【科学部の暇な一日】


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 松戸科学《まつどしながく》は付与魔術師《エンチャンター》である。彼は、学園の未来を守るために、今日も秘密兵器を開発し続けるのだ!!
「部長、誰に向かって言ってるんですか?」
 なんだ? 伊藤君、そんなの自分の気持ちを奮い立たせるために決まっているじゃないか。大体だな、どうして、僕と君しか、この部室にいないのかね?
「部長が、変な実験に付き合わせたりするからでしょ?」
 変な実験とは失礼だな。第一、科学の発展のためには多少の犠牲はつき物じゃないか?
「魂源力増幅装置とかいって、変なヘッドギアつけさせた挙句、三日三晩一睡もさせずに瞑想させるとか、浮遊機能を持つ羽の生えたブーツを履かせて崖から突き落としたりとか、テレパシーイヤホンとか付けさせて、ラブラブだったカップルをドロドロな関係にしたり、防御力強化スーツとか着させてバットで殴り倒したり、予測能力を付与させた鉛筆をそれと知らせずに渡して、試験受けさせて、カンニングで捕まったり、それから……」
 どうした、伊藤君、顔を真っ赤にして何を熱弁しているんだ? 別にどれも問題ないじゃないか。
「問題あったから部員が辞めたんでしょーがっ!」
 そ、そうだったのか……。それより、伊藤君、胸倉を掴むは止めてくれないか? 首が絞まるんだよ。それと、その殺気染みた目つきはなんだ。いや、それより、このままだと、ぼくは後三十秒で昇天してしまうぞ。
「……第一、部長。あなた、超科学系能力者でもなんでもないんですよ。なんで、科学部の部長なんてやってるんです」
 おいおい、伊藤君、夢は追うものと相場が決まっているじゃないか。現実を見てみたまえ、実に殺伐とした世界だ。今、この瞬間だって、どこかで、誰かが化物《ラルヴア》を殺しているんだよ。酷い時代だとは思わないか? ん? どうしてそんなウンザリした表情なのだ?
「話の論点がずれてませんか? 僕が聞きたいのは、付与能力なのに、“科学部”に在籍してるのかってことですっ!」
 そんなに口角泡を飛ばして喋らないでくれるかい? こっちの顔が唾だらけになってしまう。そう! こんな時にこそ、このハンカチが役に立つ。
「なんです? そのけったいなペイズリー柄のハンカチは?」
 うむ、良く聞いてくれたな。これは、こう、眼鏡を拭くとだね……。お? なんだ、ちょっとは興味がありそうな顔をしてくれるじゃないか。いいぞ、うむ。
「拭くと、どうなるんです?」
 拭くと、汚れが一度で拭き取れる。あ、ちょっと、なんだ、その右手は? 殴るのとか止めてくれる? これは、物質をテレポートさせる能力を高度に応用した逸品だぞって、おい。何奪い取ってるんだ? ちょっと、あーっ!! 破らなくてもいいだろ。
「で、結局、なんで、科学部にいるんです?」
 決まっている。魔法とか超能力とかより、格好イイからだ! あ、本気で殴るの止めてくれる?
「他人がいないとこれっぽっちも役立たないダメ能力のくせに」
 失礼だな、君は。確かに、ぼくの能力は、他人の様々な力を物質に付与するというものだ。しかも、そのままではなく、数ランク下がる劣化コピーだが……。それでもかなり便利なのだよ。例えばそこにあるナイフとりんごを取ってくれないか? そう、それだ。そのナイフでりんごの皮をむいてみたまえ。
「うわー、凄く剥きやすいですね。でも、なんか急速に疲れが……」
 言い忘れていたが、それは非常に魂源力を消費するものでね……。伊藤君、果物ナイフは果物の皮を剥いたり切ったりするもので、ぼくの首に突きつけるものではないぞ。
「で、誰の能力を付与したんです?」
 ナイフを突きつけたまま質問しないでくれるか? そう、ナイフはテーブルにおいて置こう。いい子だ。ああ、誰の能力か? だったね。誰だったかな? ほら、醒徒会の名前はなんといったかな?
「ああ、書記の人ですね」
 ああ、そうだ、多分間違いない。さあ、こんな下らない話をしていないで、君も自分の研究を再開しないか。
「部長? そういえば、この前修理した特殊警棒ですけど、ホントにあんな能力付けてよかったんですか?」
 もちろんだよ、今頃は、彼も大層喜んでいるだろうよ。


 その彼はというと、ラルヴァを目の前に、なんとも困った状態にあった。
(そういえば、松戸が言ってたな。力になる能力を追加しといたとかなんとか。警棒の根元になるボタン……。これを押すんだったな)
 赤いボタンを親指で押す。それと同時に、何かが起動するの肌で感じる。これはおそらく、能力者にだけ分かるものなのだろう。
『人工知能、ナンバー10018が起動しました。命令をどうぞ』
「どうぞって、何ができるんだ? なんか凄いパワーでもあるのか? ビームサーベルになるとか、光線みたいなのが出るとか、凄い武器に変形するとか」
「GPSとナビゲーションシステムです」
 召屋は、この警棒を真っ二つに折ることにした。
「冗談ですよ」
「この緊急時に冗談とかねーだろっ!」
「メッシー!」
 後ろで有葉が緊張感のある声で叫ぶ。
「何ができるのかさっさと言え!」
「全く、落ち着きのない人ですね。早漏は女の子に嫌われますよ。ワタシの能力は、異能の力のコントロールです。この警棒《ロッド》を媒体にして発動される能力、その源である貴方の力の流入を制限したり、そのリミッターをカットすることが可能になってます。それとGPSとナビシステムも完備しておりますが、どちらかに出かけるご予定は? 今なら、最高の逃走経路をご紹介いたしますよ」
 召屋は全力を持って粉砕すること決めた。
「はっはっはっ。冗談ですよ。ところで、こんな下らない掛け合いをしてる間にも、貴方の相棒は、大変危険なレベルに達してますが?」
「メッシーぃぃしぃ!!」
 有葉の声が更に切迫したものになる。
「おい、警棒、リミッター解除しろ」
「了解です。まあ、貴方程度の能力者が、リミッターを解除したところで、たいしてパワーが増加するわけじゃないんですけどね」
「よし、お前は死ね」
 ステンレスのせん断係数ギリギリまで警棒を撓らせる。
「はは、マスター、冗談じゃないですか」
 召屋は、無事に帰ったら、このろくでもない機能を付け加えた松戸を気が済むまで殴り倒すことに決めたのだった。
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