【騎士の宿業3 Juicy night library】


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

どこまでも、どこまでも続く、高さは天まで、幅は永劫とも思える巨大な本棚
その巨大な本棚の全ての棚に、余すところなく懸架された書籍
懸架される書籍は、あらゆる生命の営みを反映し、無限に紡がれ、納められる
魂の記録と言い表すことも出来る書籍と、魂が紡ぎだした物語
永劫の彼方まで並び、続き、そして広がる。数多の魂と旋律をその内に蓄える

その場所は、存在を知る者からは、永劫図書館と呼ばれていた


巨大な迷路の如き書架の陰から、姿を現すモノがいる。
それは、物語にもなれず、現実にもなれず、書架に掲げられた書物の旋律から零れ落ちたモノ。
永劫図書館の主はこれを、焼きの足りない肉の如くに読むに耐えない物語、「生焼けの寓話(グリム・レア)」と名付けていた。

グリム・レアは、書架の海を渡り、書架の山を越える。
自身を物語として、あるいは現実として、己を確固たる存在とするために徘徊する。
まるでこの書架の渓谷の彼方に、自らを定義し存在を誇れる場所が存在すると、信じているかのように。

幾重かの断片を取り込み、さらに肥大の一途を辿るグリム・レア。
従来であれば、ここまで大きくなる前に、永劫図書館の中を闊歩する寓話獏(グリム・イーター)により
捕食されるのだが、今はグリム・イーターは形を潜めている。
グリム・レアにとっては絶好の好機。

―――と、なるはずであった。
表を、世界を、飽くことなく求め彷徨うグリム・レアの前に、前触れもなくソレは現れた。


グリム・レアよりも鮮やかに、だがしかして鈍色に輝く、鋼鉄の具足
鈍く輝きながらも、確かな力の所在を感じさせる、黒金の籠手
装飾などはないものの、それでもなお荘厳さを感じさせる、白金の鎧
雄雄しく吼え猛る魔獣を象った、視る者を慄かせる、白亜の兜
翼竜の片翼の如き、人の手に拠る物とは思えない形状の、瑪瑙色の剣
およそ図書館には似つかわしくない、刻々とその色を変える甲冑に身を包んだ騎士の推参。
世界にならんとする寓話の成れの果ての前に、寓話より零れ出たかの如き騎士が立塞がる。

グリム・レアは吼える。
自由を、世界を、自分を求めて、只管猛る。
騎士は正眼にて構える。
煌く刃は、相対するものの世界を否定する。


先に動いたのはグリム・レア。
軟体生物のような姿を、取り込んだ断片に記載された虎のような姿に変えて、鋭い牙で噛殺さんと飛び掛る。
だが、機に先んじたのは騎士。
硬く握り締めた拳が飛来するグリム・レアの鼻っ柱を真正面から捕らえ、グリム・リア虎の顔面を叩き潰す。

永劫にも等しい時間の中でグリム・レアを捕食してきたグリム・イーターに比べれば、騎士がグリム・レアと
相対し屠り続けてきた二年という歳月は、比べるべくもないほどにささやかな時間。
だがしかし、騎士の戦闘能力は、常在戦場とも言える永劫図書館の奥地で異形との戦いを繰り返すことで、
魔神の胚より与えられた尋常ならざる巨大な力を扱えるほどに成長しており、寓話の断片の寄せ集め程度など
歯牙にもかけないだけの実力を備えている。

顔面を醜く潰されたグリム・リアは態勢を立て直すと共にその身と主体を変化させ、次は翼なき龍へと変貌。
龍の咆哮が、騎士を巻き込み、局所的に世界を塗り替える。

グリム・リアと騎士が相対する世界は、青一色に染まる。
そこは、海面も海底もない、唯そこには海しかない世界。
龍の咆哮は誇らしげに海を揺らし―――次に、驚愕、絶望、恐怖に啼く。
自分にとって最適最高の局所世界であるはずの海しかない世界が、飛び込む機を狙いすまし大きく振り放った、
騎士の渾身の一刀により、十戒の如く真っ二つに割れゆく光景を見てつけられれば、無理もないことではある。

海しかない世界は、その世界の主諸共両断され、消滅を余儀なくされる。
元の書架の渓谷には、騎士が一人残るのみ。


―――※―――


「お帰りなさい、ご苦労様。今日も只飯喰らいにならずに済んで、良かったですわね」
「うっさいわ! くっそ~、あと少し、とっととチャラにして帰ってやるわ!」
「さてさて、そう言い続けて早750日。あと少しだけれど、清算は何時になることやら……ふふふ」
永劫図書館(ビブリオティカ・アエテルヌム)の主、自称・唯の少女(アリス)は、手近にある砂時計を手繰り、
面白可笑しく微笑みながら、ヌイグルミの如くモコモコした物体を連れて、サロンに戻ってきた下宿人を出迎える。

「にしても、何処から来るのかも何処にあるかも分からん割に、何時見ても繁盛してんなぁ。一体どこから来るやら
 知らんけども、さすがは何処にでもあって何処にもない場所、ってところか。ただし自称」
下宿人、もとい北神 静馬(きたがみ しずま)は、平穏そのもののサロンとそこに集まる半透明の来訪者を眺めつつ、
司書室の冷蔵庫から清涼飲料水を取り出しガブ飲みして戦闘の疲れを癒す。
全く下品な飲み方ね、と揶揄されるが何処吹く風、一気に飲み干し、アンダースローでゴミ箱へシュートイン。
ビンはからりと音を立て、ゴミ箱に飲み込まれる。

永劫図書館の所在については、事象の因果地平の彼方とも、此方と彼方の境目とも言われている。
図書館の名称については、アカシック・レコードだとか、地球の記憶などとも呼ばれる事がある。
憶測は何処まで合っているかは分からないが、イメージするところは皆だいたい同じなのだろう。

「お、そうだ。ほれチビ、グリム・レアのシッポだ。くえくえ~」
キュウキュウ♪と嬉しそうに鳴くのは、司書室で飼われているグリム・イーターの幼生。
見た目は女児が好みそうな、獏ともアリクイともつかない、もこもこなヌイグルミ、なのだが、
グァヴァッ! バグン! ばり、ぐしゃ、ぼり、むぐむぐ、キュ~~♪
「実態はこんなもんだよなぁ……早く大きくなって母ちゃん楽にさせてやるんだぞ~」
この子グリム・イーターの両親は、静馬が図書館に厄介になる以前、グリム・レア捕食中に突如闖入した
『赤い鎧のデカブツ』にやられ、父は即死、母は生死の境に至るレベルの重症を負い今尚療養中とのこと。
母親には早く良くなって欲しいものである。

「よし、グリム・レアの出が収まったようならサロンに出るが、どうよ?」
「そうね……うん、問題なさそうね。見回りをお願いできるかしら。くれぐれも」
「品位を疑われるようなことはしないでくださいませね、だろ? 分かってるって」
「お客様から苦情が寄せられるようなら、折角減った砂時計の砂が増えることを肝に銘じてくださいませ。
 それでは、宜しくお願い致します」
「あいよー。じゃ、行ってくるわ、オーナー殿」
ひらひらと手を振って司書室を出る静馬と、その後ろをちょこちょこと小走りについて行く子グリム・イーター。
この二年強、ほぼ毎日のように繰り返される光景。


―――※―――


エントランスからサロン、談話室、開架書庫の浅層、閉鎖書庫の施錠確認、そしてまたサロンへ。
永劫図書館に世話になって以来している日課のひとつが、来客の行きそうなエリアの検分である。
「にしても、もう二年か……チビもけっこうでかくなったもんなぁ」
頭を軽くなでてやると、キュウキュウ♪と応える子グリム・イーター。エサをあげてるからか、懐き具合がいいようだ。

あの日から二年。
エンブリオの爆発その他諸々に巻き込まれた衝撃で窓をぶち破って乱入した結果、明らかに笑ってない笑顔で、
修繕費及び治療費を労働で払うようアリスから要求された。
対価の消費度を示す砂時計の砂が落ちきるまでは働くよう言いつけられてから、二年の年月をここで過ごした、
という事でもある。それなりに起伏のある日常ではあった。
「改めて思うが……オレもうハタチなんだよなぁ。元の世界に居たままなら、大学通って、サークルとか入って、
 飲み屋でバカ騒ぎとか、してたんだろうか」
ほんの少しだけ、元の世界、元の日常が懐かしくなる。もしかしたらあったかもしれない、別の未来を思い描く。

キュウ?と首をかしげて子グリム・イーターが鳴く。
「はは、気がついたら歳食ってたなーって思っただけさ。気にすんなって」
サロンで接客不要の見回りをして、今日という日も過ぎてゆく。


―――※―――


そんな平凡な日が続いていた、ある日のこと。
今日という日も、日がな一日見回りだけで終わって、食費と宿代だけ砂時計に上乗せの一日になろうかと思っていた、
その矢先のこと。

司書室に戻ったとき、アリスは血相を変えて、それでも凛とした声を張り上げる。
「シズマ遅い! もっと早ければ楽に対処できたかもしれないのに!」
「いきなり何だぁ!? 事情も分からずにいきなり怒るな! 皺が増えるぞ!」
「黙らっしゃい! そんなことより―――、BBが、出たわ……!」

BB――Blockaded Black
魂の書籍の中、綴り手の抑圧された情念や怨念といった、特定の感情が限界まで凝り固まって生まれる、
グリム・レアの中でも特殊かつ強大な力を秘めた個体。
「真のグリム」手前まで至るも、断片の寄せ集めで在るが故に暴走した、断片の集合体。
アリスが唇を噛むのも頷ける。BBは―――相当に強い。
ただ力で上回れば勝てるような、唯のグリム・レアとは桁違いの力と世界を持っている。

「アレ、かぁ……けっこう厳しいんだよなぁ。つっても、しがない雇われ人の俺は立ち向かわざるを得ないのだが」
「行ってくれるの? 前にBBが出たとき惨敗したから、嫌だと言い出すものと思っていたけれど」
「どうせ嫌だといっても、ヤツの目の前に放り出すんだろ? だったら、腹括って当たって砕けろだ」
「……そう。それじゃあ、お願いするわね。奴はもう、相当な量の断片を食い散らかしているわ。覚悟なさいませ」
「おっけ。じゃ、行ってくるわ。チビ、アリスを頼むな」
キュウ! と威勢よく鳴く子グリム・イーターに見送られ、静馬は書架の深淵に臨む。


静馬はひたすらに、書架の谷間を全力で駆ける。
今ばかりは、触れてもすり抜けるだけだが遠慮はしていた意識体だけの客に、気を留める余裕はない。
アリスがあれだけのことを言うのだから、今回のBBは相当な量の断片を食い荒らしているのだろう。
アリスでも相対することは可能だが、彼女には来客を護るという、自分よりも重大な責務がある。
実体を持っている自分が来客に干渉しても何の影響もないが、来客がグリム・レアに食われれば、
当人の意識体は消滅するか、完全に乗っ取られてしまう。それはつまり魂の死、そのもの。


書架の深淵。
明らかに並のグリム・レアが放つものよりも圧倒的で重苦しく、そして吐き気がするほど粘っこい波動が奔る。
「はっは……マジかこれ。ちょおっとばっかし、きっびしぃんじゃ、ねぇの?」
以前大敗したBBよりも、肌身に感じる圧倒的かつ強大な波動。冷や汗すら止めるほどに恐ろしいものがある。
静馬は抵抗する間も無く、BBが生み出す局所世界に飲み込まれる。


―――※―――


「……こ、こは?」
ぱっと見、元の世界に戻ってきたかのような、目に非常になじむ光景が目に飛び込んでくる。
辺りを振り返れば、夜の暗さに包まれていることを除けば、二年程前まで頻繁に見ていた風景に似ている。
「学校、か? それにしてもこのリアリティ、さすがはBBか……うぉあぁ!?」
響く銃声、弾ける弾丸、抉られる目の前のコンクリ壁。
目の端にマズルフラッシュが見えてなかったら、間違いなく脳天に風穴が開いていた。

慌てて手近な部屋……男子トイレなのが難なのだが、とりあえず身を隠して様子を伺う。
より近くに女子トイレがあったのだが、このBBの生み主は女子トイレに入ったことがないのだろう、精巧に出来た
騙し絵のような書割が入り口にあり、部屋そのものは埋まっている。
他のディティールがどれほど完璧でも、局所世界の発現に巻き込んだ討ち手以外の「知らないモノ」は
世界の内に再現できない、というのは通常のグリム・レアと同じようだ。

「にしても、いきなり銃撃ってくる、っつーのは流石に洒落になってなくね?」
これまでのグリム・レア戦は、未知生命体やらゲームで見たような化け物共とのガチの斬り合い殴り合いが
ほぼ全てであったため、よもやいきなり近現代兵器である銃で撃たれるとは思っていなかった。
だが、警戒心が足りないと言われれば、それまでの言い訳でしかない。
現にここで、一発いいとこに貰って御陀仏しようものなら、アリスやチビに申し訳が立たない。


改めて気を引き締め、敵方の出方を伺う。ロケーションが男子トイレなのは締まらないが、この際仕方ない。
リノリウム張りの廊下を、かつーん、かつーん、よく響く足音を立てて、敵が歩いてくるのが聞こえる。
現状から分かったBBの特徴について、余裕があるうちに整理しておこう。
銃を使う、学校、女子トイレの中を知らない、ということは、つまりこのBBの生み主は、比較的最近に生まれた
男子学生ということに他ならない。
これまでの傾向では、古い書物の階層から沸いたグリム・レアほど熟成が進み強力であることが多かったが、
単体で突出した力を秘めているBBに、発生階層の新古の傾向は適用されないらしい。

「さぁ出てこい! 深夜の学校に巣食う、悪しき魔物め!」
意気揚々と叫ぶ声は、声変わり前後の男子学生。ほぼ予想通り。
(なるほどね。夜の学校、魔物、このシチュエーション……どうやら、学校の怪談ってところかね)
だったら……物の験しだ。
少なくとも話の出来る人間がベースであることは間違いない。ちょっと問答でもしてみるか?


まずは軽く挑発。
『逃げる魔物』の常道に従うのも、『おはなし』をスムーズに進めるのには必要だ。
「嫌だ、と言ったら……どうする?」
「だったら、出てきたくなるようにするまでさ!」
そう言うと、奴さんは銃を構え、声のするほうからこちらにアタリをつけて、銃口を向ける。
「術式展開、爆裂貫通術式封入―――、疾れ、『刺し穿ち砕く鋼鉄の徹甲弾<<ゲイボルク・バレット>>』!」
ク・ホリンだったか?が携える魔鎗 *1 の名を与えられた弾丸は、女子トイレの書割ごと男子トイレの壁を爆砕し、
そのまま屋外まで突き抜ける。
「一撃で相手に30の傷を負わせる」というのが神話に名高いゲイボルクが持つ特性のはずなのだが、何故に特性を踏まえた
散弾や炸裂弾ではなく、貫通性能重視の弾丸なのか全くもって理解できない。 *2
さらに言えば、竜槍で下り飛竜的な何かでもない。これはどうでもいいことか。

流石に煽ったのは失策だったか、立て篭もりに意味はないと即決した静馬は廊下へ飛び出し、弾丸の主と向き合う。
弾丸の主は、未知生命体にグリム・レアと(ついでに言えば静馬自身とも)同じ、自然界には有り得ない赤い瞳を
無駄に伸びた前髪で半分隠し(鬱陶しくないのだろうか?)、自分は見たこともない型だがおそらく生み主はほぼ毎日
着ているであろう制服と思しき服装の上に、これまた無駄にボロっちぃ黒マントを羽織っている。

ちょっぴり、嫌な予感がした。

「やっと姿を現したな、学校に巣食う魔物」
そう言いながら、両腕を振るう。マントが大きく翻り、隠れていた衣服を見せ付ける。
腰には、これまた無駄にでかいホルスターやら予備弾槽が入っていると思しきポシェットが付いた、極太ベルト。
握り拳での打撃力強化を目的とした金属板をパンチングした、ゴツめの指貫グローブを嵌めた手には、
先ほどの弾丸の発射元、開口した龍の頭部を模った装飾を施した、やはり無駄に派手で大振りな銃が握られている。
指は引き金から外れることはなく、安全装置はとっくの昔に解除済みだろう。あるかも怪しいが。

嫌な予感は、増大する。

「おいおい、どう見てもおまいさんと同じ人間……(って言っていいのか?)だろ?」
とりあえずお付き合い。自分の身姿をアピールする。
人に化けた魔物としては、王道的なセリフだろう。
その言葉を聴いた少年は、空いた左手を、手の甲をこちらに向けつつ顔の前にかざし、意味があるのかどうかは
この際横に置いといて、必要以上に、しつこい位に左目をアピールする。前髪で隠れていることなどお構い無し。
「うん、人に化けた魔物はみんなそう言うんだ。でもね、そんなのは無駄さ。そんな嘘だって、僕の持つ
 『真理眼<<レフトアイ=ヴィジョン・オブ・トゥルース>>』を誤魔化すことなどできやしないのさ!」
そのとき静馬に電流奔る―――!!


まるで幼少期にかかったことのない麻疹や水疱瘡に、中高生になってようやく、今更のように罹患したかのような、
出来れば今後の付き合いは一切御勘弁被りたい感覚。
今目の前に『ある』のは、オトコノコならほぼほぼ罹患するであろう病気、そのものでは……なかろうか。

頭痛が痛い。
誤用である事は重々承知だが、今の自分の心境を表すには、きっとこれが一番しっくりくるフレーズだろう。

(うぉぁ……こいつはヤクいわぁ……)
後頭部から広がる鈍痛に頭を抱える静馬を見て、奇抜な装束の少年が声をかける。
「どうしたんだい? まさか、まだ自分が人間だって言い張るのかい?」
……いかん、そういう筋書きの『おはなし』なんだと理解しても、今のはちょっとばっかりカチンと来た。
「人間だから見逃してくれ、なんて言っても無駄だよ? さっきも言ったけど、僕の真理眼は、もう君を捕らえた。
 この先どこまで逃げようとも、君は僕から逃げることは出来ない。そう―――」
こっちの心情を知ってか知らずか、何やらいそいそととマントを翻し、無駄に豪快かつアクロバティックな
仕草の後に、ずびしぃ!と銃口をこちらに向けてくる。


幼少のころ、なんでマスクドライダーの変身動作中に戦闘員が襲わないのか、疑念を抱いたことがある。
襲わない理由は「そういう約束事だから」「そういう脚本だから」「そうする必要があればそうするが、普段は
変身バンクによる場面転換と正義の逆転劇の開始を分かりやすく演出するため」というのが本当のところでは
あるのだろうが、それ以上に納得いく解答を、ようやく得ることができた気がする。
阻止したいのは山々だが、本人が大真面目なので見送ってやらないと痛々しくて、そして可哀想な気持ちで
いっぱいになってしまうんだ……。



ポーズを びしぃッ!と擬音が付く位に決めると同時に、居た堪れなくなって眼を放した隙に宙に向かって
放り投げられていた銃を勢い良く掴み、銃口をもう一度向けてくる。
同時に銃に模られている龍の目が、一瞬きらりと光り輝く。
そして、ヤツは高らかに名乗りを上げる。


「この僕、闇黒銃士(ダークス・シュヴァルツスリンガー)、時坂祥吾からはね!!」
言い放つと同時に、その背に巨大な ド と ン と !! の文字が書かれた書割が現れる。



頭痛が痛い。
ああ、本当に頭痛が痛い。
それ以外に、目の前の光景をどう評価したらいいのかわからない。
語彙が、センスが、足りないからだとは決して思いたくはない。だが自分には評価のしようがない。
なんだその無駄なポージングは? 某奇妙な冒険のつもりか? その所作に何の意味が? *3
なんだその無駄にド派手な銃は? その装飾は本当に必要か? 目が光る必要あるのか?
なんだそのドとンと!!の書割は? その書割には何の意味が? わざわざ出す必要は何? *4
なんだその無駄にボロい黒マントは? どうせ飛行可能とかオートガードとかなんだろ?
なんだその『真理眼』とかいうのは? ただ目がいいだけじゃどうして満足できんのだ?


よし決めた。
元の世界に戻ったら、このトキサカ・ショーゴとかいうやつ、絶対に見つけ出して説教してやる。
そのために、この闇黒銃士とか言い放ちやがったこの Blockaded Black(封印されし黒き書)、殲滅してやる。
静馬の目が、真紅の炎の如く、赤く、紅く、燃え上がる。


ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。