【突撃のストレイトブースター2】


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2.開始準備 Get ready...


 その町の名前は沫波町<<まつなみちょう>>。
 町内へ向かう国道の途中、閉鎖されたバリケードの敷かれた場所に大型のバスやトラックなどが何台もやってきた。
 それらから降りてくるのは、大半が子供と呼べる年齢の者たちだ。

「なんか、停滞してるって感じじゃないな」

 誰からともなく呟いた言葉に、皆が頷く。
 その町には、音や動きがあった。
 人の話し声、動物の鳴き声、物音。そうしたざわめきが、町の中から流れてくる。
 しかも、目に付く範囲では街路樹の枝葉が揺れていたり、車が走り回っていたりもする。

「運命が閉塞……周辺部ではゆるやかに停滞? してるって聞かされてたけど」

 時を止められたような光景を想像していた彼等は、一様に戸惑いを隠せない。

「あれ、あの車……」

 少女が指差した先には、沫波町の中を走る一台の黒いセダンがあった。

「走ってるな。停滞してるってのは、間違いなのか?」
「ううん、たぶんそうじゃないよ。ほら、よく見てて」

 促され、全員の視線がセダンに集まる。
 セダンはそのまま走り続け、交差点を左に曲がった。だが、しばらく待っていると、手前の路地、左側からその車が姿を現す。

「え?」

 そして黒いセダンは、再び同じ交差点を左に曲がり、その後、またもや手前の路地から戻ってくる。

「同じところをぐるぐる回ってる……?」
「これが『運命の停滞』ってことか」
「その通りだ」

 彼等の後ろ、少し離れた位置で肯定の言葉を放ったのは、ブラウンのロングコートに身を包んだ男性だった。

「あの車は、おそらく『走って左に曲がる』という運命の中に停滞しているのだろう。おそらくは停滞に巻き込まれてから今までずっと。交通事故などを起こしてしまうともう走れなくなるので、きちんと道の上を走ってね」
「はー……なんとも都合のいい」
「それが運命というものだ。といっても、私も正確に理解しているわけではないけど」
「ガソリンはどうなってるんですか?」
「おそらく、減っていないのだろうね。それもそういう運命だ。だが、だからといって無限のガソリンが使えるというわけではない。例えば今、あの車からガソリンを抜き取ろうと思っても、運命の停滞に邪魔されて絶対にガソリンを拝借することは出来ないはずだ」

 男の説明に、皆は頷いたり首を傾げたり、まちまちの反応をする。

「私は、今回の作戦のアドバイザーとして同行させてもらうことになった語来灰児だ。一応、この町を閉塞させているラルヴァについて説明するよ。今回は非常に特殊な……運命に関わるラルヴァは理解が難しいと思うので、少し簡単に説明しようと思う」

 そういえば前にも運命に関わったラルヴァがいたか、というのは彼の独り言。

「今回の標的となるラルヴァは『時留蜉蝣<<トキトメカゲロウ>>』だ。カテゴリーはビースト。等級は下級Bノ1。運命閉塞という能力ゆえに異能者以外には手が出せないが、そこさえクリアできれば一般人が素手でも倒せるラルヴァだ」
「素手でも、ですか?」
「そう、このラルヴァの名前、カゲロウという名前は聞いたことはあるかな?」
「蜃気楼の別名?」
「それもあるが、このラルヴァの場合はその蜃気楼が名前の由来となった虫のほうだ。非常に寿命が短い、か弱い虫の代名詞といえる」
「つまり本体はすごい貧弱貧弱ゥって感じ?」
「その通り。そして、その弱さと寿命の短さをフォローするために、自分を中心に周辺の運命を完全に閉塞させている」
「強いんだか弱いんだかわからねえなぁ……」
「ちなみに、この時を留めるという名は、勘違いでつけられたものでね。しかし、運命という概念は解釈が難しいため、まったく的外れな名前ともいえない。理由は……見ての通りだな」

 再び町へと目を向けた子供たちは、灰児の言葉の概要をなんとなく理解する。
 時間が止まったわけではない。だが、運命が止まったことによって、あらゆる行動や現象がリピート再生になっているのだ。
 それは、時を留<<とど>>めている、と呼んでも差し支えない光景だ。

「そこの蕎麦屋、表で実演で打っているだろう。それも良く見てみるといい」

 蕎麦屋によくある、ガラス張りで道に面した打ち台に、白い清潔な格好の男が立っている。
 彼は打って伸し終わった蕎麦を切る作業に入っていた。
 トントントンとリズミカルに包丁を振り下ろすのは、実に様になっている。
 だが、じっと見ていると子供たちはすぐにおかしなことに気付いた。
 切っているはずの蕎麦が一向に切られず、同じ箇所をいつまでも包丁で叩いているのだ。

「ちなみに車のガソリンと同じで、人間のカロリーや水分なども停滞に巻き込まれてから変動していないはずだ」

 でないと死んでしまうからね、とさらりと呟き、灰児は子供の一人に向き直った。

「さて、成宮くん。醒徒会役員として、一番手を任せようか」
「は? なんでオレが? ……オレの異能は戦闘向きじゃないんだが?」

 成宮金太郎は思わず慌てて聞き返してから、それを取り繕うように問い直す。
 余裕ありげな表情は微妙に強張っている。彼はその異能の性質ゆえ、戦闘作戦に直接参加した経験が無い。
 ラルヴァを見た経験も、せいぜい学園内で遭遇して他の醒徒会メンバーに助けられた時くらいだ。

「別にいきなり特攻しろなどとは言わないとも。運命干渉系異能者として、まずは運命の停滞を破ることが可能か試してもらう」
「例の……過干渉ってやつか。実際やったことがないから実感が無いな」

 金太郎は蕎麦屋の板前の顔を見る。その頭上に普通なら見えるはずの総資産と金運の表示が無い。
 彼の異能である『ザ・ハイロウズ』が、『時留蜉蝣』の『運命閉塞』に打ち負けているのだ。

「……なるほどな」

 いつも見えるものが見えないという違和感に、彼は苦い表情を浮かべる。

「いくぞ」

 目を閉じ、自らの持つ異能と、それを発揮する魂源力に意識を集中する。
 そして再び目を開き、板前を見た瞬間、その頭上にぱっと金運の表示が現れる。
 完全な下落。ご愁傷様だ。

 板前の手が、少しずつ横に移動し始めた。そして蕎麦を最後まで切り終え、ささっとまとめて箱に収めていく。

「……ふぅ」

 金太郎が意識を弱めると、板前は台と箱に手を往復させる動きをずっと繰り返すようになる。
 蕎麦の束をつかみ、丸めて箱へ移す。すると蕎麦はするりと箱から這い出して、元の位置に戻っていく。そしてそれを再び板前が箱に丸めて移す。
 先程以上の奇妙な光景に、誰もが顔を顰めた。

「こんなに意識して魂源力を使ったのは久しぶりだ」
「お疲れ様。突入するときにはその調子でチーム全員に力をかけていくんだ。途切れさせれば、また停滞に捕らわれてしまうから気をつけて」

 灰児の言葉に、金太郎はさらに眉根を寄せる。
 口にこそ出さないがキツイと表情が物語っている。

「時留蜉蝣に近付くほど、停滞は強まっていく。君達の異能次第で、近づける範囲には限界があるはずだ。あまり無理に突っ込みすぎず、消耗したと感じたらすぐに戻ってくるように」

 金太郎、並びに他の運命干渉系異能者たちは、緊張の面持ちで頷く。
 彼らの手には文字通り、この場にいる異能者たちの運命が握られている。
 と、一段落したのを見計らったように、トラックからスーツ姿の男が降りてきた。

「もうすぐ作戦時間だ」

 男は外に出ている異能者やサポートメンバー達を見回すと、大音声を上げた。

「『蜉蝣潰し作戦』、開始準備! それぞれ準備を整え、配置につけ!」
『ハイ!』『オス!』『ヤー!』

to be continued...


怪物おかりしました
口調あってるか超不安
あと金ちゃんも出張った

これからこの話は主に春峰央歌チームと双葉敏明チームを中心に進めていく予定です。
予定といいつつろくにプロットも用意してませんが。
そのため、その他三チームが実は活躍するかどうかも未定なのです。
参加している運命干渉系異能者も、金ちゃん以外未定。
アイスさんは来るのかなぁ。学園警備に残ってる設定とかのほうがいいだろうか。

うーん、手前味噌ではあるんだけど、この作戦を舞台にその他三チームの活躍とか書いてくれる人いないかなぁ……チラッ

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