【この夏は双葉水族館へ行こう】


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 双葉水族館、この夏リニューアルオープン!!
 海浜公園より歩いて五分。
 リニューアルオープン記念として深海のラルヴァ展を開催中。
 双葉水族館へみんなで行こう!!

 いつもと変わらぬ放課後の醒徒会室。だが今は加賀杜紫穏と早瀬速人そして龍河弾の三人しかいない。
 急ぎの仕事もラルヴァの襲撃もなければ、彼等とて普通の学生。それぞれが思い思いに放課後を楽しみ、三人もトランプで盛り上がっていたりした。
 そんな醒徒会室に醒徒会副会長である水分理緒が、やや声を張り上げて入ってきた。
「龍河さん、これについて聞きたい事があります」
 そう言って水分は龍河に今月の広報誌・月報双葉を突きつける。
「おお、もう読んでくれたのか。今回は夏休み前って事で少し気合いの入った出来だぜ」
 夏休み向けに双葉区内のレジャー施設の情報やイベント情報。
 他にも双葉学園と友好関係にある海外異能力者育成機関と協力したツアー情報なんてものまでまとめられていた。
「龍っつぁんてちゃんと広報の仕事してたんだねー」
「俺も知らなかった」
「お前らな……」
「そんな事はどうでもいいんです。それよりもここに書いてある事は本当ですか」
 水分が指差した部分は水族館の紹介ページで、お土産コーナーにて人魚製のアクセサリー販売と書いてある。
「人魚のアクセサリーはとても美しく大変貴重なものです。そう簡単に手に入るようなものでは無いと思うのですが」
 人魚は海に住むラルヴァの一種で、一般人にも昔からその存在が噂され、多くの伝承も残っている。
 人魚の中にも様々な種類がいる見たいだが、基本的には人間の方から危害を与えない限り友好的な存在だ。
 また貝殻や珊瑚、魚の骨などを主な材料としてアクセサリー作りを趣味として持つものが多くおり、友好の証としてそれを人間にプレゼントするものもいる。
「この前知り合った人魚から貰ったんだよ」
「知り合うなんて、相手は人魚ですよ、一体どこで」
「一週間くらい前かな、水泳部と野球部の海野球に助っ人で呼ばれた時だ。紫穏も一緒だったはずだったよな」
「あの海浜公園での時? 龍っつぁんは水泳部の助っ人でアタシは野球部に呼ばれた行ったけど、あの時に人魚となんて知り合ったの」
 加賀杜も一緒になって尋ねてきたので、龍河はその時の事を話し始めた。


 海野球を終えた後に龍河は試合中に無くなったボールを探しに無駄とは思いつつボートを出していた。
 その日に無くなったボールは五球。内三球は龍河が豪快にぶっ飛ばしたもので。残り二球は加賀杜が軽快にかっ飛ばしたものだ。
 ボールの飛んでいった方へと探してボートを進めていた龍河だったが、どこからか言葉にならないような悲鳴を聞く。
 さらにボート進めて防波堤のあたりまでやってくると、そこには潮流の影響か少しゴミが集まっていた。
 そんな場所に一人の少女が捨てられた釣り糸やビニール袋に足を取られてもがいているのを見つけた。
 溺れているのかと思い龍河は急いで少女の元へと近づくと、彼女の脚が魚の尾のような形をしているのに気が付く。
「ま、待ってろ、今助けてやるからな」
 多少は何か思う事もあったが、目の前で困ってる彼女を放って置く訳にはいかないと、龍河は両腕を変化させると力尽くでゴミを引き裂く。
 大小様々なゴミが浮ぶその場所を酷い有様などと思った龍河だが、ゴミの中にボールの一つがあったのを見て、広報誌に海は綺麗にの一文をいれようと密かに決める。

 ようやく自由の身になった少女は理解不能の言語で龍河に話しかけてきた。
 一応お礼を言っているようだが龍河にはその言葉が理解出来ず、彼女の方も話していて言葉が通じていない事に気が付くと突然発声練習を始める。
「アーアー、これでアたしの言葉わカりますカ?」
 だんだん声色が変わっていきようやく言葉が通じるようになると、少女はまた嬉しそうに感謝の言葉を並べた。
「助けてくれてアりがとうでス。もう三日もアのままだったンで半分諦めてたんでスが最後まで希望は捨てるべきじゃなかったですネ」
 龍河が聞くより先に少女は、自分が人魚である事やなぜここまで流れて来たのかなどを教えてくれた。
「誰にも言わないで材料集めに行ったのは失敗でした。アなたが来てくれて本当に助かりました、是非お礼をさせて欲しいでス」
「困った時は~って言うだろ、気にすんな。それに海を汚したのはどう考えても俺たち人間なんだし」
「それじゃアたしの気が収まりません」
 そう言った彼女は、ちょっと待ってて下さいと告げて海へと潜ってしまう。
 暫くして再び龍河の前に現れた彼女は大きな袋を持っており、袋の中には大量のアクセサリーが入っていた。
「これ、アたしがつくったんでスけど、良かったら貰って下さい。お姉ちゃんたちみたいに上手くつくれなカったんで、アまり良い値がつかないカも知れないでスけど」
「良い値?」
「アたしたちのつくるアクセサリーは人間たちの間では人気がアるってお姉ちゃんから聞いた事がアりまス。だからせめてものお礼でス」
「まぁよくわからんが、ありがたく貰っておくぜ」


「それでどのくらいの価値があるかなんてわからねぇから、金太郎に協力してもらって丁度広報誌で取材してた水族館の方で販売することになったんだ」
 急な事だったから広報誌に宣伝スペース空けるのが大変だったと、龍河は笑いながら語った。
「海野球……まさかとは思いますがあの海浜公園でやったんですか?」
 双葉区には幾つかの公園が存在するが海浜公園で通るのは一カ所だけだ。
「あそこは遊泳禁止なんですよ。あなたがたも醒徒会の一員なんですからあまり決まりを破るような事は控えて下さい」
「ハハハ、……すまん」
「ごめんなさい」
 乾いた笑いを浮べ後、龍河は反省したように頭を下げる。その後ろで一緒に加賀杜も頭を下げていた。
「今回は特別に目を伏せてあげます。その代わりと言ってもあれですが、その人魚のアクセサリーを見せて貰えますか?」
「ん? 理緒もこう言うのに興味あったのか。今日は丁度持ってきているからなおやすいご用だ。そうだ、一つくらいなら好きなの持って行ってもいいぜ」
「本当ですか」
 水分は嬉しそうに言った。もしかしたら最初からそれを期待していたのかもしれない。
「これがその貰ったアクセサリーだ」
 そう言って龍河は大きめの鞄の中からけばけばしい色使いの髪飾りを並べた。
「ウミウシをイメージした髪飾りだそうだ」
「へー綺麗だねー」
「うんうん」
「ほ、他にはないんですか」
 楽しそうに髪飾りを見る加賀杜と早瀬の二人と違い、少し顔を引きつらせながら水分が尋ねると、龍河は鞄から別のものを取り出してきた。
「もちろんあるぞ、ほらこれフナムシを模したブローチだ」
「こっちも元は貝殻みたいだけど良く出来てるんだな」
「ねぇこのちっさいのなんか動いたりもするよー」
「おぉ、そいつは本物みたいだな。どこでまざったんだ」
 龍河は笑いながらすくうようにフナムシを捕まえる。
「速人、一っ走りしてこいつを海辺に帰してきてやってくれないか」
「合点承知」
 手渡されたフナムシを両手で包み込むように持つと、早瀬は醒徒会室を飛び出して海へと走っていった。
「あ、あの、これで全部なんですか?」
「今日持ってきたのはこれで全部だな、他のはもう水族館に運んじまったからな。さぁ、どれでも好きなの持って行ってくれ」
 露天商のように両手を広げて進める龍河に促され、水分は比較的色と形の落ち着いたウミウシの髪飾りを手に取る。
「ありがとうございますね」
 何とかお礼の言葉を口にしたが、その後はがっくりと肩を落として醒徒会室を出て行くのだった。

 結局後日、水分は水族館のおみやげコーナーにて桃色珊瑚の髪飾りを自腹で購入したとかしないとか……。




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