおんだされちゃってさ」
「何をしたんだ?」
「部屋に飛び込んできた鳥ラルヴァと戦ってただけなんだけどねぇ。部屋の中荒らされたらたまんないからさ、外に出て戦ったんだけど非常階段ぶっ壊しちゃって」
「うーん……迷惑ではあるけど不可抗力じゃ……」
「その時、下着姿の女が暴れてるって通報されちゃって」
「下着で外に出たんかい」
「服着る余裕なんてなかったんだってば」
 どうやら彼女には恥じらいという回路が抜けているということは理解し、敏明は溜息を吐きながらドアを閉めた。
「アタシは、高田春亜<<たかだはるあ>>。ヨロシク。あと早速だけどお風呂借りるよー」

 それからまた三十分後、敏明はようやく無事に脱衣所に入ることが出来た。
「三連続イベントとか都合よすぎだろ、展開的な意味で」
 ぶつぶつと独り言を呟きながら、服を脱ぎ浴室をそーっと開ける。まさかの四人目が、という心配は、しかし杞憂に終わる。
「ま、さすがにありえねえよなぁ」
 言いつつタイル張りの床に下り、浴槽の蓋に手をかけたところでハタとあることに思い至る。
「……三人が入った後の残り湯?」
 春亜と明日羽、巡理……はいいとして、彼女たちがつかったであろうお湯がその湯船の中には満たされているはずだ。
「……いいのか? いや、変に意識しすぎるのもまた問題だ。これから同じ家で暮すわけだしな」
 逡巡は短く、というより自分の希望に任せ、敏明は蓋を開ける。
 だが、溢れてくるはずの湯気は無く、満たされているはずの透明な液体も存在していない。
 代わりに、そこには素っ裸の子供が寝そべっていた。
 膝を抱くように丸まっているため、性別もわからない。
「なんじゃこりゃあ!?」
 思わず叫び、一歩後ろに飛び退く。
 それから恐る恐る覗き込んでみるが、動き出す気配は無い。
「……お、おーい?」
 そっと手を伸ばして背中を突いてみる。反応無し。だが、感触は完全に人間の肌のそれで、作り物とはとても思えない。
 思い切って腕を掴んで持ち上げてみても身じろぎ一つしない。
「よい……っしょ」
 お姫様抱っこのように膝と腰を抱き上げ、湯船から出してみる。
「……ロリ?」
 そこでようやく股間に突起物が見当たらないのを確認し、さてどうしたものかと首を捻ったその時だ。
「とっしー!」
「何事だ!?」
 浴室のドアが勢い良く開き、巡理と明日羽の二人が突っ込んできた。
『……――』
 吐息すら許さないほどの完全なる空間停止が場を固めた。
 敏明の腕の中の幼女はもとより動かないが、三人はそれぞれに視線を交錯させつつ、まるで何かを待つように、とにかく押し黙ったまま動かない。
 敏明は思う。悟空、はやくきてくれ、と。
 脱衣所に遅れてやってきた悟空、ではなく春亜が一言。
「この状況で縮むとは、まだまだだね」
「そんな方向で元気になりたくねえ!」
 思わずツッコんだ直後、明日羽の手刀の一撃で敏明は意識を刈り取られた。

...とべこんちねうd


「……で、どっちとの子?」
「どっちのでもねえ!」
「え、まさかアタシの子か?」
「今日会ったのにか」
「恋に時間は関係ないよ」
「子供には時間が必要だ!」
「とはいえ、アタシ処女だし。あ、処女解体?」
「字が違うぞ字が」
「この子は救世主かぁ」
「どこまで妄想する気だ」



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