【騎士の宿業4 血戦と帰還 AD2016】


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永劫図書館の深淵より湧き出した、生命持つものの記録から零れた黒く禍々しいモノの塊、グリム・レア。
トキサカ・ショーゴという男子学生の魂の記録の中に眠っていたモノが目覚め、極大進化したそれは、
永劫図書館にとって最も甚大な被害をもたらしうる存在、Blockaded Blackへと変貌していた。
そのスタンスや見てくれは明らかに馬鹿馬鹿しいレベルであるが、しかしてBB、その戦闘力は生半可ではない。
そこに人間の知恵・知性が乗っかることで、以前戦ったBBよりも、普通に考えれば脅威度は遥かに上だろう。

だが―――、相対する北神 静馬(きたがみ しずま)には、不思議と勝利への算段をある程度立てることができた。
それは、相手の思考ベーシックが「男子中高生」である点と、この局所世界空間の特性を知っている点に由来する。


今の自分の役割は、正義の闇黒銃士に追われる悪しき魔物、ということのようだ。
まずは『魔物』らしい格好をして、物語を先に進めよう。
静馬は鎧の刻印が刻まれたメダルを弾き上げ、カバ龍の力を秘めた、玉石の輝き放つ全身鎧を纏う。
「正体を現したな、魔物め! この僕が貴様を倒滅してやる!」
「馬鹿を言え! まずは逃げる! 三十六計なんとやら~ってな~」
「逃げたところで無駄だよ! 術式展開、追尾追跡魔術封入……さぁ敵はあそこだ、妖精たちよ、我が意に従い
 舞い踊れ―――、『妖精の気紛れ狙い撃ち矢<<フェアリアル・ホーミング・ブラスト>>』!!」
わずかに緑色の光を放つ弾丸が龍の口から吐き出され、明らかに普通の銃とは違う、明確に追跡の意図を持つ軌跡を描いて
静馬の背に向かって空を疾駆する。
(むぅ……コイツは、エルマドニックのバレット・ファング・アウトや蛇の鎖鎌みたいなもんか?)
追尾弾の類だというのは、こちらの背中にぴったり付いて来てることからも容易に想像が付く。

さて―――ここからが、化かし合いの始まりだ。

(まずは、止める)
静馬は迫り来る弾丸に向き直り、人差し指と中指を伸ばした右手で弾丸をポイントする。
(とりあえず、まずは様子見。無茶を踏まえて1kmってところかな)
鎧がひとたび、僅かにキラリと輝く。それと同時に、弾丸の動きは止まる。
実際には止めたわけではなく、弾丸の手前にある空間を凝集圧縮し、数㎝の間に1km分の圧縮空間を置いて
弾丸を食い止めているだけ。圧縮された1㎞を駆け抜けない限り、静馬に弾丸が届くことはない。
鎧のベースであるカバ型未知生命体(及びカバ龍)が使っていた、空間圧縮能力の応用である。

だが傍目には
「な、僕の妖精弾を止めただって!?」
空中で静止しているようにしか見えなければ、止まったと判断するのも無理はない。
「でも、その弾丸はどこまでも貴様を追いかける! 逃げられはしないさ」
闇黒銃士は気を取り直し、誇らしげに言い放つ。
その自信満々の笑みに対し、兜の仮面に隠れて闇黒銃士には見えないながらも、静馬はにんまり笑ってみせて、ひとつ尋ねる。
「ほぉう? 『どこまでも』ってのは……」

(いやはや何とありがたい事か。こうもあっさりかかるとは、ね)

「具体的に、一体何フィートなんだ、その銃の射程は?」
「な、何だってぇ!? そんなこと、お前に言う必要は無いだろう!」
「え~、ケチケチすんなよ~? 冥途の土産、ってやつだよ。な? ホレホレ、教えてたもれ~」
「……どこまでもは、どこまでもだ!」
「いやだからぁ、ぐ・た・い・て・き・に、頼むよ~? な? おっとこまえの闇黒銃士さんよぉ!」
「ぐぬぬ……だったら教えてやる! この銃、ドラグブラストルの射程は……ええと、ううん……そう、
 500……くらいでいいかな? そう、500フィートだ!」
(国際交流のためってことで教えてくれてありがとうグリ婆! そして日本人に馴染の薄い距離単位に感謝!)
闇黒銃士が射程を500フィートと宣言した瞬間、弾丸はポトリと地面に落ちる。

さもありなん。
闇黒銃士はこの世界において「ドラグブラストルの射程は500フィート」、換算して152.4m *1 と定義したため、
既に152.4mを駆け抜けた弾丸は、この世界を形作る主体であり支配者である闇黒銃士が自ら定めた定義に従い、
力無く落下せざるを得ない。

―――※――――――※―――

永劫図書館の司書、アリスからの受け売りの話。

グリム・レアが発生させる局所世界でも、基本的に物理法則などは従来と同一のものが適用される。
パートナーを得た「真のグリム」にしか、物理法則すらも捻じ曲げる、完全世界の構築はできない。

グリム・レア自身にとって認識できない・知らない・曖昧な部分は、討ち手の認識を利用することで、
不足部分を補完することになる。それでも解消できない不足部分は、空白余白のまま完全無視される。
グリム・レアと討ち手との共通認識に関しては世界発生源であるグリム・レアの認識が優先されるが、
討ち手しか知らない認識に関しては、グリム・レアに「認識させる」ことで適用させることができる。

独自の完成された世界を構築できる「真のグリム」と区別して、「生焼け」と呼称するのはこのため。
外部から手を加えてやらない限りは、グリム・レアが自ら世界をより完全に構築することはできない。
空を知らぬ土中の生物の旋律から零れたグリム・レアは、自身の世界に自力のみで空を構築できない。

「つーことは、だ。上手くペテンにかけてやれば、局所世界をオレに有利なように作り変えることも可能、って訳だな?」
「理屈の上では、ね。でもね、ペテンにかけることができるのは、それなりの知性がある生き物だけよ? 
 グリム・レアにそんなに知性があるものが居るとは思えないけれど、面白い発想ね。悪くはないわ」

―――※――――――※―――

まずは第一段階、銃器最大の利点であるリーチの圧倒的な差を、完全にではないがほぼ満点の水準で解消できた。
単位も無視して「500㎞だ!」とか言い出したらアウトだったが、トキサカ・ショーゴという少年は、基本的に
根が正直なのだろう。将来世知辛い世の中で生きていく術を、しっかり身に付けて欲しいものである。

(さて次は、精神的優位に立つために必要な物資―――、あとで絶対アリスに悪趣味呼ばわりされるなぁ……)
静馬は階段を駆け下り、まずは学生名簿がありそうな職員室を目指す。
このリアリティから察するに、架空の学校ではなく、トキサカ・ショーゴが実際に通っている学校である事はほぼ間違いない。
となれば、彼の教室があるはずだ。

「往生際が悪いなぁ! でも、僕から逃げられると思うなよ!」
闇黒銃士も、やはりというか何と言うか、マントによる飛行能力を使って高速度で追いかけてきては、
手にしたドラグブラストルとかいう銃に術式を込めて、炸裂弾をばら撒いてくる。
そんな闇黒銃士に、老婆心から静馬は優しく諭してやる。
「『花開き輝く炸裂火炎弾<<ヒュゴス・アルティフィカレス>>』はどうかと思うぞ! 知ってるか?
 その言葉、スペン語で『花火』って意味なんだぜ?」
「それがどうした! そんな苦し紛れの雑学知識なんて何の意味がある!」
絶大なる意味がある。
静馬が「ヒュゴス・アルティフィカレス=花火」 *2 と世界に対する認識の補完を行った時点で、闇黒銃士が放つ
炸裂弾は、悲しいかな、数多の敵を一射で掃討する灼熱の散弾ではなく唯の花火に過ぎない。
所詮、語感と字面だけを重視して振ったルビなど、そんなものだ。現実との乖離が著しいほど滑稽にしか見えない。


目指すは一階……あった、が残念ながら入り口は書割。
どうやら彼は素行不良でもなければ、特に積極的に教師に質問したりということのない学生なようだ。
「職員室」の内部構造に熟知するほどの出入りはしていないらしい。
(名簿が見つかりゃ目検討のひとつも付けられたんだがな……しゃあね、ローラー作戦だ)
意を決して手前に見えてきた階段を登ろうとしたそのとき、
「そろそろ追いかけっこは終わりにしよう! コイツで決める! 術式展開、極大熱核爆裂術式封入―――メ」

(来ると思った! 一縷の疑いも無いほどの自信と確信を持って、絶対に来ると思った!)
だからこそ用意しておいた、必殺の文句を突き付ける。
「ルビ振ったら、どこまでがメで、どこまでがギで、どこまでがドか、ハッキリさせてからにして欲しいな!」
これで、大真面目な彼には悪いが、闇黒銃士の最強術式は封殺したも同然。
「ギ―――だぁぁ! そんなこと関係ないだろう!? くそう、なんでそんな……ええと……」
獄とか炎とか爆とか核とか、語感と字のイメージを元に適当に並べ立てた漢字に、メとギとトとその他のルビを付けたと
容易に推察される、おそらくは闇黒銃士最強最大の破壊力を秘めた必殺の術式弾。
その呼び方・ルビに関して思考を始めてしまった瞬間、この世界に静馬を取り込んでいる限り、その定義付けを
完了させなければ使用できなくなる―――さらに言えば、その単語の傾向上、どう切ってもルビは振れない。
全部まとめてようやくそのルビが振れる言葉を分解した時点で、もう元には戻れない。
「今日」を「今」と「日」に切り分けても、読みやルビまで「きょ」と「う」に分けられないのと同じことだ。
冷静になって考えればただのペテンなのだが、そんな事に気付く余裕は今の闇黒銃士にはないようだ。

―――※――――――※―――

トキサカ・ショーゴが夢想した闇黒銃士の物語に、自分で構築した「物語」という名の世界運営システムの
不足部分や綴り手の知らない事実をフルに悪用したペテン師と戦うようなシナリオなど、あるはずもないであろう。

この手の話では、どれほど敵味方の双方が強大だろうとも、「物語」という絶対の戒律から逃れることは叶わない。
どれほどの巨悪であろうとも、ノートの紙を直接切り取ったり、書かれた文字に修正液を使ったり、勝手に文字を
書き換えたりするような攻め方を使うようなものは居るはずがない。
噛み砕けば、ページを開いた瞬間そのページに修正液をぶちまけて攻撃する敵はいない、ということだ。

たとえ念じれば星を砕くことができようとも、拳一つで大陸を割れようとも、術式で時間すら支配できようとも、
「絶対勝利」の約束の下に動いていようとも、悪は必ず滅ぶ定めであろうとも、正義は必ず勝つ定めであろうとも。
書かれた書面を消しゴムなり修正液で消してしまえば、消し後が残る更地のノートの紙面が残るのみ。
ページを切って捨ててしまえば、何も残らない。データであろうとDeleteしてしまえばそれまで。
猫キックに犬アタック、おかんの掃除機クラッシャーに敵うバッテリーバックアップなどありはしない。
最近の子供には、「おきのどくですが ぼうけんのしょは きえてしまいました」の衝撃は理解できまい。

絶対無敵の勇者でも、超絶美女のヒロインも、どす黒い怨念を秘めた大ボスも、消しゴムや修正液、あるいは
ページそのものを無しにして「物語」から消えてしまえば「なかった」ことになる。

「グリム・レアを倒す」ということは、「物語の外、読者の立場で物語を破壊する」行為に他ならない。
同じ戦い方は完全世界を構築した「真のグリム」には通用しないとアリスは言っていたが、なりそこないを
退治するのであれば「消しゴム」一個で十分だ。

―――※――――――※―――

最強の術式弾が封じられても、尚続く騎士と闇黒銃士の追走劇。
ルビ振りのペテンにかけてから、そこそこに時間が経つ。

闇黒銃士はフラフラになりながら、鎧騎士がとある生徒の机に鎮座する、彼にとって一番馴染みの教室へ入る。
既に満身創痍。こんなはずではなかった、という思いが、闇黒銃士の表情からはありありと伺える。
「お、やっと戻ってきたか。夜空の空中散歩はどうだったよ?」
「何をしたお前ぇぇぇぇ! さっきから変な問答ばっかりしてきやがってぇぇぇぇ!」
闇黒銃士がキれて吼えるのも無理はない。
「そのマント、何ノットで飛べるの?」
「(文句たらたらの末に)50ノット *3 だぅわぁあああああああ!?」
という問答にてボロマントによる飛行は突如制御不能となり、ピンボールの球の如くに床・天井・壁に次々と
激突する羽目になる。挙句、窓ガラスを突き破り、ネオン煌く夜空へdive into the skyまでしてしまった。
そうでなくとも、自慢の愛銃の弾丸が思うほど飛ばなくなったり、撃った弾が花火になったり、センス溢れる
カッコイイ弾丸の名称にルビ切り分けて振れよと言われてしまったり……とにかくこの『魔物』と戦い始めてから
闇黒銃士の全てがおかしくなっている。

「だいぶお疲れのご様子ですな、闇黒銃士殿?」
「くそう、誰のせいだぁ!」
主にペテンにかけた静馬のせいであるが、しかし闇黒銃士自身のせいでもある。
息せき切って、体中ボロボロにしながらも、必死に走ってここまで戻ってきた闇黒銃士を讃えるように、
静馬はすっと左手で黒板を指差してやる。
「ま、いいや。ご苦労さん。とりあえず、学生ちゅうもーく!……いや~、一度言ってみたかったんだよね、コレ」
「今度はなん……だ……ああああああああああああああ!?!?!?!」
黒板に、白とピンクのチョークにて、でかでかと書かれた相合傘。反対側については今はここでは伏せておきたい。

闇黒銃士自身を除いた他の生徒机よりも、再現度の高い生徒机。
教卓に投げ捨てるように置いてあった出席簿の、表紙に貼られた座席表。
この二つを照らし合わせれば、中学生レベルの思考ベーシックを持つBBを半狂乱に陥れるなど、造作もない。
(流石にここまでやるのは大人気ないとは思うが、そろそろヘコんでくれないと困るんでね)

「何でだ! 何で消えないんだよ! ちくしょう!」
半泣きのまま自慢の愛銃を投げ捨て、黒板消しを両手に相合傘を消しにかかるが、黒板表面に50m分ほどの
圧縮空間が据えてあるため、相当力を入れてやらないと、黒板と黒板消しが触れ合うことはない。
やがて、黒板を消すことを諦め、項垂れる。
「ううう……くそう、許さないぞ、許さないぞ魔物めぇえええ!」
号泣極まる闇黒銃士の右目は尚一層紅く、灼熱の溶岩のごとく怒りに煮え滾っている。
「絶対に許すものか……今こそ、『獣魔鬼眼<<ライトアイ=ダーク・イーヴィル・ハウリング>>』の封印を開放して、
 お前を倒してやるぅぅぅ!」

血涙を流し吼える闇黒銃士の右目から莫大なる力の奔流が溢れ出し、闇黒銃士の肉体を包み込む。
その身は、取り込んできた断片やグリム・レアと結びつき、本来の闇黒銃士の物語における変身体の規格とは
おそらく異なるものであろう、つぎはぎだらけの化け物へと変貌する。
その身姿や主体における闇黒銃士の占有率が低下するにつれ、克明に描かれていた校舎は色褪せ、崩れていく。
内から溢れ出た数多くの物語が相互に融合、あるいは反故を繰り返し、ひとつの形へ定まろうとしていた。


刻々と姿を変えていく闇黒銃士だったモノを見やりながら、静馬は気を引き締めなおす。
ペテンにかけて精神的揺さぶりをかけるのはここまで。
ここから先は、膂力と胆力が全て。命を賭けた、本当の地獄だ。
「ようやっと、内部の全面開放、か。強過ぎる我に固着するあまりに総体への変貌がなかなか出来ないってのも、
 困りもんだなぁ……おかげで前は死に掛けたけどな」
グリム・レアの本質は、断片のひとつひとつが具象化した「分体」ではなく、漏れなく全てが同時に具象化した
「総体」にこそある。総体となった状態で討たない限り、グリム・レアを倒すことは叶わない。

「でもま、ひっじょ~~~に理解しやすい思考パターンのおかげで助かったわ。おかげでオマエの『我』を
 ブチ壊すことができたからな。グリ婆の勉強会と人生経験にハ、本当に感謝ダ」
数多くの断片を食い漁ったグリム・レアはそのまま断片同士で融合、あるいは反故にし合いひとつの物語へと
昇華することで「総体」へ近づこうとするが、単体での「我」が強烈かつ強力なBBでは、断片をいくら食らっても
「分体」の維持を可能としている。

「さて、ト。こっから先ハ、ガチの取っ組み合イダな」
他に染まることのないほどの強烈な個性、強烈な物語といえば聞こえはいいが、その実は単に馴染めないだけ。
その「馴染めない」ことがBBの強さであり、不足はあるが単独での世界を形成せんとする力を形成維持するために
取り込んだ断片の力を行使できる。BB分体の欠損も、取り込んだ他分体を具象化させないままに補填に使える。
だが、BBとて本質はグリム・レア、BB分体の強力な支配権を揺るがせ、総体への変貌を促すことで、ただ単に
強大な力を持っているだけのグリム・レアに矮小化させることが出来る。

「さテ、久々に、溜まっていタモノをを、吐き出スとシマスかネ」
仮面に隠した静馬の顔は、内側より迫り来る、吐き気にも似た破壊衝動を押さえ込むのに耐えかねていた。


―――※―――


局所世界から闇黒銃士の物語は消え去り、新たに形作られた世界は、意味や具体性のない有象無象がひしめき合う、
いわば「物語の墓場」とでも言うべきもの。
その世界の中央に存在するのは、先ほどまで闇黒銃士であった、物語の成れの果て。言ってみれば、闇黒魔獣、だろうか。
かろうじて龍馬とでもいえるような容姿を形成しているが、全身の造形にまるで統一感がなく、歪そのもの。
龍のような獅子のような、歪な頭部。その眉間には
「ハハハハハァ!! ドウダ!! ミタカ!! コレガ ボクノ シンノ チカラダaaaaaaaaa!!」
統制の取れない力に完全に飲み込まれ、魔性そのものの赤黒い瞳を烈火の如くに輝かせ、醜く変貌し面影も僅かな、
闇黒銃士だったモノの顔が浮き上がっていた。
「やレヤれ……ようやク本気モード、か。こうナッチまったタもウ、力技デ叩きツブスっきゃなイよなァ」
静馬は嘆息し、
「精神てキニ負ケたつギハ、物理的にヘコまシテヤるよ。つか、そろそろ暴れナイと、ココロが死にそウなンダ。
 手前の都合でワルイが、付き合っテクレ。ツカ、ブッコロシテヤルカラ、オトナシク シネ、クソガキ」

―――anfang behamah
―――avvento Marchocias

宝玉の輝きを放つ全身鎧が濁り始め、深遠の淵を思わせるような、青黒い闇色へと変貌する。
唯の装飾であるはずの兜の魔獣、その顎が閉じ、地鳴りのような咆哮を上げる。

―――※――――――※―――

力の対価は、それぞれである。
得てして、その対価は力の大きさに比例するか、あるいは特殊になるかのいずれかである事が多い。
静馬はエンブリオ内部でプテラノドン型の刃と、カバ龍の鎧を得たが、その双方ともが相当の対価を
要求するものであることは、想像に難くはない。
単純に言えば、当時の静馬しかり、相当に鍛えていたとしても、どちらか一つでも扱うのは困難である。
最悪、血反吐を吐く程度では済まない可能性も十分にあった。

今の静馬が二枚のメダルを使用するに足る力を得るに至ったのは、エンブリオにて見つけて上着に仕舞った、
赤黒い球体の作用によるところが最も大きいといえる。
セルグライデとの激戦、エンブリオの爆砕、異空間転移と立て続けに心身ともに疲弊の限りを極め、満身創痍にて
絶命寸前の静馬に対し作用したソレは、ヒトをヒトの身にありながら、未知生命体に近しい存在へと近づける
魔性の産物、真の意味でのエンブリオ(魔神の生態胚)。
「神の座」とセルグライデが呼称していた物体と、本質としては同じものである。

真エンブリオの作用と「神の座」の精神侵食波動の影響により、静馬の肉体は確実に侵食された。
それでもセルグライデやアルファリードのように明確な狂気に走ることがなかったのは、体質的な精神汚染への
耐性があったか、あるいは「生きて帰る」という強い想いが均衡を保つ作用を与えたか。


いずれにせよ真エンブリオの侵食により生き長らえた静馬だが、精神侵食は完全に抑えられたわけではない。
セルグライデの「神との邂逅と回帰」、アルファリードの「究極存在Ωの探求」と同様に、その内には
「敵対存在完全撃滅」の衝動が眠ることになる。
他二人と違いそれが通常の精神状態ではないものの、平時であっても、さらには能力を振るうたびに、
徐々に鎌首をもたげ、静馬の精神を緩やかに侵す。

アリスが静馬にグリム・レア討伐を命じたのは、単に狩られてしまったグリム・イーター夫婦の代打ではなく、
破壊衝動の発現にもっとも近い戦闘という環境で、静馬の心身を鍛え上げるという側面も持ち合わせていた。
グリム・レアが局所世界を展開すれば、その中でどれだけ静馬が暴れようとも図書館そのものへの影響を
抑えることが出来る。その上、敵性存在を打倒することで破壊衝動を抑え、戦闘経験が能力の増幅を促す。
アリスの目論見通りに静馬は心身ともに成長を果たすも、それでも今尚爆弾を抱えていることには変わりはない。

目下の対策は唯一つ。
破裂しそうなときは、問題のなさそうなときにガス抜きしておくに限る。


闇黒銃士は、物語の存在であっても、間が悪かった。

―――※――――――※―――

歪な姿の闇黒魔獣の悲鳴と、地獄侯爵の咆哮が入り乱れる。
地獄侯爵は、鎧の基になったカバ型よりも、主人格である静馬よりも、遥かに優れたレベルで空間圧縮を繰り、
闇黒魔獣を完全に圧倒する。
瞬間的な圧縮及び現状回帰への反動を断続的に行うことで、地獄侯爵は空を翔け、宙を舞う。
「沈む前に足を上げれば沈まない」理論で、圧縮空間の足場を伝い、虚空を駆ける。
闇黒魔獣は飛び回る地獄侯爵へ攻撃を仕掛けるが、口より吐き出す灼熱紅蓮の炎は周辺の空間ごと極限まで
圧縮され粉砕、肉弾戦を仕掛けるべく突進しようにも、空間の壁と絶対的な速度差に阻まれる。
さらに言えば、闇黒銃士という強烈過ぎる個によって形を潜めていた断片たちが、ここぞとばかりに己の存在を
主張し始めたため統制が全く取れていないことも、魔獣にとっては大きな痛手、地獄侯爵にとっては絶好の好機と
して作用ていた。仮に完全に統制が取れていたとしたら、この戦いもワンサイドゲームではなかったであろう。

地獄侯爵の攻撃は、苛烈を極める。
踏み潰しにかかる右前足を、丸ごと空間圧縮にかけ磨り潰す。鋭利な爪を供えた手甲でわずかにでも傷を作れば、
その中に圧縮空間を打ち込み破裂させる。支えを失い動きが緩慢になったところに、周囲の空間を連続して
圧縮、回帰衝撃波を多重発生させ、全身を余すところなく打ち据える。

高々と宙に舞い、そのまま地面に激突する闇黒魔獣。
眉間の元闇黒銃士の顔も、絶望に染まり、精気を失う。

この物語は、激昂から力を暴走させた闇黒銃士は、作為的に力を暴走させた魔物によって討ち果たされる。
そういう終幕を迎えることに、彼自身疑いの余地を無くしていた。
闇黒銃士が魔獣化してから、地獄侯爵の圧倒的なまでの力に屈するまでの間、およそ30分。


だらしなく開いた闇黒魔獣の口内が弾け飛び、頭部は爆砕、周囲に頭部とその中に納まっていたモノが飛び散る。
辛うじて原型を留めていた元闇黒銃士の顔面部は地獄侯爵の足元に落ちるが、地獄侯爵の気を引くこともなく
至極自然に踏み潰される。
首から下の肉の塊は、地獄侯爵が飽きるまで、斬られ、砕かれ、潰され、磨り潰される。


破壊的情動の収束。
鎧の色彩が深淵の蒼から再び鮮やかになり、吼え猛る魔獣の顎は装飾に戻り、仮面が現れる。

退廃的で何もない世界から、薄暗い書架の森へ、景色が変わる。
「やぁぁぁぁっと、終わったぁ……」
静馬は鎧を解除し、疲労感たっぷりに嘆息する。
「さってと、んじゃ帰るか。いや~、今日はよく寝れそうだわ~」
明かりの差すほうへ向けて歩き出す。


背後に長く長く伸びる影だけは、まだ、地獄侯爵の輪郭を残していた。



―――※―――



BB騒動から一夜明けて。

「というわけで、砂時計の砂が落ちきったのだけれど」
何がというわけなのかは分からないが、そういうことらしい。
「ふ~ん、そっか。じゃ、そろそろ帰るか」
聞かされたほうの反応も、至極あっさりしたものだった。

「ホント、世話になったな。今こうして生きていられてマトモでいられるのも、アリスとチビのおかげだな」
「あらそう? ずいぶんと殊勝なことを言うのね」
「事実だしな。そこは否定しないさ」
子グリム・イーターを抱きかかえて撫でてやりながら、静馬は穏やかにアリスと対している。
アリスも、この際だから何だ、という雰囲気である。一人には慣れている、ということらしい。

「それはそうと、貴方に餞別。ひとつは私から、もうひとつは、もう来なくなった御得意様から」
そう言うアリスは、司書室の戸棚から、小さな包みとほどほどの大きさの包みを取り出し、静馬に手渡す。
「ふむ、くれると言うなら貰わない道理はないな。そいじゃ開けるか」
小さな包みからは、懐中時計のようなもの、もう一つの包みからは、コートが出てくる。
「時計か、こりゃ?」
「私の知る限りでもっとも高名で、精巧な機構を作れる時計技師にお願いした特注品よ。大事になさい。
 その技師の最高傑作群かそれに類するものを、と最初は思ったのだけれど、貴方には必要なさそうだし、
 もっと貴方自身に役立つものにしておいたわ。その時計は、貴方が帰り着いた世界の時を刻むと共に、
 貴方に眠る煉獄の侵食の具合を示してくれるわ」
「ほう……どれどれ」
蓋を開ければ、今は微動だにしない針が、綺麗に零時零分零秒を刻んでいる。
その背後では、深淵の淵まで覗こうかという闇が、歯車の隙間から垣間見える。
「どう使うか、はそのうち分かるわ。くれぐれも、みっともなく人を捨てて獣に堕ちて朽ちないよう、お気をつけあそばせ」
「おう、さんきゅ」
チェーンストラップを首にかけると、懐中時計はちょうど静馬の胸の中央で揺れる。
拍動が、時計の深淵に染み入るような気がした。

次に静馬は、もうひとつの包み、コートを広げて袖を通してみる。
着心地は抜群にいいが、間違いなく、夏場には着れない。
「で……このコートは何だ」
「言ったでしょう? 御得意様から貴方への餞別よ。偶然か必然か、貴方が居ない時や討伐に出ている時に
 よくいらしていたから、貴方は会っていないけれど」
「会った事もないのに贈り物、ねぇ……ありょ? 手紙が入ってる。どれどれ……」
手紙を開き、眼を通す。

魔女より騎士へ 暗き森に匿う姫を託す
願わくば、混迷の世に、力に屈し泣く者達の盾たらんことを
願わくば、荒廃の世に、魔獣の喉笛掻き切る剣たらんことを

といったことがサンスクリット語で書いてある。
「まったく、誰宛のつもりだよ……サンスクリット語の読み書きできる奴、俺の知り合いで数人しか知らんぞ?」
本当にまったくだ。こんな所にまで出入りしてたのか、あの人は。
「確かに渡したわよ」
「おう。ハンコ持ってなくて悪いが、な」
コートの襟を正して、裾を翻し……何かに引っ張られる。
「……気持ちは分からんでもないがな、チビ。すまんが放しちゃくれんかな?」
キュウウ! キュウキュウ! 子グリム・イーターは力いっぱいコートの裾を噛み、首をぶんぶんと振って抵抗する。
「よしよし、いい子だ、だから、な? 聞き分けてくれよ。また会いに来るし、そんなことで泣いてたら強い子になれないぞ?
 男の子なら、強くならなきゃ」
「女の子よ、その子」
「……すまんかった」
別れ際に初めて知った、衝撃の事実。

「仕方ないわね。シズマ、貴方もこのくらいあしらえる様にならないと、将来苦労するわよ?」
容姿からは窺いようもない、酸いも甘いも知り尽くしたような重みのある言葉を静馬に投げつけると、
「いくら我侭は女の特権とは言え、我侭と駄々を捏ねるのとは違うのよ? 聞き分けなさい」
子グリム・イーターに、厳しくも優しく、躾けるように言って聞かせる。
キュウ… まだ未練はあるようだが、子グリム・イーターはコートの裾を噛み閉めていた口を離し、縋る様に
静馬をじっと見つめる。
「チビ、元気でな。アリスも」
「ええ、貴方もどうぞお元気で」
キュ~~~!!

アリスとチビに見送られて、静馬は永劫図書館を後にする。
仕事を与えられてから、どれだけ押しても引いても、念のため横にスライドさせたり持ち上げてみても
動かなかった玄関扉が、軽く手を添えて押すだけでいともあっさりと、ベルをからんと鳴らして開く。

最後に一度、背を向けながら手を振って、後ろ手に扉を閉める。


―――※―――


二年ぶりの、図書館以外の世界。
眼前に広がる光景は
「……なんも、ねぇな」
此方にも彼方にもない、というのは比喩でも何でもなかったらしい。
本当に、図書館以外何もない。
光も影もなく、唯一あると断言できるのは自分自身と足場のみ。

さらに言えば、今出たばかりだというのに、永劫図書館はもう既に遥か彼方。

さて、どこに行こうか。
目印も何もない。せめてアリスに聞いてからにすれば、と思ったが、もう既に永劫図書館は影も形もない。
当てもなく、とりあえず歩いてみるより他無い。


突如感じる、視界がブレる感覚。
グリム・レアの局所世界に取り込まれるときに似た、世界の法則が乱れたような、感じたことのある人間としか
共有するのは不可能であろう、違和感と既視感が入り混じるような感覚。
境目にないべきものが突如存在することになったから、何処でもいいので存在可能な場所へ弾き出されるのだろう。
そう結論付ければ、あとは何処へなりと形ある世界に飛ばされるのを待つだけだ。


世界の安定を、黙して待つのみ。

感覚が安定した、その瞬間、迷うことなく鎧を装着する。眼前に広がるのは、吐き気を催す気色悪いオブジェが立ち並ぶ世界。
(Secondary Core Syndromeとか何とか言ったか? ヒトでありヒトでなく、魔であり魔でなく、己の定義が
 分裂し隔てられる特殊症例。相の子とか融合したって経緯から罹患するケースが多いが、純正ヒトが
 発症するケースを見るのは初めて、とかアリスも言ってたか。まぁあの爆砕の状況から生きてた時点で
 もうヒトじゃなくなってたのかもな)
だとしても、肉体は如実にヒトであることを主張する。
ヒトの入り込む余地の無い世界の大気は、ヒトの呼吸に適してなど居ない。
全身くまなく覆い包む鎧と仮面の濾過機能がなければ、表面と肺からドロドロのグズグズになっていただろう。
さらに言えば、純度100%一切の掛け値なし、ディスカウント率0%のパーフェクトアウェイ。

警戒してか、微動だにしない周囲の敵性存在。
その中から一匹だけ、こちらに向かって猛ダッシュを仕掛けてくる。
がっぱりと大口開けているところを見ると、どうやら食う気らしい。
「またこのパターンか……」
どうやら、事あるごとにデカブツに追われるのが宿縁らしい。
まぁ、唯一の救いは、以前のように追われていて様にならないカバではなく、それなりに様になる、
西洋的な、というかイングランドの騎士の紋章のようなフォルムのドラゴン型未知生命体であることか。
「大概こういうのってのは―――」

逃げるではなく、立ち向かう。
剣を具現化させ手にするが、向けたりはしない。
そのときに、備える。

静馬はおろか、金剛仁王でも丸呑みに出来そうなほどの開口。
内側には、針山地獄の如くに鋭い歯が隙間無く並び立っている。
地面ごと静馬を内に収めようとする巨龍の口に、今が好機、静馬のほうから果敢に突入する。
最前列の歯が両断せんと迫る前に内に潜り込み、なおも続く歯という名の刃の束を、削ぎ落とし、切り倒しながら
なおも奥へと向かう。

剣歯の山を踏破したところで着地、喉に到る手前で立ち止まった静馬は、上を見やる。
「―――内側から潰したほうが、早い」
足を持ち上げ、足の裏の空間を圧縮。足場代わりにして跳躍、現状回帰の勢いを加味してさらに跳ね上がる。
繰り返し、さらに加速度を増し、駆け上がる静馬の狙いは、ただ一点。
「このまま、頭蓋をぶち抜く!」
剣を突き立て上顎付根の骨を斬り砕き、突き立てた件を機軸に機能中枢が収まる空間へ突入。
剣をメダルに戻し機能中枢を直接空間圧縮で削り取り、再度剣を具象化させ空間断絶の刃で機能中枢をスライスし、
機能中枢そのものを完膚なきまでに破壊する。

(口から入って眼から出る、か。目から鼻へ抜ければ縁起もよかったんだがな)
濁り始めた水晶体が詰まった目玉を切り分け、再び外に出てみれば、
「さっむ!? なんだこの銀世界は!?」
周辺を見回す。警戒は解かない。見つかるのは、いかにもな黒いローブに身を包んだ……あれはヒトか。
となると……元の世界に返ってきたはいいものの、未知生命体を召喚するようなことが許容されるような世界になった、
というのは好意的な解釈だろうか。

黒ローブどもが、付き従えていた小型の未知生命体を警戒態勢にさせたり、よく知ってる異能の力の輝きを
身体の随所に発動させている。
さらに言えば、そのローブの一部、胸や両肩にあるところから考えれば所属組織のシンボルマークなんだろうが、
そのマークには嫌な意味で覚えがある。
嫌な予感がするが、とりあえず聞いてみるか……とりあえ英語で、だろうな。
「おいそこのアンタら、ロリコ、じゃなかった、セルグライデって知ってるか? そのマークの発案者だったと
 思うんだぅおぁ!?」
小型の未知生命体を従えていた黒ローブが、こちらへの攻撃を指示したようだ。
勢い良く吐き出された火球が、静馬の脇を掠め、雪原に突き刺さる。
その背後では、おそらく自分が出てきた事がイレギュラーだったのだろう。打ち合わせと思しきやり取りの結果、
「ラルヴァ(というのはこの未知生命体のことか?)を狩る者は敵、故に見敵必殺」という結論となったようだ。
他の黒ローブも、とりあえず殺りたい盛りなのか、即座に獲物を用意して臨戦態勢に入る。
流石は、あの糞神父の犬といったところか。
「そうかいそうかい、サッスが、あのロリコン糞野郎の子分ドモ、分かりやすくて助かルわ。そいじゃいっちょ、
 回帰祝イニ大暴れとイコウカネェ!」


白銀の渓谷に、地獄侯爵(マルコシウス)の咆哮が響き渡り、木霊する。


―――※―――


A.D.2016 7月、北欧某国。
99年以降、凄まじいまでの天候異変により、99年以前以上に激しい寒風が吹きすさび、一年中変わらず
落ちる事のない雪化粧を纏う、奥深い山間地。

EU圏統合軍・対異能者戦用部隊特別強襲班、彼らに与えられた任務は、山中に広大な儀式場を秘密裏に設営した
「聖痕」と呼ばれるラルヴァ狂信団体の一派に対する、儀式場設営の妨害と儀式の阻止を目的としたゲリラ作戦。
そこで、彼らは想定外の規模となった激戦の中、ありえない光景を見ることになる。

彼らの誤算、まず一つ目は、特別強襲班同様に儀式に対し何らかの干渉を行うために機を窺っていたと思われる
オメガサークルの戦闘員と諜報員が混じっていたこと。
彼らとの戦闘までは想定していなかった統合軍は、日本より本作戦のため急遽呼び寄せたクラウディウス女史の
能力と指揮が無ければ、おそらく初期想定を遥かに上回る打撃を被っていたことだろう。
ここまでなら、まだいい。まだイレギュラーケースで済まされる範疇である。

だがしかし、二つ目は、そのような、生易しい事態ではなかった。
金剛石の皇女が誇る世界有数の戦場支配力が無ければ、おそらく全滅以外の道などありえなかったであろう、
完全なまでのイレギュラー。クラウディウス女史が異変発生と同時に全軍全力を持って即時撤退の指示を
出していなければ、間違いなく“アレ”と接触、奮戦空しく部隊は壊滅となっていただろう。
さらに言えば、作戦事項内にて想定されていた雪崩の発生についても同時に回避できたことになる。

特別強襲班以外、聖痕・オメガサークルの両陣営に対してもクラウディウス女史の撤退勧告は放たれていたと
非公式の記録にはあるようだが、勧告を無視した彼ら及び不完全ながらも発動した儀式により発生した多数の
ラルヴァは全て、惨殺、という言葉ですら相応しくない状況だったという。大雪崩を掘り起こして出てきた現場は、
氷結した血の花が咲き乱れる、血肉骨肉の園と化していた。

検証レポート、現地の状況、現場の人間から直接の聞き取り調査、その他数多くの調査が行われた。
その結果を纏めた戦況報告書と共に、ラルヴァ研究家会議からのレポートが添えられ、提出されることになる。
そのタイトルは、以下のとおりであったと言う。

             Report of the new Larvae
Darkly-blue-blazing only-one armament, "Knight" 
           - Arrival of 189th One-Off -



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