【七の難業 四】


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 喧騒の中そこだけぽっかりと切り取られたように静寂に包まれた教室。他に誰もいないそこで、少女がただ一人席に座り佇んでいる。
 放課後の学園のワンシーンとして考えれば実に良く馴染むこの光景が、その主役たる少女の存在により違和感に満ちたものとなっていた。
(うえっ)
 音もなく顔を向けた少女の他者からの視線を意識しない化粧っ気のない容貌と、なにより何かにとり憑かれたようなその瞳に辟易する陸だったが、そういう感情を女性の前で表に出さないのは最早本能に限りなく近く無意識レベルで実行できる能力である。
 首の動きだけで座る場所を指し示す少女に「初めまして、よろしくお願いします!」と深々とお辞儀をし、陸は幾つか並べられた机の少女と向かい合う場所に腰を下ろした。
「いらっ…しゃい…ここが…『紙牌の…難業』…よ…」
 とようやく口を開いた少女は机に積み上げられたカードを愛しげに撫でながら話を続ける。
「見ての…とおり…トランプ…を…使う…ポーカー…で…勝負を…するわ…ルールは…知ってる…?」
「はい、分かりません!」
「…仕方ない…わね…ルールを…教えて…あげるわ」
 勿論嘘である。陸としてはこんな理不尽な相手とまともに勝負する気などない。自慢の口説きで骨抜きにして試合を放棄させるのがベストだったが、いかな彼であっても僅か五分で相手を落とすのは難事である。何が何でも時間を稼いでその間に何とかする腹積もりだった。
「その前にお姉ちゃんの名前教えてよ。ぼくの名前は相島陸っていうんだ」
「私の…名前は…三墨…ちさと…よ」
「どう書くの?教えてよ」
「…待って…て」
 子供相手に邪険にするのも躊躇われたのか、少女…ちさとはノートを一枚破ってゆっくりと名前を書き付けた。
「おねえちゃん、きれいな字だね」
「…そう?」
「うん。このくるっとしたカーブのあたりなんかとてもいいと思うよ」
「そう…かな」
 そういえば、こうやって素直に褒められたのはいつ以来だろうか。そんな思考がちさとの脳内をゆっくり巡っていく。
「あ、ばくだってちゃんと名前漢字で書けるんだよ」
 陸はちさとから破ったノートを受け取ると、ちさとの名前の下に自分の名前を書き付けた。
「ほら。陸ってむずかしい漢字だけどちゃんと書けるんだよ」
「…偉い…わね」
「ホント?おねえちゃんありがとう!」
(こうやって…お礼…言われる…のも…久しぶり…)
 何気ない一言に全身で喜びを表す陸の姿に何かを感じつつも、ちさとは小さく息をつき、話を元に戻した。
「まずは…ゲームの…流れ…から…説明…する…わね…」


 克巳が入った教室は机や椅子が隅によけられて中央に空間を作っているだけの普通の教室だった。
「やあ、始めまして。そう緊張しなくていいよ。こんななりだけど別にとって食うわけじゃない」
 その空間の真ん中にいる恰幅のいい大男――修が柔らかい口調で克巳を迎え入れる。
「…はあ」
「僕はこの『天秤の難業』の番人、金立修。よろしく、いいゲームをしよう」
 修の友好的な態度にどこか引っかかる思いを感じる克巳だったが、ここで揉めても事が進まないので今は話を合わせておくことにした。
「こちらこそよろしくお願いします、先輩」
「じゃあゲームの説明をするよ。まずはそこの中で出来るだけ安定した姿勢で立ってもらえるかな」
 克巳は言われるままに修が指差したビニールテープで囲われた二メートル四方ほどのエリアの中に入る。
「それでいいかな?」
 再度の確認に克巳が頷くと、脇に控えていた生徒が彼に近寄り、靴を縁取るようにチョークで床に線を引いた。
「?」
 突然の事にびっくりする克巳。すると修もエリアの中に入り、「この辺りでいいかな」と言うと克巳に正対する位置でやや足を広げて立った。
 二人の距離は克巳がその場から手を伸ばせばちょうど修に届く程度。先ほどの生徒が修の方にもチョークで靴の周りに線を引き元の位置に下がると、再び修は説明を続けた。
「こんな感じの状態で押したり引いたりしながら相手のバランスを崩しあう、一言で言えばそういうゲームだよ。靴以外の部分が床に触れるか、足の位置がずれてチョークで囲ったところから靴が外に出てしまったら負け。禁止事項は直接攻撃と異能による直接的な干渉。あと、異能で足を床に固定したり宙に浮いたりとかそういうゲームを損ねるような行為もしないでほしい。何か質問はあるかな?」
「相手に直接何かするものでなければ異能は使ってもいいんですか?」
 ここは克巳としては最も重要な箇所であった。
「構わないよ。例えば身体強化系でも本人の能力が上がるだけなら全く問題はないしね」
 よし、と心中ガッツポーズをとる克巳。
「ああ、そうだ。大事なことを言うのを忘れていたよ」
 崇志の企画書には無かったが修がごり押しして認めさせたここだけの特別ルール。それをうっかり忘れていたと冷や汗をかきながら修は口を開いた。
「この難業に限り、五分経過時に決着がつかなければ挑戦者側の勝ちになる。心に留めておいてほしい」
 番人側に絶対有利な環境で挑戦者を蹂躙する、そんな合理的ではあるがフェアではない七の難業に対する、それはスポーツマンとしての修のせめてもの抗議に似た行為だった。
(あ、そういうことか)
 だが、僅かとはいえラルヴァと戦場で命のやりとりをした経験を持つ克巳の考えはまた異なるものである。
 修のフェアさにこだわる姿は克巳から見れば「ぬるい」としか感じられない。それこそがさっきからずっと感じていた違和感の正体だった。
 戦力としては他の裏醒徒会メンバーに比べ一段落ちると自分でも自覚しており、それ故に勝つ為に徹夜で策を練ってきた。その努力が相手側のそれとつりあわないことへの憤り。だがそれはすぐにならばその隙をおもいきり突いてやればいいという冷静な思考に置き換わった。この辺りは流石という男を敬愛するだけの事はある、と言えるだろう。
 ともあれ、お互いに言うべき事は言い、聞くべき事は聞いた。後のことは戦いによってのみ決する。そして、克巳は自分の、自分なりの必勝の策を解き放った。
「『ジャイロ・スパイダー』、スタートアップ!」
 その声が起動キーとなり、ずっと背負い続けてきたリュック、いや、リュックに偽装した「それ」が展開し真の姿を現す。
 背中から放射線状に広がりゆらゆらと揺れる八本の金属製の脚のような物。完全自動で動くその脚によりいかなる時でも一定の範囲でバランスを維持する、それがこのジャイロ・スパイダーの能力だ。失敗作を転用して文字通り一晩で作り上げたそれは彼の現在での最高傑作、鋼鉄の毒蛇に比べればあらゆる点で及ぶべくも無いが、ことこの場での有用さという意味では充分に満足できる出来だった。
「相手に直接何かしなければいいんですよね?」
 克巳は自分より大きな修を見下ろすような気でそう問いかけた。
「ああ、勿論だよ」
 そして開始の合図が響き、二人は勢いよくお互いの腕を取り合いはじめた。


 一口にポーカーといっても無数の種類があり、役の強弱や解釈にも違いがあるため、毎回ゲームの流れと役の説明は行っていた。
 形式はジョーカーをワイルドカードとするクローズド・ポーカー(自分の手札は全て隠して行う。カード交換は一回)。但しチップは一切使用せず制限時間五分間で勝数が多いほうが勝ちというルールである(なお、役に関してはファイブカードが最上位)。
 もっとも、時間も押している都合もあり、なにより一刻も早く勝負したいという思いから、これまでできる限り説明は簡潔にとどめてきたちさとであったのだが。
「……という…ように…時には…できている…役を…崩す…勇気も…必要…言うのと…できるの…と…では…大違い…だけど…ね」
「うん、わかったよ。頑張ってやってみる。それでね、さっき言ってた役の説明なんだけど…」
「…うん…なに…?」
 いつの間にやら問われるままにポーカーの戦術や薀蓄まで語ってしまっていた。
 目の前の少年は合いの手を入れるタイミングや話の繋ぎ方が異様に上手い。ちさとは話を切りたくても切れない状態にあった。
(でも…不思議)
 なかなかゲームを始めさせてもらえないのに、ちさとの心には不快感は微塵も浮かんでこない。
「…それはね…例えば…」
 とちさとは適当に五枚カードを抜き取り、無造作に置く。するとそこにはこれまでと同じく右から高いランクできちんと順繰りに並んだ形でちさとが望む役が出来上がっていた。
「すごーい!おねえちゃんすごい!」
 トランプのゲームに限り絶対勝利の強運をもたらす異能、〈54フェローズ〉。昨日高見留花にその一端を見せたときのように、たとえ他者にカードを委ねてでも一発で望むカードを引き寄せる規格外の強運は周りに気味悪がられるのが常だった。
 特に対戦相手として相対する立場となるとその思いもひとしおなのか、半分以上の相手が捨て台詞と共に試合放棄する事態になっていたのだ。
 だが、この少年は違った。
 それが今から戦う相手にもかかわらず、ちさとの異能の発露にいちいち目を輝かせて喜びを見せていた。気味悪さなど微塵も感じていないようなその様子に眉をひそめるちさとであったが、彼女も人の子であり、褒められて悪い気などしない。
(そういう…こと…ね)
 と現状に腹を立てる気にならない理由をそう納得し、ちさとはしばらく陸の話に付き合ってやろうと決めた。
 どの道、どうなろうとこの『紙牌の難業』での自分の勝利は揺るぎはしないのだ。
 この時点で既に昨日までのちさとが見れば驚くほどの変化であったが、変化の渦中にある当の本人自身はそれを知る由もない。
 そしてまた一つ石が投じられ、事態は更なる変化を迎える。
「…なに…?」
 陸との話の最中、彼に請われて話し始めたポーカーの名勝負の逸話が丁度佳境に入ったあたりで突如ちさとの携帯が鳴り響いた。
「少し…待ってて」
 そう陸に告げ、背を向けてその相手、崇志と話を始めるちさと。
「……何?」
『何じゃない。いくらなんでも遅すぎるんじゃねぇか?』
「仕方…ないわ…よ…向こう…は…ルールも…知らない…子供…いくら…なんでも…少しは…教えて…あげない…と…気が…咎める…わ」
『冗談じゃない、これはれっきとした勝負だぜ。大体あの裏醒徒会が送り込んできた刺客がそんなマヌケ晒すなんてこたぁありえねえ』
「…だから…何…?…『紙牌の…難業』の…番人…として…どう…戦う…かは…私が…決める…それに…結局…どう…あろうと…私が…『ムーン…シューター』…の…私が…勝つ………切るわ」
「おい、待て!」
 崇志の言葉を待たず電源ごと切ってしまうちさと。
「どうしたの?」
「ううん…なんでも…ないわ…話が…途中…だった…わね」
 こちらを気遣う少年を見ると苛立っていた心が癒されるようだった。
(苛立って…た…?…早く…勝負を…する…よう…急かされて…)
 ちさとは否応なく気付かされる。話を終わらせたくても終わらせてくれないんじゃない、自分自身が話を終わらせたくないのだと。
(どう…して…)
 この異能を得てから、思うままに動いてくれるトランプとの蜜月に耽溺し続けていた。この素晴らしさを理解できない他者などどうでも良かったはずなのに。
 外と切り離されていたが故に凪が続いていたちさとの心に、徐々に波が立ちつつあった。
(うん、いい感じ)
 表情の薄いちさとの僅かな顔の動きからその動揺を読み取り、陸は密かにほくそ笑んだ。
 しっかりと相手を見、よき聞き手であることに努める。可愛らしいと定評のある容貌とこの態度を組み合わせれば、女性の心を揺らすことなど実に容易なことだと陸は自らの経験で確信していた。
 相手が男性慣れしてないこともあり短い時間にしては上々の成果を上げることができた。心の中のトロフィーとして飾っておいてもいいだろう。だが親玉が焦れてるみたいだしそうぐずぐずもしていられないみたいだ。
(それじゃあ、そろそろ落としにいこうかな)


 開始から四分が経過していたが、『天秤の難業』は依然膠着を続けていた。
(なんなんだ、これは…)
 修は目の前の少年の力に愕然とした思いを抱いていた。まるで地中深く根を張った柳の木のように、引き込んでも左右に揺さぶってもしなやかに元に戻りバランスを崩せる気がしない。
 異能の素質ありとして双葉学園に入ったものの、変に異能に覚醒してしまえば公式戦に出られなくなる恐れがあるため、修は異能には全く関心がなかった。
 それもあってかあまり異能がらみのことに関わることも無くこれまで過ごしており、それ故に異能の力をありありと思い知らされたこの事態は修にとって大きな衝撃だった。
 攻めきれないのは克巳の方も同様だった。ジャイロ・スパイダーはどうしてもその性質上守りに特化した装備である。ジャイロ・スパイダーに守りを任せて全力で遮二無二攻め立てれば活路は開けると思っていたが、目の前の男はそこまで甘くはなかった。しかし、今回はこの膠着は克巳にとって福音である。
(このままなら勝てる…!)
(このままなら負けるね…)
 当然、その状況は修にも痛いほど良く理解できていた。だが、自分の技術ではどうしようもない以上、ここはそれにしっかりと向き合うしかない。
「僕の学んだ柔道の力では君に勝つことはできないみたいだ」
「ギブアップ宣言ですか、先輩。こっちは大歓迎ですよ」
 ついに勝利がすぐ手の届くところまで来た。克巳は喜びに打ち震える心を押さえ込み、冷静に修に呼びかける。
「いや、それはルール上できないしね。それに僕はこの『天秤の難業』の番人で、それよりなによりこのN組の委員長だ。最後まで諦めることなどできない…!」
 言うや否や、修は克巳の両肘の辺りをつかみ腕を引き付けながら思いっきり腰を下ろした。
「分かりました。それならこっちも最後まで守りきらせてもらいますよ」
 素人が下手に攻めるよりジャイロ・スパイダーと共に守りに徹した方がいい、そう決断しつつ腕を抜こうとする克巳だったが、まるで肘から先が壁に塗り込められたかのようにびくともしない。
「何…!?」
「そう、プライドを捨てても…勝たせてもらうよ!」
 今までの穏やかな調子が嘘のように咆哮する修。
(いよいよ本気ってわけ?でももう遅いよ、先輩)
 もう既に残り時間は三十秒を切っている。そしてジャイロ・スパイダーのおかげで今の大きく引き込まれた今の状態でも体は実に安定している。克巳には微塵も負ける気はしなかった。
(彼の重さとジャイロ・スパイダーの重さを足してもせいぜい百キロ…もないだろうね)
 修はそんな克巳には構わず、脇を強く締めたままゆっくりと上体をそらせつつ腕に力を入れた。
「…?」
 最初は戸惑っていた克巳だったが、やがて修が何をしようとしているのか気付く。
(まさか、この状態からおれを力づくで持ち上げようとしてるんじゃ…)
 ジャイロ・スパイダーは両足がしっかり地面についていることが前提の装備である。もし片足だけでも浮いてしまえば流石にその状態でのバランスの維持は保障できない。いや、おそらくは想定外の事態に誤作動を起こしてしまうだろう。
(しかし、正気か…?)
 克巳を持ち上げるために修は随分と無理な体勢になっている。いつ自分がバランスを崩して倒れてもおかしくないだろう。
(…なんでだ?)
 それにもかかわらず、修は構うことなくより無理な体勢に移りつつあった。そのくせ、実に安定したバランスで克巳を持ち上げることのみに全力を集中している。
「!」
 そして、克巳は致命的なミスに気がついた。
(ジャイロ・スパイダーが…)
 健気にバランスを――克巳と、現在彼にほぼ密着している修の二人の――取ろうと動き続けているジャイロ・スパイダーに意識を向ける。克巳の背を冷たい汗が流れた。
 成程、ジャイロ・スパイダーにバランスを預けているならあんな無茶な体勢ができるのも納得だ。
 一見冷静な思考は、逆に克巳の思考が混乱をきたしつつある何よりの証だった。
(おいおい、なんか手はないのかよ)
 ジャイロ・スパイダーを停止する…駄目。途中で急停止する事態になる可能性はそもそも考えてなかった。それじゃジャイロ・スパイダーで先輩を攻撃する…駄目。そもそもルール違反。相手の体勢を崩すために揺さぶりをかける…どう考えても裏をかかれる。
(蛇蝎さん、おれ、一体どうすれば…)
 勝利を目前にしていたはずが一転して窮地に追い込まれた克巳はいまやパニックに陥っていた。
 もう「何もしない」という選択肢を選ぶしかないまま、残り時間は十秒を切り、そして…。


「ねえ…君…ええと…相島…君」
「陸でいいよ、おねえちゃん」
 あの後崇志が何度もクラスメートを伝令に送り込み、ついに根負けしたちさとは勝負を始めることを余儀なくされた。
 だが、どうにも気が乗らない。
(こんな…子に…逢ったの…初めて)
 思い起こせば、この異能を手に入れてから人は遠ざかるばかりだった。最初にこの異能を披露した両親は不気味に思ったのか学園から話が来るとこれ幸いと自分のことを放り出した。両親から拒絶された穴を埋めるようにはまったネット上のトランプ系コミュニティからも勝負にならないとのことでことごとく追い出された。やってきたここでも出会う人に片っ端からポーカー勝負を仕掛けて知り合いも失った(ポーカーが嫌いな人もいるだろうと他に十七種類もゲームを覚えてきたのに、いくらなんでも理不尽ではないだろうか?)。
 そんな自分に、〈54フェローズ〉を知ってなお近づくこの陸という少年。それを徹底的に蹂躙しひょっとしたら泣かせるのかもしれないと思うと手が止まってしまう。それに、
(もし…嫌な…思いを…させずに…帰って…もらえれば…陸君…が…また…来て…くれる…かも…)
 そんな自分の思考にちさとは戸惑いを隠せなかった。
「ねえ…陸君…私は…勝負に…なったら…手加減…できない…わ…ルールを…知らなかった…陸君…が…勝てなく…ても…仕方が…ない…酷い…目に…あう…前に…棄権…しない…?」
「ありがとう。優しいね、おねえちゃん。でも…」
 そっと目を伏せる陸。ちさとの心がまた強く波立つ。
「どう…したの…?」
「蛇蝎おにいちゃんは本当はいい人だけど貧乏だからいつもカリカリしてるんだ。喉から手が出るほど賞金がほしいからぼくに『死んでも勝ってこい』って…。もし負けちゃったら『この無能が』ってぶたれちゃうよ」
「…そんな…」
「おにいちゃんは悪くないんだ…!でも、怒ると人が変わったようになってぼくが泣いても許してくれないんだよ…」
 愕然とするちさとを前にわっと泣き崩れる陸。
「おねえちゃん…。一生のお願い、おねえちゃんの方が棄権できない…?」
 おろおろしながら駆け寄るちさとを涙で濡れた瞳で見上げ、陸は甘えた声でそうねだる。
「私も…そう…したい…わ」
 自然に、その言葉が口から放たれていた。自分を慕う少年と比べれば一勝負ぐらいなら我慢することはなんでもない。ましてや番人としての仕事など彼と比べれば吹けば飛ぶ埃程度にしか過ぎない。
「…だけど…できない…の…よ…」
 精神操作系異能への対策として、全ての難業でこちらからの棄権はいかなる理由があっても無効となっている。そして、
「私の…異能は…自動…発動…型…私…自身…にも…制御…できない…のよ…」
 それを聞いた陸はがっくりとうなだれた。
(ちぇっ)
 表情が見られないようにガードできているか確認してから、陸は不満げに口を尖らせる。
(あーあ、やっぱりもう一働きしないとダメかー)
 ルール上できない棄権をまず提示して、譲歩した(その実こっちが本命)八百長での負けを飲ませるという計画は成功する自信はあったのだが、異能の性質という意外な横槍によって阻まれてしまった。
「…ごめん…ね…ごめん…ね…」
 自分の領域の中なら最強を自負していた能力もまるで役に立たない。自分の無力さを初めて痛感して涙ぐむちさとの様子を見て取り、陸は頭を上げた。
「ぼくのほうこそ無理言ってごめんなさい、おねえちゃん。…こわいおにいちゃんがガミガミうるさいからもう始めよう?」
「わかっ…た」
 肩を落とし席に戻るちさと。重い沈黙の中、お互いに五枚のカードが配られる。自分の異能を疑いもしないちさとは見もしないままカードを雑然と机に並べた。
 対して陸の方はカードを開いたり閉じたり腕を振ってぐるぐる回したりと落ち着きのない様子だったが、やがてぴたりと動きを止めカードをちさとと同じように机に並べると、決然とした表情でとてとてとちさとの元に駆け寄った。
「どう…したの?」
「正直に言うね。…おねえちゃん、とても辛そうだよ」
 そうよ、と反射的に心が頷いていた。そうなるともう、今あったばかりの子供を叩きのめす程度のことで、などと目をそらすことはできない。
「今のおねえちゃん、ぼくには自分の異能に縛られて身動きとれないように見える…」
 予想だにしない方向の言葉だった。だが、自分の瞳をじっと見上げながら熱っぽく語る姿を見ると無碍にも切り捨てられない。
(私が…私の…力に…縛られて…いる?)
 大好きだったトランプゲーム。それに勝利を与えてくれるこの異能のことをずっと愛し続けてきた。だが、その結果としてゲームの相手にも恵まれない今の状態になってしまったのではないのか?それなら、私は――。
「ちさとおねえちゃん!」
 初めて名を呼ばれた。その強い衝撃がちさとの意識を瞬時に引き戻す。
「ぼく、かみさまに祈るから。ちさとおねえちゃんを助けるために一度だけ力を貸してくださいって。だからちさとおねえちゃんもぼくを信じて、お願い」
「…はい…」
 見つめる瞳に、逆らえない。出あったときからずっとそうやって自分を見続けていたのだと気付いたちさとには、それがごく自然なことのように思えた。
(ふふ…陸君…あなたは…まるで…)
 囚われの姫君を助け出す王子様みたい。お互いの年齢を考えると不謹慎な想像だと自覚はしつつも、浮き立つ心を抑えることができないまま、ちさとはこちらに背を向けて覚悟を決めるように小さく首を振ってからゆっくりと席に戻る陸の背中をじっと見続けていた。


 後ろに倒れこんだ修は、その場に尻もちをついた。
 咄嗟に後ろに手を伸ばして体を支えようとするが、限界を超えて酷使した腕はもはやその用も成さず、修は無様に後ろに倒れこんだ。
 その場に立ち尽くす克巳と、辛うじて受身は取ったものの立ち上がることもできない修。
 審判役の生徒から見ても、二人の勝敗は明確だった。
「畜生」
 僅か数センチ。修の全ての体力をもってしても、克巳の体を数センチしか動かすことしかできなかった。
 しかしそれで十分。修が尻もちをつく前に成し遂げた成果としては十分だったのだ。
「畜…生」
 チョークで囲まれた枠からほんの少しだけはみ出した足が、指先まで手をかけながらみすみす取り逃がした勝利が心をよぎり、克巳は悔しさにきつく唇を噛んだ。
 一方、勝利した修もまた忸怩たる思いだった。
 元々少年相撲の選手だった修だったが、その頃から抜きん出ていた体格のせいで「でかいから勝てるんだ」と陰口を叩かれるのが腹に据えかねて、「柔よく剛を制す」を旨とする柔道への道に進んだ過去がある。
 そんな彼にとって研鑽を重ねてきた柔道の技を捨て力に頼らざるを得なかったのは、覚悟していたとはいえ辛い。
 もしこの場に誰もいなければ大声で泣き叫んでいたかもしれないほどの屈辱感だった。
 ある意味では両方ともが敗者とも言え、そして、敗者にかけるに相応しい言葉など何もない。
 だから、無言のままとぼとぼと出て行く克巳にも、目を見開いて天井を睨みすえる修にも、見守るものはただ沈黙のみだった。
「…申し訳ないです、蛇蝎さん」
 体を震わせ、俯きながら謝る克巳。裏醒徒会に初の敗北を与えてしまったことに今すぐにでも消え去ってしまいたいくらいの思いだった。
「我が裏醒徒会に惰弱な人間の席は存在しない」
 兇次郎の返答は克巳が想像していたとおりの峻厳なものだった。
「…特に、たかが一度の戦術的敗北で気力を喪失し前を向くこともできないような人間の席はな」
「はい……え?」
 萎縮しきり、彼の足手まといになるくらいならいっそ辞めてしまおうと思いつめていた克巳は続けられた言葉に呆けた声を上げた。
 兇次郎ははあ、と深いため息をつき、苛立たしげに早口で問いただす。
「まさか聞き逃したのか?我輩は同じことを何度も言わされることが虫唾が走るほど嫌いだと何度も言っているはずだが?」
「い、いえ。決してそんなことはありません」
 克巳は慌てて顔を上げ、涙をぬぐってぶんぶんと首を強く横に振る。
「工克巳、今回の反省を生かし、次こそは蛇蝎さんが満足する成果をあげてみせます!」
「美辞麗句は必要としない。我輩が求めるのは結果だけだ」
 変わらぬ冷たい口調だったが、その言葉は克巳に染み入り、その心を確かに暖かく満たしていた。


 席に戻った陸は緊張の面持ちでカードを二枚交換した。
「それじゃ…カードを…開く…わ…ね…」
 ちさとは陸が〈54フェローズ〉に勝てることができるとは思っていなかった。だが、ひょっとしたらという一縷の希望は消し去ることはどうしてもできない。異能を手に入れてから初めての喉がからからになるほどの緊張の中、ちさとはハンドを公開する。
 自分の矛盾した感情に決着をつけるのを無意識に恐れたのか、ちさとはまず陸のハンドに目をやった。
 ジョーカーとスペードのジャックのワンペア。〈54フェローズ〉相手には不安なことこの上ない。
 ちさとはこわごわと自分のハンドに視線を移す。常に高いランクの順に右からカードが並んでいるため、自然と右から見るようになっていた。
 スペードのエース。スペードのキング。スペードのクイーン…。
(ああ…やっぱり…)
 ワンペアとは比べ物にならない高位のハンド、ロイヤルストレートフラッシュの流れだ。
(これが…私の…運命…なのね)
「見て!ちさとおねえちゃん!」
 諦めかけたちさとを陸の声が揺さぶり、それがちさとにある事実を思い出させた。
(あれ…でも…)
 このハンドを成すためには続けてスペードのジャックが必要だ。だがそれは今…。
 ちさとは瞬時に陸のハンドに再び目を向ける。スペードのジャックがそこにあった。今度は自分の四枚目と五枚目のカードを見やる。…スペードの10、そしてハートの10。
「え…?」
 あまりの衝撃に呆然とするちさと。ちさとのハンドは10のワンペア。…陸の勝利であった。
「やったよ、ちさとおねえちゃん!かみさまに祈りが届いたんだ!よかったね!」
 陸がちさとの胸に飛び込んでくる。敗北を喫したはずなのに、彼の言うとおりちさとは喜びの感情に満たされていた。いや、それは〈54フェローズ〉の呪いから解き放たれたというだけの理由ではない。
(私…陸君…のこと…)
 自分の感情に向き合い心臓が飛び出そうな衝撃を味わっているちさととは正反対に、ちさとの胸に顔をうずめる陸は冷めた目で昨日のことに思いを馳せていた。
(蛇蝎おにいちゃんは貧弱で女の子の心がまるで分かってないけど、頭だけはとてもいいんだよなあ。ここまで上手くいくとは思わなかったよ)
 どんな強運であろうと、起こり得ないことは決して起こすことはできない。
 それが、陸に作戦を伝える兇次郎が発した最初の一言だった。
 その意味を体現するため、陸は勝負前の長い話の時にこっそりジョーカーとハートの10の二枚のカードを抜きさって隠しておいた(役を教えたりする時にもちさとの異能で高いハンドばかり来るので実に楽だった)。これでファイブカードがありえなくなるので、ちさとのハンドはハート以外のロイヤルストレートフラッシュに限定される。
 次にカードが配られたらカードをいじくる振りをしながら陸の異能〈カットアンドペースト〉でジョーカーを配られたカードに混ぜ、あまった適当な一枚を外して隠す。それが終わったらハートの10を袖に隠し持ってちさとのところに向かい、視線がカードから外れた瞬間に透明な小さな袋に入れた高圧空気を〈カットアンドペースト〉で左から二番目のカードの前に移動させて(高いランクの順に右からカードが並んでいる癖はもろ分かりだった)机から吹き飛ばし、即〈カットアンドペースト〉で手元に移動させる。並び順で不審に思われないように同様の手順で左端のカードを空いた場所に移動させ、次いで他のカードと向きを合わせるように手元のハートの10を下に落とし、左端のカードが空いたスペースの真上からそろりと落とす。最後にカード交換の間に何食わぬ顔で奪ったスペードのジャックをカードに混ぜてまた一枚を外して隠し完成。
 確実に勝利できるがその分強引さのある手順であり、陸の精緻な異能の制御能力とちさとの判断能力や注意力を奪い取る口説きのテクニックがあればこその勝利であった。
(しかしなー、匂いもあんまりいい匂いじゃないし、胸も柔らかくないし、そんな期待してたわけじゃないけどやっぱりがっかりだなあ)
「……あのね…陸君…聞いて…くれる…かな…私ね…」
「ちさとおねえちゃん、本当にありがとう!あーあ、ちさとおねえちゃんみたいな人が本当のおねえちゃんだったらよかったのになあ…」
「…!」
(そうか…そうよね…)
 結局、舞い上がっていたのは自分一人。考えてみれば、あらゆる意味で不釣合いなのだ。
(それでも…この…一時は…本当に…楽しかった…わ…)
 心を強く揺さぶる思いを断ち切り、ちさとは陸にぎこちない笑顔を見せた。
「どうしたの、ちさとおねえちゃん?」
「…私も…ね…陸君に…ありがとう…って…お礼が…言いたかった…の…」
 かつて、学園有数の女好きとして鳴り響く体育委員長、討状之威(うちじょう ゆきたか)と「最高のプレイボーイとしてもっとも必要な能力を一つだけ挙げるとしたら何か?」という議論になったとき、陸は「いらなくなった女の子を後腐れなく切ることのできる能力」と答えて之威をドン引きさせた過去がある。
 そう、確かに彼、相島陸は彼自身が信じるところの最高のプレイボーイであった。


「…三墨が負けた?本当か?あの『ムーンシューター』が?」
 崇志の元に届いた報告は彼を驚愕せしめるのに十分なものだった。
「一佐男に続いて三墨まで敗北を喫するとはな…」
「どうした、また負け越してしまったぞ?」
 苦虫を噛み潰した表情の崇志を悪意たっぷりにからかう兇次郎。
 確かに、彼の言うとおり過半数の四つの難業を終えて現在戦績はN組側の一勝二敗一分。崇志にしてやや想定外と言わざるを得ない苦戦だった。
「後二つ、今出て行った笑乃坂と清廉が勝てば我輩の出る幕もなく終わるな。これまでの四人も決して弱兵ではないが、奴らはそれ以上だぞ?笑乃坂は我が裏醒徒会の副将格、そして清廉は、そうだな…」
 と兇次郎は珍しく口ごもり、ほんの少しだけ考え込み、そして唇をにい、と吊り上げ実に楽しそうに告げた。
「清廉唯笑。言うならばあれは…そう、魔物だ」
「魔物…」
 常に崩れることのない柔らかな笑みと、同様に柔らかな(と目されている)たわわな胸、そして高純度なお姉さんキャラ。男女問わず人気の高いその姿にまるでそぐわないおどろおどろしい言葉に眉をひそめる崇志。
 と、そこにメールの着信音が響く。兇次郎宛のそれを一瞥し、兇次郎は「ふん」と鼻を鳴らし文面を崇志に突きつけた。
『人のことを魔物だなんてひどいわ。しかも陰口なんて男らしくないと思うの』
「どこが陰口だ」
 盗聴器の存在が一瞬意識を占拠し思わず教室を見渡す崇志に、兇次郎の乾いた笑いがかぶさる。
「まあいいさ」
 平静を取り戻した崇志はペースを取り戻そうと口を開く。
「残る難業が俺たちのだけな以上、もうここに居ても仕方ねぇだろ。『縦横の難業』の会場…といっても隣の教室なんだがな、に移動しようや」
「果たしてその必要があるのか?」
 嘲るように返す兇次郎に、だが崇志は動じない。席を立ち肩越しに兇次郎を見下ろして自信たっぷりに諾を告げる。
「あるから言ってんのさ。俺が作り上げた七の難業は完璧だ。最後まで楽しませてやることを約束しよう」
「ふん。我輩もここに来るまでに下準備に少なからぬ時間を費やした。その時間が無駄になることのないように期待したいものだな」
 皮肉げに答えつつも、兇次郎も続けて席を立ち、崇志に続いて歩き出す。
「黒田は無名だが限定状況では並みの異能者など意にも介せぬほどの強さを誇る逸材だ。そしてミステリアス・パートナー、俺が見出した奴は…あれは特別だ」
「ほう?」
 兇次郎の眉がぴくりと動く。ミステリアス・パートナー、六番目の難業『円舞の難業』の番人。彼(男ではないかもしれないが)だけは裏醒徒会が八方手を尽くして情報収集したにもかかわらず、何一つ情報を得ることができなかった。
 唯一分かったことといえば、当のN組ですら崇志以外は誰も何も知らないだろうということだけ。より確実に、より劇的に罠に嵌めるため敵の情報に知悉しておきたい導花が極度に機嫌を悪くしていた姿が兇次郎にはありありと思い起こすことができた。
「清廉唯笑が魔物というなら奴は…」
 扉を開き『縦横の難業』の会場の教室に足を踏み入れながら、崇志はくつくつと含み笑いを浮かべ続きを言う。
「…怪物だ」


 唯笑が『円舞の難業』の会場である教室の扉を開くと、そこには闇が広がっていた。
「あらあら」
 全周を暗幕で覆われた闇。その中に唯笑は不用心とも思えるほどに気負いなく足を踏み入れる。
 扉を閉めた唯笑が周囲を見わたすと、四方に一本づつ立てられた蝋燭が弱々しく揺らめく光で闇に濃淡の彩りを与えていた。
 目が慣れてくると、屋内にあるものの輪郭が浮き上がってくるのがはっきりと分かる。
 机などは片付けられており、幾つかだけが小さな丘のように中央に集められている。その側には鋭い峰のような存在があった。その高さと輪郭から考えてそれは椅子に座る人間――これが『円舞の難業』の番人なのだろう。
「こんな所でゲームなんかしちゃ目が悪くなっちゃいますよ」
 それはまるで暗がりでゲームにふけっている子供を叱りつけるかのような口調だった。
 その言葉に答えたわけではないだろうが、闇の中で何かが動き始める。
 唯笑には見て取れないが、この教室には全周に幾十もの電球が配置されていた。
 電気は通っているものの、ソケットにしっかりはまっていないために光を発することのない電球。それが一つ残らず同時に動き始めたのだ。
 螺旋状のレールに沿って、電球はゆっくりとしかし確実に回転しソケットの底を目指す。
 あっという間に電球はソケットの底に到達し、そのフィラメントに電流の脈動が流れ瞬時に教室の闇が駆逐された。
 白光に満たされる教室。目が慣れるのを待ち、唯笑は目の前の情景に目をやる。
 教室の中央には幾つもの机が並べられたその上に、碁盤目に区切られた中に一つ一つ数字が記されたボードが置かれている。
 そのボードを挟んで唯笑の反対側、その左手には上部がすり鉢状になりその中に底に数字が記された小区画がリング状に配置された回転盤があった。
「ルーレットね。うーん、学生としてこういう不健全な遊びはどうなのかしら?」
 困ったような顔を見せ首を傾げる唯笑。回転盤を手で軽く回し、その横に座っていたフードの男が小さく顔を上げ初めて口を開いた。
「そない深刻に考えんでも、所詮はお遊び、ただのゲームやろ?」
「確かにそうよね。あなたがここの番人さんなのかしら?」
 納得したように大きく頷き、唯笑はにこやかな笑みと共に男に問いかける。
「そうや、俺がこの『円舞の難業』とやらの番人、ス…やなかったな、ミステリアス・パートナーや」
 陽気に答える男、ミステリアス・パートナー。しかしてその正体は双葉学園とも度々交戦したラルヴァ信仰団体“聖痕(スティグマ)”に所属する殺し屋にして異能者、コードネーム・回転する黄金軸(スピニング・スピンドル)のスピンドル。
 スピンドルはフードの下でにい、と口だけの笑みを作り、実に愉しげに宣戦を布告した。
「よろしゅうな、お嬢ちゃん」




七の難業 対裏醒徒会 途中経過

              『颶風の難業』
        皆槻 直   △ ― △   竹中 綾里

              『競愚の難業』
      陣台 一佐男   × ― ○   市原 和美

              『天秤の難業』
        金立 修   ○ ― ×   工 克巳

              『紙牌の難業』
      三墨 ちさと   × ― ○   相島 陸

              『幻砦の難業』
       黒田 一郎     ―     笑乃坂 導花

              『円舞の難業』
ミステリアス・パートナー     ―     清廉 唯笑

              『縦横の難業』
      百目鬼 崇志     ―     蛇蝎 兇次郎





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