【流れ星を一緒に見よう】


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   流れ星を一緒に見よう  ラノhttp://rano.jp/1491


 この日常に漬かりきっていたせいか、僕は物事のありがたみを忘れていたようだ。
 楽しいことだらけの学校に通えて、不思議なちからも使うこともできて・・・・・・。
 僕は世界でいちばん幸せだったのかもしれない。
 でも、そういう素直な気持ちを忘却してしまっていたのも、いかに僕が学園生活や異能のありがたみを軽んじていたかということだ。
 ろくに注意も向けない都会の夜空にも、星は美しく流れていくというのにね。
 ごめんね。
 今の僕はそういう気持ちでいっぱいなんだ。
 本当にごめんね。
 ぶん殴ってやりたい大馬鹿ヤロウがいるとしたら、それは僕のこと。


 どこにでもいる剣豪少女に僕は言いたい。
 タイミングが過ぎてからでないと重要なことに気づけない愚かな僕を、いっそのこと斬ってしまってほしい。
 どこかにいる治癒能力者に僕は会いたい。
 本当に何でも治すことができるのならば、今すぐにでも僕の喪失を無かったことにしてほしい。
 無くしてしまうものが大きすぎる。このままだと僕は死んでしまうよ。


 今日はここに来てくれてありがとう。
 みっともないだろう? 自分でもそう思う。
 ボロボロになった死にかけの僕を、僕は君に見て欲しいのだろうか?
 いいや、もっと君に見て欲しいものが僕にはある。それは僕の本当の気持ち。
 双葉山。うんと静かな夜の展望台。僕らはもう何度、ここに通ったことだろうか?
 それは数え切れないほどだったよね? ・・・・・・同意が欲しい。
 僕は二人の関係が永遠のものだと信じて疑わなかった。
 だけど君は「始まりもあれば終わりもあるの」、そう言った。


 ほら、見上げてごらん。
 今更説明なんてするつもりはない。何度も君に見せてあげたものだから。
 でも、今夜の星空はちょっと違う。だからちゃんと見て欲しい。
 今宵君に見せてあげようと思うのは、壮大な天の川でも巨大なオリオンでもない。

 ――ひとつ、流れていったね。

 ――またひとつ、零れていったね。

 流星群。これが、今の僕の気持ちそのものだ。
「スターライトシャワー」。暗闇さえあればプラネタリウムを作ることのできる、僕の異能。
 化物との戦いに何の役にも立たないけど、僕はこのちからを誇りに思っていた。
 なぜなら、これは君のためにあるものだからだと思っていたから。
 君を幸せにするために僕は生まれてきたのだと思っていたから。僕は「奇跡」をそういうことだと思っている。


 流星群。これが、今の僕の気持ちそのものなんだよ。
 本当に悪かったと思っている。僕は愚かだった。
 君がいつも側にいてくれたからこそ、僕は日ごろの生活も戦いも幸せだったというのに。僕はそのことをすっかり忘れていた。
 君のいない学園生活なんてありえない。
 君のいない星空なんて美しくない。
 だから、行かないで。


 流星群。これが、今の僕の気持ちそのままだよ。僕は泣いている。
 手遅れにならないと、僕は失うものの大きさに気づけないようだ。
 どうして僕は君を寂しがらせてしまったのだろう。「永遠」にウソをついたのは僕のほうだった。
 僕は君を深く悲しませてしまった。もう、二人の愛は元に戻らないのだろうか。
 本当にこれですべてが終わってしまうのだろうか。
 失うものがあまりにも大きすぎて、ひたすら涙を流すしかない。


 もう二度と君を寂しがらせたりしない。
 もう二度と「永遠」にウソをつかない。
 だから、行かないで。


 流れ星が十個ぐらい流れていった頃合だった。彼女は立ち上がった。
 一緒に座っていたベンチから静かに離れていった。
「素敵なものを見せてくれてありがとう」
 そう、絵に描いたような笑顔を僕に見せてくれる。
「また明日、学校でね」
 彼女は僕を残して歩いていった。ベンチに座って、うなだれている僕を残して。
 僕は彼女が消えていくのをどうしても見ることができない。こんな結末を認めることがどうしてもできない。両手を組んで、額を両手に付けて、深い息を吐いていた。
 だけど、僕は彼女に見てほしかった。
 たった今、天上をぼろぼろと流れ落ちていく、熱く閃く大粒の流星群を。


 三日後。
 彼女が別の男と腕を組んで歩いているのを偶然見かけた。
 僕がしばらく見ることのできなかった、本物の笑顔を彼に向けていた。彼女が幸せの絶頂にいるのは、あの子と付き合っていた僕だからわかること。
 ふられた僕は「終わり」も「始まり」もない暗がりのなかに取り残されている。


 君のいない学園生活が、こんなにも堪えられないとは。
 覚悟していた以上に致命的な、色彩の喪失。もう僕に美しい星空を作り出せる自信はない。


 だからせめてもの慰めとして、君がこの僕に素敵な夜空を見せて欲しい。
 とてつもない暗がりのなかに取り残された僕に、明日への「光」を――。




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