【danger zone6~黒白黒~hei bai hei~前編③】


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【danger zone6~黒白黒~hei bai hei~前編③】


 遠隔操作でゲートが開く、幇緑林が馬上に揺られ、2km弱の連絡橋を渡った後に現れた、橋の終点に位置する"校門"と呼ばれる人工島側ゲート、幇緑林の来訪を事前に告げられていた校門警備の風紀委員によって、人工島のゲートが開けられ、幇緑林は生徒課長の執務室に通された。
 校門番をしていたのは、普段は風紀委員会棟地下の電算室に詰めている十六課のカシーシュ=ニヴィン、英国英語と少々の漢語がわかる彼女が応対すると、幇緑林は発音の訛りは強いが、会話には充分なヒンドゥー語で応え、ニヴィンを驚かせた、遠い異国で片言ながら母国語を聞けば、誰でも頬が緩む、彼女は幇緑林が騎乗していた馬にも敬意を払い、生徒課まで丁寧に案内した。

「はじめまして、わたしが生徒課長の都治倉喜久子です、遠方からのお越しに心より感謝いたします」

 深々と頭を下げる生徒課長の前に立つ幇緑林、生徒課長執務室まで招かれた彼女は直立したまま、欠片ほどの愛想笑いも浮かべない。
 騎乗したまま校舎の廊下を歩き、学生課まで同行してきた馬は執務室前の廊下で待たされている、骨太で険悪な形相の蒼馬は、馬特有の呼吸音や体臭は全くない。
 喜久子より三十センチほど背の高い幇緑林は、片手の拳をもう片方の手で包み、目の高さに差し上げると、軽く振った。

「初次見面《チュヅチェンミン》 都治倉喜久子先生」(はじめまして、都治倉喜久子さん)

 かつて倭寇が落ち延びた場と伝承され、後に大陸浪人と呼ばれた日本人移民が住み着いた、遼東半島の日本人村で長く暮らしていた幇緑林は、ほぼネイティヴな日本語と完璧なアメリカン・イングリッシュを喋ることが可能で、上海に今でも残る租界と呼ばれる外国人居留区で覚えた幾つかの言語でも、多少の会話は出来る。
 しかし、彼女が自身の判断でその必要を認めた時以外は、いかなる国に在っても、北京官話に独特の訛りを有した彼女の母国語しか喋らない。
 幇緑林は、自身が赴く双葉学園東京校の生徒課長が、北京官話を概ね理解することを既に事前の調査で確認している。
 喜久子は、目の前で頭ひとつ下げず、表情すら変えない幇緑林が、充分な礼を尽くしていることは知っていた。
 依頼すべきことは既に書面で伝えている、喜久子は無意味な前置きを嫌う相手に対して自分なりの礼節を守るべく、生徒課長としての仕事を始めた。

「では、さっそく、あなたが生徒として学園内で動けるよう、生徒手帳を発給させて頂きます、身分証明書を拝見させていただけますか?」

 喜久子は十年くらい前のiphoneをうんと薄くしたような形状を有する、白ロムの電子生徒手帳を出すと、データ読み込みとダウンロードを行うリーダーライターと接続する。
 幇緑林は、先刻羽田空港で提出した物とは別のパスポートを出した、名前と国籍は同一ながら、経歴や年齢は全く異なるもの。
 政府さえもが雇い主から一転して敵に回ることがある、入国の経緯や時期は曖昧にしておくのが、彼女が今までの活動から学んだ当然の備え。

「え~と、幇緑林《パン ルーリン》さん、十八歳、サンフランシスコのチャイナタウン在住、無職」

 偽造の痕跡などどこにも無い、アメリカ合衆国と日本国による査証が捺された紺色のパスポートを眺めながら、喜久子はパスポートの顔写真と目の前の幇緑林に、交互に目を合わせながら聞いた。

「…今回はこの身分《カヴァー》を使うということでよろしいかしら?」

 幇は表情を変えないまま、何一つ返事をしない、そこから了承の意思を読み取れない人間は、彼女と仕事をする資格は無い。

「あなたのカヴァーについては、既に何種類か存じ上げていますが、一体あなたは…どこのどなた?」

 彼女が双葉学園に来るのに先がけ、日本のみならず、複数の国の政府より丁重な応対を求められた喜久子の、試すような口ぶり。
 日本に来て以来一度も変わらなかった幇緑林の表情が、ほんの少し緩んだ、阿修羅像の美貌を宿した女性は、ごく微かに笑った。

「我是《ウォアシー》、満州国兵士《マンヂュウグゥオ ビンシー》」(わたしは満州国の兵士)

 望む国の籍を得ることを可能とする一人の女性が帰属を主張しているのは、彼女が産まれる以前に消滅した王国だった。

 目の前に立つ女性の、自分には決して入り込めない領域に触れた喜久子は黙って頷き、学生証の入力データ画面を異能の階層に切り替えた。

「では、あなたの異能とその発動アイテムを拝見させていただきましょう」

 再び鉄面皮に戻った幇緑林は、黒絹チャイナ服の長い上衣の裾を払うと、下に穿いたズボンの腰より、細身な彼女に不似合いな道具を抜いた。
 無言のまま、大きな栗材のデスクに鉄の機械を置く、エル・アール航空のスタッフ、そして日本の入国管理局が見てみぬふりをした物。
 モーゼルC96
 百三十年ほど前の武器。
 拳銃と短機関銃、騎兵銃、自動小銃、短距離狙撃銃までもを兼ねた、現在のカービン銃やPDWの始祖となった銃、馬上から片手で撃てる銃でありながら、旧式火薬の拳銃や単発小銃より長い射程と強力な破壊力を持つ。
 幇緑林が自身の名と称する、緑林《ルーリン》と呼ばれる集団、前世紀初頭の大陸馬賊が愛した武器。
 満州の馬賊達は、騎馬の活動域である大陸中北部の広い平原に居る限り、馬とモーゼルがあれば戦車にも複葉戦闘機にも敗ることはないと称していた。

 喜久子はパスポートのICチップをスキャンし、彼女の異能と目の前の銃器のモデル名を入力した後、データを生徒課長権限でロックした。

「幇緑林《パン ルーリン》さん、あなたを大学部の一年生として学籍登録させていただきました…双葉学園へようこそ」

 幇緑林は生徒課長が目線を伏せ、恭しく差し出した電子生徒手帳を、直立した姿勢のまま左手で受け取り、表情を変えず、中も検めずに右手でチャイナ服の内ポケットにしまった。
 喜久子は幇緑林が左利きであることを知っていたが、彼女の右手が中世以前の欧州人に多く見られる多指症で、ほぼ同じ形の親指が二本生えていることに気づいた。
 彼女が特に隠す様子もない右手の親指はそれぞれが独立して動き、チャイナ服のホックを外す作業と襟をめくる仕草を同時に行っている。
 喜久子はデスクの上、自分に銃口を向けた位置で無造作に放り出されたモーゼルを見ながら、幇緑林に告げた。

「この学園には銃を使う異能者が、もう一人居るんですよ…あなたのよく知っている方です…そろそろ来る頃ですね」

 その異能者には新顔が来ることは何も伝えていない、しかし彼女独自の情報網、何よりガンファイターの本能が、感知しないわけがない。
 そして、こんな時、いつだって本人より早く現場にやってくるのが何かは、決まっている。
 銃声
 二拍子の轟音と共に、生徒課長執務室のドアに次々と穴が開いた、ドアの向い側に位置する胡桃材の壁に、ゴム弾ではない高硬度の実弾が次々と食い込む。
 まず何より先に弾丸がやってきた。
 元よりこの部屋は、窓も壁も、無論ドアも特別製で、拳銃弾や異能攻撃くらいでは到底歯の立つものではなかったが、数日前、執務室で退屈をしていた喜久子は、動画サイトに権利者の目を盗んで一本まるまる上がってた映画「コマンドー」を見て、すっかりその気になり、一人きりの職場であることをいいことに、サヴァイヴァルナイフを振り回してヘイヘイカモンカモンと遊んでたら、耐弾性を重視した結果、表層のコーティングは柔らかい素材で出来た強化ドアにバッテンの傷をつけてしまった。
 現在、生徒課長執務室を守っているドアは、設備部から怒られることを恐れた喜久子が慌てて大工部まで行って、処理業者行きの廃材の中から、缶コーヒーの差し入れと引き換えに貰っきてこっそり取り替えた、ごく普通のベニヤ製ドア、取り壊し後の建売住宅用ドアだった。
 幇緑林は次々と弾丸が貫通し、破片を撒き散らすドアの前まで悠然と歩くと、丈の長いチャイナ服の裾を翻し、穴だらけになったドアを蹴り開ける。
 柔軟な腰と長い足、平均的な成人男性の二倍はありそうなリーチで、幇緑林の履いていた黒い布靴は重く鋭い刃物と化した。
 長身痩躯な彼女の、ウェスト51の細腰からは想像出来ない強烈な蹴り、重いドアが蝶番ごと吹っ飛び、真っ二つに割れて廊下に転がる。
 ドアを穴だらけにした二拍子の撃ち手は廊下と繋がったドアではなく、反対側にある窓をブーツで叩き割りながら室内に突っ込んできた。
 分厚いガラス片と共に、執務室に飛び込んできたのは革のブーツ、金髪とテンガロンハット、銀色に輝くレミントン・デリンジャー。
 双葉学園風紀委員長山口・デリンジャー・慧海が、愛銃のデリンジャーで、対戦車機関砲に使われるタングステン徹甲弾を乱射しながら、十二階の窓から執務室に飛び込んできた。
 少し前の彼女ならこういう時、高比重で焼夷効果のある枯化ウラニウムの弾丸を使っていたが、放射性物質による有害性があるという、ウソかホントかわからない情報を最近よく聞くようになり、有害性云々よりイメージが悪いので、効果は同一ながら製造コストは百倍近いといわれるタングステン弾に転換した、価格差ほどではないにしろ発現には苦労させられたが、今ではだいぶ慣れた。

 生徒課長執務室に弾丸を撃ちこみ、飛び込んできたのは、日本国が擁する双葉学園という武器が発射可能な、最も強力な弾丸だった。

 樹脂ガラスより重く高価いが耐弾性のある有機防弾ガラスは、そのスペックを越えた弾丸で穴を開けられると、蹴りで割れるほど脆くなる。
 規格品の防弾ガラスには対応する弾丸によって等級が定められているが、生徒課長執務室のガラスは到底、拳銃弾で撃ちぬけるものではない。
 しかし、防弾ガラスに不可避の性質として、一度被弾した個所と全く同じポイントに寸分たがわず被弾すれば、大口径ライフルにも耐える防弾ガラスが拳銃弾であっさりと貫通する。
 それに最も適しているのは、軟体である人体へのダメージより硬体への貫通性を重視した徹甲弾と、精密な連射が可能な銃。
 慧海は同じ方法で、拳銃弾では歯が立たない軍用のプレートキャリア式防弾ベストを撃ちぬくのを得意技としていた。
 その特性を応用すれば、意図的に弾丸を防弾チョッキでストップさせ、胸全体を着弾ショックで叩き潰す方法も可能となる。
 十二階のガラスを撃ち割って突入してきた慧海、日本人小学校高学年女子の平均的な体格を有する少女は、人間が4tトラックに撥ねられた時とさほど変わらぬ勢いで室内まで飛んで来て、窓とは向かい側の壁に叩きつけられた後、何度かバウンドする。
 強烈な脚技でドアを蹴り破った後の幇緑林の動きは、音速の弾丸にタメを張る慧海の激しい動きとは対照的にゆっくりとしたものだった。
 窓から室内にエントリーしてきた慧海の背後、窓際の位置まで歩く、慧海が銃声と破壊音を撒き散らし、突入の勢いで壁に叩きつけられた慧海自身がゴキっという音を発てる中、幇が発したのは、金糸で太陽と陽炎《フレア》の刺繍が入った、黒いシルクのチャイナ服、丈の長い上着とズボンが発する、微かな絹ずれの音のみ。
 突入が窓から行われることはとうに承知していた、派手な動きでドアを蹴り破ったのは、室内戦での相手の動き先を限定させるため。
 ドアを背に室内を掃射しようと思ってた慧海は、そのドアが消滅した事に空中で気づき、体を捻りながら頭からドア横の壁に跳びこんだ。
 ガラスの破片にまみれた慧海が背後の幇に気づいて、銃口と視線を同調させ素早く向き直る頃には、幇はデスク上のモーゼルを左手で拾い上げていた。
 そのモーゼルは安全装置《セイフティ》も左利き用だった、改造品ではない、モーゼル社の製造ラインで作られ、ドイツ軍に納入された正規のサウスポーモデル。
 モーゼルの工場が連合軍の空爆で壊滅した今となっては、もう手に入らない銃。
 幇緑林はホルスターを持たない、モーゼルはいつもチャイナ服のズボン、ラガーシャツのロープ襟のように強化されたウェストに差している。
 執務室の壁際でガラス片にまみれた慧海は左手を軽く振ると、彼女の異能である無限弾丸の能力で、デリンジャーの弾丸を発現させた。
 同時に、幇緑林は自身の右手を軽く一ひねりした、身長の割に小さな手、ほっそりした指は長い、多指症で二本ある親指を軽くスナップさせた。
 慧海が二発の41口径弾を発現させるのと同時に、幇はモーゼルの30口径弾を発現させた、十発が鋼のクリップで繋がっている。
 幇の右手が弾丸を纏めたプレス鉄板のクリップを、モーゼルの上部にある、排莢口兼装弾口に流しこんだ、二本の親指が装填とボルト押さえを同時に行う。
 加工精度の高い銃器特有の、焼き入れをされた鋼が発てるカチっという音と共に、十発の弾丸がモーゼルの固定弾倉に装填された。
 幇緑林がクリップを銃から抜き捨て、コッキングボルトを前方に滑らせて初弾を装填するのとほぼ同時に、慧海はデリンジャーに二発の弾丸を填め、中折れ銃身を閉鎖していた。
 幇が使っているのは、映画や小説、アニメによく登場する、着脱式のボックス弾倉とフルオート機構を備えた第一次大戦以後のモデル、M712全自動拳銃《シュネルフォイヤー》ではなく、それより前の時代のモーゼル、固定弾倉にクリップで補弾する、C96と呼ばれる戦前の旧式モデルに、モーゼル社がM712のフルオート機構を追加した、新旧折衷の特製銃。
 馬賊に愛された旧式モーゼル、弾倉と機関部の構造が単純堅牢なC96のほうが重量のバランスに優れていて、かつ、彼女の弾丸発現能力との相性もよかった。
 そして、彼女がいままで経てきた生存のための戦いは、一瞬で十発の弾丸を叩き込むフルオートのファイア・パワーを必要としていた。

 二発の41口径弾、十発の30口径弾が生徒課長執務室を蹂躙した、熊を一発で射殺するモーゼル弾が、弾痕というより爆発痕に近い傷を十個、横一列に刻み、執務室の設備を次々と吹っ飛ばす、どんな特殊弾頭を使っているのかは想像もつかない。
 喜久子は最初の銃声、その直前の風切り音が聞こえた時点で、さっさとデスクの影に隠れていた、さして貴重な物はこの部屋に置いていない。
 硝煙が室内に充満する中、二発の弾丸を撃ち尽くしたデリンジャーを持って、同じくモーゼルを十発全部撃った幇と相対した慧海は、はじめて口を開いた。

「…black sun…」
「…火竜小姐《ファーロンシャオジェ》…」

 慧海と幇は、昔からよく知っている互いの通り名を呼び合った。
 そして空っぽの拳銃を片手に持った慧海は、そのまま幇に向かって突進した、身長百八十一センチの幇に、百四十二センチの慧海が体当たりした。
 大概の敵より身長や体格で劣る慧海の、格闘における最大の武器は体当たり、海兵隊時代に、格闘技の教官ではなく、ハイスクールではフットボールのスターだったと自称する異能学生から教わった、肩骨で胸郭を突き上げるショルダーチャージ、この技で現役の序二段力士を失神させたこともあり、チャージで折れた肋骨に掌底を撃ち込んで、身体強化異能者を殺したこともある。
 慧海は体当たりのストライクポイントを左右の肩にスイッチせず、そのまま体の正面を向け、幇緑林《パン ルーリン》にぶつかっていった。

「ルー!ルーじゃねぇか!」

 慧海は幇の胸に飛び込んだ、細いウェストを抱え込まれた幇は、自分の鳩尾ほどしかない上背の慧海を抱えて左右に揺らし、くるくる振り回す。
 大人と幼児ほどの身長差がある二人の少女は、一人は右手、もう一人は左手に拳銃を持ったまま、しっかりと抱き合った。

「やっと来たな!ルー!遅かったぞ!ずっと待ってたんだぞ…逢いたかったんだぞ…ルー…すごく逢いたかったんだぞ…」
「慧海、我小星《ウォアシャオシン》 慧海」(慧海、わたしの小さい慧海)

 慧海は自分のおデコくらいの高さにある、幇の細腰に抱きついたまま、離れようとしなかった。
 幇緑林も、慧海が絶対人には触らせないテンガロンハットをずらすと、零れた金髪の香りを確かめるように、慧海の頭をかき抱いた。

 山口・デリンジャー・慧海の能力、ラルヴァを殺す性質を付与した弾丸を発現、形成できる、無限弾丸の異能。
 その力を以って、ラルヴァや異能者と戦うための心身を備えた人間に受け継がれる「魔弾の射手」の力は、カンザスの異能名門デリンジャー・ファミリーだけが独占しているわけではなかった。
 中国の東北部、かつて満州と呼ばれた一帯で生まれ育った、ある少女に発動した異能もまた、同一のもの。
 無限弾丸の異能と、それによって異能者やラルヴァ、あるいはそのどちらでも無い者を狩る彼女の能力は「手槍鬼《シーフォングィ》」と呼ばれた。
 日本語に訳せば拳銃使いという意味、鬼の名の通り、必ずしも義の側には立たない、主に犯罪集団の手先となったガンマンの呼び名。
 そして彼女が生まれた時から側にいて、以来、育ちも老いもしない若馬「紅鬚《ホンホー》」は馬の形を有したラルヴァ。
 その機動力において馬を遥かに上回るスティード・ラルヴァは、常に幇緑林と共にいた、契約や忠誠ではない、幇緑林と紅鬚は、互いの実力を認め合った同格の仲間。
 かつて伝説中の存在として人々に崇拝されていたスティード・ラルヴァは、この少女が世に生まれ出でた瞬間、共に生きる者となった。
 物心ついた時から自らを黒き者と名乗っていた幇緑林が、そのスティード・ラルヴァの真名とした紅鬚《ホンホー》もまた、大陸を脅かした悪しき者共の通称。
 ヴァイキングの系譜を持つ大陸北方民族であるルース人に端を発する遊牧民、紅鬚から国土を守るため、秦の始皇帝は万里の長城を築いたが、紅鬚は二十世紀になってなお、コサックやパルチザンと名を変えながら国家と民衆の畏怖を受ける者で在り続けた。
 一九七〇年代から八〇年代、ソヴィエトと中国が幾度かの紛争状態に突入した時、中華人民共和国首脳部が最も恐れたのはソヴィエトの核ではなく、精強で残忍な北方民族系の傭兵だったと言われ、その脅威は現在もなお継続している。

 硝煙の残る執務室、ドアの無くなった入り口から、ステイード・ラルヴァ紅鬚《ホンホー》が、その名前には似合わぬ蒼黒の顔を出した。
 執務室の内外を弾丸が飛び交う中、悠然と廊下で待っていた紅鬚は、室内に慧海の顔を認めると歩み寄り、慧海の背中に鼻をこすりつける。

「ひっきゃっきゃっきゃ!くすぐったいよ、HO-HOも元気そうじゃねぇか!」

 デスクの下から出てきた都治倉喜久子は、自分のオフィスを全壊させてくれやがった幇緑林と慧海、そして紅鬚の触れ合いに水を差した。

「よろしければ、あなたたちの関係を、わたしにもわかるように教えていただけませんか?」

 しばらく幇の体にブラ下がるように抱きついていた慧海は、掴まっていた幇の体からピョンと飛び降りると、右の肩を突き出した。
 慧海は自分の開襟シャツの袖をめくる、上腕部には彼女のパーソナルマークである炎を吐く竜、パフ・ザ・マジックドラゴンのタトゥー。
 幇緑林はチャイナ服のホックを外す、肩には黒い恒星に黒いフレア、中華圏では災いもたらす物とされる、黒い太陽の刺青、テレタビーズに出てきた、ちょっとキモい顔つきの太陽。
 二人のタトゥーには同じリボンが彫ってあった、アメリカ海兵隊の兵籍番号と、所属部隊名NintyNiner's
 それだけで充分だと言わんばかりの笑顔を浮かべる慧海の横で、幇は一言だけ補足した。

「朋友《ポンユー》」

 慧海も話し始める、説明の必要を感じたというよりも、自分にとって最も誇らしい友人を自慢したかった。

「コイツはルーリン・パン伍長、あたしの海兵隊時代の戦友よ、ルーはあたしが背中を預けられる、世界中でただ一人の異能者」

 アメリカ西海岸と西部砂漠地帯、中米の一部においてラルヴァ対策を管轄する海兵隊の異能者スクールチーム"99er's"で、日本の醒徒会に相当する最高意思決定者集団、三銃士《マスケッター》の一人を務めていた慧海。
 そして、もう一人のマスケッターとして、慧海の相棒を務めていたのが、このルーという、ユーラシア出身の女性伍長。
 出自の詳細は不明、海兵隊に来る前は、カナダの騎馬警察隊に在籍し、ラルヴァ対策の専従官としてカナダのラルヴァや異能者と戦っていたが、後にアメリカ統合軍参謀本部の求めで海兵隊へと出向、そのまま伍長任官し、当時海兵隊に居た慧海とチームを組んだ。
 幇の居る生徒課長執務室に向け、真っ先に弾丸をブチこんだのは、慧海なりの再会の挨拶、言葉や視覚よりも確かな形で、慧海が何も変わることなくここに居ることを伝えるには、撃つのが一番いい。
 もしも幇を名乗るニセモノならば、自分の親友を騙った奴を生かしておく積もりはない。

「資料では知ってはいましたが、この目で見るまで信じられませんでした、三銃士の二つの銃が揃う場を、この日本で見られるなんて」

 アレクサンドル・デュマの小説「三銃士」は、原語であるles Trois Mousquetairesを直訳したもの、作中での三銃士の活躍は主に剣戟によるものだったが、幕末にマスケット銃が普及した日本では三銃士とは銃を使う者だという誤解が多い。
 三銃士の本場たるフランスから、日本と同じくらい物理的に遠い距離にあるアメリカはといえば、もっといい加減だった、何となく強いのが三人居れば三銃士、って具合に安易に呼ばれている。
 マスケッターの正式な訳は「銃士隊」だが、歴史書よりもデュマの小説で有名になった単語は、概ね三銃士を示す物と認識されてる。
 そしてアメリカ西部最強と言われた三人の異能者は、共に銃を使う者、北米大陸の砂漠地帯を縦横に駆け抜けた三つの銃と三人の猛者は、アメリカおよび周辺諸国の異能関係者からは、三銃士《マスケッター》と呼ばれている。
 無論、アメリカの他の地域での異能者組織では、その最高位メンバーの呼び名は各々異なっていて、ニューヨークを含めた東海岸を管轄する海軍異能者部隊のトップ集団はTOPGUNと呼ばれている。
 海軍航空士の精鋭部隊と同一の名称は、紛らわしくすることでの守秘効果と、カッコイイ名前をつけることで、人の集まりにくい異能者部隊の頭数を充足させるため。
 戦闘機に乗るTOPGUNに挫折しながらも、異能のTOPGUNで活躍する異能者も居るらしい。
 アメリカ中西部および南部《ディープサウス》とメキシコの一部を管轄する陸軍の異能者部隊にも醒徒会相当の組織はあり、慧海はその名称を知らないが、能力者は皆、戦闘よりも情報関係の異能者で占められていると聞く。

 喜久子は、調査報告書の中にある伝説じみた戦績でしか知らない二つの銃、今、自らの手の内に在ることが信じられない二人の異能者を見ながら呟いた。
「あのアメリカが自ら銃を手放すなんて、大丈夫なんでしょうか?」
 慧海は幇を見上げた、慧海が海兵隊予備役に編入し、双葉学園に転校した後も、アメリカ西部でラルヴァと戦った三銃士の無表情な顔、返答はそれだけで充分だった。

「もう、そういう段階じゃねぇんだ」

 一人の異能者の手に余る強力なラルヴァが現れた時、より高位の強い異能者が戦うという、漫画のような展開は、子供が漫画で読んで笑うだけでいい。
 一人で駄目なら二人、二人が必要な強敵なら万全に備えて三~四人の小隊を何隊か編成する、アメリカ西部には既に千人単位の異能者を即座に派遣できるシステムが出来上がりつつあった、そして、高位の異能者ほど強いとは限らない、異能者を指揮する人間は、強い戦闘者である必要などない。
 かつての日本では、強き侍と強き侍が戦い、足軽や鉄砲方は専ら侍の手柄を助けていた、彼らは強者であって強者ではない、一番槍を侍に譲る者。
 それは分担による能率化と相互支援を導入した赤穂四十七士や、高杉晋作の寄兵隊、大村益次郎の薩長日本国陸軍創設で覆されている。
 上に行くほど戦闘力が強くなる"漫画の軍隊"からの脱却、それが海兵隊異能者部隊における最強者、三銃士《マスケッター》の目標だった。
 そしてアメリカ西部はもう、戦闘者と指揮者の育成と運用、何よりも交戦のみに依らぬラルヴァとの相互接触が進み、ごく少数の強者を必要としない段階に達しつつある。
 慧海も幇緑林も異能軍人であって物売りではない、各々の国には、その成熟度に応じたやりかたというものがある、自分自身の能力を求められた日本で、そのシステムまでもをセールスする気は毛頭ない。
 しかし、日本の双葉学園がアメリカ西部でシステムを形成した三銃士の内、二人を招いたということは、ペンタゴンに大勢居る、最新戦闘機や駐留基地をいかに他国へ高価く売りつけるかを本業とする、軍服を着た営業マン達にとって日本は"脈あり"の顧客なんだろう。
 海兵隊の異能者二人は、そのための試供品のようなものなんだろうか、慧海も幇も、自らの力を発揮するに都合いい立場に不満はなかった。

「これなら、もうひとつの銃、あの大きな銃がここに集い、日本に三銃士《さんじゅうし》が揃うのもそう遠くないかもしれませんね」

 喜久子の言葉に、慧海は「ひぎゃっ!」と声を上げ、その場で飛び上がった、横に立っていた幇にしがみつき、ガクガクブルブルと震えている。

 三銃士《マスケッター》の一人、現在たった一人の銃として海兵隊に残って、部下と共にシステム完成までのアメリカ西部を守っているもうひとつの銃は、山口・デリンジャー・天海《あまみ》、アメリカ海兵隊では、アミ・デリンジャー特務曹長と呼ばれる、海兵隊異能者部隊の実戦指揮官。
 双葉学園の醒徒会長に相当する、海兵隊の三銃士で最も大きな銃は、山口・デリンジャー・慧海の、実の姉だった。
 幇緑林は、慧海が安心して背中を預けられる唯一の異能者、そして天海は、慧海がこの世で最も背中を晒したくない異能者。
 慧海より二つ年上、金髪翠眼の慧海とは似ても似つかぬ、市松人形を思わせる日本的外貌の美乳美女で、身長は慧海より二センチほど小さいが、常にブラ下げているイングラムM11短機関銃は一秒間に十九発の無限弾丸を吐き出す。
 ある日本人が渡米時、六歳の天海がイングラムを掃射し、ラルヴァを倒すのを偶然、目の当たりにしたが、彼は後に漫画家として屍姫という作品を書いたらしい。
 姉よりでかい妹ってのが個人的に萌えポイントなのでこの設定にしたが、正直、慧海の身長や体格はブラクラのレヴィくらいあってもよかったかな、と思ってる。
 山口・デリンジャー・慧海の最大の弱点、慧海が名前を聞いただけで震え上がった姉、きっと本人と会ったら、腰を抜かすか小便を漏らすか、おそらくその両方。
 慧海は、自分の事を知らぬラルヴァや異能犯罪者が、"アミの妹"と自己紹介した途端、恐怖の悲鳴を上げ命乞いをする様を何度も見せられた。
 少なくとも慧海ならば、天海《あまみ》お姉ぇが敵に回った時点で迷わずそうする、幼い頃から、姉との姉妹喧嘩は慧海の完敗と身の毛もよだつお仕置きで決着している。
 慧海が双葉学園に来る少し前、冷蔵庫にあった姉の赤福を食べてしまった時の、慧海を鉛の箱に詰めて鎖でグルグル巻きにし、ミシガン湖の底に沈めるというお仕置きはまだマシなほう、少なくとも慧海は隠し持っていたEee-PCでサルベージ船を操作し、無傷で生還できた。
 幇緑林にとっての山口・デリンジャー・天海は、同い年の気の合う友達だった、ただの仲間とは重みが違う、互いの生命を守る無二の存在。
 幇緑林に流るるは天海の血、天海に宿るは幇の命、桃園の誓いを気取る気は無いが、互いに多分コイツとは一緒に死ぬことになるだろうと予感していた。

「では、幇《パン》さんは早速、風紀委員としての登録をさせて頂きます、無論、入会審査は免除、まずは幇さんには新人委員として…」

 幇の体から飛び降りた慧海が生徒課長執務室のデスクを蹴っ飛ばした、電子装置が組み込まれ二トンの自重があるデスクが、衝撃で持ち上がる。

「おいオバサン!ルーは海兵隊では実戦参加するために伍長だったけど、カナダの騎馬警察じゃ警視正待遇だったんだ、それを考慮しろ!」

 世界で唯一、騎馬警察の実用的運用を継続していることから「最後の騎兵」と呼ばれるカナダ騎馬警察隊に在籍しながら、日本とはケタ違いな数と種類のラルヴァが居るカナダで、ラルヴァとの交戦や折衝を行うカナダ軍異能者予備役校と、軍と警察に設けられたラルヴァ対策チーム、そのシステムを作り上げたのが、幇緑林だった、アメリカ西部におけるシステムの成立も、彼女の功績によるものが大きい。
 幇緑林がカナダから隣国アメリカの海兵隊に来た時には、カナダの救世主を送り出すべく、三十隻の軍艦が随行し、サンディエゴの軍港で礼砲を鳴らした。
 幇緑林が祖国とする満州の国土を、現在実効支配している国にも国家異能者の組織はあるが、陳公司《チンコス》という、いくらでも同名の企業や人物が居そうな名称の組織は、れっきとした軍の一部隊ながら、国家と自国民の保護よりも営利事業としての異能活動に熱心で、幇はその組織と関わったことは無いし、よくは知らない、第一、名前が恥ずかしい。
 その国と国境を接した半島国が有する異能者部隊、国家主席の第四夫人に直属し、その夫人の名から取った「金玉組」よりはマシだが。

「我不要官職《ウォアブャオグゥアンジー》」(地位はいらない)

 幇は役職や権力など求めていなかった、いかなる身にあろうと、黒を以ってこの国の黒を白に変える、幇緑林のすべき事は変わらない。

「では、"代行"ということでどうでしょうか?委員長の不在時には臨時に風紀委員の指揮を取る、パンさんの実力なら可能でしょう」

 喜久子は、幇に最も相応しい地位は"代貸し"だと思っていた、博徒の世界で組長の代行を務める、任侠では若頭とも言われる役職。
 風紀委員の不足を解決する方法を模索していた喜久子は、委員長の代理を務め、時に委員長二人や醒徒会全体に睨みを利かせる"代貸し"を望んでいた、そして選別を重ねてやっと見つけた、双葉学園風紀委員会の代貸しに足る人材である"黒"を何とか手に収めるべく、様々な力を借りた。
 風紀委員の不足が表面化するずっと前から喜久子が水面下で進めていた、アメリカで有数の異能者である幇の引き抜きに最大の助力をしてくれたのは他でもない慧海の姉と父、それは慧海を双葉学園にスカウトした時と同じだった。
 スカウトにおける最大の問題は幇緑林と、彼女の一心同体のパートナーであるスティードラルヴァ、紅鬚《ホンホー》を日本に移送する方法。
 攻撃と指揮の両面に置いて最高の実力を持つ幇緑林、本人の意向はどうあれ、アメリカ合衆国もカナダも手放したくない人材、直属の指揮系統から国外への出向が許されても、別の部署や官庁、あるいは国家から邪魔が入ることは十分に予測できた、そして人間、ラルヴァを問わず幇緑林の命を狙う者は多い。

 少なくとも日本内外にある三つの組織が、幇緑林の暗殺を最高レベルの実現希望目標として掲げていた。
 異能者およびラルヴァに戦闘訓練を施し、あらゆる需要に応じて派遣することで収益を得る企業「エグゼクティヴ・オーヴァーカムズ」
 日本国外の異能者及びラルヴァの徹底排除を主張し、各企業への働きかけを行っている異能者政治結社「神農道魂源会」
 表向きは国外で活動する日本人異能者の相互交流を活動内容としながら、その実体は半ば国営の異能諜報組織「A-JETRO」
 それ以外にも、異能者組織というよりも、子供小説の愛好者集団に近いような名前を掲げた組織がいくつもあって、彼らは伝説中の異能者、幇緑林の首を取って、一気に弱小から大規模組織への成長を遂げるという非現実的な構想を思い描いていた。

 国から難癖をつけられ、邪魔される可能性の高い軍用の航空機や軍艦での渡航が困難な幇緑林を、なんとか日本に呼ぶため、喜久子は非合法武器の大物ディーラーに力を借りた。
 人的損耗が予め組み入れられている使い捨て異能者のように、リスクの多いテレポートや飛行異能者による移送をするのは論外、幇緑林を喪失すれば、人間とラルヴァ、異能と既存テクノロジーのパワーバランスがどうなるかは想像もつかない、いくつかの国家は今もなお、幇緑林の存在そのものを抑止力としている。
 店長は紛争地帯におけるラルヴァの活動状況の視察官《オヴザーヴァー》という名目で一旦レバノンに入国した幇緑林を、隣国イスラエルから旅客機で羽田に直接送り込むという奇想天外な方法を取った、選択したのは他国の干渉に動じず、且つテロ対策も万全なイスラエルの国際便、成田に着陸していれば、学園までの道中で何らかの妨害もあったかもしれないが、双葉島からは目と鼻の先にある羽田空港に着き、相手が動く前に部分的な治外法権が非公式に認められている双葉島に駆け込めば、大概の連中は手出しが出来ない。
 エル・アール航空は、テロの渦中にある国家のナショナル・キャリアであるにも関わらず、設立以来、旅客便の墜落はただの一度も無い。
 日本とアメリカの政府と異能者機関、そして武器ブローカーの間で秘密裏に進んでいた幇緑林と紅鬚の双葉学園移籍計画は、喜久子が醒徒会資料閲覧室からピザと共に"黒"を注文したことで、最終的なGOサインが出され、水も漏らさぬ計画はつつがなく遂行された。

「是《シ》」

 幇緑林はやはりその表情を微動だにさせぬまま、生徒課長から提案された双葉学園風紀委員会"代行"への就任要請を受諾した。

「やったサボり放題~!」

 慧海は喜久子の言葉を聞いて、ジャンプして片手を幇と打ち合わせた、身長差四十センチ、何をするにも飛びあがらなくてはいけない。
 それが慧海は嫌いじゃなかった、海兵隊時代から、歩いてる幇の背中に飛びついたり胸に飛びかかって抱き止めてもらうのが大好きだった。
 幇もまた、この銃を撃たせれば炎吐くドラゴンと化すデリンジャー・ファミリーの末っ子が、戦績と勲章の数はベテラン軍人顔負けながら、幼い外見同様に、心もまだ子供だということは知っていた、そして幇は出来ればもう少し、慧海には子供のままで居て欲しいと思っていた。

 慧海の身内びいきな采配、それが間違いでなかった事を双葉学園関係者が知るのに、半日とかからなかった。
 アメリカ海兵隊伍長、幇緑林の予備役編入と日本への入国、双葉学園への入学、極秘のうちに進められたそれらの情報をまだ何ひとつ公開していないその日の内に、カナダを始めとするいくつかの国の元首名で届いたのは、今時は親戚への冠婚葬祭の挨拶か、国家間の儀礼、あるいはタモリしか使わない、数本の電報。

「わが国の救世主、幇緑林女史の貴国におけるラルヴァ対策責任者就任をお祝い申し上げる」

 それは、自国の英雄である幇緑林を軽く扱ったら承知しないという、無言の恫喝を含んだ祝電だった。
 無論、喜久子はそんなことをする気など更々なかったが、もしも双葉学園がこの女性を無位の役職につけていたら、日本は即座に、ラルヴァ対策における世界の孤児となっていた。
 各国の首脳に少し遅れて、複数のラルヴァ組織や、本気で人間との交戦をすれば人類を滅ぼす実力を持つ大型種ラルヴァの何体かが、幇緑林の日本での活動に有形無形の助力をする意思を日本国政府に通告してきた、幇はカナダと北米で殺したラルヴァより、人間とラルヴァの意思疎通不足によって起きる一方的な虐殺から救ったラルヴァのほうが多かった。
 力技を専門とする異能者やラルヴァを飼う過激な組織の多くもまた、幇の双葉学園での活動を渋々といった感じで承認する旨の声明を発表した。


 カナダ騎馬警察のラルヴァ対策専任警視正、アメリカ海兵隊で伍長として慧海の相棒を務めた三銃士《マスケッター》、そして満州国の一兵士。
 モーゼルを帯びた無限弾丸の異能者、手槍鬼《シーフォングイ》の幇緑林が、相棒の紅鬚《ホンホー》と共に、双葉学園の風紀委員会に加わった。



【danger zone6~黒白黒~hei bai hei~前編】おわり
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