【改造仁間―カイゾウニンゲン― 第四話】


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改造仁間―カイゾウニンゲン―

 第四話 「新たな力」


 目を覚ますと俺は見知らぬ部屋のベッドに寝かされていた。
 消毒液の臭いが鼻をつく。目に映るのは真っ白い天井、真っ白いシーツ、真っ白いカーテン。
 ……保健室か? でも中等部でも高等部でもないような……。
「木山くん!気がついた?」
 声の方に首をめぐらすと、そこには見知った女性の顔があった。いつも子供たちを引率している女の先生だ。
「先生……てことはここは」
「そ、初等部の保健室よ」
 俺の漏らした言葉に答えたのは、カーテンを開けて顔を覗かせた別の女性だった。パッと見てすぐに保険医とわかる白衣姿で、キレイに切りそろえられた黒髪と薄くひかれた口紅がなんともいえない大人の色気を感じさせる。しかも巨乳で上着の胸元が大きく開かれている。
 ……初等部でその格好はどうなんだ? ……というか俺は何でここで寝て……。
「改造魔!……ッ、痛ぅ……!」
 何があったのか、と考えた俺は一瞬の間をおいて大事なことを思い出しベッドから飛び起き、右胸の痛みに悶絶する。
 ……そうだ。改造魔がさらわれたんだ! 早く何とかしないと……。
「木山くん!」
「ダメよ、まだ動いちゃ。私の異能で治療はしたけど、完全に治ってるわけじゃないわ。あなた酷い怪我だったのよ? 右胸の骨が砕けて肉を突き破りかけてたんだから。
 ……ねえ、一体何があったの? ラルヴァに襲われたってわけじゃないわよね。だってラルヴァが倒した相手に止めを刺さない理由はないし、あなたの胸にあった傷は人間の拳大のものだったわ」
 二人の教師は痛みに呻く俺を支えてくれた。そして保険医が少し強い口調で事の経緯を詰問する。それも当然だろう。今受けた説明どおりなら、下手をすれば大事に至りかねない大怪我だったのだから、教師なら放っておけるはずもない。
「まって律子。私に話をさせて」
「里美……」
「彼は何度も子供たちを守ってくれたのよ。そんな彼がこんな酷い怪我をするようなケンカをわけもなくするとは思えない。きっと何か理由があるのよ。
 ……木山くん。いつも一緒にいるあの子……造間《つくま》さんはどうしたの?」
 里美と呼ばれた先生が保険医を止めて話を継ぐ。固くしたその表情には、子供たちを引率しているときとは違う、少し心配そうな色が浮かんでいた。
 ……勘のいい人だな。
 あの男の言い様だと改造魔に危険はなさそうだけど、他人に話して大事になれば何が起きるかはわからない。
 この人が俺のことを気遣ってくれているのもよくわかる。しかし……。
「すみません……言えません。
 これは俺が自分で解決しなきゃいけない事なんです。」
 俺は彼女の目をまっすぐ見て、そう答えた。その答えに女教師の瞳が悲しげに揺らぐ。
「……そう。わかったわ、もう聞かない。でもこれだけは約束して。『絶対に無茶はしない』と」
「……はい。」
 彼女の言葉を守れる自信はない。しかし俺は素直に応えることにした。
 ……心配してくれてる人にもっと心配をさせることもない。なんとしても改造魔を助けて、今まで通りの様子を見せることで納得してもらおう。

 それから俺はもう一度、保険医の異能で治療を受け「今日一日は安静にしていること」と言い渡され、その場を辞した。
 ……とりあえずはあの男から連絡があるまで待つしかない。あの男は「新しい力を見せる」と言っていた。だから恐らく、もう一度会った時また戦うことになるだろう。ならばそれまでにできる限りの努力をしておくべきだ。
 ……俺の戦い方に足りない部分を補う、長所を伸ばす、さらにはガナリオンという『異能』の『在り方』も根本的に理解しなおす必要がある。そのために最適な『師』を探さなければならない。
 ……まずは『異能』からだ。となると当然、あの人だな。

「よかったの?里美……。
 あなたに彼を助けるように連絡してきたという人物……今回の件に関わりがある可能性が高いわよ」
「いいのよ。彼も私が偶然助けたわけではないと、きっとすぐに気づくわ。でもすべきことは変わらない……。力になりたいと思ってるけど、たぶん私では無理だから……」
「そう……。
 ……それにしてもあんたが年下趣味とは知らなかったわ」
「なッ、何言ってるの!?」
「何ってあんたの態度、どう見ても恋する乙女じゃない!」
「ちッ違うわ! だって彼には彼女いるもの!」

 ……なんか騒がしいな……?


「なるほど。異能としてのツールの在り方とその拡張性について、か」
「はい」
 初等部の保健室から出た俺はまっすぐ研究棟の稲生先生の所に向かった。 この人は『異能力研究室』という講座を持っていて、異能に関する知識は学園内でも指折りだ。
 今、稲生先生に質問したのは「超科学で作られたツールをいじることなく機能を拡張することができるか?」というものだ。
「君の話の通りなら『ガナリオン』は、超能力系異能を土台として超科学のツールで異能のコントロールをサポートし、魔術的なコマンドで発動を条件付けているわけだが、その現出形態は超科学系でも実際には『物質再現』がメインだ。だとするなら後天的な機能の拡張はおそらく可能だろう。」
「そうですか。……じゃあ、実際にどういうことをすれば拡張できるんでしょうか?」
 俺の直裁な質問に、稲生先生は軽く頷くと。
「それは何をおいても『意志の力』だな。私の知る限り、異能とは本人の心の持ちようで強くも弱くもなるし、制御しやすくもしにくくもなる。ならばやはり最終的には『できる』と自分を信じきることが重要だろう。
 さらに言うならば『魔術的なコマンドを用いる』という部分には『新たなコマンドを設定しうる』という可能性が秘められていると、私は考えるね」
 そう答えてくれた。
 ……つまり、機能を拡張するには『具体的なビジョン』と『新たなコマンド』を明確にするのが重要って事か。
「……よくわかりました。今日は突然お邪魔してすみませんでした!」
 俺は稲生先生に頭を下げ詫びる。
「いやいや、かまわんよ。一学期のレポートもあらかた見終わって、だいぶ暇になった所だったからね。
 また何かあればいつでも来てくれ」

 俺はもう一度、今度は礼を言ってから頭を下げ、稲生先生の部屋を後にした。
 ……機能強化に関する方針はなんとなく固まった。後は具体的な中身だ。けど今日はとりあえず部屋に戻ろう。
 今はもう午後六時。改造魔を連れ去られ、情けなく気を失ってからすでに八時間近く経っていた。
 気を張り続けていたせいで気づいていなかったが、疲れと失血のダメージで体が鉛のように重い。何をするにしてもまず体力を回復させなければ。

「ただいまー……って誰もいないよな」
 改造魔の部屋に戻り、つい、いつものよう言ってしまう俺。この半月ですっかりここが自分の居場所になってしまっていたって事だろうか。
 靴を脱いで部屋に上がり、ポケットから携帯を取り出しテーブルに置く。
 ……静かだな。
 窓から西日が差し込み、四畳半の部屋を赤く染めている。狭いはずなのに広い。
 改造魔のいない部屋は、夏なのに妙にうすら寒く感じられた。
「腹減ったな……何か食うか」
 台所に移動して冷蔵庫の戸を開く。一人暮らし用の2ドアの小さな冷蔵庫の中にはキレイに盛り付けられてラップのかけられた皿が二つ。改造魔の料理の中で俺が特に気に入ったハンバーグだ。
 一つだけ皿を取り出し、そのまま電子レンジに放り込んで適当につまみを回す。オレンジ色の光が点り、重苦しい機械音が部屋中に響く。しばらくすると「チン」と高い音がして橙色の光が消えた。
 「熱っつ……」
 皿の熱さをこらえてレンジから取り出し早足にテーブルへと運ぶ。ラップを取ると香ばしい匂いが広がった。
 台所にもどり、ラップを丸めてゴミ箱に投げ込んで、食器棚から茶碗を取り出す。炊飯器のしゃもじ置きからしゃもじを取り、ふたを開けてご飯をすくう。二度、三度とそれを繰り返し、ご飯が茶碗いっぱいになった所でしゃもじをしゃもじ置きに戻して部屋に戻る。
「いただきます」
 茶碗を一旦テーブルに置いて座ってから手を合わせる。
「あ、箸がない。改造魔……は、いないんだよな」
 仕方なく、また台所に行って箸立てから俺の箸を取る。後には改造魔の箸だけが残された。
「今度こそいただきます」
 もう一度手を合わせてからハンバーグに箸をつける。
「……美味い」
 昨夜「明日のお昼用に作っとくね」とあいつが用意しておいてくれたハンバーグは、初めてここで食べたものと変わらず美味かった。
 一人きりの食事は実に半月ぶりで、それ以前は感じもしなかった空虚さが俺の胸にじわりと広がる。
 ……一人で飯食うのって結構、寂しいものだったんだな。もしかしたら改造魔はいつもこんな感じを味わっていたんだろうか。
 不意に改造魔の笑顔が頭をよぎり、俺は箸を取り落とした。机にはねた箸がコロコロと転がる。
 ……なんだこれ。すげえ寂しい。
 奇妙な寂しさにぼんやりしながらも箸を拾い、再び食事に手をつける。
「……美味い。……美味いなあ……。」
 味に対する満足感とは逆に、雨で地面の色が濃くなるように、白い紙に墨がしみこむように、空虚さが胸に広がっていく。
 ……そうか。これか。これがあいつの感じていた寂しさだったんだ。
 一人でいる寂しさ。突然、異能のせいで見も知らぬ場所に放り込まれ、誰にも頼れない、寄る辺ない寂しさ。幼い頃に両親を失ったあいつの寂しさを本当に理解することはできないだろうけど、それがどんな気持ちなのかは少しだけ解った気がする。

 そして今、きっとあいつは寂しい思いをしている。

 傷が痛む。あの男に刻み付けられた右胸の傷が、異能の治療を受け、すっかりふさがったはずの傷がじくじくと痛む。

 深い思考に陥っていた俺を、不意に鳴りだした甲高い電子音が現実に引き戻した。
 ……来た。あの男だ。
 携帯のディスプレイには「非通知」の三文字が示され、発光ダイオードの青い光が明滅を繰り返す。
「……もしもし」
 テーブルの端に置いていた携帯を手にとり応答する。
「やあ、こんばんは木山仁くん。誰かは言わずとも解っているだろうが……そういえば名乗っていなかったな。
 私の名は黒田戒人《くろだかいと》。大学部一年だ。以後よろしく」
 黒づくめの男は相変わらず不敵な口調で、そう自己紹介をした。受話器越しでも、あのいやらしい笑みを浮かべた顔が見えるようだ。
「てめえの名前なんざどうでもいいんだよク《・》ソ《・》ダ《・》。改造魔は無事なんだろうな?」
 滲み出す怒りに押されて少しの挑発が口をついて出る。
「……フッ、もちろんだ。彼女には快適な環境で休んでもらっている。サポートスタッフも万全だ。
 ああ、再会の日取りについてだが、一週間後になったよ。詳しい場所と時間はまた連絡する。その日を楽しみに待っていたまえ。それでは、失礼する」
 一瞬の間の後、いかにも平静を装っているといった風情の声で、黒田は一息にそう告げ、さっさと通話を打ち切った。

……一週間。どれだけのことができるかわからないけど、最善を尽くすしかない。まずは食って、寝て、明日の朝から行動を開始だ。

 俺は携帯を机の上に戻すと、勢いよく飯をかき込んだ。


 午前五時三十分。
 昨日の予定通り、俺は早朝から部屋を出て研究棟からはかなり離れた、安アパートが立ち並ぶ住宅街の一角に来ていた。目的地は住宅街にある小さな公園だ。
 昨日、稲生先生に質問をしに行ったついでに「俺にあった武術をやっている人はいないか」とも聞いておいた。そして心当たりがあると教えてもらった二人のうち一人(異能力研究室の受講生の知り合いだそうだ)が、いま向かっている公園で毎朝トレーニングをしているという。

「おはようございます」
「おう、おはよう。君が太極拳教えて欲しいって子か。木山くんだっけ?
 太極拳なんて人気ない武術ならおうなんて物好きだねえ」
 公園についた俺は既にトレーニングを行っていた男性に挨拶し、その人からも挨拶とともに軽口が返ってくる。
「よろしくお願いします。デビルワカメチャーハン先輩」
「……拍手敬だ。まったく二礼のやつだな……いつもいつもろくでもないことばっか言いやがって……まあいいや。とっとと始めるとしますか」
 俺が口にした言葉を聞いた先輩は呆れ顔になりつつ自己紹介してくれた。
「先輩。実はあまり時間がなくて、一週間で覚えられる最小限のことと、太極拳をやる上での心構えを教えていただきたいんですが」
「一週間!? ……うーん、そりゃあなかなか短いな。それで最小限となると……」
 先輩はそう言った俺の無茶な注文に少し驚いたようだったが、一瞬の間をおいてから左足を引いて斜に構え、「やっぱこれかな」と言うと前方に突き出した右腕をクルクルと回してみせる。
「これは?」
「太極拳の象徴?って感じの技法『化勁』だ。こうやって腕をグルグル回す動きを取り入れることで、相手の攻撃を受け流して反撃しやすくする、とまあ簡単に言えばそういうものだな。
 あと心構えって言うかどんな格闘技でもそうだと思うけど、体の力を抜いてやることが大事だ。『捨己從人』っていうんだけど、まあ要するに流れに逆らわず上手いこと攻撃の威力を逸らしてやれって事だ。
 とりあえずこれを左右、時計回り、反時計回りでの4パターン、1セット400回を5セット。軽くいってみようか」
 俺の疑問の声に答え、先輩は解りやすく解説した上でやることの指示を出してくれた。俺はそれに「はい」と応え、さっそく修行に移った。
 ……『化勁』か。確かに『ガナリオン』になってからは装甲の防御力と技の威力頼みで、防御技術をまともに磨いていなかったな。
「もう一つ言っておくとそのグルグルはただ防御に使うってだけじゃないぞ。回転は攻撃を受け流す『流れ』であり、相手を巻き込む『渦』でもあり、さらには相手を弾き飛ばす『竜巻』でもある。ただ漫然とやるんじゃなくて、どういう状況で何ができるかを考えながらやってみろ。
 ……っていうのは俺に太極拳を教えてくれた師匠の受け売りなんだけどね! 」
 付け加えた先輩の言葉は俺の中に何か小さなヒントを芽生えさせてくれたような気がした。
 ……受け流す『流れ』、巻き込む『渦』、弾き飛ばす『竜巻』。大きな力を小さな力で受け、回転でより大きな力を生み出す。そういうことだろうか?

 先輩の言葉に従い、俺は様々なことを考えながら一心に腕を回し続けた。


 朝の修行を終えた俺は一旦、部屋に戻り体を休めた。そして昼食のあと再び部屋を出る。稲生先生にあたってもらった、もう一人の人物に会うためだ。
 待ち合わせの時間は午後一時。場所は川沿いの空き地。明け方には猫が集まる場所として知る人ぞ知るモフモフスポットになっているが、昼間は人気も少なく異能の訓練には意外と良い場所だ。
「お、来たね」
 俺が目的地に到着したときには、すでに待ち合わせの相手はウォームアップのためか体を動かしていた。俺の姿に気づいた彼女は、なにやら楽しげな表情を見せる。
 ……まだ一時には間があるはずだけど。
「はじめまして皆槻先輩、結城さん。俺は木山仁といいます。お待たせしてすみません。」
 待ち合わせの相手は皆槻直。傍らには彼女のパートナー結城宮子もいる。学園でも屈指の武闘派で鳴らすコンビだ。噂では危ないこと大好きで、戦いがあればどこにでも首を突っ込むバトルジャンキーだという。
 確かに噂にたがわず、皆槻直は笑みを浮かべていてもその瞳に肉食獣のような鋭さをたたえていた。
 ……稲生先生は二人とも良い娘だって言ってたけど、どっちが本当なんだろう。
「ああ、これはどうもご丁寧に。私は皆槻直。こっちはパートナーの結城宮子」
「よろしくね。木山くん」
 どうやら噂よりも稲生先生の弁の方が正しかったようで、二人の物腰は実に柔らかなものだった。
「よろしくお願いします」
 俺は彼女たちの挨拶に深々と頭を下げて応え、「早速ですが、一手ご指南ください」と告げて身構える。
「ウォームアップは?」
「走ってきましたから大丈夫です」
 皆槻先輩の問いにそう答えると、彼女は一層笑みを深め「いくよ」と言いう。
 次の瞬間、俺の意識は消えた。

 結局、俺はものの一時間程度の間に『気絶する→結城さんの異能で治療されて痛みで飛び起きる』を十回ほど繰り返した。

「今日はこれくらいにしておこうか。明日以降も続けるのだよね? 」
「はい。一週間、よろしく、お願い、しま、す」
 皆槻先輩の質問に、俺は地面に倒れたままで何とか答え、彼女は「うん、よろしく」と笑顔で請け負ってくれた。

 ……多分、見やすくしてくれてたんだろうけど、先輩は攻撃だけでなく回避や防御にも異能を用いていた。『ガナリオン』は攻撃にだけ粒子の噴射を使ってたけど、きっともっと色んな使い方ができるはずだ。イメージするんだ。明確に、新たな『力』を!


 この日から一週間、俺は午前五時に起床、午前五時三十分から拍手先輩と太極拳の訓練、午後一時から皆槻先輩と実践トレーニング、午後三時から自室(実験室)で個人トレーニング、午後九時に就寝、を繰り返した。
 改造魔がいないことで、一人暮らしをしていた頃と同じ、スーパーなどで買ったレトルト食品や冷凍食品で食事を済ませるようになり、手持ちの金も心もとないが、今はそんなことを気にしてはいられなかった。

 太極拳の訓練では円の動きを身につけ、攻防の切り替えをすばやく行うこと、相手の攻撃をさばく動きをそのまま攻撃につなげることなどを段階的に、しかし駆け足で、後半は実地で転がされまくりながら叩き込まれ、実践トレーニングでは何度も何度も気絶させられながら、少しずつ勘を研ぎ澄ます。
 二人の先輩は、しつこく食らいつく俺に苦笑しながらも、根気よく修行に付き合ってくれた。そのおかげで六日目には、俺の中でぼんやりとしていたイメージが、おおむね明確なものになっていた。
 ……はっきりとした『形』と、意思を乗せるための『言葉』。そして自分を信じること。それができて初めて『ガナリオン』はパワーアップされる。

 何も聞かず、この一週間力を貸してくれた人たちに、全て終わったときに皆を失望させないことで感謝の気持ちを伝えよう。俺は、そう決意を新たにした。

 七日目、午後八時。再び俺の携帯が甲高い電子音を響かせた。
「こんばんは木山仁くん。この一週間、なにやら頑張っていたようだね」
「そんなことはどうでもいい。さっさと時間と場所を言え」
 黒田の声を「何度聞いても嫌味にスカした声だ」と感じながら、俺は本題に入れとせかす。
「フフ……せっかちだな。そうせっかちだと女性に嫌われるぞ」
「黙れ。彼女もいないやつが彼女いる俺に説教なんて笑えもしねえ」
「なっ!何を言う!私にだって彼女くらい……いや、よそう。言い合うのもばかばかしい。
 場所は双葉山の裏手にある通称『採石場』、時間は明朝五時、日の出と同時だ。確かに伝えたぞ」
 いやらしくたしなめる言葉に、俺は挑発で応えた。もちろん彼女の有無など知りもしないが、今までの会話でこの男が明らかに「変」なやつだとわかっていたからカマをかけ、その試みがあたったというわけだ。
 挑発にペースを乱された黒田は、早口に指定の場所と時刻を伝えると、こちらの返事を待たず一方的に通話を打ち切った。

 ……明日の朝、五時か。……できることは全てやった。あの男の言っていた「新たな力」とやらが何かはわからないけど、全力でぶつかるだけだ。

 そして改造魔を助け出す!


つづく






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