【真琴と孝和 奇妙な凸凹コンビ 2-1】


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真琴と孝和 奇妙な凸凹コンビ 二節


2-1 可笑しくとも悲しい日常から


 『ラルヴァ』の騒動がない学園は小中高の総合学園の顔を見せており、私たち学生はきっちりと学生生活を過ごしている。
ちょっと前に馴れ馴れしい態度とフランク過ぎる態度を気に障って女子更衣室に飛ばしてやった『女たらし』の三浦孝和は、カフェテラスでは積極的に話しかけてくる。
だが、気を遣っているのか教室に来て話すような事は極々数えるほどもない。
「……星崎さん、また胸見てるのが居るよ」
元は男の遺伝子を女に書き換えたクローンではあるが、出る所が出て引っ込む所が引っ込む。
胸が90㎝越えしているのは有り難いことです。重いけど。
余程女の胸に飢えているのか拍手敬が私の胸に釘付けになっていたり、廊下を使いっ走りにされて右往左往している早瀬速人が居るが、至って平和である。
休憩時間はペットボトルのお茶を飲みながら小説を読み、昼になれば姉の居る大学部にテレポートで飛んでいき昼食を食べる。
私は先頭切って闘う能力を持ち合わしていないから、選抜される事も少ない。拠点防衛での投入が主だからだろう。

うん、日常だな。素晴らしいね。

――午後四時。
「真琴さん、今日もそこ良いよね?」
「紅茶用意して貰って、そんなこと言えないでしょ」
唯一、そんな中で変化の兆しなのがこの大男、三浦孝和。私の何処が良いんだろうかね?
嫌味でテレポーテーションを使って女子更衣室に放り込んだ女をさ。何?元は男だろって?そう言う事は言わないの。
「ははは……そう言えば、真琴さんはあまり出撃しないんです?」
「ええ。私の能力が前衛向けじゃないのと、華奢だから」
私も人の事は言えないが、いつもいつもレモンスカッシュを本当に美味しそうに飲みながらこんな事を聞く。
「それに、テレポートの異能力者よ?こういう人間は拠点防衛か殿軍補佐が一番の仕事でしょ」
紅茶を口に含みながら考える、男とこうやって話すのはどれ位だろうかと。
正直、列車事故以前もあまりこうやって男子と話すことは余り無かった。どちらかと言えば女子だったからだ。
「じゃあさ真琴さん、俺とチーム組まない?」
「……何だと?」
思わぬ三浦の提案に、一瞬思考回路が止まる。
「うぉっ……真琴さん姉御モードだ……」
「姉御モードって何よ……ちょっと待ちなよ。私の能力は知ってるでしょうけど、私は貴方の能力を一切知らないのよ?」
強引さは相変わらずだね。この間の一件で少しは見直したが、根本は何も変っちゃいない。
「俺はね、肉体強化の能力だよ」
そのまんまじゃねーか!!見たまんまだろ、私が知りたいのはそれじゃない。
「そのままでしょ!……そうじゃなくてさ、もっと具体的な説明が欲しいのよ」
「俺説明下手だからなぁ……格闘中心の肉体派で、体力が保つ限り全ての近接攻撃に気を纏わして闘うんだ。気に余裕があれば纏めて敵にぶつけることも出来る」
いや、大体その説明で良いだろ……私の立ち位置からこう直接誘われたことは余りないからな。
そう思いつつ三浦の表情を覗いてみると、子どものように希望に満ちた表情を見せていた。
「何でそんなに楽しそうなのよ」
「いや、俺も単独行動が多いから……それに女の子の仲間が出来るのは嬉しいから」
目的は女か、なんて分りやすいんだ。
「考えてみましょ?まぁ……その時が来れば、の話だけれど」
「うおおっ!!やったああああぁぁぁっぁあぁぁっ!!」
割と曖昧な返答だったはずなのだが、もう承諾したと思ったのか咆哮を交えて喜んだ。うるさい!うるさいよ……。
「うるさいっすよ!!黙って席に座ってるっす!このドスケベ!!懲罰台にのるっすか!?」
場違いな咆哮に『外道巫女』で有名な神楽 二礼がガタッと立ち上がり、ズカズカと三浦に近寄って妙な言い回しで注意する。
それにしてもブレザー着ていても分るくらいに揺れてるな……私とどれ位だろうかねぇ……。
と言うかさ、年下にドスケベって言われてるのは疑問に思うな。何をやらかした?
「この間の女子更衣室の一件だって、なんで不問なのか理解に苦しむっす……!」
ああ、そりゃ私がフォローしたからだ。無かった事にしたからな。
「何だ、外道巫女じゃねーか」
三浦の一言を無視するように神楽 二礼は私に顔を向け、
「……はぁ……こんなドスケベの言うことを真に受けちゃダメっすよ星崎先輩」
こう言い置いて元の座っていた席に戻っていった。本当にこの三浦は、好色で有名なんだな……本気で頭が痛くなったよ。
「何だあの外道巫女……興が削がれるなぁ」
「お前がうるさいからだろ!!」
「うおぉ……姉御モードだ……」
だから姉御モードって何だよ、私は怒ってるんだぞ。


――午後七時。
姉と夕御飯を済ませ女子寮に戻ってくると、さっさと浴場に向かって入浴を済ませようとする。ちゃちゃっと終わらせればその分時間が使えるからな。
人が居なければ動きやすいし、湯船も広く感じるから気持ちが良いのだ。
「おっす、真琴ちゃん早いねぇ」
浴室から出てバスタオルを巻いて、脱衣所で髪を乾かすのと同時に風呂上がりのお茶を飲んでいた私に、丁度脱衣場に入ってきた高等部二年B組の友達、『如月 千鶴』が声を掛けてきた。
彼女は違うクラスだが、この学園に来て女子寮に住み始めた頃からの友達だ。
性別が変った直後もあってどう接したらよいか分らなかった私に、千鶴が気さくに話しかけてくれたお陰で、女に馴染むのが早くなった。
「ううーん、羨ましいねぇ……その零れんばかりのオッパイ」
で、千鶴は性格良し、顔良し、社交的、肉体派と良いとこずくめだが、悲しいかなスタイルで思い悩んでいる……芸術的なスレンダーなのだが。
彼女は胸囲が79㎝のAカップとかなり気にしており、プールや海水浴ではワンピースの水着しか着たがらない。
『外道巫女』神楽 二礼の胸を見てため息をついて「年下に負けた、いえ世間に負けた」とぼやいていたのを思い出す。
「はううぅぅ……やっぱ柔らかい……」
両手の塞がっていた私の背後に回り、私の胸をこねくり回しはじめる。この千鶴は子どもの頃からこうだ。
何処で覚えてきたのか知らないが、こうすると大きくなるんだよ、こうすると大きくなるんだよと私の胸をいつも揉んでいる。
だからかどうかは知らないが、いつの間にか私の胸は姉を越えて90の大台に達している有様だった。。
「……そうやって揉むから、大きくなるんだぞ」
「良いよなー、豊満なオッパイ。私に数㎝か頂戴よー」
私の言葉なんて聞いちゃいないが、悪気もないので怒れない。千鶴はそんな私にお構いなしに、一向に私の胸を弄くりながら話を始める。
「ところでさ真琴ちゃん、三浦のエロガキとチーム組むのって本当?」
「誰から聞いた?」
情報が早いな。決定的な返答はしていないし、正直曖昧な返事で抑えていたのだが……。
「『外道巫女』が喋ってたよ。『人が休憩している時にエロガキ先輩が雄叫び上げてうっさいっす。星崎先輩を一生懸命になってナンパしてたっすよ』って」
妙な口調を真似しながらこう説明し、
「あと、あのエロガキも喜び勇んで、真琴ちゃんの名前を駄々漏れしながら歩いていたから……」
と言って締めくくる。あの野郎、人の言葉をそのままに受け取りやがった。社交辞令という言葉を知らないのか……。
「エロガキ、真琴ちゃんに絶対気があるよね」
「多分ね。だけど男としては興味ないから大丈夫よ。軽い奴とチャラ男と馬鹿には興味ないから」
「わーぉ……真琴ちゃんにしちゃ、手厳しいねぇ」
厳しくもなるさ。こうお馬鹿な事ばかりされたら、流石に疲れるよ。
「真琴ちゃん、うちのクラスでもC組でも男子に人気あるよ」
「はぁ……男って単純だからね……オッパイ目当てだよ。柏手君見てたら実感するから。あの人ね、私の胸を見つめてる事が多いんだよ」
こう言い置いて反省する。千鶴は胸気にしてるんだっけな……。
「ああぁーっ!!私もオッパイ有ればなぁ!!人気出るのに!!」
そう言って私の胸を撫で回す。
「ねぇ千鶴、そろそろオッパイ揉むのやめよ?……ほら、お風呂に来る人がみんな見てるし……」
私がこう指摘する頃にはちらほらと浴室に来る人が増え、何気ない会話と共に女が後ろから女の胸を揉むシュールな画に釘付けになっていた。勿論、奇異的な視線で。
「そ…そうだね……そうそう、私が言いたいのはオッパイじゃなくて、チーム組んだら私も参加するって事!」
「三浦の事?……まだ組むかどうかの返事もしてないんだよ??」
「と言うか、三浦の駄々漏れの妄想の所為で、虚が実になっている節があるんだけど……」
ああああああっ!三浦の馬鹿っ!!なんて事をしてくれるんだ!!
これでは、私も同じ穴のムジナじゃないか!!
「私としては、真琴ちゃんがチームを組むって宣言したら喜んではいるけど?恋愛感情は無しにすれば良いんだしさ。エロガキ強いし」
「え?……三浦強いの?」
「あれ?真琴ちゃん、ドスケベの能力見た事無いの?」
「無いね」
知らなかったな、三浦強いのか。私が非力と言うこともあるけど、掌をがしっと掴まれたとき振りほどけなかったしな。
「ただ……何というか、アイツ調子に乗るからなぁ……それさえ無ければかなりのもんだよ」
「調子に乗ると言うと?」
「アイツ、異能の力で気を具現化出来て攻撃力に上乗せしたり、具現化した気を纏めて敵に投げつけることが出来るんだけど、極度のプロレス好きでさ。それを良いことにパワーボムとかボディスラムとかやるのよ……」
男はプロレス好き多いからねー……小学校時代、まだ男だった頃教室の後ろで必ずそう言う遊びして怒られるのが居たっけな……。
「まぁ、あと何人か引き込めばさ、おかしな事言われなくなるでしょ?」
千鶴は組むことに前向きだな。三浦は女好きだし、まあ良いか。アイツのターゲットが私から逸れるかもしれないし。

「ちょっと乗り気ではないけど、千鶴が居るなら。次に何かあった時は一緒について行くよ」

「そうこなくっちゃ!その時は、一緒に行こう、真琴ちゃん……って、これは『星崎真琴チーム』だよ!」
軽い気持ち……ではなかった。だが最初に会ったときの三浦を鑑みたり、よく知っている人が仲間だと心強いというのはある。実際に千鶴は私よりも戦い馴れしているから。
「まぁぶっちゃけ、真琴ちゃんが居れば移動も楽だしね♪」
おいおい、タクシー扱いかよ……。


――午後九時。
「真琴、寮の入り口で貴女のオトモダチが待ってるって寮母さんが」
復習も終わりインターネットをやっていると、姉の星崎美沙がTシャツにホットパンツという姿で入ってくる。
美沙姉は双葉学園大学部一年の教師志望で、弟……違う、妹の私から見ても美人の方だと思う。
スタイルは……最近胸は抜いてしまったが……上から88・60・89とかなり均整の取れたグラマーだ。
「オトモダチ……?男子?」
「男子だってさ、かなりガチムチな」
嫌な予感がする……多分三浦だろ。何しに来たんだ……。
「ふぅん……真琴も隅に置けないね。気がつかない内に彼氏作るなんて」
彼氏……冗談じゃねぇ!!
「冗談じゃない、あんなのを彼氏にした覚えは無い!」
「はいはい。冗談はそれ位にして、早く行かないと。用件が有ってきたのでしょうから」
美沙姉はさらりと話題を躱して私に行くように促す。ネタにしても何にしても堪らない。三浦の彼女だ?冗談じゃない。

「やっぱり貴方か。女子寮まで来て何の用事よ?」
玄関まで来てみると、ハーフパンツと正面にデカデカと『愛ある限り、学びましょう』と書かれた面白Tシャツという、これはまた超が付くほどのラフな格好の三浦が居た。
と言うか、暑いからってそこまでラフな格好で来るのもどうかと思うぞ。
「いやさ、ちょっと勉強分らないから、真琴さんに教えて貰おうと思ってさ」
「……それは、今じゃないとダメ?」
何をしに来たのかと思えば……それを言う機会は昼間幾らでも有っただろ、どうしてわざわざ女子寮まで来るんだよ……。
おい、さっきから女子寮の窓から女子がこちらを見てるじゃないか!……もしかして最悪?
「頭良いの男子にも居るだろ!」
「いや、俺友達少ないからなぁ……」
へぇ……意外だな、こう言うキャラは友達多そうなんだけどな。だからと言って『はい、そうですか』とはいかないけど。
「イチイチ女子寮まで来る事じゃないでしょ……今の時間は寮母さんも目を光らせてるし、駄目だよ」
まぁ当然だよな。ここは女子寮に男子が来ることを結構神経質に見ている節があり、ここで許可を出しても三浦は放り出されるのがオチだしな。
「やっぱりダメかー……残念。後でさ、ちょっと勉強教えてよ」
心底残念そうな表情を浮かべるが、物分かりは良かった。
「ええ、昼間ならね。遠慮してないで教室にでも来ればいいのに……嫌なのか」
「嫌じゃないけど、俺のあだ名は『ドスケベ』でしょ?真琴さんに迷惑掛るから」
自分のあだ名を気にしているのか?……と言うか、本当にコイツは一体過去に何をやらかしたんだ?……まぁ、些細なこととは思うけどさ。
私はあまり教室では先頭切って話をする人間でもないから、知らないけれど。
「そんな事気にす……」

ブオオオオオオオオオオオオオオ………

「何だ!!敵襲か!?」
だが、私が言葉を言い置こうとした刹那、突如サイレンが鳴り響く。だが防災関連ではない、防空警報のような途切れないサイレンである。
この手の警報は、学園自体が襲撃されつつあることを意味する。

《緊急警報!!緊急警報!!ラルヴァの群衆を発見!ラルヴァの群衆を発見!繰り返す……》
《教員・大学部・高等部・中等部各員に告ぐ、只今をもって緊急招集を掛ける。可及的速やかに戦闘準備、各教室に集合せよ!!》
《尚、初等部生徒は男子寮・女子寮からの外出を禁ずる。準備だけ行ない各部屋にて待機せよ》

警報と共に招集を知らせる放送がアナウンスされると、一斉に学園全体が動き出す。
「真琴!!聞いていたでしょ、戦闘準備して待機していなさい!!私は大学部に至急戻るから、テレポートで飛ばして!!」
「わかった!!」
私は姉をテレポートで大学部に飛ばし、私も部屋に帰る準備をする。
「俺も戻らなくては……」
忘れていたよ、三浦の存在を……緊急事態だ、一気に飛ばしてやろう。
「走って戻る余裕はない、男子寮まで飛ばす!!」
だが、三浦は何故か嬉しそうな表情を浮かべていた。これから戦闘が始まるんだぞ?
「……こんなにも早く、組むことが出来るなんて夢みたいだ」
呑気な奴だな……まぁ、私も思わなかったよ。
「校舎で会おう」
私はそれだけ言い置いて、三浦を男子寮に飛ばしてやった。それにしても此処まで学園が揺れる程の警報は実にどれ位だろうか?
多少の小競り合いは学園でもあったが、ここまでの騒ぎではなかった。

そう考えると、正直不安が大きいのだがな……。

2-2に続く


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